尾白の湯から黒戸尾根・甲斐駒ヶ岳・摩利支天・駒津峰・仙水峠を経て北沢峠へ
- GPS
- 30:09
- 距離
- 17.6km
- 登り
- 2,599m
- 下り
- 1,251m
コースタイム
- 山行
- 6:05
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 6:39
天候 | 晴時々曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
・7月26日現在、仙流荘からJRの鉄道駅に行くバスは12時発と17時発のみです。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・全体を通じて不明瞭な箇所はありません。道標も赤テープもしっかりあります。 ・梯子や鎖が連続しますが、極端に危険な箇所はありませんでした。大変良く整備されています。長い行程なので、特に後半は疲労による集中力低下に注意です。 ・黒戸尾根は七丈小屋以外に水場がありません。小屋の水はふんだんでした。 |
その他周辺情報 | ・尾白の湯の食堂は18時ラストオーダーです。 ・北沢峠こもれび山荘は昼食は提供していないようでした。 ・仙流荘の食堂は14時半ラストオーダーです。 |
予約できる山小屋 |
|
写真
感想
20才の誕生日は覚えていない。片思いにもだえていたはずだ。
30才の誕生日は恋人と新宿で呑んでいたが、彼女は「おめでとう」の一言もなく、ただ自分の話ばかりしていた。
40才の時は一人だったが、絶望せずに無事生き残った事に感謝した。
50才は甲斐駒ヶ岳の七丈小屋で過ごす事になった。小淵沢から眺められる長大な黒戸尾根に男惚れして以来、40代のうちに登ろうと心に決めていたのだ。一日遅れてしまったが、無事達成できた。
準備は数ヶ月前から進めた。何よりも体力だ。大森義彦先生のトレーニング本を参考に、2日に1度は約40分のトレーニングを続けた。同時に毎週末、山に行くようにした。ただ度が過ぎたのか、6月に奥多摩の石尾根を登り始めてすぐに右膝を痛め、撤退するという体たらくだった。一旦休んで徐々に再開、宿は予約しておいて様子を見てキャンセルする事にした。
長大な黒戸尾根を攻略するには、出来るだけ荷を軽くする事と早発する事だ。小屋泊まりにしてキャンプ場に前泊する事にした。ツェルトの重量が増えてしまうが、生憎バンガローを予約できなかった。暑いので寝袋は不要と考え、マットをキャンプ場で借りた。荷物は鍵や小銭も含め、金のかからない範囲で軽量化した。
下山は北沢峠にしたが、広河原行きのバスは無いし、仙流荘から先も一日3便しか無い。余計なプレッシャーを排除する為、下山後の宿や列車の予約はせず、予備日も含めて休暇を取った。
右膝は順調に快復したので予定通り登る。前日夕方に尾白の湯キャンプ場に入り、ツェルトを張った。夕食は途中のコンビニでパスタを買うつもりだったが、乗り換えが順調で買えずじまいで到着してしまった。尾白の湯の食堂に行ったがラストオーダーに間に合わなかった。この失敗は最終日まで響いた。
キャンプ場は夏休みなので家族連れが大勢居たが、予約したソロ専用サイトは自分一人だった。夜寝ていると背中を何かが這っている。コオロギだ。このコオロギは不思議な奴で、何度外に追い出しても入ってくる。結局50才の誕生日をこいつと迎える事になった。
翌日は4時に起きて準備、5時に出発した。快晴の田園の向こうに甲斐駒が見えた。明日の朝にはあそこに着けますように。登山口からは数組と一緒になった。先行者は自分より遅いペースだったが、抜かずについていった。とにかく長いコースなので、最初からスローペースを維持しなければならないのは自明だ。計画もヤマプラのコースタイムの1.2倍で立てている。
前半は急坂が多いが、平坦な箇所も多い。刃渡りからは鎖場や梯子が増えるが、良く整備されているのでそれ程恐いとは感じなかった。一枚岩にはご丁寧にステップまで切られていて、「人工的」というのが正直な印象だ。五合目の上で70度の壁の鋭角な角を攀るところは恐かった。
暑さと疲労で徐々に遅れる。それでも予定時間を一時間以上短縮している。中々小屋が見えないなあと前方を探していると、先にトイレの臭いが来た。角を曲がったところに小屋が現われた。
七丈小屋はトイレの臭い以外は快適で、水は痛い程冷たいものが流しっぱなしだ。いつも最終日までタオルは一枚で済ますのだが、綺麗に洗う事ができた。寝床は垂れ幕で区切られていて、同じパーティーでも男女は分けられていた。小屋番は今時の丁寧で親切な青年だった。
翌日は4時半に登り始めた。黒戸尾根の核心はここからだった。尾根が痩せて、標高差200m程ただただ岩場が続いた。朝飯前の労働としては身体に響く。面白いのは八合目からで、大抵の尾根は頂の手前に最後の急坂があるものだが、ここは白砂の緩い坂だ。これまでの苦労を労うかのようだ。
早朝に出た甲斐があった。山頂は快晴だった。小屋の弁当をたいらげて摩利支天の方へ降りる。小屋番の勧めで摩利支天との鞍部から赤石沢を恐る恐る覗き込んだ。
下りは仙水峠経由で北沢峠へ向かった。向かいのアサヨ峰の眺めも絶景だ。北沢峠に10時に着けばバスはあるが、早々に諦めた。この風景を急いで降りるのはあまりに勿体無い。仙水峠周辺は賽の河原で、これを1時間も歩くのかと絶望したが、すぐに森の中へ入った。程なく沢音が聞こえ、仙水荘が現われた。有難く顔を洗わせてもらう。夏の山で一番楽しい瞬間だ。無事に計画を達成できた満足感に包まれて道を降りた。
今回は食糧が不足した。一番の失敗は前日の夕食を摂れなかった事で、結果的には何とかなったものの、行動食も含めて少なすぎた。一方で午前中に行動終了したのもあって、2L持って行った水は足りた。
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