薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳ー親子でぐるっと巡る北アルプスの最深部ー
- GPS
- 79:56
- 距離
- 80.3km
- 登り
- 5,369m
- 下り
- 5,374m
コースタイム
- 山行
- 6:38
- 休憩
- 1:45
- 合計
- 8:23
- 山行
- 7:59
- 休憩
- 1:27
- 合計
- 9:26
- 山行
- 5:31
- 休憩
- 2:21
- 合計
- 7:52
- 山行
- 6:33
- 休憩
- 1:34
- 合計
- 8:07
天候 | 1日目:快晴 2日目:快晴 3日目:快晴のち曇 4日目:晴のち曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
・各ゲート開門時間は6:00から20:00とあるが、実際に折立に向かうゲートは17:20は閉まるとのこと。 ・折立に一番早く到着できるのは亀谷連絡所ゲート。金曜日深夜着でゲート前三台目。明朝、ゲート開門時には20台程度の列が並んでいた。 ■折立駐車場 ・土曜日の朝一番で駐車場に向かったが正規の駐車場はほぼ満車。路駐の車も多かった。実際には駐車場に数台の空きはあったが場所勘がなく通り過ぎてしまった。 とりあえず奥まで空きがないか進んでみて、空きがあれば駐車、空きがなかった場合は奥の登山口(バス停)前の林道(砂利道)を右折するとぐるっと回って広い臨時駐車場に裏から入れる。運がよければ臨時駐車場までの間にあるスペースに駐車も可能と思われる。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
○登山ポスト 折立で太郎平小屋の登山相談所に提出するようにと張り紙がある。 ネットなどで事前提出の人はOKだが、現地提出の人は太郎平小屋で提出すること。 ○山行計画 ※主に子連れ登山の観点から ・このコースは基本的に危険箇所はなく、落石を想定したヘルメットが必要な場所はほとんどない。 ・コース途中に小屋がいくつもあって天候悪化時を想定した場合に子連れでも比較的安心。ただし、太郎平小屋〜黒部五郎小舎間が長いので注意。 ・混雑時の小屋泊というのは、子連れ登山者にとっては余計な心配の種。周りに迷惑をかけないかひやひやする。テント泊装備は重いが背負って歩くのが無難かも。 ・天候や体調によって初日に薬師岳山荘、2日目に黒部五郎小舎で小屋泊とすることも可能。 ・先に雲ノ平に入る逆回りのルートも考えられるが、個人的には先にピークを巡って、雲ノ平から歩いてきた山々を見上げたいと思い反時計回りで回るルートとした。ただし、天候次第では初日に雲ノ平、もしくは薬師岳登頂後、2日目に雲ノ平というサブプランも検討の価値あり。 ○コース状況 ※主に子連れ登山の観点から ◆折立〜太郎平 危険個所なし。三角点(1,869m)を過ぎると石畳と木道の道が増えてきて歩きやすい。 ◆太郎平小屋〜薬師峠(テント場) 途中まで木道。危険個所なし。 ◆薬師峠〜薬師岳山荘〜薬師岳 危険個所なし。 ◆太郎平〜北ノ俣岳 危険個所なし。 ◆北ノ俣岳〜黒部五郎岳 危険個所なし。 ◆黒部五郎岳〜黒部五郎小舎(カールコース) 黒部五郎岳の肩からカールへと降りる区間はやや大変だが、慎重に歩けば問題なし。それ以外に危険個所なし。 ◆黒部五郎小舎〜三俣山荘(巻き道コース) 三俣蓮華岳の山頂方面との分岐手前から、やや岩場となって険しくなるが慎重に歩けば問題なし。 ◆三俣山荘〜鷲羽岳 急登であるが整備されており問題なく歩ける。 ◆鷲羽岳〜ワリモ岳〜ワリモ北分岐 岩場の稜線だが登山道がしっかりしており問題なし。 ◆ワリモ北分岐〜水晶小屋〜水晶岳 水晶岳手前までは緩やかな稜線歩きで危険個所なし。水晶岳手前からは岩場でやや難易度はあがるものの、慎重に歩けば子供でも問題なく登れる。 ◆ワリモ北分岐〜祖父岳〜雲ノ平山荘 危険個所なし。 ◆雲ノ平山荘〜薬師沢〜太郎平小屋 危険個所なし。なお、「雲ノ平から薬師沢への下りは子供には段差があって大変」とのことだったが、朝一で体力的に余裕があったことから長男でも問題なく下ることができた。 |
その他周辺情報 | 予備日が余った場合は是非高山へ立ち寄って観光を! ■下山後の日帰り温泉 宇津江四十八滝温泉しぶきの湯:大人600円、小学生400円 ※高山方面。下山後、高山観光にいくなら場所的にお勧め。広くてジャグジーもあって気持ちいい!!(ただし、折立からは時間がかかる) ※安房トンネルを通って松本方面へ抜ける場合は奥飛騨温泉郷に立ち寄り可能。定番は「ひらゆの森」か。 ■下山後の食事 飛騨牛のお店 丸明(まるあき)高山店 http://www.hidagyu-maruaki.co.jp/eat/index.html ※高山に来たら折角なので飛騨牛を!精肉会社が経営している焼肉屋さんです。 |
写真
感想
【感想】
去年からずっと構想を練っていた北アルプスの薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳の4つの百名山を巡る周回登山。
夏休み前半には4日連続登山(途中で下山して車中泊含む)も経験して3泊4日(予備日1日)の行程で臨みました。
山頂を巡った1日目から3日目までほとんどが快晴で、北アルプスのほとんどの山々が見えるという幸運に恵まれ、最後には雲ノ平で泊まることもでき、もう何も言うことのない最高の山旅となりました。
白く輝く大らかな稜線が美しい薬師岳。
美しい緑のカールに巨石が立ち並ぶ黒部五郎岳。
三俣山荘から見上げると雄々しく聳える鷲羽岳。
険しい岩稜のシルエットが凛々しい水晶岳。
どの山からも北アルプスの数々の名峰を望むことができました。
そして、最後にはそれらの山々に囲まれた日本最後の秘境・雲上の別天地である雲ノ平。
言葉では言い表せない素晴らしい経験をさせてもらいました。
最終日の下山中。息子と二人で歩く、こんな素晴らしい山旅はおそらく人生で最初で最後だろうと思うと、歩きながら胸が詰まって涙が溢れそうになりました。
一緒に行ってくれた長男に感謝。行かせてくれた嫁さんと二男に感謝。
本当に、本当にありがとう。
■薬師岳 百名山47座目、長男(小5)45座目
■黒部五郎岳 百名山48座目、長男(小5)46座目
■鷲羽岳 百名山49座目、長男(小5)47座目
■水晶岳 百名山50座目、長男(小5)48座目
【記録】
◆1日目
有峰林道、亀谷連絡所のゲートは6時ちょうどに開門。前日の深夜到着して順番待ち三台目で出発。
しかし、折立の駐車場はほぼ満車。一台分の空きを見つけるも通り過ぎてしまう。事前に登山口手前まで進めば臨時駐車場に行けるとの情報を得ていたので、そのとおりに進んでみる。砂利道の林道付近には駐車スペースがあったが、少し不安だったのでぐるっと回って臨時駐車場に駐車。臨時駐車場はまだ空きがたくさんあった。
車を停めていざ出発!と写真を撮ろうとしたら一眼レフの電源入らない・・・。あ、バッテリーを充電したまま、コンセントにさしっぱなして持ってこなかった、と即座に気づく。今更どうしようもない。「まぁ、荷物が減ったと思えばラッキーだよ!」と、自分にも息子にも言い聞かせながら出発。
折立からは沢山の登山者と一緒に登る。
中にはベビーキャリアに乗った幼児、3,000m級の山に登ったことのある六歳児などもいる。
1,900mあたりからは広々とした稜線を歩く。左手にはこれから向かう薬師岳と立山、そして三角に尖った剣岳が、右手下には有峰湖、遠く向こうには白山が浮かんでいるように見える。素晴らしい登山道だ。
太郎平小屋に到着すると眼前に北アルプスの山々が飛び込んでくる。今まで見たことのない角度からの名峰の姿に親子二人で感動する。
ここで昼食。太郎平ラーメンを注文。長男はコーラ、父親はなんとプレミアムモルツの生ビールで乾杯!
あー、美味しかった。というのもつかの間、長男はコーラとラーメンでお腹がパンパンに膨れてしまい、まさかのリバース!。コンビニの袋にリバースしたブツを入れてその後4日間歩く羽目に・・・。
太郎平で昼食後、薬師峠のテント場へと移動してテントを設営する。ロケーションの良い場所を、と探して、明日登る黒部五郎岳が正面に見える場所にテントを設営。
設営後はサブザックを持って薬師岳へアタック!
薬師岳山荘を過ぎたあたりで、今朝、一緒に折立から登ったおじさんが山頂から降りてくる。長男に「よくここまで登って来たね!今日登っている子供は1人だけだよ!」と声を掛けてくださった。
薬師岳山頂からは北アの名峰が眼前に立ち並ぶ圧巻の景色だ。
遠くに槍ヶ岳、明後日歩く予定の鷲羽岳から水晶岳への稜線、その隣には赤茶けた山肌の赤牛岳。その向こうには白く輝く野口五郎岳。
親子二人で絶景を味わってから下山。薬師峠のテント場に到着すると大混雑!先にテント設営していて良かった!
テントの受付とビールを購入してテントに戻って夕食。カレーとリゾットで満足。長男はぐっすり睡眠。
深夜起きると、空は満天の星空。一方、遠くに見える黒部五郎岳の山頂付近では雷が光っている。神秘的な景色を静かに堪能した。
【2日目】
朝、起きると周りのテント泊の人たちがごそごそと動き始めている。トイレは順番待ち。テントを撤収してトイレに行って5時過ぎに出発。空は白みはじめていて、黒部五郎岳の山頂部はモルゲンロート。遠く槍ヶ岳も染まっている。
太郎平小屋を過ぎたあたりで昨日の薬師岳で声を掛けてくださったおじさんと一緒になる。少しの間、お話しながら登る。おじさんは100名山完登し、300名山に挑戦中だそう。100名山も登りなおしているらしい。スゴイ。今日は黒部五郎をピストンして折立まで降りるそうだ。さすがの健脚であっという間に先へ登っていかれた。
太郎山を過ぎて北ノ俣岳へと進む。ちょっとした急登を登りきるとここからは白山の好展望地。嫋やかな姿が美しい。登山道脇にはお花畑。良い道だ。
向かう黒部五郎岳の方面を見て長男が「あれって笠ヶ岳かな?」と言う。確かに笠ヶ岳!大好きな岐阜県の山だ。「お父さんより先に見つけるなんてスゴイね」と話すと「だって、どこから見ても尖っているから」との回答。
北ノ俣岳の山頂で少し休憩。朝早くから大勢の人が登ってきている。太郎平から黒部五郎岳までは人も少なくて静かな山行になるかな、と予想していたが、思いのほか賑やか。
この辺りからは乗鞍、御嶽も山頂部がやや鋭角に見える。手前から黒部五郎、笠ヶ岳、乗鞍、御嶽の尖ったが山容が眺めることができて面白い。4兄弟のようだ。
北ノ俣岳から黒部五郎岳までの道のりは長かった。まず、黒部五郎岳の手前まで辿りつくのにアップダウンがある。他の方のレコで山と高原地図のこの箇所のコースタイムは厳し目とあったが、そのとおりだと思った。
長い道のりであるが、景色に励まされて登る。後ろを振り返ると昨日登った薬師岳がどっしりと座っている。その奥を見ると見覚えのある山並みが。先月登った白馬三山だ。その隣には大きな三角形の山。五竜岳だろう。
黒部五郎の足元にたどり着くと、見上げる黒部五郎岳の大きさに圧倒される。ここからの登りもキツイ。歩いては立ち止まって息を整えて登る。
この登りで今朝お話したおじさんとすれ違う。さすがの健脚。笑顔で挨拶してくださった。
黒部五郎の肩にたどり着くと一気に南側の展望が開ける。眼下には黒部五郎のカールが広がる。登山者たちの多くの登山者がここで休憩していて賑やかだ。ザックをデポして空身で山頂へと向かった。
黒部五郎岳はおそらく北アルプスの中でも最も最奥の山だろう。親子で山頂に立ってハイタッチ。
山頂からは北アルプスの名立たる山々が一望できる。槍穂連峰の稜線。南には笠ヶ岳、乗鞍、御嶽。北には薬師岳、劔岳、立山、白馬岳、五竜岳。そして明日登る鷲羽岳、水晶岳。一体いくつの100名山が見れるのだろう。大展望とはまさにこのこと。しばらく景色を楽しんだが、今日の行程はまだまだ長い。夕方には少し天気も崩れるかもしれないので先を急ぐこととした。
黒部五郎の肩からはカールへと下る。カールの斜面には花が咲き乱れていて美しい。カールの中心まで降りると沢が流れている。沢の水で顔を洗う。気持ち良い。他の登山者も沢水で顔を洗ったり休憩している。
カールから見上げる黒部五郎の山頂部は岩で覆われ、緑の絨毯のようなカール内にはあちこちに巨石が転がっている。別世界に来たような光景が広がる。外から眺める黒部五郎と内から眺める黒部五郎では、これほど印象が違うのか。あまり他の山では感じることのなかったギャップだ。
美しいカールの中を黒部五郎小舎へと向かうが、長いくだりが続いて体はキツイ。ここで何組かの登山者に追い抜かれる。「この山に登ってるのは健脚の人が多いね」と話をしながら歩く。
下山中、長男が「ここって防災無線あるのかな?」と聞いてくる。不思議に思いつつ、「??防災無線はないよ」と答える。すると長男は腕時計で時間を見る。しばらく歩いていると、突然、後ろを歩いていた長男が立ち止まる。なんだろう?とみていると、手を合わせ、目をつむってお祈りをしている。そうか。今日は長崎原爆投下の日だ。私の自宅では防災無線で黙とうのサイレンがなる。だから防災無線があるか聞いたのだった。一緒に黙とうをしてから再び歩き始める。
長い下りを終えてようやく黒部五郎小舎に到着。この小屋も登山者で溢れている。小屋の中で、昼食をとることとする。私は生ビールにカレーライス、長男は親子丼を注文。疲れた体に生ビールが沁みる。ほっと一息。
ここで今日初めて出会う小学生の子供さんが小屋でジュースを購入している。ヤマレコユーザーのPENTAGONさんがここでテント泊予定とのことでお会いできるといいですねと話をしていた。もしかしたら息子さんかな、と思っているとお父さんらしき方が見えたので思い切って声を掛けてみると、やはりPENTAGONさん親子。なんと今回は新穂高から立山まで縦走されるとのこと。ザックは28kg、息子さんも8kg。凄いです。少しお話をして記念に写真を撮っていただく。PENTAGONさんは昼食の準備、私たちもここから三俣山荘まで歩く予定だったため、立ち話程度しかできなかったが、最後にがっちり握手させていただきお別れした。
黒部五郎小舎から三俣山荘までは、三俣蓮華岳を登らなければならない。小舎からはいきなりの急登である。大休憩したとはいえキツイ。稜線に取りつくと少し斜度は緩むがまだまだのぼりが続く。ちょっとした岩場が現れ、三俣蓮華岳山頂へと向かう道と三俣山荘への巻道の分岐にたどり着く。
三俣蓮華岳は岐阜・富山・長野の三県の境界となる山である。「岐阜県民としては登らないとね」と長男と話をしていたが、本日のここまでの行程ですっかり意欲が萎えて巻道コースを選択。夕方から天候が崩れるかもとの天気予報も半ば言い訳にしながら先へ進んだ。巻道とはいえ疲れた足にはこたえる道のりであった。ぽつぽつと雨が降りそうな中でようやく三俣山荘へ到着した。
三俣山荘では小屋泊にするつもりだったが、山荘前は大混雑。受付にも人がいっぱいの状況。聞けば布団1枚に2人とのこと。小屋泊は諦めてテント泊に変更する。ただし、テント泊でも夕食や朝食弁当が注文可能とのことで併せて注文した。
テント泊の受付は小学生低学年ぐらいの子供がやってくれ、応対の姿がかわいらしい。疲れが癒される心地であった。
テント場もテントでいっぱいだ。平坦な場所はすでに埋まっており、仕方なく若干斜めの場所に設営する。しかし、目の前には雄大な鷲羽岳を望める最高のロケーションである。
大賑わいの三俣山荘。夕食は午後7時。山荘前のベンチに座ってまったりと過ごす。山荘前からは鷲羽岳はもちろん槍ヶ岳から常念岳の表銀座の稜線が眺めることができる。槍ヶ岳には雲がかかっていたが、一瞬その姿をあらわすと歓声があがる。廻りの人たちはすでに宴会モードで賑やかだ。
お待ちかねの夕食の時間となり食堂へと移動。食堂は山小屋とは思えないオシャレな内装。ワインも置いてある。三俣山荘の夕食が食べてみたかった理由はジビエシチューが出されると聞いていたから。鹿肉は思ったよりもやわらかく、少し特徴的な風味があったが親子でおいしく食べることができた。
夕食後、テントに戻り就寝。斜めながらも長男は問題なく熟睡。「星空が綺麗だったら起こしてね」とのことだったので、深夜に長男を起こして星空を見せる。しかし、1分ほどみて「すごいね」と一言だけ発してすぐに寝てしまった。
【3日目】
4時過ぎにテントを撤収する。テントは夜露に濡れていて重いが仕方ない。そのまま無理やりスタッフザックに詰め込む。鷲羽岳を見るとヘッドライトの明かりが並んで見える。ご来光を見るために早立ちした人が多いようだ。三俣山荘にてトイレを済ませる。三俣山荘のトイレは渋滞だった。
外に出るとずいぶん白んできたのでヘッドライトはつけずに登っていく。ちょうどご来光が鷲羽岳の向こう側から登るため、直接の御来光は見えなかったが、東側には常念山脈、槍穂連峰が朝焼けに染まっていく姿を眺めることができる。また、後ろを振り返れば三俣蓮華岳、西側には昨日登った黒部五郎岳のモルゲンロートに染まっている。本日も快晴。本当に天気に恵まれている。
鷲羽岳は山荘から見上げると凄い斜度に見えるが、朝一番で体力もあることもあって順調に高度を上げていくことができた。頂上直下の岩場はやや慎重に歩く必要があるものの登山道として整備がされていて問題なく登れる。
順調に歩を進めて鷲羽岳に登頂。
山頂は360°が北アルプスの大展望。どっちを向いても北アルプスの名峰。特に槍穂連峰を見下ろすかのように見える素晴らしい眺望だ。
ここで、三俣山荘のお弁当を食べることにする。槍穂連峰を眺めながら、北アルプスのど真ん中での朝食。こんな経験はそうそうできるものではない。長男と二人絶景を眺めながらの至福の時間。
ここで昨日の道中で何度かお会いしたソロの男性に会う。「もしかして昨日の?」と声を掛けていただき、しばし談笑。聞けば、静岡の方で立山から薬師岳、黒部五郎へと縦走して、今日は裏銀座縦走路を通って烏帽子小屋にテント泊の予定とのこと。これまた凄いコースだ。
「またどこかで」とご挨拶して水晶岳へと向かう。
鷲羽岳から水晶岳の稜線歩きは楽しい道だった。アップダウンはあるもののそれほど苦にならない。途中、ワリモ岳山頂の分岐まで行ったところで、「ワリモ岳の山頂行く?」と長男と相談していると、山頂から降りてきた女性のパーティの方に「1分で行けるから行った方がいいよ」と言われ、山頂に行くことに。本当に1分で登頂。南には鷲羽岳、北には水晶岳の稜線。これまた絶景。通り過ぎる人は多いと思うが折角なので立ち寄った方が良い場所だ。
ワリモ岳からワリモ岳北分岐まで歩く。ここが雲ノ平や黒部源流との分岐となるため、水晶岳ピストンの登山者のザックのデポの地点。いくつものザックがデポされている。我々親子もザックをデポして、サブザックで水晶岳を目指す。
この分岐から先は絵にかいたような北アルプスの稜線歩き。眺望は抜群。アップダウンもそれほどなく、ぐいぐいペースを上げて先へと進む。水晶小屋ではデポされたザックが多数。裏銀座縦走路を通る人はここから水晶岳をピストンだ。
水晶小屋からも快適な縦走。水晶岳山頂に近づくと岩場が現れる。このあたりで皆がポールをデポしている。ポールは間違えられるとかなわないので、サブザックに無理やり縦に詰め込んで先へと進む。ここからは三点保持で登らないといけない箇所が続く。山頂に近づくと登山道の土がキラキラと煌めく。水晶岳といわれる所以だろう。水晶かどうかはわからないが結晶化した石があちこちにある。
ほどなくして水晶岳山頂。山頂に登り、恒例となった親子ハイタッチ。この山行で最後の百名山登頂だ。岩場の山頂は狭く、人がぎっしり。順番待ちをして山頂標識で記念撮影。眺望はというと、これも最高。鷲羽岳よりも後立山連峰が近い。こちらも北アルプスのど真ん中という趣である。初日に登った薬師岳が近く見える。3日間でぐるっと回った道のりを眺めながらずいぶんと歩いたなぁという思いが強くなる。
しかし、ちょうど登頂時が人のピーク。水晶岳山頂直下はすれ違い不可の場所が多いため、登ってくる人が少ないうちに下山を開始することにする。
下山も空身のため快調。あっという間に水晶小屋。水晶小屋でジュースと鷲羽岳・水晶岳の登山バッジを購入する。ちょうど昨日から何度か逢った静岡のソロの登山者が野口五郎岳方面へ出発するところで、「また、どこかの山で!」と挨拶をする。
水晶小屋からワリモ北分岐まではあっという間。デポしたザックを背負うと重い。しかし、今日は行程に余裕がある。雲ノ平にはお昼には着けるだろう。
ワリモ北分岐から一旦下って祖父岳へと登る。祖父岳はあまり人気がないのか、今回の山行中で最も静かな登山道であった。ハイマツの間を歩く区間が多く、難儀する箇所もあったがそれほど苦も無く登頂。山頂には先行者が2名だけ。今回の山行で最後のピークにして、一番静かなピークであった。
しかし、この祖父岳はこの3日間歩いてきた山、道が全部見渡せるという絶好のポイントだ。最後のピークに祖父岳を選んだのは歩いてきた北アルプスの山々を眺めるため。少し時間をとって休憩する。
長男は祖父岳の標識を写真にとって、祖母にLINE。「じいちゃんに見せて!」だって。祖父ちゃん、嬉しいだろうなぁ。
ゆったりと景色を眺めてから下山開始。目指すのは日本最後の秘境・雲ノ平。
祖父岳からの下山中、雲ノ平山荘とテント場が見える。本当に北アルプスの最深部である。雲ノ平に降り立つとまず、四方を北アルプスの名立たる山々で囲まれていることに気づく。しかもその山々の切り立った稜線とは違い、開けた平原。ところどころに点在する巨石。まさに別天地。こんな場所が日本にあったのかという感動が込みあがってくる。
しかも、ほとんどが環境への影響を考えて木道が整備されている。この環境を維持しながら、たくさんの人に味わってもらいたいという関係者の方々の血のにじむような努力がうかがえて、また感動する。
雲ノ平山荘に到着して宿泊の手続き。この雲ノ平山荘も行って見たかった山荘だ。雲上の別天地にして綺麗でオシャレな山小屋と聞いていた。
丁度お昼だったので、食堂で長男はチキンライス、私はビールとウインナーを食べる。食堂には音楽も流れており、本当にここが北アルプスの最深部かと思うぐらいのクオリティである。
昼過ぎは天気予報どおり天気が悪くなり、にわか雨も。我々はすでに山荘入りしていたので悠々と過ごす。長男は山荘の本棚になった本に夢中。といってもちびまるこちゃんや、ドラえもんの漫画を笑いを噛み殺しながら読んでいる。
しかし、お昼の時点では小屋にも余裕があったらしいが、小屋側も予約の倍以上のお客さんがやってきたらしく、急きょ、布団は2枚に3名となってしまう。場所の再配置があって、隣となったおじさんと話をする。
隣のおじさんは栃木県出身で山の経験も豊富。毎年行っているという八ヶ岳の話などいろいろお話を聞きながら楽しい時間を過ごした。
夕食はなんと石狩鍋。美味しい。真夏に鍋、というのも面白い。美味しいので何杯もおかわりをしてしまう。山に行くと痩せるはずが、最近泊りの場合に太ってしまうのはこのためか。
夕食後、食堂は談話室に。長男と二人入ると、布団の隣のおじさんもやってきて、ワインを飲みながら山談義。楽しいひと時。食堂で流されているスライドショーでは「黒部の山賊」で出てくる山賊?のみなさんの写真を見る。長男も興味深く見入っている。ああ、あの本に出てくる場所にまさにいるんだなぁと実感。
【4日目】
大混雑の山荘は、いびきの大合唱。隣の人にも気を遣いながらなのでぐっすり熟睡とはいかない。しかし、長男は夜中、まわりのいびきで2回ほど目が覚めたとのことであったが基本的に熟睡できたとのこと。強者である。
最終日はピークはない。5時半ぐらいの2回目の回の朝食を食べる。部屋の人たちはすでに出発している人が多かった。隣のおじさんはゆっくり班らしく、朝食後、支度を済ませてほぼ同時に出発。「どこかで会ったら声かけてね!」と言ってくださった。
早朝の雲ノ平は晴れ。この日は徐々に天気が崩れていくとのことであったが、朝はこれまで登ってきた薬師岳、水晶岳。また笠ヶ岳が綺麗に見える。山荘からしばらくは雲上の別天地の雰囲気を存分に楽しむ。
木道の最終地点から薬師沢までは激下り。山荘の伊藤さんに「子供には段差があって大変だと思うけど頑張って」と言われていたが、そのとおりの下り。ただ、朝一で体力的に余裕があって長男もそれほど苦にせず薬師沢まで降りることができた。
ここの区間で山岳部の学生たちの集団に何回かすれ違ったが挨拶も清々しくて気持ち良かった。
薬師沢まで降りて、沢で顔を洗う。冷たくて気持ち良い。時間があればゆっくりしたい場所だ。
薬師沢からはカベッケガ原という湿原を歩く。「黒部の山賊」でこのあたりの伝説を読んでいた長男は、「確かに薬師沢はカッパが出そう」「カベッケガ原は沢から遠いからカッパはでなさそう」などと喋りながら歩いていく。カベッケガ原は木道が続き、歩きやすい。コースタイムよりも早いペースで進んでいくことができた。
カベッケガ原から太郎平への登りにさしかかったあたりで、後ろを歩いていた長男の「わー!」という悲鳴。その後ろに歩いていたご夫婦(たぶん)の「きゃー!」という声。何事かと思って振り返ると、長男が登山道脇の草むらへプチ滑落している。見た目には全然問題の内容な場所であるが、石に足を滑らせたらしい。この4日間、もっと険しい場所を歩いてきたのに、一見何でもないような場所が危ない。幸い、怪我もなく、手を差し伸べれば引き上げることのできる場所であったのが良いものの、場所が場所なら大惨事である。登山のリスクを認識する一瞬であった。
プチ滑落もなんのその、良いペースで標高を上げていき、太郎平小屋へ。ここで名物のカレーを食べるつもりが何と売り切れ!仕方なく、私は初日に食べたラーメン、長男はうどんを頼む。初日にカレーを食べるんだったと後悔する。
折立までの下山時間は3時間ほど。時間に余裕があったのでテントを干しながらのんびり過ごす。これまで歩いてきた道のほとんどが眺めることができる場所。もうこの景色を楽しめるのも最後か、と名残惜しくなる。
テントも乾いたので下山を開始する。ここで長男が「あと3回のぼりがあるからイヤだなぁ」という。どうやら登ってきたときに帰りに登らなきゃいけない場所を覚えていたらしい。数えてみたら本当に3回。すごい記憶力だ。
帰り道では雲がかかっていて白山や劔岳は見えなかったが達成感を感じながらの下山。長男と二人で4日間北アルプスの最深部を天気に恵まれて歩けたこと、4日間二人きりで長男と一緒に成長したような感覚を感じることができたこと、そして、もうこんな最高の山行は二度とできないだろうなぁという思いで、下山しながら涙が溢れそうになってしまった。
折立の駐車場に到着して、感極まって長男を抱き締めた。そして抱きあげた。いきなりだったので長男は意味がわからず少し困惑していた。そして「ありがとう」と言いながらキスをしようとしたが、はにかみながら「きもい」と言って拒否られた。
もう五年生。そりゃそうだよなぁ。
この4日間で、印象に残っているのは景色です。1日目から最終日まで山を見ることができたからです。特に、北アの中心だったため北アの名山が見られました。先月登った白馬三山が見えたので、実感もわいてきました。今回はテント泊2回もしましたが問題なく寝れたのでよかったです。本当に絶景で、日本にこんな景観が残されていたのかと思うくらいでした。二度と無いような最高のたびができました。
景色と同じく素晴らしいのが人です。「すごいね」「頑張っているね」などと声をかけてくださるのでおかげでがんばることができます。これからもいい山と人あふれる北アルプスでありますように。
<下界すご!>
さすがに4日間も山に滞在すると、町が豊かと感じてきます。温泉に浸かったときの気持ちよさが格段上がり、「充実の温泉施設を造ってくださってありがとう。」と思えてくるほどです。おつかれさんの焼肉は飛騨牛!。めちゃうまかった!。
私のページにもコメントいただき、ありがとうございます。息子さんと百名山登山数が二つしか違わないって、かつ、もう48座目なんて!、すごすぎです!健脚にびっくりしました。雲ノ平に回られたんですね。私もいつかは歩きたいです。天気に恵まれた、最高の山行でしたね!
snakamさん、こちらこそありがとうございます!
あの日、薬師峠から黒部五郎を通って三俣山荘まで行った人が多かったように思いますが、さすがにこのコースを選ぶだけあって皆さん健脚でしたね。
親子で「今日は健脚の人が多いねー。」と喋りながら歩いていました。
雲ノ平良いところでした!(山荘含めて)
ピークではないけれど名峰に囲まれた別天地です。是非ともいつか!
naoさん、soumaくん、お疲れ様でした!
soumaくん、登る前に予習なんてして、偉い!
顔つきもだんだんアルピニストっぽくなってきた?
お父さん、4日目の顔がゲッソリしてたのは気のせいでしょうか?お酒とおつまみの日々だったから?なんてね。
でもいいですね、このコース。雲の平行きたいなあ。
9月に水晶、鷲羽予定してますけど、新穂高か裏銀座を予定してて、自分たち行けるかなぁ。5日もあるのに(^_^;)
とりあえず
太郎平小屋のマモートジョッキの生ビール、
三俣山荘のシビエシチュー
_φ(・_・メモメモ笑
loversoulさん、ありがとうございます。
最近、soumaの方が良く道を知っていて、最終日の下山時も「あと3回も登りがあるから嫌だなぁ」って3日前登ってきたときのことを覚えてるぐらい。
え?ゲッソリ?ふっくらの間違いじゃ・・・。
毎日、昼・夜とビール三昧(幸せすぎる。下界では無理)。しかも、小屋ではご飯おかわり自由なものだから、食べすぎて逆に太っていくという・・・。
裏銀座は高瀬ダムから水晶小屋の間は歩いていないので正確な事はいえませんが、水晶小屋がかなり小さい小屋でテント場もないので、やっぱり新穂高からの方が小屋(テント場)と水場が充実していて親子でいくなら新穂高がいいかなぁと思います。
ちなみに鏡平小屋と三俣山荘の中間にある双六小屋がこれまた良い小屋で、テント場も良いし、水も豊富。なんといっても鷲羽岳を眺めながら生ビールが飲めますよ!(笑)
来週が剣・立山なんですね。頑張ってください!
いつもいつも素晴らしい親子山行を見せていただきありがとうございます。
うちもそのうちこんな山行ができればなーと妄想しております。
soumaくんもいよいよレコに登場ですね。(過去にも出てたのかな?)
体力、知識、感性ともに素晴らしいです。
これからも山を楽しんでくださいね。
naoさん、これが最後じゃないですよ。
これからですよ。
Sanchanさん、ありがとうございます!
子供と一緒だと気を使わないといけないことも多いですが、成長が目に見えてわかるのでうれしいです。是非お子さんとご一緒に出掛けてくださいー。
天候にも恵まれて最高の山旅でした。
最後じゃない・・・といいなぁ(笑)
nao_somaさん、はじめまして。
我々も、同じ日に折立から入りましたが、逆ルートなので、お会いしてないかなぁと思っていたら。。。 最後の太郎平小屋の写真に写ってました!
燃え尽きたジョーのようですが、一杯やってくつろいで、虫刺されの跡を掻いているのかと
しかし最後まで天気も持ち、笑うしかない絶景でしたね。
下山時の抱擁、わかります。
私も昔、子供2人と西穂山荘までだましだまし登り、上高地のテントで寝てる子に「よく頑張ったなぁ」と酔ってキスしてました。(笑)
soumaさん
素晴らしい体験ですね。ほんものの絶景を自分の眼で見られる幸せ。
そう、山と同じくらいに、人とのちょっとした出会いもうれしいですよね。
これからも安全登山で楽しんで。
pewa-lakeさん、こんにちは!
あのときベンチですわってらっしゃった方だったんですね!
靴脱いでいらっしゃったので今日が下山日なんだろうなぁなんて思っていたので覚えております。
本当に天気に恵まれて最高でした!
これからも親子で登山を楽しみたいと思います!
nao_somaさん
黒部五郎の小屋ではありがとうございました。
お会いできまして嬉しかったです。
こちらもようやく山から帰還しました
天気も良く最高の北ア深部でしたね。
翌日雲ノ平方面を見ながら、somaさん親子は今あちらを歩いていらっしゃるんだろうな~
と思ったりしていました。
小屋では息子がお腹を空かしての食事前でしたので、
立ち話程度で申し訳ありませんでした。
それにしてもsomaさん親子の健脚振りに、とても驚きました
親子登山、いいですよね。
胸が熱くなる気持ち、よくわかります。
またどこかの山でお会いしましょう
PENTAGONさん、おはようございます!
日本海まで一気にいかれたんですね!素晴らしい!
お会いしたときは室堂までと勝手に思っておりましたが剱岳から先までもとは。スゴイ!
我々は軽い荷物でのハイクですのでレベルが違いますよ。
素晴らしい親子での挑戦、お疲れ様でした。これからは南下ですね!
またお会いできることを楽しみにしております!
先日の白馬から北岳にも驚かされたましたが、今回の登山もびっくり。
我が家にはまだ2泊以上の山行は考えられませんが、こんな感動の山旅を経験させてあげたいものです。いつかは・・・・
souma君、小学生にして飛騨牛の焼き肉は羨ましすぎます。
mikiさん、コメありがとうございます!
私達、2泊すら初めてでしたが、やっぱり北アルプスは小屋が充実していて水場も豊富なことが大きかったです。雲の平山荘に小学生のお子さん三人連れのお母さんもいらっしゃいました。
mikiさん家族もきっと近いうちにできるのでは?
実のところ、毎日運転しなくても良い分精神的に楽かも(笑)
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する