槍ヶ岳から奥穂高岳へ 憧れの大キレットに挑戦
- GPS
- 56:00
- 距離
- 44.7km
- 登り
- 2,851m
- 下り
- 2,841m
コースタイム
- 山行
- 8:05
- 休憩
- 2:35
- 合計
- 10:40
- 山行
- 7:55
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 8:55
天候 | 9/11 晴れ時々曇り 9/12 晴れ 9/13 霧&強風のち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2015年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
さわんど大橋⇔上高地バスターミナル:乗合いタクシー/4,200円、バス/1,250円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
南岳〜涸沢岳は全体的に危険箇所です 浮石・落石に注意しましょう |
写真
感想
天気が微妙で延び延びになっていた大キレットへ、ついに挑戦する日がやってきました!
八峰キレット→不帰キレット→大キレットと、徐々にkenboさんに外堀を埋められ(最初は奥穂だけの予定だったのに、いつの間にか槍穂縦走になってました!)、なんと今年中に3大キレットを踏破することに。
2年前、涸沢で満足して奥穂登頂を断念したヘタレな私ですが、果たして大キレットを越えることはできるのか・・・
9/11
この日は上高地から槍沢を経由して槍ヶ岳へ登る、言わばアプローチの日。
しかし危険箇所はないものの3日間で一番距離が長く、宿泊地の槍ヶ岳山荘まで延々と登りが続く体力勝負のルートです。
横尾までは歩きやすい平坦な道。何回か通ったことがあるので、特に問題なく通過。トイレ休憩以外はノンストップで歩きます。
槍沢ロッヂでおにぎり休憩。ここから段々と標高を上げていきます。
工事中のババ平を通り過ぎ、大曲を経て天狗原分岐へ到着。ここでちょうどお昼になったので昼食にしました。
本当は明日の行程を考えるとここから南岳へ登った方が良いのですが、せっかくの槍→穂なのでこのまま槍ヶ岳へ向かいます。
だんだんと近づいてくる槍の穂先・・・それに比例して登山道の傾斜もきつくなります。
いつもの事ながら、登りでヒィヒィ言っている私をkenboさんがスパルタ気味に励ましてくれました。
少しペースダウンしたものの、一定の速さで立ち止まらないで歩くことによって、結果的には予定より早く槍ヶ岳山荘に着くことが出来て一安心。
さっそくテントの受付と設営をして穂先に登ろうとしたら・・・あらら、ガスで真っ白になってしまいました。
何も見えない中登っても楽しくないので、しばらく山荘で様子を見ていたら一瞬ガスが晴れました。
「今だ!」と慌てて穂先へ取り付きます。
前回登ったときは片道30分くらい掛かりましたが、今回は空いていたこともありサクサク登って15分ほどで山頂へ到着。
山頂も人が少なかったので、ゆっくり写真を撮ったり景色を眺めたり、槍ヶ岳を堪能することが出来ました。
去年は少し怖く感じた下りも、今回はスムーズに下れました。(少しは成長したのか?)
9/12
いよいよ大キレットへ挑む日がやってきました。
昨晩は風の音が気になってなかなか熟睡できませんでしたが、体調は悪くないし天気も最高。
これ以上ないアタック日和です。
まずはテント場から飛騨乗越まで下り、最初のピーク大喰岳へ。
山頂標識は道から外れた所にあるので通り過ぎてしまいがちですが、ここから見える槍ヶ岳も素敵なのでぜひ登ってみることをおススメします。
大喰岳〜中岳は梯子があったり石がゴロゴロとしていたり、結構歩きづらい道です。
遠くから見ると、この辺りから南岳まで気持ちの良い稜線ですが、実際は結構アップダウンがあり南岳小屋まで遠く感じました。
南岳小屋でトイレ休憩&軽食を取り、いよいよ大キレットへ。
小屋からは少し登りの後に、急激な下りが始まります。
苦手な岩場の下りですが、梯子と鎖を使って慎重に降りて行きました。
正直、大キレットを歩いている間のことはよく覚えていないというか、目の前の道に集中していたので不思議と怖くはありませんでした。
幸い道も混んでいなかったので、ゆっくり落ち着いて自分のペースで歩けたのも良かったのかもしれません。
集中しすぎて長谷川ピークを見逃し、A沢のコルでホッと一息、さらに飛騨泣きを慎重に通過。
いよいよ目の前に聳える北穂高岳への登りが始まります。
しばらく登ると「北ホ200m」のペンキがあり、「でもここからが長いんだろうな〜」と思いつつ鎖と梯子を登っていきます。
結構な傾斜なので、登りはともかく下りは怖そうだなと思いました。
さすがに息が切れましたが、なんとか北穂小屋へ到着。
ここで楽しみにしていた昼食(トマトパスタと北穂カレー)を食べ、有名な日本一高いテラスで絶景を楽しみました。
遠くの山から見て「すごい所に建っているなぁ。」と思っていた北穂小屋。
まさか自分が、大キレットを通ってそこへやって来るとは思いもよりませんでした。
達成感ももちろんありましたが、これから奥穂方面へ向かうにはもう一つの難所涸沢岳を越えなければならないので、緊張感がさらに高まりました。
北穂山頂で記念写真を撮って涸沢岳へ。
ここは色々な方のレコで「大キレットより難しい」と書かれていたルートですが、ここまでと同様にゆっくり慎重に歩けば問題ありませんでした。
ただ、鎖を使ってトラバースする所の足場が狭かったり、ザックが引っかかりそうな岩が道に出ていたり、今までとは比べ物にならない長い鎖があったりと気の抜けない道が続きます。
最低コルに着くと、先に下りていたkenboさんが奥穂方面から来た方と話していて、「西穂で滑落があったって。100mくらい落ちたそうだから助からないかも。」と。
この涸沢岳付近も、先月滑落死亡事故のあった場所・・・他人事ではありません。
一層気を引き締めて、最後の涸沢岳への登りへ向かいます。
もうこの頃にはさすがに疲れてきて、なかなか思うように足が上がりません。
それでもここを登り切れば、後は穂高岳山荘まではゆるやかな下り・・・歯を食いしばってなんとか鎖と梯子登り、最後の岩場を越え稜線に出ました。
涸沢岳の山頂に立つと、やっと緊張感から開放されて「やったー!」と思わずガッツポーズ。
同時に「大キレットをクリアしたんだ・・・」と実感が湧いてきました。
いつもはクールなkenboさんも、今まで歩いてきた道を眺め感無量のようでした。
山頂でお馴染みの記念写真を撮った後は、今までとは打って変わって緩やかな道を下り穂高岳山荘へ。
テントを設営して、晩御飯は豪華に山荘で食べることにしました。
穂高岳山荘は結構な混雑ぶり。
夕食を待つ間、小屋の中の休憩所で休もうと思っていたら「あれ!pi-tiさんだ!」と叫ぶkenboさん。
なんとそこには、八峰キレットで同室になったヤマレコユーザーのpi-tiさんと山友さんがいらっしゃいました。
聞くとpi-tiさん達はジャンダルムを越えて来たとか・・・すごい偶然にビックリです!
お互い「何でここにいるの?!」と驚きながら、今回の山行を報告。
さらにお二人には、今回登ったジャンダルムや色々な山のお話を伺うことが出来ました。
私たちとはまた違ったスタイルの山登りをされているので、色々刺激になって楽しかった〜♪
時間がたつのも忘れて、たくさんお話させて頂きました。pi-tiさん、山友さん、ありがとうございました!
9/13
最終日。
この日は奥穂〜吊り尾根〜前穂〜岳沢〜上高地と下る予定でしたが、朝からテントが歪むほどの強い風。
雨は降っていませんでしたが、真っ白にガスっていて強風・・・
このまま予定通りに吊り尾根から前穂へ行こうか、安全を取って涸沢に下ろうか。
結局、奥穂山頂まで行ってみて決めることにしました。
山荘を出発してすぐの鎖と梯子は、湿った霧のおかげで濡れています。
ここを滑らないように気をつけて登り稜線へ出ると、立っていられない程の風が襲ってきました。
身体が飛ばされないように踏ん張りながら登っているので、何でもない登りに息が切れます。
すると前を歩いていたkenboさんが突然立ち止まり、「鼻血が出た・・・」と一言。
風も強く危険だし、kenboさんも流血で大惨事だし、ここは大人しく涸沢から下ろうということになりました。
とりあえずkenboさんの鼻にティッシュを詰めて、奥穂の山頂だけ行って引き返すことに。
他に一緒に登っていたグループも、山頂まで行って引き返すとのことでした。
真っ白で何も見えない山頂。2年越しの奥穂高岳登頂の喜びをかみ締める間もなく、急いで写真を撮って下山します。
強風に耐えながら滑りやすい道を下って、穂高岳山荘の赤い屋根が見えた時はホッしました。
その後は山荘で冷えた体を温めてから、ザイテングラートを下って涸沢へ。
ヒュッテへ着く頃には風も収まり、結構良いペースで歩くことが出来ました。
ところが横尾からバスターミナルまでの平坦で長い長い道にうんざり。
途中、徳澤園で野沢菜チャーハンとソフトクリームを食べてちょっと復活しましたが、正直もうこの道は歩きたくない・・・
もし、今回断念した前穂に次回登ることがあったら、下山は重太郎新道か白出沢にしようと心に誓ったのでした。
今回大キレットを歩いてみて、大変だったけれど達成感は今までで一番ありました。
緊張感の連続の中、涸沢岳に着いた時の安堵感と湧き上がる喜びは、今までの山登りの中では無かったものだと思います。
一人では絶対に行くことはなかった大キレット。いつも一緒に登ってくれるkenboさんに引っ張られて、なんとかクリア出来ました。
これ以上危険な場所に行くことはないと思いますが(ジャンダルムなんてもってのほか!)、これからも安全に楽しく山登りを続けていけたらいいなと思います。
無事帰って来ることが出来たことに感謝!
昨年、槍ヶ岳、北穂高岳と奥穂高岳に登った際に、来年は3大キレットのどれかを歩いてみたいと思いました。しかし、岩稜帯の経験が乏しいことを同時に痛感していたので、達成できるのかどうかは微妙でした。
今年になって、入門編として小屋泊装備で臨んだ八峰キレットは、特に問題なし。間に剱岳を挟んで、テント泊装備で臨んだ不帰キレットも特に問題なし。これなら、もしかしたら大キレットに挑戦できるのでは?
ちょうど、いつも一緒に登っていただいているkazuruさんが、一昨年に断念した奥穂高岳に今年こそは登ってみたいと仰る。私は前穂高岳に登ったことがないので、重太郎新道を登って吊尾根経由で奥穂高岳に登る案を提示すると「なんでザイテングラートじゃないんだよー」と反対されていました。
しかし、2つのキレットと剱岳をクリアできたからか、kazuruさんの心境に変化があったようで、槍ヶ岳から大キレットを超えて奥穂高岳を目指し、重太郎新道で下山することを提案すると、すんなりとOKが出ました。
あとはいつ実施するか。2泊3日を予定して、メインとなる中日とその前後のどちらかが晴れであることが望ましい。台風の影響が気になりましたが、1、2日目は晴れ、3日目に午後から天気が崩れる予報であったこともあり、この度実施することになりました。
9/11
ちょっとしたトラブルがあり、自宅を出発するのが遅くなりましたが、沢渡の駐車場に到着すると平日にも拘らず比較的多くの方が準備をしており、運良くすぐにタクシーの相乗りで上高地に到着することができました。
今日は危険箇所がないものの、長丁場となるルート。懸案事項は、槍ヶ岳山荘のテント場が埋まる前に到着することができるかどうか。平日だから大丈夫だと思うけれど…。もし埋まってしまって殺生ヒュッテまで下りることになれば、槍ヶ岳山荘に素泊まりか南岳小屋まで進むことにして出発です。
横尾まではハイキング気分で進みます。徳沢ロッヂと横尾山荘は工事中でした。途中で猿の群れとすれ違いましたが、人間の真横を逃げることなく平気で通過するので、慣れているなぁと妙に感心してしまいました。
前日の夕食が遅かったこともあり、朝食を抜いていたため、槍沢ロッヂで休憩がてら軽食をとりました。ここまでは予定通り。ここから先、徐々に傾斜がきつくなっていくけれど、kazuruさんは大丈夫かな?
ババ平も工事中で、河原の方に臨時キャンプ場が開設されているようでした。ちょうど一年前、槍ヶ岳からの下山時に苦労した大曲から先の雪渓はなくなっていて一安心。天狗原分岐でお昼になったので、昼食にしました。
ここから南岳に登れば、明日の行程が楽になる…。そんな誘惑に駆られそうですが、槍ヶ岳はkazuruさんが「憧れの山」としている山。せっかくだから登らせてあげたい。また、登ることで、昨年よりもどの程度レベルアップしたかどうかを判断することができる。頑張って登りましょう。
漸く槍ヶ岳が視界に入ってきた頃に、ガスが湧いてきてしまって、槍ヶ岳が見えたり隠れたり。「登頂時にはガスが切れていてくれるといいですね」と話しながら、かつペースダウンしているkazuruさんを励ましながら進みます。
殺生ヒュッテはスルーして、最後の登りに入ります。周りの登山者の多くが疲れ切って座り込んでいる中、一定のペースで登り続けて槍ヶ岳山荘に到着。スタート時に、15:30頃には到着できるかな?と考えていたので、早めに到着できて良かったです。
早速テント場の受付をすると「今日は場所を指定しません。テントを設営してから、設営場所をお知らせください」と言われ、テント場に向かいます。テント場は木の枠でスペースが区切られており、お隣とくっつくことはありませんが、意外と狭い。
私の2人用テントのスペースを確保することができ、かつ平らな場所で残っている場所は、南岳方面に少し下った、山荘からは遠くなってしまう場所でした。近くで休憩していた男性が「設営数を増やすためにひとつのスペースが以前よりも狭くなって、大きいテントを設営することができる場所が減った」と仰っていました。
今日のように場所を指定されない場合、2〜3人用や3〜4人用テントが設営できる場所にソロテントを設営される方がいるので、注意が必要です。早い者勝ちではありますが。
テントを設営し、いざ槍ヶ岳へ…と思っても、ガスで真っ白。下山してきた方は「真っ白で何も見えなかった」と残念そう。しばらく山荘で様子を見ていると、ガスが切れて晴れ間が見えてきたので、慌てて登りました。山頂はガラガラで、360度のパノラマをのんびりと楽しむことができました。
大きなブロッケン現象の輪も見ることができて大満足。昨年私が登った際、山荘付近から並んで戻るまでに4時間かかり、しかも山頂では真っ白で何も見えなかったのは何だったのでしょう?
下りでは、kazuruさんが意識的に後ろ向きで下りていて、下山後も「昨年より楽だった」と仰り、私も同じだったので、お互いに少しは成長したようでした。
明日が本番。この時点では、2つのキレット挑戦時よりも緊張していました。
9/12
風の音で何度か目が覚めました。3,000m級のテント場は、さすがに風が強いなぁ。
明け方は寒く、ダウンを着たままテントを撤収。風は少し強いけれど夜ほど吹いておらず、歩いていれば涼しいくらいの感じでした。昨日の緊張感はありませんでした。
まずは大喰岳に向かいます。テント場から飛騨乗越まで下り、そこから登り返します。テント場からは結構な登りのように見えましたが、実際は大したことはありませんでした。大喰岳の山頂標識は少し左側にあるので、ガス等で真っ白な時には気が付かないで通過してしまうかもしれません。
大喰岳からは一旦下りとなり、鞍部に出てから再度登り返します。最後は2段の梯子が出てきて、これを登って中岳の山頂に到着。中岳山頂からは、以前は別の道があったようですが、標識に従って下ります(2001年開通新コースと書いてあります)。
石でゴロゴロした道を下るとなだらかな道となり、天狗原分岐を通過して南岳山頂に到着。すぐ下に見える南岳小屋まで下ります。この辺りから正面に北穂高岳が姿を現し、さらに大キレットの稜線がその全貌を見せてきます。
南岳小屋でトイレを借ります。トイレの入口には「生きて帰れよ」と書かれた材木が置かれてあり、嫌でも緊張感を高めてくれました。
南岳小屋から少し登ると、「←大キレット」の標識がありました。いよいよか…。ここから約180mを急降下していきます。鎖と梯子があるので、そんなに難しい下りではありませんでした。ちょうど朝一で北穂高小屋を出発してきた方とすれ違いが始まり、譲り合って下りました。kazuruさんも、不帰キレットの時とは違い、きちんと自分で足の置き場所を判断していて、昨日の槍ヶ岳の下りで練習していたことがわかりました。下り終えて振り返ると、南岳の岩峰がデーンとしていて、一気に下ったことを実感しました。
これからしばらくは、比較的安定した道を小さなアップダウンを繰り返しながら、少しずつ下っていきます。核心部その1長谷川ピークが徐々に近づいてきて、どうやって登るのだろう?と少し不安になります。しかし、ペンキマークが頻繁につけられているので、迷うようなことはなく、急登を超えると痩せた岩稜線の上を通過となり(ここが長谷川ピークであったことはあとで気が付きました)、これまで以上に慎重に進みました。
鎖を頼りにバランスを失わないように進み、一度信州側に寄って、その次に稜線を右側に越えて下る際に足の置き場がわからず、下が安定していたので懸垂のように両腕で支えながら下りました。kazuruさんには無理かな?と思い、逆側を確かめるとこちらから下った(登った?)跡があり、左側を指示。すると、kazuruさんの足が届かず宙吊りのような形となってしまい、不安定な体制で上へ戻ることができなくなってしまったkazuruさんのザックを支えてこちら側に引っ張り、何とかクリア。一歩間違えればとんでもないことになっていたと思うと、反省だけでは済まされません。先行するからには、さらに気を引き締めて進むことを決意しました。
面倒なのはここだけで、あとは岩に取り付けられたステップを通過して、最後は角材で作られた道を渡ってA沢のコルに到着。ん?A沢のコル??長谷川ピークはどこだったの???
ここで休憩していた男性(東京から来られて、昨日から見かけてはいて、南岳小屋、長谷川ピークでお話し、この後上高地まで何度もお話をさせていただきました)に尋ねると「もう通過していますよ」と仰る。あれ?よく見る岩に書かれた「Hピーク」は見なかったような…。「ペンキマーク通りに進むと通過してしまう、少し上の方にありました。ヤマレコでも、結構見逃している人がいるようですよ」とのこと。あぁ…やってしまった。
唯一の休憩ポイントと言えるA沢のコルで少し休憩して、核心部その2の飛騨泣きを目指します。登りながら進むと、よく見る両側が切れ落ちている岩にステップが設置されています。おぉ、ここが飛騨泣きか。でも、このステップのおかげで、太い鎖を頼りに進めば難しくはなく、長谷川ピークの方がいやらしく感じました。ここを超えれば、大キレットの核心部は終了。
あとは、徐々に登るとすぐに「北ホあと200m」と書かれたところがあり、残り標高200m分を登れば北穂高小屋。見た目は急傾斜ですが、梯子、鎖、お助けボルトがあるので、登りは特に危険ではなく(下りなら話は別です)、北穂高小屋に到着しました。
ここで昼食。山小屋では珍しいとされるスパゲッティを注文してみました。テラスから景色を眺め、大キレットを無事に通過することができた余韻に浸りながらの食事。昨年、苦労して涸沢から登った時よりも、達成感がありました。
食事を終え、北穂高岳山頂で写真を撮ったりしながら、今日の目的地である穂高岳山荘を目指します。奥穂高岳やジャンダルムに人影が見えました。
ここから涸沢岳までの方が大キレットよりも危険、という情報がありますが、果たしてどうなのか?涸沢との分岐で、涸沢から軽荷で登ってきた方に話しかけられました。「凄い荷物ですね」「テント泊ですから」「じゃあ、進む方面はあちらですね」と笑いながら奥穂高方面を指差しました。「はい」と進むと「えぇっ!?」と驚かれていました。
少し登り、鎖を下ります。ここで、kazuruさんが下ってくるまで、下で待ってくれていた男性とお話しました。この男性、今日は新穂高から登ってきて、南岳小屋まで行くとのこと。今回もスーパーな方がいらっしゃいました。また、「今日、西穂で滑落事故がありました。100m位滑落したから多分助からないと思います。お互い気を付けましょう」と言われ、今一度気を引き締め直します。
特に問題なくアップダウンを繰り返して最低コルまで到着。ここから少し下ると、いよいよ本日最後の踏ん張りどころである、涸沢槍の登りとなります。kazuruさんが「足がだるい。もう登りは嫌だ」と弱音を吐きますが、懸命に励ましながらかなりの傾斜を鎖と梯子で登り、最後はV字に割れたような岩を越えて、涸沢岳の稜線に出ました。ここからは、これまでの道とは一変して穏やかな道となり、一安心。涸沢岳の山頂を巻く道がありますが、もちろん涸沢岳山頂に立ち寄りました。
涸沢岳山頂で、これまでの長かった道のりを振り返り、登山2年目で3大キレットをクリアできたことに感無量。言葉が出ないほど嬉しかったです。4年目のkazuruさんも喜びを爆発させていました。昨年、小屋泊装備なのに疲れた顔をした方々が「槍ヶ岳から大キレットを超えてきましたー」とこの涸沢岳でハイタッチをしていたのを思い出し、なるほどな…と理解できました。
穂高岳山荘までのんびり下り、テントを設営します。受付がなかなかできないほどの混雑ぶりでした。校友の今田さんに貢献とばかりに夕食を付けて、テントを設営してお疲れさま会。売店でビールとコーラを買う際に、今田さんとお話しました。昨年に私が訪れた際に、忙しい中無理なお願いをしたことを覚えていたようで、嬉しかったです。
テラスで涸沢を眺めながらのお疲れさま会を終了し、食事まで山荘の中で待つことにしようと中に入ると、あれ?見たことがある顏が…。ヤマレコユーザーで、八峰キレットで知り合ったpi-tiさんでした。えぇ?どうしてここにいるの?確か、次回はジャンダルムに行くと言っていた…。おぉ、もしかしてジャンダルムを超えてきたのか?
声をかけるとやはりご本人で、お互いビックリ!夕食まで話は弾み(pi-tiさんは2順目、私たちは3順目でした)、夕食後も20;00頃までお話していました。
夕食は私にとって3回目の小屋の食事の中で一番豪華でした。当然モリモリ食べ、ご飯をおかわりしまくると、隣にいた韓国人パーティーのリーダーの方から「よく食べるね」と笑われてしまいました。
明日の天気予報を確認すると、下り坂。お昼まで雨が降らなければ重太郎新道で岳沢小屋までは行けそう。朝から雨なら、ザイテングラートで下山することにしました。
9/13
23:00過ぎに目が覚めました。今までに経験したことがないもの凄い風が飛騨側から吹き、テントポールがギシギシと音を立て、インナーテントが歪みます。前日の反省を踏まえ、張り網をいつも以上にしっかりと固定しておいたのに、それでもこれか…。初めて山荘への緊急避難を考えました。
結局、テントの破損の恐怖に怯えて殆ど眠ることができず、風が弱まることなく起床予定の3:30を迎えてしまいました。この風で雨が降られたらテントの撤収に手間どることは確実なので、早めに食事を済ませて荷物を整理し、まだ暗いけれどテントを撤収。
山荘に向かうと、皆さん「どうしようか?」と検討しています。それでも北穂高岳方面に進む方が多数いてビックリ。この風であの道は歩きたくないなぁ。奥穂高岳方面にも進む方がいました。
トイレ等を済ませているうちに明るくなってきて、山荘の自炊場で食事中のpi-tiさんが見えたので、今日の予定(予定を変更した場合の下山ルートも)を確認し、お互いに無事に下山することを誓ってお別れしました。
多くの方が涸沢へ下山を開始していて、ザイテングラートは確実に渋滞しているはず。渋滞は嫌だな…どうしよう?とりあえず、kazuruさんが初めてで2年越しの目標であった奥穂高岳まで行ってみて、そこで判断しよう。奥穂高岳までなら簡単に到着できるし。
山荘を出発してすぐの鎖と梯子はもちろん、岩も霧で濡れて水滴が垂れています。ここを超えて稜線に出ると、やはり強風との闘いとなります。テント泊装備なのに、油断すると身体が持っていかれるレベルでした。おまけに、霧で顔が濡れて、体温が奪われます。調子が上がらないkazuruさんを確認しながら進むと、私の鼻をツッーと伝うものが…。鼻血でした。
風で勢いよく血液が飛ばされていき、周囲はちょっとした流血事件の現場のような感じに。なかなか止まらず、立ち止まり続けると身体が冷えるのでティッシュで鼻栓をしながら進むことにします。すれ違う方たちに確認するとやはり先に進むのを諦めたようで、ここで、きっぱりと涸沢経由での下山を決断しました。
ほぼ同時に歩いていたパーティーも重太郎新道経由で下山する予定を涸沢経由に変更。この方たちと奥穂高岳で写真を撮り合いました。
本当は馬の背付近まで偵察することを考えていましたが、それどころではなく、とっとと山荘に戻ります。山荘で温かい飲み物を注文して身体を温め、下山開始。もうザイテングラートの渋滞は解消されていました。標高が下がるにつれて風と霧が治まり歩きやすくなります。途中ですれ違う方に、上の状況を伝えながら涸沢に到着。
心配していた雨は、横尾辺りでパラパラきたもののすぐに上がりました。また鼻血が出てきたので鼻栓をしながら進み、徳澤園ではお約束の野沢菜チャーハンとソフトクリームを注文。黙々と歩いて上高地に到着したのでした。
吊尾根、前穂高岳、重太郎新道を諦めることとなり、若干消化不良ではありますが、槍ヶ岳〜奥穂高岳を歩き切ることができ、kazuruさんの目標も達成できて良かったです。私のような登山2年目の初級者であっても、決して慢心しなければ3大キレットをクリアできると思います。
予報で〜す。
わたしも、裏銀座から穂高まで、のんびりと、
グルグルっと、したいと思いまーす。
穂高岳山荘は、わたしも好印象だったです。
きほん、テンコ盛りで3杯は、どこでも要求しまーす。
こんばんは。
コメントありがとうございます。
山ではお腹が空きますよね。
テンコ盛り3杯で笑われてしまいました。
連休は晴れると良いですね。
kenboさん、kazuruさん こんにちは。
お疲れ様でした。
お二人に偶然お会いできとっても楽しい時間を過ごせました。
実は、布団1枚に2人 おまけに使い勝手の悪い下段となり 気分が滅入っていたところだったんです。
初日、西穂は雨だったのに 槍が晴れていたと聞いて疑問でしたが、画像を見てわかりました。標高が全然違いますものね。そちらは雨雲の上になっていたんですね
たくさんお話をしてkenboさんとkazuruさんの登山スタイルを知り すごいなって思いました。 女性がソロでテン泊なんて、kazuruさん カッコイイ!!
2人の出会いも素敵ですね。
これからも お2人そろって ガンガン攻めて下さいね。
あの鼻血ってなんだったんでしょう? 普段は大丈夫ですか? お大事にして下さいね。
追伸
SWに大キレットの予定でしたが、すごい人出でテン場も危なく小屋なら布団1枚に
3〜4人(耐えられましぇん )ということだったので、白峰三山にいきました。
奥武蔵縦走のヤマレコ、楽しみに待ってます。
pi-tiさん、こんにちは!
穂高岳山荘では、とっても楽しいひとときをありがとうございました♪
kenboさんは、かなりpi-tiさん達のお話に刺激を受けていたようですよ〜
来年目指して頑張るそうです。
私は基本つらいことはイヤなので、そろそろのんびり登山モードに切り替えたいです(笑)
奥秩父主脈縦走は、正直3泊4日ではキツかったです…
白峰三山は私たちも行きたかったのですが、日程が取れず来年に持ち越しになりました。
なので、pi-tiさんのレコ楽しみです♪
ぜひぜひ来年参考にさせていただきますね!
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