大雪山十勝連峰縦走
- GPS
- 272:00
- 距離
- 77.8km
- 登り
- 5,610m
- 下り
- 6,293m
天候 | 詳細後述 バカみたいに強い低気圧や寒気は来なかったが、この時期この山域のデフォルトみたいな爆風視界ほぼなしの天気が10日間。最終日だけ晴れ。 |
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過去天気図(気象庁) | 2024年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
その他周辺情報 | 万華の湯 中富良野 ジャスミンガーデン 旭川神居 |
写真
装備
備考 | 食料: 主食:カレーメシ1.5個で1食分、気持ち程度の乾物(わかめ、切干大根、春雨)、出涸らしの茶っぱ。 行動食:ビスケット120g、オレオ2枚、飴4つ、チョコ2つ、レーズン少々、ピーナッツ少々。 茶セット:茶っぱ1つ、砂糖50gマリーム20gで1日。 その他:プロテイン1日30g←効いているのか不明。 よかった装備 ・アルパインクライマーソックス(ノースフェイス、これ1枚で十分、それでも凍傷ぽくはなった) ・ニトリル手袋(ワークマン、0.28mm厚、11日間破けず) ・ティースプーン(大きいのである必要なし) ・吉村昭 漂流(新潮文庫、吉村作品は淡々としていて捗る) ずっと使ってきた装備が結構限界を迎えつつある。シュラフ、シュラフカバーは8年戦士で特にひどい。 |
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感想
去年は黒岳スタートでトムラウシ下山に終わった。今年は日数を12日持って旭岳から再挑戦。
毎度おなじみとなった道東道無料区間から大雪湖、層雲峡を通って脊梁山脈を西へ回り込む。あと何回これやるの?東神楽で前泊、あったかいの一言に尽きる。
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Day1(12/28) 旭岳温泉(9:00)旭岳(12:30)白雲岳(15:15)白雲小屋(15:50)=C1
ガス、強風 冬型
旭川の同期の家に車を置かせてもらう。旭川駅からバスで登山口へ。圧雪されつつあるスキーコースを歩く。バス内もスキーコースも外国人スノーボーダーばかり。猛烈に静かな日高に帰りたくなる。石室からすぐのところで視界50m、最後のスキーヤー二人を抜いてようやく一人に。風もあり定石ならなら石室まで戻ってC1なのだろうが、それで進むような山域ではない。「動けるときに少しでも進める」これが重要だと去年学んだ。小屋までが無理でも強いイグルーさえ掘れれば一人なら耐えられる。仕事も山も、ことなかれ主義、前例踏襲では進歩がない。思い切って旭岳をのっこす。しかし間宮分岐まで白くて視界なく少し不安になる。北海岳以降は上空のガスが少し抜けて時折200位見える。夏道だけ白いので100もあれば十分進める。この状況で白雲岳をスルーするのは納得がいかないのでしっかり踏む。夕暮れ迫るころに小屋に到着。二階の扉の閉めが甘く、雪が吹き込んでいる。
今年は指がつっても笑いあう相棒がいなくてさみしい。まあ、こうしてうだうだと己と向き合う山も好きだから仕方がないのだが。夜、なぜか額に液体が垂れていることに気づく。耳が凍傷をおこしてただれて?いるものだった。耳の厚さが3倍くらいになっている。そんなにヤバさを感じていなかったので、なぜ?という感じ。本当ならすぐに下山すべきなのかもしれないが、下山する気にはならない。もうこれでこんな山やめちまえればいいんだ、となげやりというか清々した気持ち。
Day2(12/29) C1=C2 停滞
雪、爆風 冬型
冬の大雪のデフォルトという感じ。視界50ないくらい。小屋の中にいると風の音が大きく聞こえるが、本来ならこのくらいで動けなければいけないのだろう。FMノースウェーブのSapporo Hot 100年末版を聞いて過ごす。
Day3(12/30) C2(11:40)忠別岳(14:30)忠別岳避難小屋(15:30)=C3
爆風のち強風 大陸と日本海にL
年末の買い物に良い日より、らしいがビュービュー。昼前からビューくらいになったので、できればヒサゴ沼避難小屋までのつもりで出る。低気圧接近のためか寒くはない。ずっと視界50、時折200、風はお察しという感じ。なんだかよくわからないまま忠別岳。小屋への分岐看板に心を折られ、行動終了。あと2時間あったらヒサゴ沼まで行けたが、こういう「ギリ動ける日」を逃さず少しづつでも進むことが重要。小屋の中で思っているよりも意外と風もひどくないのではないか。いずれにせよ、小屋でじっとしているよりは吹雪かれながら歩いているほうが楽だ。夜、寂しくて眠れない。心が壊れる音がする。
Day4(12/31) C3(6:00)ヒサゴ沼避難小屋(8:45)=C4
雪、無風 Lが津軽海峡を通過
のぺっと五色岳まで登り、次の大きいポコの手前からコンパス切ってヒサゴ沼まで。風雪強まるまでは進もうと小屋を通り過ぎるも、やっぱり視界50以下でトムラのっこしは怖い。それに低気圧や強い冬型を三川台周辺のヤバい所のイグルーで迎え撃つ気にはなれないので小屋へ逃げ込む。ひとまず明日までは停滞しようと決める。
午後はラジオを聞いて本を読んで過ごす。大竹しのぶはリスナーからの便りに何でもかんでも「ウッソー!」「スゴーイ!」である。田村隆一「ぼくの性的経験」を読了。俺もマゾだから将来スワッピングに興味を持つのだろうかと不安になる。
結局風はそんなに強くならなかった。視界さえあれば、もしくはほかの区間だったらというところ。
昨年は二人で過ごした小屋に一人。かなりメンタルに来る。もうこんな山辞めて、年末も週末も人と過ごしたい。ただ、オモロイ奴らとオモロイ、ちょっとハードでムズいことをするためには、こういう苦労も必要なわけで。うまく人と付き合えると、そんな辛い山じゃなくてもそれなりの週末で満足できるから、週末アウトドアおじさん(家庭持ち)が大勢いるわけか。だいたいわかったぞ。そんなんになりたくない。でも、やっぱりもう本当にこれでお終いにしようと思う。
Day5(1/1) C4(10:00)トムラウシ(11:50)三川台(13:45)ツリガネ手前ポコ(15:10)=Ω5
雪のち一時ガス切れるのち雪 緩めの冬型
9:20にようやく起きると、なんと!晴れ。冬型が決まるんじゃなかったのか。爆速で支度して出発。勢いよく飛び出すも、ヒサゴ沼から一段上がると、はい残念、視界50以下。なじゃこりゃ。それでも風は弱いので進める。昨年同様北側からスノーシューのままトムラへ。岩陰に人がいてびっくりする。トムラウシ温泉から黄金が原のほうに行くそう。なかなかニッチな山行だ。視界50のままコンパス見ながら三川台への斜面およびその降り口へ。一人に戻ると急にさきほど久しぶりに人としゃべって饒舌になっていた自分が恥ずかしい。降り口の一番視界欲しいところで少しガスが晴れた。ツリガネ手前のポコでイグルー作成1時間。3日ぶりにFMが入って嬉しい。なかなか丸一日素直に動ける日がなく、不安定な感じは否めないが、前半戦終了。あと行動3日とちょっとくらい。何とかなる、か?
Day6(1/2) Ω5(5:30)↩ツリガネ山At(6:00)コスマヌプリ(8:30)オプタテシケ山(13:40)オプタテ南東Co1800付近(14:30)=∩6
雪、強風 緩めの冬型
視界ないが朝のうちは風もないのでとりあえず出る。繰り返しだが、激ヤバじゃない日に自信もって思い切って出ることが重要。本当に。終わってから後悔したくないのでツリガネを踏みにラテルネ行動30分。そしてコスマへ。昨夜からの雪なのか、傾斜のない所や吹き溜まる所は新雪モッサ。ひどい所だと腿ラッセル。今日も今日とて視界50前後。コスマの前後はモロにラッセルでしんどい。オプタテ北東コルへの下りもラッセルとハイマツ踏み抜きで不快調で心も萎える。ただ、オプタテの登りになると、傾斜方位によるのか、締まっていて踏み抜きなし。ひたすら脛ラッセル。単純でめちゃくちゃ気持ちいいシンドさ。求めていたものがここにあった。頂稜に出ると視界5m。近いのか遠いのかわからない雪庇らしきものを踏み抜かないように慎重に。とにかく白くて距離感がつかめない。わけのわからないままオプタテピーク。ここから風雪強まる。なんとかCo1800くらいまで降るも、尾根が広がったところでブッシュも岩も何も見えず完全にホワイトアウト、風も強くいわゆるビンビラビンというやつ。時間的にも何か問題が起こるとヤバいので行動終了とする。傾斜のない所だったので、雪洞にしたが埋まりそうで怖い。まあ一晩なら大丈夫か?
Day7(1/3) ∩6(13:30)美瑛富士避難小屋(15:30)=C7
雪、強風 冬型
足先が冷たすぎて全然寝れず2時起床。天井がめちゃめちゃ下がっていて入口も完全に埋まっている。頭上を70cmくらい堀り上げて脱出口を作る。しかし、ガスガスビュービューで視界ゼロ。10時くらいまで雪洞リノベーションで体を動かしつつ時間まち。昼にはよくなるだろう、とシュラフに潜るもビショビショで全く暖かくない。寒すぎてずっと肩をあげているので肩が凝る。割と身のキケンを感じるレベルで体力が吸われていくのを感じる。頼むから小屋までの2時間動ける視界をくれ。マジで極い。
昼過ぎても依然として吹雪、気になる風。タイムリミットの13:30に耐え切れず出る。わけがわからないが雰囲気で進むしかない。歩いていると視界0mと10mが交互に訪れる。たぶん、尾根のてっぺんからほんの10mずれただけで視界10mが視界0mになるのだろう。尾根のクラストしているところは多少陰影のようのものがあるのでいくらかマシ。ベベツから石垣への下りが過去一番の風雪。西からの強い吹雪に顔をそむけるので、どうしても進みたい南西よりも南によってしまい、何度も尾根を外しそうになる。すると吹き溜まりにはまって腰まで埋まる。さらに時折体を30°くらい傾けないと進まない風。やはり記録通りここが鬼門か。右頬逝く。20mの距離まで来てようやく小屋の存在を認める。小屋に入っても何から始めたらいいんだっけ、としばらくボーっとしてしまう。恐ろしった。ビショビショのシュラフで−20℃以下で寝れるはずがない。
Day8(1/4) C7=C8 停滞
雪、強風 冬型、寒気
ひたすら寒い。外の様子を見に扉を開けるのも億劫。開けた途端、猛烈な雪煙に巻かれて顔面びしょ濡れ。萎える。小屋内張ったテント内に逃げ込む。固まって剥がれてきた耳の皮をぺりぺり向いてラジオを聞き、ひたすら寒さに耐える。寒すぎて本を読む気にもならず、ただ一日が過ぎていく。下界に降りたらこれまでより一日を大切にしようと思う。この気持ちを忘れたくない。夜から今回の山行中一番の強風。寒くて大して寝られない。シュラフに温められているのか、俺がシュラフを温めているのか。熱とかカロリーの意味を考えさせられる。
Day9(1/5) C8=C9 停滞
雪、爆風 西日本にL接近
Lの接近により風雪は一時小康状態に、という予報だがそれは平地の話。昨夜から引き続きゴーゴー。明日もう1停滞して7日勝負、8日朝早くに逃げ切る感じになりそう。7もそんなに良くないのであれば白金温泉にエスケープである。電池残量が不安なので、節電してラジオなし。吉村昭「漂流」を読む。孤島に12年の彼に比べれば、と元気をもらう?夜から風が収まり、全然だめだと思っていた明日への期待も少し沸く。
Day10(1/6) C9(7:00)美瑛富士(7:45)美瑛岳(9:10)十勝岳(12:10)上ホロ避難小屋(13:00)=C10
雪、強風時折爆風 南岸Lと日本海に弱いL発生
視界2,30mだが風弱いのでとりあえず美瑛富士へ。登るにつれて風が強まる。もうこれで十分、ピークで引き返して下山しよう、と思う。しかし、すんなりそんな判断ができる人間でないのは自分が一番知っている。もっとひどい条件でこれまで歩いてきたわけであるし、途中下山する決定的な理由がない。美瑛へと脚を向ける。と、その登りで突然左足のスノーシューが壊れる。しばし目を疑う。幸い少なくともこの先上ホロ避難小屋までは堅そうなので、アイゼンに履き替えて山行を続けることにする。美瑛は頂上付近で美瑛谷からの吹上げが猛烈。ピークを踏み、十勝へ。右手に谷を感じながらコンパス見つつ歩く。頂上手前の台地から頂上までは爆風を超える風。立っているのがやっと、という時間もあった。ピークからの下りは広めで、本来ならかなり難しいナビゲーションになるのだろうが、夏道の杭が出ているので思考停止してそれを追うだけ。大雪十勝にはいまさらだが、こういうののやりすぎは知恵を使った山をできなくさせるのでほどほどにしてほしい。上ホロ避難小屋に13時着。明日すぐにでも人に会いたいので、もう3時間くらい進めようかとも思ったが、小屋が結構快適そうなのと、スノーシューの修理もあるので行動終了。ストックに巻いていた針金が初めて役に立った。やはり基本は大切。そしてあろうことかストーブ(ドラゴンフライ)から灯油が出ず火がつかない。メタで芯の残ったヌルいカレーメシと水を作る。灯油はいっぱいあるのにみじめ。俺も装備も満身創痍。というか明日が最終日でよかった。
今日の美瑛富士の乗越について。のっこさずにそのまま下山しても後悔の類は全くなかったと思う。ただ、のこっせた後だからそりゃあまあよかった、と思うだけで。別にもう十分だった。「全山」なんてそんなの本当にどうだっていい。無価値だ。
Day11(1/7)C10(6:30)上ホロ(6:45)富良野岳(9:00)前富良野岳(11:00)富良野旭岳(12:00)原始ヶ原登山口(16:10)
無風快晴→雪 釧路沖にL
薄暗い時間に外に出るも視界100m、良い予報だったのにあれ?と思いつつ歩き出す。カミホロ、上富と踏み、三峰とのコルへの降り口で突如ガスが晴れ出し朝焼けが始まる。11日目にして初めての太陽と青空に、喜びを超越し、ゾクッと寒気がした。パシャパシャ写真撮りながら三峰、富良野へ。三峰ピークから先でズボりだしたのでスノーシューにする。ずっと晴れ。名前の付いたピークには立たなければならない宗教なので、前富良野、富良野旭岳へ。富良野からのコンタ差500の下りは膝と太ももにくるし、スノーシュー履いてても結構ハイマツにズボって不快超。さらにコル周辺は膝ラッセルでしんどい。前富良野からは芦別方面への抜群の展望。富良野旭岳への稜線はやや細いが見た目だけ。このピークからは大雪山旭岳から富良野岳まで、歩いてきた全てが見える。蛇足的ピークかと思っていたが、晴れているといい展望台になる。ずっと爆風とガスのなかほとんど無展望の過去10日間、もはや自分はこれらの山を本当に歩いたのか。夢と言われればそんな気もする。最後のピークをあとにする。下りの尾根もハイマツトラップとエゾマツ林の脛ラッセル。富良野以降はスキーの山だな、というのが身に染みてわかる。林道へ出ても当然トレースなし。疲労困憊の身体に重い脛〜膝ラッセルが堪える。2,30mおきに立ち止まる。まあいつもこんなもんだよな。行動食はとっくに尽き、最後は茶用の砂糖と生のアルファ米を食う始末。べべルイ零号線へ直接出るのは自衛隊敷地の柵があり不可能らしいので大真面目に林道を歩いて原始ヶ原登山口へ。最後はトドマツ人工林を植栽列と並行に真西に突っ切り少しだけショートカット。常緑針葉樹の樹林内は雪が締まっていて林道よりも快調。登山口の除雪終点に着くと、ちょうど旭川に住む職場同期の迎えの車が来てくれた。バス停まで歩いてバスとJRで旭川の車まで帰ろうかとも思ったが、今回ばかりは人に会いたかった。
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風呂に入り飯屋へ。6kg近く痩せた体に中華をぶち込む。降りたら何を食おうか、と下山寸前まで考えていたのに、下山した途端なんでも良くなった。ただ人と食事がしたかった。
もう、こういう山行は充分だ。と2日目くらいからずっと思っていたのに、前富良野あたりで既にこの山行がいい思い出に変わりつつあった。まったく呆れる。でも、もう本当にいい。少なくともしばらくは。
2025年は、人にもまれて皆のなかで生きるのサ。
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俺っちもカツオ食って岩よじりたかったよ...
ま、でももうこんな山辞めたかんね〜!
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