安房峠【安房山、十石山、硫黄岳】位ヶ原滑降
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 16.2km
- 登り
- 1,761m
- 下り
- 1,008m
コースタイム
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:40
天候 | 1日目晴れのち雪 2日目濃霧強風 3日目曇天のち晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
例年より雪が少ないようだ。少ない雪をかろうじてつないでいく。 安房峠〜安房山は踏み跡程度だが道がある 安房山〜十石山は道がない。かろうじて雪をつなぐ。 十石山〜スカイラインは踏み跡程度道があるがハイマツ伸び放題で大変。 スカイラインは除雪は済んでいるが車は閉鎖中。 位ヶ原から下は今年は雪が繋がっていない模様なのでバス下山する。位ヶ原へリフト代わりのスキーバスが運行されている。 |
その他周辺情報 | 連休中のこの山域は便利なバスがバンバン走っていて、いろいろと使えそうな感じ。計画の立て甲斐がある。 天気が悪く、濃霧のマジ地図読み、ずぶ濡れハイマツこぎなどはあったが、気温低く、硬い雪は潜らず快調に進めた。日射のもとラッセルになったらきついだろう。今年は残雪が少なすぎだったが、それでも雪はかろうじて繋がっていたので、普通の年ならもう少し藪は少なかろう。 無人境を延々歩いた後に人工物を見ると、最高点アタックなどがどうでもよくなってしまう。この季節は仕方がないか。とはいえ良い計画だったと思う。 |
写真
装備
個人装備 |
スコップ+のこぎり
スキーストックシール
アイゼンピッケル
その他冬山泊個人装備
|
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共同装備 |
タープ
ストーブ
|
感想
初日
昨年2月、高校同級生3人で計画し敗退した乗鞍岳南下計画を、今度は安房峠から二人で。大阪から来たタツヨシに松本駅で拾ってもらい、中の湯まで。安房峠下の焼岳登山口には駐車スペースが30台ほどあって驚く。それに結構停まっている。その先に車止めがあり、スキー担いで峠まで歩くと、穂高連峰の南面が美しい。地形図で前から気になっていた、出口の無い谷「小舟」を大いに観察する。二つの峠に囲まれた大きな閉塞谷だ。「歩いても〜歩いても〜小舟のように〜」とブルーライトヨコハマを口ずさむと、タツヨシのかみさんは由紀さおりから命名された話を聞く。
峠で冬靴を履いて取り付く。始めふみあとらしきをたどるが、すぐ残雪で消え、急斜面の登りになる。かろうじて繋がる残雪を直登していきなりアイゼンを付け、尾根まで。尾根上は踏み跡程度の道があり、期待してこなかったので儲けた気分。左側に時折穂高連峰の見慣れぬ景観が見えて新鮮だ。
安房山の山頂には針葉樹林ながら、穂高の展望のきく場所があり、イグルー適地もあるのだが、建設省の三階建建造物と、アンテナ塔が3本、それに巨大クレーンもあり、かなり景観を阻害している。何のための施設かは不明。林道もないのに、どうやって建てたのかも不明。少し南下した気持ちの良い針葉樹林の中で、屋根なしイグルーを作り、火を熾してくつろぐ。春先のイグルーはこれでいい。下手に屋根を積んでも崩落するから。スマフォに詳しいタツヨシに1週間分充電できる電池と、スカイプ電話を教わり、奥原さんと対面電話する。21世紀未来なり。
夕方から雪が舞い、風がびゅうびゅう吹きすさぶ。連休前半、こんなに悪い予報だっけ。タープの上にアラレみたいな細かい奴が、夜中に結構積もる。ビール6本もあげたの初めて。ウィースバーデンのヌーディスト文化について話を聞く。「本当かよ!そりゃすげえな!行ってみたいなウィースバーデン」詳しくはここでは書けず。葡萄酒も一本飲んでデレクアンドドミノズかけてもらってご機嫌。
二日目
タツヨシがリゾットに、なんとかレジャーノチーズをたっぷり入れて、イタリアの生ハムまで浮かばせて、山では食べたことのない凄い朝雑炊をごっつあんになる。
濃霧。時々みぞれやアラレ。五月連休はこれだから、調子が狂う。かんかん照りで渇水地獄になるかと水を用意したのに、全然飲まない天気だ。
安房山から十国山までは全く道がない。雪をつないで行くが時々それが切れるのでまわりながらルートをたどるが、濃霧で結構視界がきかず。2165は西側を巻こうとしていたが、残雪と藪の都合で、結局稜線上をたどる。テン場適地は多い。気持ちの良い針葉樹林だ。2113にも小さな穴ポコ地形がある。最低コルから2393までは、かなり急な雪面を4本足で登るルートだ。雪は蹴り込み可能なちょうど良い硬さの雪だが、かなりの高度感あり。もしここを下りにとったとして、この濃霧なら、ルートを間違えそうだ。それにもう少し早い時期なら雪崩がやばい傾斜である。これより遅いと猛烈な笹薮斜面だから、今だけが適期と言えるかもしれない。時折見える西側の断崖は、濃霧のため底が見えない。2390を超えると傾斜が緩んで、尾根も広くなっていく。どこが山頂だかわからない十国山、もしかして非難小屋は見落としたかと思う頃、濃霧の中に立派な小屋が現れた。
白骨温泉からスノシューで登ってきた男女二人組が、小屋の窓から吹き込んだ雪を外に投げていた。挨拶して話を交わす。心優しい女性が、アヴォガドとわさび菜のおひたし添えを恵んでくれた。ピリリ春の味。こちらにお返しできるもの、言葉しかなし。
濃霧の中、十石山へ。どこだかわからないゆるい山頂だが、下り始めたので握手、展望なし。金山岩への稜線は細いとは聞いていたが、断崖絶壁の横を、伸び伸び生えたハイマツの塞ぐ踏み跡をたどる。道崩壊の箇所もあり、落ちたらヤバイ箇所多数。濃霧で底は見えないが、かなりの高度感あり。スキー担いでひっかかり、半分溶けたハイマツのエビ尻尾が体にあたり、カッパなしの下半身は氷水でずぶ濡れ。その氷水が靴の中に流れ込み、登山靴の中は渡渉したみたいにタプタプになる。強風が氷水に厳しく、一休みする気力も出ず、黙々とたどる。1キロほどのはずだが長く感じた。なかなかの苦行なり。
金山岩の山頂も丸くて何もなし。しかし充実の山頂だ。十石山より少し高い。濃霧のため、広い山頂でコンパスを切る。山頂は岩ゴロゴロで雪がなく、道らしき痕跡はわからない。ハイマツを避け、方向を定めると、ガレ斜面になり、そこに踏み跡が見出せた。標高2500より下ると、濃霧の下に出て、視界がきく。地図にある変わった地形の二重稜線が確認できる。また「小舟」のような気持ちの良い地形だ。すごく寒いので早々にテン場を探す。特徴ある二重稜線の東側の稜線は大きな岩場になっていて、神聖な雰囲気。その下に今夜の屋根なしイグルーを作ると、やはりそこは権現様のお社のすぐ横だった。南西に、頭半分雲に突っ込んだ乗鞍の山体を眺めながら、震えてイグルーに入る。靴下を絞り、乾いたものに履き替える。太もも前面の発熱量はすごい。イグルー作っているうちに乾いてきた。ここの筋肉が一番の発電所なのだろう。
晩のモチスープに加え、納豆汁など各種飲んで、体温を上げる。ニッカを大事に飲んで就寝。昨日今日の悪天で、穂高の方では大人数の救助要請があるらしい。明日は晴れるだろう。
三日目
快晴ではないけれど、日も差す曇天。のち晴れ。風があって涼しい。快適な1日。最低コルまで下る頃、正面に乗鞍、背後に穂高が二日ぶりに出現する。我慢の一日を経て、輝いている。硫黄への登りは穂高を振り帰ってばかりでペース上がらず。朝8時までの光は美しい。奥穂の右に前穂、左に槍が線対称に並び美しい。硫黄岳へは道が明瞭だが、稜線東の雪の吹き溜まり跡の上をいく。山頂も東側には豊かな雪のテラスが残っている。
北は野口五郎や鷲羽岳あたりまで、白山、中ア、南ア、八ヶ岳、浅間山まで見える。真ん中には我らが青春の鉢盛山が大きい。ここは誰も登ってこない静かな山頂だ。タツヨシのかりんとうをもらう。
硫黄岳山頂から桔梗ケ原との間の沢底に、草木が一切生えない灰色の岩肌があり、よく見ると黄色い。きっと昔はここで硫黄を採掘していたのではないだろうか。金山の由来も甲斐武田の軍資金金山だったようだし。あの神聖な岩場と祠も歴史が古いものだと思う。
四ツ岳を正面に見ながら姫ヶ原をたどる。気温が低くて雪が潜らないので、今回はスキーをザックから降ろす理由がなく、ずっと担いでいる。
四ツ岳と硫黄岳の間の白い斜面は楽しそうなフリコ滑りができそうな谷だ。シュプールなし。
乗鞍スカイラインについてしまった。アスファルト舗装路と道路標識の上をトコトコと進む。楽だ。乗鞍の噴火火口丘が左右に次々現れる。初めは全部上をいこうかと思っていたが、どれも面倒になってきた。突然背後から軽自動車が来て追い抜いていく。昨日の雪の降り具合を確認にきたのか。鶴ヶ池周辺の観光業者さんか。こちらには目もくれず、3台、引き返していってしまった。標高の高い所に登ってきたら、帰って人造物が目に入ってしまい、なんだか下山気分になってしまった。
県境のコルで下り斜面を見下ろし、位ヶ原山荘が見えた。初めの予定だった伊奈川左岸の滑降ルートは、今年は雪が少なく誰も行かないとのこと、位ヶ原山荘に登ってくるバスでおとなしく帰ることにする。安房峠まで車取りに行かなきゃいけないし。
標高差350の斜面を滑降する。今山行の初スキー。いや、この冬シーズン含めて初か。残雪の、多少引っかかるけどシャビィな雪で軽やかにターンも決まる上出来の雪だった。あっという間に山荘前の道路へ。バスが出る1時半までの2時間、日向で装備を干したりギンビス食べたりしてのんびり過ごす。
ここまでバスで来て、あそこまで上がって、スキーして帰る人がこんなにいるんだ。バス5台分の客を乗せて下った。例年なら、下まで滑るところ。こんなリフトみたいなスキーバスがあるのを今回初めて知った。1450円。
白骨温泉分岐の観光センターで、松本行きに乗り換え、親子滝で下車して、上高地行きに乗り換え、中の湯バス停(釜トンネル前)に着く。また1450円。すぐ上に荷物をデポして、安房トンネルとの分岐まで歩き、新中の湯へ登る車を当てにしてヒッチを試みる。時間帯のせいか、10分待って一台。断られる。その後、タクシーが通ったので、上まで乗せてもらう。1500円。振り出しに戻る。断った車がいて、すぐ降りた。
昨年の思い出の坂巻温泉に浸かる。連休なのに混んでいない。お湯もよいしいい風呂だなあ。今度家族で泊まりに来て、ここからバスで上高地散策すればいいじゃん。稲核の山本食堂に寄ったが、時間帯のせいか暖簾がなかった。そのまま日の出町のキッチン南海に行ってカツカレーをガツガツ食べる。タツヨシの高校時代の味なんだって。舌ヤケドするほど熱いトンカツに満足。客はオッサンばかりだが、立派な穂高の写真が5枚もかけてあった。カタクラモールがなくなって江戸時代みたいに見通しの良い山並みを夕空の下に見る。鐘楼が影絵に映えている。松本駅まで送ってもらって、また次回な。ちょうどの時間だった7時半の甲府行き普通列車で1940円で帰る。また地図の空白部をたどって無人境を満喫した。
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連休中のこの山域は便利なバスがバンバン走っていて、いろいろと使えそうな感じ。計画の立て甲斐がある。
天気が悪く、濃霧のマジ地図読み、ずぶ濡れハイマツこぎなどはあったが、気温低く、硬い雪は潜らず快調に進めた。日射のもとラッセルになったらきついだろう。今年は残雪が少なすぎだったが、それでも雪はかろうじて繋がっていたので、普通の年ならもう少し藪は少なかろう。
無人境を延々歩いた後に人工物を見ると、最高点アタックなどがどうでもよくなってしまう。この季節は仕方がないか。とはいえ良い計画だったと思う。
コメント
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おあっ、良いラインで。十勝と大雪を繋ぐ重要ライン「オプタテ〜トムラ」積雪期線みたいな計画だ。
小舟は、車道が横通っているから楽に見られるけど、稜線上に結構二重稜線や陥没地形があって面白い。アカンダナ方面の雪解けは早い。もう真っ黒だったよ。
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