奥穂高岳・涸沢岳 〜BlueTrainの山 最終回!?〜


- GPS
- 24:41
- 距離
- 39.1km
- 登り
- 2,190m
- 下り
- 2,193m
コースタイム
- 山行
- 5:57
- 休憩
- 1:26
- 合計
- 7:23
- 山行
- 5:22
- 休憩
- 3:04
- 合計
- 8:26
- 山行
- 6:45
- 休憩
- 1:42
- 合計
- 8:27
天候 | 9日 上高地は晴れ 稜線から上はガスガス 10日 朝から快晴 稜線上でもほとんどガスらなかった 11日 朝は曇りがち 午後から晴れてきたようだった |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
沢渡〜上高地まではシャトルバス利用 |
コース状況/ 危険箇所等 |
≪登山道の状況≫ ・河童橋〜横尾 梓川沿いの整備された歩道を歩く区間 傾斜もゆるやか 数か所土砂崩れした箇所があるので、崖下のような箇所では落石に要警戒 ・横尾〜本谷橋 横尾岩小屋跡付近までは整備された歩道、その後本谷橋にかけて登山道の様相を呈してくる ・本谷橋〜涸沢 本格的な登山道になる 傾斜もここから急になってくる Sガレ手前で斜面が大崩壊を起こしている箇所があり、上部からの落石に要注意 ・ザイテングラート 急な岩尾根の登りが白出のコルまで続く ストックは格納し、ヘルメット着用のこと 道端のハイマツの向こうは絶壁の箇所があるので、転倒すると大事故につながる箇所もある 鎖・ハシゴもところどころにある 高度感はあまりないので慎重に進めばさほど怖くなかった ・白出のコル(穂高岳山荘)〜奥穂高岳 山荘横の岸壁が核心部 鎖・ハシゴの連続 足元に穂高岳山荘が見えるので恐怖心が募るが、3点支持で確実に一歩一歩進めばさほど恐怖は感じなかった(当方高所恐怖症…のはず) ハシゴの後の鎖場、小尾根のトラバース(ここは鎖無し!)が緊張する場面。ここでの転倒すると命に関わるのでミスは許されない。 稜線に出たら、あとは岩がちな道を歩いて奥穂高山頂までの緩やかな道。 ・白出のコル〜涸沢岳 飛騨側の傾斜はゆるやかで、高度感もないので安心して歩ける 岩がちな区間なのでここでもストックは無い方が歩きやすい 山頂の涸沢カール側は絶壁なので要注意 涸沢岳〜北穂高の区間は高度感のある岩稜歩きとのことなので、安易に踏み込まないこと ≪危険動物情報≫ クマ:上高地でもしばしば目撃情報がある クマ鈴があると良いかと ヘビ:以前上高地で目撃した ヤマビル:この付近では心配いらなそう |
写真
感想
大好きな上高地。
ここを上から見たら、どれほど感動するだろうな…。
そう思い立って焼岳に登ったのが、私の登山の原点でした。
焼岳を初恋の人とするならば、あこがれの人は奥穂高岳。
河童橋から梓川越しにそびえる姿を見て、あの山頂から上高地を見てみたい!と思い…
ロープウェイを使えば、稜線をちょいちょいと歩いて楽々登頂できますよね〜、と先輩アルピニストに軽口を叩いたら、あそこは日本最難関ルートで死ねる所の連続だぞ、と一喝を受けたのが昨日のようです。
ガイドブックで調べてみると涸沢までは行けるとしても、高所恐怖症の自分にはザイテングラートが、そして穂高岳山荘横の岸壁登りが怖い…。
ピークハントよりも高山植物に関心が移ってからは、ますます穂高岳は後回しになっていました。
しかし、今後の自分を考えてみると、仕事や山以外のライフワーク、病弱な母の世話など、自由に山歩きができる時間は減る一方になる見通し。
今シーズン行かないと、もう登る機会は無いかもしれない…。
であれば!
今年の夏、あこがれの人の元へ僕は行く!!
そう決意してから八ヶ岳横岳、宝剣岳で岩稜歩きの練習を重ね、迎えたお盆休み。
自分の登山の集大成として、奥穂高に挑戦してきました。
今回の山行では、岩稜歩き用に導入した重登山靴で挑むものの、この重い靴で横尾までの12キロの平坦な区間を歩くのは辛い…
そこで、本谷橋までは低山用の軽登山靴で歩く二本立てで臨んできました。
足取りは平坦地では軽く、岩稜では安定するので狙いは良いのですが、ザックの容量を食うのと、荷物が重いのは致し方ないところ。
平坦地用と岩稜歩き用の登山靴二つ持ち歩いているのって自分だけかなぁ。
沢渡からのシャトルバスを降りたち、あこがれの人を望む定番ポイント、河童橋に来てみると、あいにく奥穂高山頂は雲の中。
あこがれの人には挨拶できなかったけれど、本日の宿、涸沢ヒュッテを目指していざ発進!!
横尾までは12匱紊琉汗遽茲い諒臣海米察
延々と続く道ですが、明神岳がその威容を見せてくれるし、周りの森は素晴らしい美しさだし、秋の気配を感じさせる花々にも励まされるし、山の宝物が詰まった区間で終始楽しく歩けます。
明神から先は未体験のゾーン。
明神から1時間で徳澤、さらに1時間、梓川越しに表銀座縦走路が姿を現すと横尾。
美しい風景が次から次に現れて、序盤からテンション上がりっぱなしです。
横尾橋を渡ると、ここから先は登山者の領域。
左手には明神岳に代わって屏風岩の威容。
よくこの崖を登れるものだと、クライマー諸兄に感嘆するばかりです。
本谷橋で小休止し、足回りを岩稜歩き用の靴にチェンジ。
一歩一歩が重いですが、ここから先の岩がちな登山道ではその安定性が安心感につながりました。
春に大崩落が起きた箇所をトラバースし、周りの木々がブナからダケカンバやナナカマドに代わってくる頃、樹幹からはそそり立つ鋭鋒が姿を現します。
あこがれの地 涸沢カールが、奥穂高、涸沢岳、北穂高が一歩ごとに近づいてくる。
視界が開け、ダケカンバ林に浮かぶ涸沢ヒュッテが現れると、涸沢カールに到着でした。
思っていたほど巨大なカール地形ではないものの、名だたる名峰に囲まれた涸沢カールはまさに登山者の聖地にふさわしい場所。
今日は若干曇りがちだし、高山植物のお花畑もすでに秋の装いになっていましたが、あこがれの地に自分も来たんだなぁと思うと感動もひとしおでした。
曇りがちだった空からは夕立が降り注ぎ、この日奥穂や北穂を登った方に聞くと山頂はガスっていて展望がなかったとのこと。
明日の天気を心配しやきもきして夕食を食べてから外へ出ると、空は晴れ渡り満天の星空が広がっていました。
夏の大三角の中を流れる天の川が前穂高に向かって流れ、奥穂高上空も満天の星空。
至福の天体観測の後、勝負の2日目に向けて床に就きました。
明けて8月10日、いよいよあこがれの人、奥穂高へアタックの日。
空は雲一つない快晴。
モルゲンレートに燃える奥穂高・涸沢岳が素晴らしい美しさ。
数カ月前から8月10日は晴れるか心配していましたが、最高の登山日和となりました。
6時過ぎ、奥穂高へ向けて発進。
まずは涸沢パノラマコースを経てザイテングラート取付き点を目指します。
涸沢の花はアキノキリンソウやオンタデなど秋の花が主体。
涸沢岳をバックにお花畑を撮れる定番のポイントももう遅いかなと思っていましたが…。
シナノキンバイは終わっていましたが、一面のハクサンイチゲが咲き残っていてくれました。
お花畑と青空をバックにした涸沢岳・涸沢槍の岩峰が素晴らしい美しさ。
ガイドブックやポスターでおなじみの絶景の中にいるのがとても幸せでした。
お花畑からひと頑張りでザイテン取付き。
涸沢ヒュッテから見ると、ものすごい急傾斜の岩尾根に見えたザイテングラート。
あそこを登れるだろうかと思いましたが、近づいてみると思っていたより傾斜はきつくなく、ほっと一息。
山道の傾斜は離れたところから見ると切り立って見えるけれど、近づいてみると案外緩やかに感じるのは不思議ですね。
思っていたほどの険しさではないものの、左右のハイマツの下は絶壁だったり、3点支持で慎重に進まねばならない難所であることには変わりなし。
鎖やハシゴが連続しますが、高度感で足が動かないような局面は無く、アスレチック感覚で楽しく登れました。
こんな険しい岩尾根でも岩の間にはウサギギク、ミヤマダイモンジソウ、ヨツバシオガマなどの花が咲き、厳しい環境で咲く花に励まされて登ります。
真っ青な空が近づいてくると、本日の宿穂高岳山荘前の石のテラスに躍り出ます。
ここでザックをデポし、荷物を軽くして、アミノ酸ゲルで栄養補給し…
奥穂高岳へのルートの核心部となる穂高岳山荘横の岸壁に挑みました。
下から見上げると、あんなところを歩けるだろうかと身の毛がすくみます。
ここが不安で登山を始めてから挑戦できなかった岸壁。
でもここを登るためにこれまでトレーニングしてきた。
3点支持を忠実に行いながら、ひとつまたひとつと岩を登っていきます。
ハシゴを二つ越えて、岩の小尾根をまたぐところが一番緊張する場面。
しかもここには鎖の補助無し…!!
足元には穂高岳山荘の屋根が見えて高度感万点。
足を踏み外せば死につながるミスが許されない場面。
ではありましたが・・・。
確かに怖いですが、恐怖心で動けなくなることは無い。
落ちれば死ぬだろうが、しっかり3点支持で進めばそれほどの難度でもない。
拍子抜けするほどあっさりと平坦な稜線まで歩けてしまいました。
高所恐怖症のはずなんですがね…。
横岳や宝剣岳の難所も怖くて動けないことはなかったので、もしかして自分は岩稜帯の高度感はあまり恐怖を感じないのかも。
難所を抜けるとあとは山頂までゆるやかな岩尾根の道。
こんな厳しい環境でもクモマグサやイワツメクサ、トウヤクリンドウが力強く咲いています。
振り返ると涸沢岳、北穂高岳、槍ヶ岳、北アルプス北部の山が連なる絶景。
少し進むと右手にはジャンダルムが圧倒的な存在感でそびえます。
これまで経験してきた稜線歩きをはるかに超える絶景の中、山頂へ向かいました。
2016年8月10日午前10時。
あこがれの人、奥穂高岳山頂に無事登頂!!
上空の空は快晴。
眼下には上高地。
霞沢岳、焼岳に囲まれた豊かな森の中を流れる梓川。
乗鞍岳、燕岳〜蝶ヶ岳までの表銀座縦走路、槍ヶ岳、後立山連峰、立山から笠ヶ岳まで…。北アルプスが全部見える!!
ここに来たらさぞ感動して泣けるかと思いきや、涙は出ませんでした。
涸沢から絶景の中を歩いてきたから、絶景に慣れてしまったのかな??
小一時間ほど風景にみとれていました。
帰り道、穂高岳山荘横の難所は下りが怖いですが、一歩一歩慎重に進み、無事穂高岳山荘に戻りました。
緊張感から解放されるとおなかがすいて、名物味噌ラーメンを頂きました。
かくして今回の山旅は穂高岳周辺の山小屋のグルメツアーの様相を呈したのでした。
食後の運動を兼ねて、となりの涸沢岳にも登りました。
涸沢岳から先はエキスパートのみが挑める道ですが、涸沢岳までなら安全。
涸沢岳の山頂は涸沢カール側は絶壁ですが、槍ヶ岳・北穂高岳を眺めるには最高の展望台でした。
登山道に人だかりができているので、何事かと思って行ってみると…
岩の上にはライチョウの姿!!
3年前の仙丈ケ岳以来ですが、まさかここで会えるとは思わなかったのでうれしい誤算でした。
もう少し早く来ると可愛いヒナもいた様子なので、お母さんライチョウなのですね。
帰りにもまだいてくれたので、接近して写真と動画を撮りましたが、かなり近づいても全然逃げません。
むしろこちらをにらみ、ニワトリのようにホォーホォーと鳴いて威嚇してきます。
見た目に反して、たくましい肝っ玉母さんでした。
穂高岳山荘に戻り、暮れゆく絶景を見ながら至福のコーヒータイム。
西日を浴びて、きれいに染まる常念岳と蝶ヶ岳。
今度は向こうからここを見たみたくなりますね。
西には白山と笠ヶ岳。
雲海に沈む夕日をバックに美しい姿を見せてくれました。
夜の天体観測では、涸沢岳とジャンダルム上空の星空を撮影。
こんな高所でも高山や松本の町明かりを拾ってしまうのか、案外空は明るいのが意外でしたが、涸沢岳上空の満天の星空を写真に収めることができました。
翌8月11日は今年から祝日となった山の日。
上高地では皇太子殿下をお招きして記念行事があるとのこと。
でも私が下山する午後には人も減っていることでしょう。
むしろ8月12日は記念行事から流れて来た大勢の人が穂高を目指し、難所で渋滞が発生するとリスクが上がってしまう。
これを避けるために何とかお願いして早めにお盆休みを頂いたのでした。
朝食後、名残惜しいですが笠ヶ岳、白山に別れを告げて、ザイテングラートへ。
上高地への20劼砲盖擇峅嫉海魍始。
ザイテンもやはり登りより下るときに注意が必要で、正面を向いて下るとザックを岩に引っかけてしまうことが多々ありました。
めんどくさがらずに、しっかり向きを変えて3点支持で進まないといけませんね。
無事ザイテンを下り、涸沢のお花畑に別れを告げて、涸沢ヒュッテへ。
名物のおでんが初日は卵が売り切れだったので、穂高岳と涸沢の余韻を楽しみながらフルセットで頂きました。
本当に名残惜しいですが、涸沢ヒュッテを後にして下山。
下るにつれて、穂高も涸沢も常念も見納めになり、寂しくなってきます。
いつかまた、できれば涸沢の紅葉を見に、再び奥穂高へ、さらには北穂高へ登りに戻ってきたいと、再訪したくなる気持ちが高まります。
3日間の岩稜歩きを支えてくれた重登山靴を本谷橋で履き替え、しばらく下ると道は梓川沿いの穏やかな区間に。
上高地の記念式典を楽しんだ大勢の登山者が涸沢を、槍ヶ岳を、表銀座を目指して歩いて行きます。
2日前はわたしも緊張した面持ちで涸沢を目指して歩いていたなぁ。
でも今は、奥穂高に登って来たという達成感に満ちたいい顔をして歩いているかな?、と自分の姿を想像して少し笑えてきました。
上高地まではまだ長い道のりですが、山も森も川も美しいし、目標の山に登って無事戻って来た達成感もあって足取りは軽やかでした。
明神を過ぎ、小梨平に入ると楽しかった山旅もいよいよフィナーレ。
涸沢ヒュッテから歩くこと5時間。
個人的に上高地の定番スポット、河童橋下に無事帰ってきました。
あこがれの人は一昨日は雲の中でしたが、今日は梓川の清流越しに、青空をバックにしてその姿を見せてくれました。
あのてっぺんに自分はいたんだ…、と思うと達成感がこみ上げてきました。
かくしてわたくしBlueTrainの奥穂高山行は無事終了。
奥穂高登頂、モルゲンレート、花、ライチョウ、満天の星空などかつてないほど濃く山の素晴らしさを味わった山旅でした。
天候不順な夏でしたが、山頂アタック日の10日は素晴らしい天候にも恵まれました。
神様、ありがとうございました!
穂高で落命して文字どおり「BlueTrainの山 最終回」にはならずにすみましたが、自分のこれまでの登山には一区切りつけられたと思います。
「BlueTrainの山 第一幕 最終回」ということで。
でも、まだまだ登りたい山は数知れず。
山に行ける回数は減るとしても、体が動く限り、山を楽しめたらと思います。
第二幕ではどんな絶景に、花に、感動に出会えるかな?
あと、遭難事故は経験者が油断したために起こることも多いのも事実。
愛する山で死なない・無事に帰る。
第二幕は一層謙虚になって、自然の中に飛び込んで行けたらと思います。
さて、第二幕、目標にする「あこがれの人(山)」はどうしよう?
白峰三山縦走?、表銀座縦走?、槍ヶ岳??、日本最後の秘境雲ノ平??
それとも日本最高標高地点の富士山???
登りたい山は尽きないですね…。
長々と長文・駄文にお付き合い下さり、ありがとうございました m(__)m
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する