そうだ、温泉に行こう! 打保-北ノ俣岳-雲ノ平-高天原-岩苔乗越-大ノマ乗越-新穂高温泉
- GPS
- 95:31
- 距離
- 53.4km
- 登り
- 4,256m
- 下り
- 4,101m
コースタイム
- 山行
- 4:45
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:45
- 山行
- 7:59
- 休憩
- 0:36
- 合計
- 8:35
- 山行
- 6:24
- 休憩
- 2:13
- 合計
- 8:37
- 山行
- 7:45
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 8:17
天候 | 4/20 晴れ 4/21 曇り/霧 4/22 晴れ 4/23 晴れ 4/24 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2017年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
東京-富山 杉崎観光バス 富山-猪谷 JR高山本線 猪谷-神岡営業所 濃飛バス 神岡営業所-打保橋 濃飛バス 復路 新穂高ロープウェイ-平湯温泉 濃飛バス 平湯温泉-バスタ新宿 濃飛バス |
その他周辺情報 | 平湯温泉 600円 |
写真
感想
【積年の夢】
何年か前、ブログか何かで、残雪期にスキーで雲ノ平を越えて高天ヶ原に行って温泉に浸かり、温泉沢を登り詰めて東沢谷を滑ってから三俣山荘を経て新穂高に至る、というような記録を目撃した。何と夢があるプランだろう。いつか行ってみたい、と秘めていた。
昨年も休みを確保して準備するも直前に纏まった積雪があり雪の状態が不安定な恐れを感じて変更した。めげずに今年も休みを確保しておいた。すると、当初雨予報だったのが低気圧は南に逸れ、概ね良好な予想となる。遂に来た!
【計画】
ルートは飛越新道又は神岡新道から入山、下山は新穂高温泉と考えていた。単独の場合、難しいのはアクセス。車で除雪終了点まで行って、下山後はバスを乗り継いで和佐府で降り、歩いて回収を考えた。しかし、山之村寺線は1日2便、到着は昼と夕方、しかも栃尾方面からの接続は何れも2時間待ちぐらいなので実質回収で1日が終わってしまう。そこで考えたのが、新穂高の駐車場に車をデポ、8:30頃のバスに乗れば12時過ぎに打保橋に到着するプランの方が良い、と考えた。
でも、昼着なら夜行バスは利用できないか、と軽い気持ちで調べると、何と東京から富山まで2300円のプランがある事が判明。費用を計算すると、何と車の高速料金とバス利用の場合の合計額がほぼ等しい事が判明。つまりガソリン代分だけ車利用の方が高い。それぞれ利点があるが、眠いのを我慢して運転し続けなくてよい事はバス利用の有利な点だ。不安はあったが思い切ってバス利用に変更した。
【アプローチ】
仕事を終え、食料を買いだして荷を纏め、鍛冶橋バス停という、初めて聞くバス停に向かった。100Lにスキー靴も入れた、25kgぐらいのザックと、2本纏めた裸のスキー板を積んでもらおうとすると、荷物は1個まで、と指摘された。結局、傷がついても保証しない、などという誓約書を書かされて積んでくれる事になった。
乗車率7割ぐらいだろうか、結局2席を利用できた。最近の車両は11列といえども昔の車両とは全く比べ物にならないくらい快適だった。予想外だった。
富山駅、猪谷駅、上岡営業所とそれぞれ1時間ぐらいずつ待ち合わせて列車バスを乗り継いだ。昼過ぎにようやく終点の打保橋バス停に到着。下りたのはやはり私だけだった。
【1日め】
舗装道路が除雪されているので、板を手に持って、サンダルで歩いた。しかし、直ぐに除雪は終了した。ザックを開けてスキー靴を出して履き替えた。しかし、雪は所々乾いているので未だ板は履けなかった。
1時間ほど進むと少し標高が上がって、漸くシールを貼って歩くことができた。藪っぽい尾根を上がると、雪が落ち着いてきた。緩いピークでテントを出した。
【2日め】
今日はどこまで行けるか。
少し下って小さな沢を渡った。水が出ていたが一部ブリッジが残っていた。
また登り返して飛越新道と合流。確か表示があったと思うのだが探せなかった。
飛越新道は1度来た事がある。確か1000円高速の時代のGWに、除雪終了点まで車で入って、北ノ俣避難小屋近くに幕営定着、2日めは空身で黒部五郎、3日めは薬師岳をそれぞれ往復、4日めに下山という行程だった。天候に恵まれ、黒部源流域の素晴らしさに魅了された体験だった。
寺地山を辿るとその記憶が蘇ってきた。
期待と不安。果たして廻れるのか。
広大な斜面をシールで1歩1歩進めた。鈍かった。荷が重い。減らしたかったが減らせなかった。あれも必要、これも必要、と用意すると、結局通常の雪山装備と変わらないくらいだった。渡渉や急登の可能性を考えるとアイゼン、ピッケル、スコップは外せなかったし、実際必要だった。
ガスが掛かって雷鳥の声が聞こえて稜線に立ったのは13時過ぎだった。
嬉しかった。遅いけどここまで来た。
風は強いが雨は無い。シールを剥がして薄っすら見える赤木平に滑り込んだ。ザックが推定22kgで、決して滑り易いわけではないのだが、コツがわかると何とかなった。
雪質が良くて快適だった。
稜線は強風だったのだが、下りると穏やかになった。折角なので少し歩いて赤木平の曖昧なピークに行ってみた。しかし、ガスで展望も無く、風もあったので、結局コルに戻って幕営とした。
【3日め】
今日は核心を通過する。黒部川を越えなければならない。
昨日偵察した感じでは、黒部川と思われる筋が見えていた。スノーブリッジは残っていない可能性が高い。
赤木平から下は樹林帯になる。事故を起こさないよう、慎重に下る。
ルートを左右に振って、地形を観察しながら、かつ、GPSで現在位置を確認しながら進めた。地形図を見る限り崖も多く、ルートを誤ると遭難する可能性がある。
流れに近くなると、やはり雪は繋がっていない。赤木沢出会い付近も崖のようだ。
少し下流寄りに着地できそうだ。渡渉できないか石の並びも観察するが、繋がらない。
ザックの置き場所、靴の置き場所を考え、対岸は2mぐらいの雪の壁なので工作が必要だ。最初、空身でスコップだけ持って渡渉、ルート工作をしたら戻って板と靴を運搬、最後にリュックを運搬で無事渡った。ほっとした。
いつの間にか青空が広がってきた。地形図から考えていた谷のルートに乗った。一部水は出ていたが直ぐに安定した。樹林の中を地道に進む。
一旦、緩い尾根を越えてまた沢筋を登る。森林限界を超え、展望が出てきた。一瞬山荘が見える。雪の雲ノ平も素晴らしい。
無線塔の近くでスマートホンが反応した。オンラインになっていたらしく、メールを受信した。立山の基地局を拾ったのだろうか。びっくりだ。不安定ながら軽量のデータは大丈夫そうだ。lineで現在地と予定を報告する。
雲ノ平の北側は素晴らしい斜面だった。一枚バーンの広大なゲレンデのようだった。夢中でターンを繰り返した。本当は一気に下まで滑り降りたかったが体力が続かなかった。4ターン5ターンもすると止まっては息を整えた。
高天ヶ原に行くためには岩苔小谷を渡る必要があった。最悪ブリッジが無い可能性があると思い、確か橋があったはず、と夏道と思われる位置を探りながら進めた。しかし、沢に来るとブリッジも残っていた。高低差が少ないルートを想定して渡った。
樹林を抜け、広い雪原を過ぎると左手に雪に埋まった小屋があった。
シールを外し、高度を下げないように、山寄りにへつるように北上した。
沢に行く手を阻まれたので荷を下ろし、空身でタオルとスコップをもって偵察に向かった。記憶が曖昧で、手前に沢が2つ出てきてびっくりした。
地形図見ながら辿ると、ようやく露天の風呂が出てきた。やはりお湯が引かれていなくて栓も外されていた。上流を偵察すると源流があって、熱めのお湯が流れ出ていた。
更に上流を偵察すると、もう一つの源流があった。こちらは流量が豊富で、浅いが浸かれる水たまりがあった。時刻は15時を廻っていたので、湯船にお湯を貯める事は諦め、水たまり、というかお湯たまりに浸かった。たまたま持ってきたポリ袋でお湯を入れて肩にかけたり、両手で掬ってかけたりした。バシャバシャ10分もしていると結構温まって、すっかり温泉を楽しんた。
柔らかい西日に当たりながら静かなテントで昼寝をした。
【4日め】
今日は何処まで行けるか。できれば双六小屋、最低でも三俣山荘までは行きたい。
シールで出発。森の中をひたすら歩く。水晶池の西側は谷が深く水が出ていないか心配だったが全く問題なかった。問題はデブリが凄かった。雲ノ平側からのデブリが沢を越えて東側の山を這い上がっていた。以前、槍平小屋のテンバが対岸の雪崩に襲われたニュースがあったが、やはり雪崩の恐ろしさを実感した。早朝で気温もかなり低いので、落ちる事はまず無いはずだが気持ち悪かった。
デブリ地帯を過ぎると美しい雪の谷だった。
無雪期に登山道から眺めた谷をは全く違って、最後の詰めは恐ろしく急登だった。
板を外しザックに括り付け、スキー靴にアイゼンを装着して詰めた。最後の雪庇は足で蹴って崩し、その隙から這い上がった。
淵の20mぐらい東側にスキーの方がいた。反対方向から上がってきたらしく、岩苔小谷を滑り降りていった。
黒部源流は快適だった。時間は短いが病みつきになりそうだ。
高度を維持しつつ、三俣山荘への緩やかな斜面を登った。
稜線に来ると、その先にはお馴染みの槍の姿が。雪のアルプスは美しい。景色がどんどん展開して行く。
三俣蓮華岳の肩まで来たら、シールを外す。広大なカールに沿うように滑る。夏道になっている緩い尾根に乗る。事前の検討で、この辺でテントも良さそう、と候補だった。実際、素晴らしい所だった。荷を下ろそうか迷う。しかし、明日の最終日の行程を考慮して、もう一度荷を背負う。
このルートは、実は三俣蓮華岳と双六岳の中間に存在する、東尾根の通過を懸念していた。等高線が狭く、急斜面が予想されたためだ。実際、緊張を強いられた。雪がやや緩かったので良かった。気温が低く、アイス状態だと難しかったかもしれない。
尾根を越えると突然這松が出た。ズルズル少し高度を下げ、避けてまた斜面をへつった。
地形図では、双六小屋北側の谷2400m辺りの尾根に乗れそうだった。当初、そこを目指すが、途中、とても良さそうなバーンが出てきて、思わず下りてしまった。案の定届くはずも無く、余計な仕事を増やしてしまった。
尾根に乗ってスコップで少し整地すると、快適なテン場になった。
【最終日】
今日のポイントは、大ノマ乗越への登り返し付近の沢の状態と、左俣林道の状態だろうか。
しかし、滑ってみると全く問題無かった。双六谷は快適だった。2370の出会いでは一部水が出ていた。雪は良い雪だった。
大ノマ乗越の登りは、シールは不可だろうと予想していた。板を外してリュックに固定する方法でツボ足アイゼンで登った。板は20年前ぐらいのゲレンデ用+アルパイントラッカーなので重さの悲惨だ。ノロノロ登る。
それでも着いた。どんなに鈍くても何時かは着くものだ。
最後のバーン、小池新道ルートを味わう。高度を下げるとデブリが出てくる。よたよたかわしながら進む。左俣林道の橋まで下りる。シールの4人パーティーが上がってきた。連休の縦走にのために食料をデポしに行くとの事。凄い。そこまで準備するのか!
ひたすら林道を進める。ブナの森になってワサビ平小屋を左に見て、中崎橋だけは雪が消えていたので一旦板を外し、また滑ってゲートが近くなると今度は本当に雪が無くなったので板を外し、てくてく歩いて歩道の橋を渡ると、3回目の濃飛バスが待っていた。
お天気もよくご無事で夏でもハードなルートを楽しまれましたね。
こんな山歩きができるって、すごくうらやましくですよ〜
本当は、スキーならもっと軽量化しないといけないんですけど、いつものようにパッキング下手くそで、これも必要あれも必要、と足していくと結局厳冬期並みの重量に(笑)
おかげで30分と歩けず、ちょっと進んではザックを投げ出す感じでした。
とはいうものの、無雪期にはとても歩けないような所をルートとして、踏跡の無い、真っ白な世界に自分のトレースを置いてゆく事ができて、幸せでした。
あ、でもくまさんのトレースもいくつかありました。。(汗
こんなに雪があるのにクマが歩いてますか?
会わなくてよかったですね。
確か黒部源流を渡ってから雲ノ平の樹林帯を登り始めた辺りだったと思います。
足でかかった!
kihaさん
すごい山行でビックリしました。
なんか、冒険小説を読んでいるような感じで、ドキドキしながら読みました😊
こんなに深い山を自分でルートを取りながら歩くのは、相当な知識と経験が無いとできないと思います。
呑気な一人旅ではなく、五感を研ぎ澄ませて歩いたのでしょうね!
その分達成感も大きかったと思うのですが、坦々とした感じのレコに仕上げちゃうところがkihaさんらしいです😀
お疲れさまでした🐾🐻⛄
あはは、ドキドキしてもらえましたか。。光栄です(笑
残雪期の黒部源流域は、夏道は消えて四方が穏やかな雪の山並みに囲まれた別天地でした。
ルートを間違わないようにとか、崖に嵌らないようにとか注意する所もありましたが、基本的にのんびり歩いて適当に滑っていました。お気楽なもんです。
中盤以降は残雪期初ルートで、イメージ通りだったり大分違ったり迷ったりいろいろあって楽しかったです。本当は昼ぐらいには温泉に着いて、お湯貯めて浸かりたかったんですけどね(笑
因みに、往路の夜行バスは、kaoriさんの、立山両夜行日帰りに影響されました。。
自分の計画に必死で人様の記録を全然拝見していなかったのですが、ものすごいことをやってのけましたね。これが単独行だとはほんと驚きです。出発前の緊張感がこちらにも伝わってくるようです。
スキーのルートは私はド素人なのですが、このような尾根をまったく外したトラヴァースメインのルートどりは当初の計画の通りなのでしょうか。地図の上だけ見てると物凄く難しいように思えます。また雪崩の危険などもある程度現地の判断が求められるのでしょうか。想像もできない世界です。天気も良くないとやはり厳しいんでしょうね…
北アルプスでも雲の平のような場所だとこのような自由な行程が取れるのですね。発想が広がりますね。自分が挑戦することは多分ないとは思いますが(笑)、とても勉強になりました。
triglavさん、ありがとうございます。
残雪期は、歩こうか滑ろうかでいつも迷います。
黒部源流域は標高があるので藪も出ていないし、緩やかな地形が多いので別天地です。好き勝手いろんなルートが取れます。
好天に恵まれたのが一番の要因だと思いますが、この時のルートは、概ね狙った所を辿れたと思います。地形図から状況を想像するんですが、やっぱり実際に歩くと灌漑深いですね。雪の状態等を観察しながら、都度修正しながらでした。
連休前で、やっぱり殆ど人に会わなくて、広大な景色を独り占め状態でした。
上手な人はもっと早く駆け抜けると思うのですが、私の場合軽量化ができなくてさっぱり進まず、もしかしたら歩いた方か早かったかも知れません(笑)。
なるほど。
やはり黒部源流地域の地形のなせる業なのですね。私も無雪期ですが北アルプスで最も好きな地帯はあそこです。それにしてもこの時期にとはすごい、、、そしてものすごく自由で楽しいのだろうな〜と思いました。幸運な天気を何年も待つ甲斐もありますね。
今後の参考にさせていただきます。ありがとうございました。
例えばGW頃で考えると、飯豊、朝日に比べると約1000mの標高差があるので、雪の崩壊が少ないと思います。植生も樹林帯はありますが、日本海気候のような藪は無いので、歩き易いかもしれません。大ノマ乗越にはアイゼンのトレースもありました。数年前に来た時は笠ヶ岳から立山を目指す人とか、飛越新道から北ノ俣岳に行く人にも会いました。歩くのも楽しいと思います。
今回、温泉のお湯を貯める時間が無かったのが心残りなので、次のチャンスがあったら今度はお湯に浸かってみたいものです(笑。
ちなみに往路で利用したバスですが、何と小田原発東京経由富山金沢行きでびっくりしました。。
小田原発富山行き…冗談かと思いますが、調べたらほんとにありました(笑)。
これは便利!!富山も夜行でたまに行きますので今度使ってみます。
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