[3つの烏帽子を巡る] 蒜場山〜烏帽子山〜大日岳〜御西小屋〜北股岳〜頼母木山〜えぶり差岳往復〜西俣ノ峰〜梅花皮荘
- GPS
- 104:00
- 距離
- 54.4km
- 登り
- 4,006m
- 下り
- 3,870m
コースタイム
- 山行
- 7:25
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 8:55
- 山行
- 8:40
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 10:10
- 山行
- 7:35
- 休憩
- 1:20
- 合計
- 8:55
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 2:15
- 合計
- 9:35
天候 | 5/2 晴れ時々曇り 5/3 快晴 5/4 快晴 5/5 晴れ時々曇り 5/7 曇りのち小雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2017年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
http://www.niigata-kotsu.co.jp/~nk-kanko/shibata.html [下山]梅花皮荘からJR小国駅までバス。1日4本程度。 http://www.town.oguni.yamagata.jp/life/life/road/bus/south.html |
コース状況/ 危険箇所等 |
・蒜場山山頂までは一般ルートのため特に問題はないが、山頂に近づくと尾根が細くなるので転落には十分注意する。 ・蒜場山山頂からしばらくは蟹沢の中を下り、沢と尾根が接近したところから尾根に復帰する。山頂から蟹沢へは雪庇が張り出しているため危険でいきなり沢には入れない。今回は北側から回り込むように入ったが、年によって状況は変わると思う。蟹沢は非常に大きな窪状の地形で、特に上部は沢筋は顕著でなく視界がないと非常に困難と思われる。また、ブロック雪崩や新雪が積もった場合は表層雪崩への注意も必要と思う。この区間で忠実に尾根筋を下らない理由は、ヤブがひどいためと思われる。尾根筋も無理ではないと思うが、蟹沢から行った方が大幅に時間は短い。 ・高立山前後はひどいヤブで山頂北側を巻いたが、巻き道には踏み跡のようなものもあり、それほど苦労はしなかった。 ・稲葉の平は北側に小川があり、簡単に水が取れる。このルートの貴重な水場。癒しの疎林で幕営地としても最高。 ・烏帽子北峰からの下りも蒜場山からの下りと似ていて難しい。北東向きの非常に広いフラットバーンかつ急勾配な雪面の下りで、バーンは両端ともやがて崖に向かって落ちていく。バーン真ん中当たりに小尾根が発生するのでこれに正確に取りつかなくてはならず、視界がないとしんどいことになると思う。ここでの転倒滑落は致命的になるだろう。烏帽子山は花崗岩の峻険な山で、東側は絶壁なので、南峰への往復の際に藪にクランポンをひっかけたりしないよう細心の注意が必要。烏帽子山はこの山域の一番の難所だと感じた。 ・マグソ穴峰手前からキンカ穴峰まで、半分以上の区間で雪庇が落ちており、非常にハードなヤブ。特にキンカ穴峰への登りに切り替わる1410m鞍部からの急登は、藪が逆目になるため労苦は筆舌に尽くしがたい。わずかな区間なのですがくじけそうだった。 ・キンカ穴峰を超えると大日岳まで難所は全くない。大日岳からの下りは非常に急な斜面で滑落要注意。ここも転倒が致命的になると思う。それ以降の一般ルート上は特に問題はない。 ・頼母木山から西俣ノ峰を経由して梅花皮荘に至る残雪期限定ルートはマーキングのピンクテープが充実しており、特に問題はなかった。ただ上部は尾根が顕著でなく、いくつかフラットバーンの下りになるので視界がないと困難を感じるかもしれない。ただこの時期随分な人数が入山しているようなので、トレースは多いだろう。また、西俣ノ峰からの小尾根の下りは雪が切れてからが非常に足元が悪い。最後の最後なので気を抜かずに十分注意。 ・全般を通してだが、天気の悪い時はこのルートは避けるべきだろう。路迷いとそれに伴う滑落のリスクが高いと思われ、特に単独行の場合は致命的になる可能性が高いと思う。また大日→蒜場の逆コースのほうが難易度は低いと思われ、こちらを採用するのも一興かと思う。 |
その他周辺情報 | 下山後の温泉は梅花皮荘、川入荘500円。 川入荘は露天があるそう。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
予備手袋
防寒着
雨具
ゲイター
マフラー
バラクラバ
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
アイゼン
ピッケル
スコップ
行動食
非常食
調理用食材
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
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感想
5/2(火) Day1:晴れ時々曇り
東赤谷〜加治川治水ダム(登山口)〜蒜場山〜高立山〜稲葉の平△(8時間55分)
この日は休暇が取れることになったので、急きょ出発を1日早めた。GW の後半に天気が崩れる予報が出ており、神経質かもしれないが大事を取ったのだ。今回の縦走は天気が命であり、悪天になったらすべてパーになると思っていた。前日1日に夜行バスに乗り早朝に新潟に到着、JRで新発田に7時前に到着した。今回の起点となる東赤谷まではなぜか早朝7時台からバスが出ているので縦走登山には最適なのだが、乗客は最初から最後まで私一人だった。こんなんでは路線維持が可能なのか心配になってしまう。ともあれ天気もいいし、スムーズな縦走スタートだ。ゆっくり支度をしても歩き始めたのはまだ8時だった。
車道を歩くと30分ほどで車止めになり、その先は冬季通行止めであるが歩く分には全く問題はない。廃線の横を通りながら加治川治水ダムへと登ってゆく。時折見える飯豊前衛峰の稜線は昨日の悪天の影響で雲がかかっているが、徐々にとれており天気は回復している。いい兆候だ。ダムについて堰堤を渡るとそこが蒜場山の登山口だ。看板の前の道を突き進むとだんだんと藪になり、おかしいなと思って戻ったら登山ポストの横に階段があり、そちらが登山道だった。15分のロス。最初から間違ってしまい気持ちが悪いが、気を取り直して登ってゆく。
蒜場山の登山道は中間地点の岩岳まではほぼ夏道で、急勾配だが登山道の整備は良く、標高はぐんぐん上がる。岩岳からはところどころ雪がついているが、解け方が中途半端なので夏道と行ったり来たりになる。稜線もだんだんと細くなって危険になるので気を使って登った。蒜場山山頂に到着してようやく今回の縦走路の全貌を眺めることができた。遠くに大日岳(実際は薬師岳)、これは文句なく雄大。しかしその手前の烏帽子山が実に貧相に見えたのが第一印象だった。こんな目立たない山がマイナー名山?しかしそれは誤解であったのが翌日分かる。天気も随分と回復したのでラーメンを作り、お茶を入れ、大休止する。
どこまで行けるかわからないが、取り合えず先に進むことにする。蒜場の下りはどの登山記録を見ても難しいと書いてあり、最も警戒していた場所である。蟹沢にうまく入れるか、そのあとうまく出て尾根に乗れるか、が疑問であった。山頂は真っ平らな雪原となっており、とりあえず東に進んでみるがすぐ先は雪庇のようで、怖くてそれ以上行けない。雪原をよく見ると先行者の足跡があった。彼は、北のほうに回り込んでから東に向きを変え、南に巻きながら蟹沢に入ろうとしている。自分もこれに習うことにした。幸い雪原の北側は雪庇はなく、傾斜も緩いので蟹沢にうまく入ることができた。
蟹沢の下りはとても印象的だった。バックカントリーなどの経験のない私にとって、これほどの雄大なすり鉢の内側をザクザクと一人歩いていく体験は初めてで、とてもエキサイティングだった。スキーがあったら更に楽しかっただろう。最初はブロック雪崩を警戒してすり鉢の外側を歩いていたが、雪は安定しているようなので、気にせず歩きやすいところを歩いた。どこまで下るのか心配だったが、ようやく沢から脱出するポイントが見えてきた。一目瞭然、尾根と沢の底が異常に近接しているポイントがあり、さらにそこだけ雪が剥げており、何の苦も無く尾根に上がることができた。最も警戒してた蒜場山からの下りは、今日一番の興奮する楽しい時間になった。
順調にここまで来たので、できれば水が手に入る稲葉の平までと先を急ぐ。高立山の手前鞍部からヤブとなった。ヤブとしては大したことはないのだが、疲れもピークの時間でとても堪えた。なんとかまた雪の尾根に復帰し、鞍部へゆるく下ってゆくとそこが稲葉の平だった。ブナの疎林に囲まれた癒しの場所。一目で気に入ってしまった。耳を澄ますと水音が聞こえる。北へ1分下ると雪渓下から勢いよく小川が流れ出していた。
最高のサンセットと、水を豊富に使える安心感。初日から幸せな山旅をかみしめることになった。真夜中に外を眺めるとこぼれんばかりの星空。天の川まではっきり見える。この贅沢は何にも代えがたい。
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5/3(水) Day2:快晴
稲葉の平〜丸子カル〜烏帽子山鞍部(南峰往復)〜北峰〜マグソ穴峰〜キンカ穴峰〜1680m台地△(10時間10分)
稲葉の平から丸子カルへの登りは300m以上あり傾斜も急だが、藪は全く出ていない。朝の体力のあるうちなので行動はとてもはかどった。驚いたことに20分ほど登ったところでテントを発見。登山者は中に居られるようで、まだ朝6時前であり就寝中だったら申し訳ないので静かに通過した。昨日あった先行者の足跡の主は間違いなくこの方だろう。古い足跡だったので、前日のものだと思っていたが、私と同じ日に入山したようだ。昨日の陽気で足跡もかなり融けて劣化してしまったのだろう。その後この方とはお会いすることはなかったので詳細不明である(もしこれを読まれていたらコメント頂けると嬉しいです)。
※後日、この方はTadashi22さんと判明しました。無事縦走を果たされました。
丸子カルまで登るとようやく烏帽子山が大迫力で望まれた。一度下ってから北峰南峰の鞍部へと登ってゆく。所々ヤブがあるが、可能な限り雪堤を使い最低限に近い労力で通過できたと思う。北峰南峰の鞍部はとても気持ちの良いところで、残雪のない笹原が広がっている。笹原は部分的に切れており幕営にも良さそうだ。東側が絶壁になっており大日岳の眺めも良い。ここにザックを置いて南峰を往復する。山頂部稜線は残雪がほとんど無く、ヤブこぎになるのできつい。また東側は花崗岩の絶壁なので間違ってもクランポンを引っかけて転倒したりしないように注意する。酷いヤブだったが15分ほどで頂上に到達した。これにてマイナー名山7座目ゲットである。山頂部だけは藪が無く草原になっており気持ちの良いところだった。南の実川へと落ち込んでいる尾根を眺めるがすさまじい様相をしている。新潟山岳会の方がこの尾根を登られた記録も読んだが、現物の迫力を見るとまったく信じられなかった。なだらかで残雪豊富な飯豊にあって、烏帽子山は逆に急峻さ故に異常なまでに残雪がそぎ落とされ、黒々峨々としている。こんな個性の強い山が飯豊の中にも存在する。
鞍部まで戻り北峰に登るといよいよこの縦走の第二関門だ。烏帽子の下りは非常に難しいと聞いていた。しかしあまりに天気が良くルンルン気分なので緊張も緩み、不用意に雪面を下っていき途中でふと我に返った。こんなことではいかんと気を引き締める。目を皿のようにして注意深くルートを読む。素直に右方向に下ると崖に吸い込まれる。逆に左に行きすぎても下れないほどの急傾斜だ。真ん中のヤブが出ている小尾根に取り付くのが良かろうと進んでいく。そのヤブも急峻なので下れるか心配だったが、危険な岩場はうまく巻き、なんとか安全なところまで下ってホッとした(ただしヤブはハードだった。登りだと無理なのでは…)。この一連の行動は視界がなければ到底不可能であり、蒜場山からの下り以上に困難なところだと感じた。
難所を越えあとはキンカ穴峰を目指すだけだが、今度はヤブが酷くなってきた。雪庇の状態が非常に悪く、藪を漕がざるを得ない。マグソ穴峰は北斜面の残雪とヤブを巻いてなんとかかんとか越え、キンカ穴峰への鞍部(1410m)へと下ったが、そこからの登りで行き詰まった。雪堤は尾根の遙か下まで落ちておりまったく使えない。藪の木々は雪が落ちてからしばらくたっており、枝は上を向き元気いっぱいピチピチ状態だ。しばらく迷ったが選択肢はもうこれしかない、意を決してヤブに突入した。ここのヤブはすさまじかった。背丈以上の灌木(ミヤマハンノキ?)と笹に阻まれ、かつ急な登りなので藪が逆目で全く進まない。1時間も頑張ってようやくすぐそばのピークに登り付いたが、その後も激しいヤブが続いた。天気も良すぎるくらいで暑く、意識が朦朧としてくる。ようやくヘビーなヤブを抜けキンカ穴峰の直下に出たときには日も傾いていた。荷物を放り出して投げやりに大休止する。ほんと疲れた…
しかしここには幕営適地が全くない。仕方なくキンカ穴峰を巻きつつ更に登ってゆく。標高1680mほどでフラットな台地に出て、そのどん詰まりの丘の麓にようやく適地を見つけた。眺めが良いにもかかわらず南の丘が風を遮ってくれ、非常に快適な場所だった。
今年は雪の量が多いと聞いており、マグソ穴〜キンカ穴も割と楽に行けるのではと淡い期待をしていたが全くそんなことはなかった。それとも私のルートファインドがまずかったのだろうか。真実はいまだ判らないが、何はともあれこの先は藪はもう無くようやく解放された。日本海に(というか佐渡の後ろに)沈む夕日をノンビリ眺めながら、安心感に浸っていた。
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5/4(木) Day3:快晴
1680m台地〜実川山〜薬師岳〜西大日岳〜大日岳〜御西小屋〜烏帽子岳〜梅花皮岳〜梅花皮小屋△(8時間55分)
晴天は今日も続いており天候は何も心配なさそうだ。実川山までは結構な斜度が続くが今朝は気温が高くて雪も腐っているので全く問題はない。実川山から先は風が強くなったが、飯豊にしては今日は弱い方だろう。サクサク登り薬師岳に順調にたどり着いた。今までたどった縦走路がここからはほぼ全貌が確認でき、感慨深く眺めた。蒜場山も烏帽子山ももう遥かなる山だ。
薬師岳から西大日岳をたどり大日岳まではほとんど標高差がなく、あっという間にたどり着いた。西大日岳は2001年夏の縦走で訪れており16年ぶりの再訪。三角点もあり懐かしく眺めた。大日岳ではこの縦走で初めて人に会いあいさつした。スキーの集団だった。大日岳から先は今回の縦走で滑落が一番心配だった箇所である。転倒したら一巻の終わりの危険な箇所だが、今日は雪も柔らかく、トレースもしっかりついており、それを忠実にたどれば問題なかった。
一般ルートに入ると人もたくさんおり、あいさつしながら進む。GWとはいえ飯豊は春山では上級者向けである。最近の飯豊主稜線の人気ぶりは全く恐れ入る。御西小屋は2階まで雪で埋もれており、2階の入り口も穴を掘らないと入れない状況だったが、すでに小屋内には随分人がいそうだった。今日はもともと御西までの予定だったが、今日はあまりにも順調すぎて時間は十分ある。梅花皮小屋まで行くことにする。
御西小屋から先は標高差も少なく実に快適だった。眺めは大日岳が常に左にあり、雄大な山塊が徐々に形を変えてゆく様が楽しい。そして、昨日から非常に気になっていたが、二王子岳の残雪が非常に多く真っ白だ。魅惑的な純白の山からなかなか目が離れない。更に門内岳へと続く縦走尾根の快適そうなこと。昨日の烏帽子周辺の様子と対照的で、アップダウンの少ない尾根に雪庇がきれいに残っており、見るからに快適そうだ。天気が続くようなら明日以降あちらに鞍替えしようかと途中真剣に考えた。今日中に門内小屋まで行ければ十分可能に思われたが、後ほど天気をチェックしたら明後日は雨なので涙をのむことになったが、残雪期限定のダイナミックな縦走路をいくつも持つ飯豊の懐の深さには驚嘆するばかりだ。
烏帽子岳の登りは少しきついが、昨日に比べれば全然労苦は小さい。なんと3日連続で烏帽子と名の付く山に登ったことになる。こんなことは初めてだ。その先梅花皮岳まで来ると、眼下に梅花皮小屋と北股岳が大迫力で望まれた。この時期この角度からの北股岳は初めてだが、雪庇の発達の仕方が芸術的でいつまで見ていても見飽きなかった。全く素晴らしい形の山だ。
無事梅花皮小屋に到着。門内まで行こうと思えば行けたが、二王子をあきらめた今はそれほど急いでも仕方がない。おまけにこの小屋はGWから水が出ているという貴重な場所なのだ(しかし水が出るようになったのはちょうどこの日からだったそうだ。なんという幸運!)。そんなわけで今日は快適な梅花皮小屋に泊まることにした。空いている1Fに陣取ったが、お隣が秋田・大館から来られた単独行の方でいろいろ話をした。石転び雪渓から登り、今日は本山を往復、明日は石転びをボードで下るそうだ。東北北部の穴場スポットをいろいろ教えてもらったが、どこの山も人が少なそうでほんとうらやましい。そして話を聞けば聞くほどバックカントリーやスノボをやってみたくなった。
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5/5(金) Day4:晴れ時々曇り
梅花皮小屋〜北股岳〜門内岳〜地神山〜頼母木山〜頼母木小屋〜えぶり差岳〜頼母木小屋〜頼母木山△(9時間35分)
朝焼けの北股岳はドラマティックで、その迫力は北アルプスの高峰にも負けないと思う。朝食後パッキングそっちのけで北股に気を取られていたため出発が遅くなってしまった。
北股岳の登りは途中までは夏道が出ているのでさっさと進む。その先は雪でマッターホルンのような様相となるので、クランポンを装着してピッケルも準備し、完全なる体制で臨んだ。大日岳と同じくらいの急斜面で危険ではあるが、こちらはあっさりすぐ終わってしまう。小屋から30分で山頂についてしまった。看板は無く鳥居のみあるのは16年前と変わっていない。落ち着く山頂だ。石転び雪渓を覗いてみたいが、雪庇の上に乗るわけにもいかずお預けだ。
北股岳から先は飯豊でも最ものんびりした稜線で牧歌的だ。門内岳、地神山、頼母木山と順調に過ぎ、頼母木小屋にたどり着いた。この小屋は16年前の縦走でも泊まっているのだが、外装はリメイクしたものの中は当時のままで懐かしかった。今日はここに泊まるが時間はまだ10時前であまりにも早すぎる。えぶり差岳を空身で往復することにした。
実はえぶり差は2004年6月にも胎内ヒュッテから足の松尾根経由で登っており、2度目である。この時は山頂の避難小屋で一泊した。縦走途中に訪れるのは今回が初めてだが、途中の鉾立峰が意外ときつく、こんなだったかしらと思ってしまう。ともあれ、頼母木小屋から2時間かからずえぶり差岳山頂に到着した。荷物がないと気持ち的にはそれこそ跳ぶように歩けてしまう。
えぶり差岳は飯豊にあって北の果て感の強い山だ。この先を見渡すと稜線は急激に標高を下げ、新潟の平野へと落ち込んでおりその先はもう海である。頂上部はとがっているがすぐ下はフラットで小屋もありのんびりとしている。不思議な雰囲気のする山である。やはり200名山にふさわしい個性があると個人的には思う。山頂では会津の弥平四郎から入山されたという方とお話ししたが、門内〜二王子のルートをいつか行きたいものですね、という話で盛り上がり楽しいひと時だった。
頼母木小屋まで戻ったが時間はまだ早く、せっかく硬派な縦走をしてきたのに2日連続で小屋泊まりも癪なので、頼母木岳まで登ってテントを張ることにした。幸い山頂の西側に大きくてフラットな雪渓があり、眺めも素晴らしく良かった。多少風が強いのが気になるが、明日朝までは天気が良いようなので問題なかろうとテントを張った。これが翌日仇になろうとはこの時は全く予測していなかった。
2日前と同じく日本海に沈む夕陽を見ながらの贅沢な幕営となった。楽しかった縦走も明日でおしまい。それもこれも4日間まるまる晴れという奇跡的な天候のおかげだった。
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5/6(土) Day5:曇りのち小雨
頼母木山〜西俣ノ峰〜梅花皮荘[下山](3時間15分)
夜中になると風の強さが尋常ではなくなりテントが大きくたわむようになった。耐えきれなくなり3時半に起床。今日の風は雨の前触れのせいか湿り気が多く、テント内は全てのものが結露してしまってビショビショだ。火はなんとか使えそうなので簡単に朝食をとってから、撤収することにする。今までの経験上、今朝はテントが壊れるほどの風ではないのだが、なぜこれほど影響を受けるのか? 外へ出てみて判ったが、昨日掘った雪穴と風よけのための壁が強風のため融けてしまい、半分くらいの高さになっていた。張り綱の固定も雪が溶けて露出したせいで外れており、これでは耐えられないはずである。ロケーションを重視しすぎて幕営場所の選定ミス、更に雪穴の深さ不足だった(一昨年のGW日高ではテント高さの半分が埋まるくらいの雪穴を掘ったが、このくらいは最低限必要だったろう)。元々外に置いていた靴のビニール袋がどこかに飛ばされてしまっていたが、それ以外は全て無事に撤収でき、眠い目をこすりつつも出発できた。
頼母木山頂で飯豊稜線の最後の風景に別れを告げる。天気は東は晴れ、西には黒い雲が控えているが、しばらくは持ちそうだ。頼母木山から西俣ノ峰へは厳冬期限定のルートになる。登山道ではないが雪崩の危険が少ないためこの時期は人気で、昨日も多くの人がここから下山していくのを横目で見ていた。実際降りてみると広くはっきりしない尾根がずっと続き、ルート取りが難しかったが、このGW期間のトレースだらけなので何も問題なかった。頼母木山からしばらく笹ヤブを漕ぎ、雪面に入ってちょっと下ると風はぴたりと止んだ。おまけに幕営適地もいくつかあった。ここまで山頂からわずか20分ほどだ。わざわざ風の強い頼母木山頂に幕営した私はほんとアホであった。
西俣ノ峰へはずっと急斜面が続くためスリップしないように注意はいるが、標高はみるみるうちに下がる。転倒しても安全そうなところは足スキーを併用して快速に下って行く。梅花皮荘へ下る小尾根の分岐には高い木に目立つようピンクテープが2つ掲げてあった。間違って直進してしまう可能性は少ないだろう。小尾根に入ると小雨が降ってきた。豊富な残雪はまだ粘って続いており、引き続き快速に下った。標高600mほどでさすがに雪堤は切れ、乾燥した足元の悪い道となる。最後の最後のあがきだが、膝ガクガクなのでスリップしないよう十分注意してゆっくり下る。ここで登りの単独行の方に会ったが、蒜場山や烏帽子山をご存じだったので驚いた。この縦走でお会いした方で、私がたどったルートをすぐに判ったのはこの方だけだった。
西俣ノ峰の登山口に到着! 難しい縦走を何事もなく終えた充実感は大きかったが、それもこれも天気に大いに恵まれたのがほぼすべての要因だろう。林道を10分歩いて梅花皮荘に到着した。温泉につかり五日間のヨゴレを落としてようやくリラックスできた。11:35のバスに乗り込む頃には本降りの雨になった。雨に煙るシャチ模様の飯豊を見送り、山をあとにした。
小国駅での列車の待ち時間は2時間もあったが、えぶり差頂上で会った方と近くの食堂で色々お話しして楽しく過ごした。GW休日は明日まで。このまままっすぐ小田原に帰るのも何なので、赤湯の温泉旅館に運良く空きを見つけ、ごやっかいになった。赤湯のお湯は硫黄泉で疲れや傷を癒すのに最適だった(今回は不覚にも右足の土踏まずに軽い靴擦れを作ってしまったが、温泉のせいかその後3日で完治)。旅館の裏にはなんと烏帽子山という小さな丘があり公園になっている。全くの偶然だが、ここまで来たら登らざるを得ず(笑)、日没前の新緑の丘を満喫した。こうして都合4つの烏帽子を巡る山旅も無事終わりを迎えた。
コメント
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お疲れさまでした。
取り急ぎコメントつけさせていただきます。
これからゆっくり読みますが、お疲れさまでした(^∇^)
Kazmasuさん
コメントありがとうございます。
ほんとにきつかったのは2日目の後半だけです。それ以外は天気も良くとても楽しめました。最低3日は天気に恵まれる必要があるというのはハードルが高いですが、この時期では充実度の高いコースですよ。
5/4に御西小屋にて、蒜場山から来た、と言う若者と会いました。
その方に話を伺うと、自分以外にも、もう一人、
同じルートを行った登山者が居られるようだ、と仰っていましたが、
その登山者とは、triglavさんだったようですね。
去年の残雪期、私も同じルートを歩きましたが、マグソ穴〜キンカ穴の藪がきつかった記憶があります。
今年は雪が多いので藪漕ぎ負荷は軽いのでは?なんて楽観的に考えてましたが、
全然そんな事はなかったようですね。
しかし、ハードな藪漕ぎが有るからこそ、このルートは輝くような気がします。
藪から解放されて、実川山に辿り着いた時は、言葉にならないような嬉しさを感じ
たものでした。
このルートを歩いた事がある登山者は数少ないですので、
もしtriglavさんにお会いする機会があれば、その辺の感想をお聞きしたいものです
因みに、門内〜二王子岳の稜線も、蒜場山〜大日岳と同じくらいハードな藪漕ぎが味わえます。
(体感的には、門内〜二王子の藪の方が少しだけキツイかも?)
もし、今回の縦走で味を占めましたら、そちらもぜひトライしてみて下さい。
では、またのご活躍を期待しております
Luskeさん
コメントありがとうございます。
Luskeさんも歩かれたのですね。昨シーズンは異常な寡雪だったので、相当つらかったのではないでしょうか。おっしゃるようにマグソ穴〜キンカ穴があまりにもきつすぎたのでその印象が強すぎるのですが、全体としては残雪をうまくつなげられたと思います。雪の状態は例年より良かったんでしょうかね。実川山手前まで抜けたときの充実感は私も同じです。あのヤブを味わった人しかわからない感慨だと思います。
門内〜二王子の稜線は途中ずっと加治川の対岸に見ながら歩いていましたが、見る限り一部を除いて雪庇はほとんど落ちておらず、標高差も少なくとても快適そうに見えました。他の登山者からのまた聞きですみませんが、今シーズンは新潟山岳会の方が歩かれたそうです。3泊で大石ダムまで抜けたそうで、意外と楽だったそうです。私も二王子までの稜線を何度も眺めながらいつか挑戦しようと強く思いました。
感想欄のDay2の朝のところに書きましたが、Luskeさんが御西小屋でお会いした若者は私が抜かしたテントの方だと思います。無事抜けられたようで良かったです。
こんにちは 梅花皮小屋で隣だったものです。
さすが最後は雨だったようですね。お疲れ様です。
お聞きしたルートが気になって調べたら見つけました。
いやー、大したルートですね。いつかは・・いやむりですね。
山歴もすごいものがありますね。
今後フォローさせていただきます。
マイナー12名山完登期待しています。
rabaさん
どうもどうも。先日はありがとうございました。
記録の通りで、最終日だけ少し雨に当たりましたが、今回はありえないくらいの晴天のおかげで飯豊の魅力を満喫できました。
蒜場山からのルートは誰にでもおすすめできるものではありませんが、飯豊の魅力+ヤブを満喫できるので、私はとても満足でした。本文にも書いてますが、二王子〜門内のルートもこの時期ならではの魅力だと思います。
マイナー12名山は完登は厳しいかな〜と思ってますが、あと2〜3つくらいは頑張ろうかなと思ってます。
またバックカントリーのこととか教えてください。
お互い気を付けて登っていきましょう。
triglavさん
返信ありがとうございます。
マニアックなお話し大変面白かったです。
これからの登山楽しみにしています。
東北もいよいよ登山シーズン
静かな山行を楽しみたいと思います。
また1座。お見事です。天候も良くて、いい山でしたね。
マグソ穴峰からキンカ穴峰にかけての藪、厳しそうですね。
蒜場山からの下り、烏帽子からの下りも難しそうです。
厳しい前半に対して、後半は悠々稜線漫歩といった感じでしょうか。
でも、印象に残るのは厳しかった所ですよね(笑。
私もいつか、このルート歩いてみたいです。
kihaさん、
どうもです。また一座増えてしまいました。久々に残雪期の長い縦走楽しみました。
マグソ〜キンカを歩いたときは二度と来るかと思いましたが、やっぱ最終的に思い出に残るのは、きつかったところなんですよね。二日目終えてテントでまったりしてたときの充実感はなんとも言えません。
今回は3泊でも良かったんですがせっかくなので後半は稜線漫歩しました。何から何まで大満足です。こんな奇跡的な天気もあるのですね。
kihaさんの記録も楽しみにしてます。確率はとても少ないでしょうが、またどこかの稜線でお会い出来るといいですね。
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