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Yamareco

記録ID: 1207000
全員に公開
ハイキング
大雪山

大雪山バックパッキング

2017年07月21日(金) ~ 2017年07月24日(月)
 - 拍手
体力度
8
2~3泊以上が適当
GPS
25:24
距離
42.2km
登り
2,248m
下り
3,113m
歩くペース
標準
1.01.1
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
1:39
休憩
0:04
合計
1:43
15:14
15:15
21
15:36
15:39
3
15:42
宿泊地
2日目
山行
3:08
休憩
0:02
合計
3:10
11:23
81
宿泊地
12:44
12:45
64
13:49
13:50
43
3日目
山行
10:10
休憩
1:13
合計
11:23
6:27
6:27
121
8:28
8:28
47
9:15
9:34
53
10:27
10:29
48
11:17
11:30
83
12:53
13:28
8
13:36
13:36
24
14:00
14:01
35
14:36
14:37
6
14:43
14:44
43
15:27
15:27
47
16:14
16:15
34
4日目
山行
7:33
休憩
1:05
合計
8:38
5:39
5:39
43
6:22
7:06
44
7:50
7:51
45
8:36
8:36
49
9:25
9:44
100
11:24
11:24
50
12:14
12:14
92
13:46
13:47
6
13:53
ゴール地点
天候 1日目:晴れ(風強)
2日目:雨→曇り時々晴れ
3日目:晴れ
4日目:晴れ
過去天気図(気象庁) 2017年07月の天気図
アクセス
利用交通機関:
バス ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
■行き
札幌〜旭川(バス)
旭川〜層雲峡(バス)
層雲峡〜黒岳7合目(ロープウェイ&ペアリフト)
■帰り
東大雪荘〜新得(バス)※季節運行(1日2便)
新得〜札幌(JR)
コース状況/
危険箇所等
■テントサイトの水場状況
黒岳石室…石室の天水(雨水)が利用可
白雲避難小屋…避難小屋指定の水場が利用可
南沼野営指定地…雪渓の融水が利用可
※いずれも要煮沸
その他周辺情報 下山後の温泉は東大雪荘(500円)ビールの自販機あり(400円/350ml、600円/500ml)
【1日目】黒岳ロープウェイを降りて、ここから本格スタートです
2017年07月21日 13:51撮影 by  COOLPIX S30, NIKON
2
7/21 13:51
【1日目】黒岳ロープウェイを降りて、ここから本格スタートです
で、いきなりさんちょ!マジ風が強かった〜
2017年07月21日 15:18撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
7/21 15:18
で、いきなりさんちょ!マジ風が強かった〜
あの雪形は今年も健在です
2017年07月21日 15:19撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
7/21 15:19
あの雪形は今年も健在です
チングルマ畑の向こうに見えるのは〜
2017年07月21日 15:36撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/21 15:36
チングルマ畑の向こうに見えるのは〜
黒岳石室は道内で唯一、ビールが買える山小屋です!
2017年07月21日 15:37撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/21 15:37
黒岳石室は道内で唯一、ビールが買える山小屋です!
【2日目】雨が止むのを待って、午前遅くに出発となりました。雪渓ビール頂きました〜♪
2017年07月22日 11:14撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
7/22 11:14
【2日目】雨が止むのを待って、午前遅くに出発となりました。雪渓ビール頂きました〜♪
さて、北海岳へとコースを進みます
2017年07月22日 11:22撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/22 11:22
さて、北海岳へとコースを進みます
雨の影響もあってか増水気味の赤石川。靴を履いての渡渉にギリギリの水位でした
2017年07月22日 11:36撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
7/22 11:36
雨の影響もあってか増水気味の赤石川。靴を履いての渡渉にギリギリの水位でした
御鉢平はいつ見ても雄大。以前より裾野まで緑化が進んでいるように感じましたが気のせいでしょうか?
2017年07月22日 12:44撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
7/22 12:44
御鉢平はいつ見ても雄大。以前より裾野まで緑化が進んでいるように感じましたが気のせいでしょうか?
北海岳山頂。ガスってます
2017年07月22日 12:46撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
6
7/22 12:46
北海岳山頂。ガスってます
ガスが切れて、白雲岳の勇士も
2017年07月22日 13:07撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/22 13:07
ガスが切れて、白雲岳の勇士も
白雲避難小屋
2017年07月22日 14:12撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
7/22 14:12
白雲避難小屋
白雲避難小屋のテン場の様子です。土曜日の割には空いていました
2017年07月22日 15:47撮影 by  COOLPIX S30, NIKON
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7/22 15:47
白雲避難小屋のテン場の様子です。土曜日の割には空いていました
テントサイトはフラットでペグの利きもバッチリ!天気さえ良ければ快適なテント生活は君のもの!
2017年07月22日 16:07撮影 by  COOLPIX S30, NIKON
4
7/22 16:07
テントサイトはフラットでペグの利きもバッチリ!天気さえ良ければ快適なテント生活は君のもの!
【3日目】朝、目に飛び込んできたのが今日歩くコースの全容。高根ヶ原とその向こうに鎮座するトムラウシ山。何とも神々しい景色です
2017年07月23日 03:42撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 3:42
【3日目】朝、目に飛び込んできたのが今日歩くコースの全容。高根ヶ原とその向こうに鎮座するトムラウシ山。何とも神々しい景色です
夜明け。夕べの星空は新月だったのかな、天の川ドーンって感じで凄かった
2017年07月23日 04:13撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 4:13
夜明け。夕べの星空は新月だったのかな、天の川ドーンって感じで凄かった
パッキングを手短に終え、いざ、高根ヶ原へ!
2017年07月23日 05:27撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
7/23 5:27
パッキングを手短に終え、いざ、高根ヶ原へ!
空も雲も山も…キラキラ輝いています
2017年07月23日 05:27撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 5:27
空も雲も山も…キラキラ輝いています
白雲岳を反対側から
2017年07月23日 05:52撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 5:52
白雲岳を反対側から
進行方向左手を見下ろすと高原温泉の池沼群
2017年07月23日 07:14撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/23 7:14
進行方向左手を見下ろすと高原温泉の池沼群
高根ヶ原ではコマクサの群生も見られました
2017年07月23日 06:09撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 6:09
高根ヶ原ではコマクサの群生も見られました
湿地帯ではワタスゲの姿も
2017年07月23日 07:43撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/23 7:43
湿地帯ではワタスゲの姿も
忠別岳がぐーんと迫ってきました
2017年07月23日 08:16撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 8:16
忠別岳がぐーんと迫ってきました
忠別沼と化雲岳方面の山
2017年07月23日 08:27撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 8:27
忠別沼と化雲岳方面の山
忠別、さんちょ!トムラウシはまだ雲の中です
2017年07月23日 09:15撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 9:15
忠別、さんちょ!トムラウシはまだ雲の中です
雪渓が豊富な忠別避難小屋
2017年07月23日 10:06撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 10:06
雪渓が豊富な忠別避難小屋
五色岳へGO!
2017年07月23日 10:28撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 10:28
五色岳へGO!
五色、さんちょ!
2017年07月23日 11:19撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 11:19
五色、さんちょ!
ホシガラス。自由気ままな吟遊詩人を彷彿させるコイツ、好きだな〜
2017年07月23日 12:21撮影 by  COOLPIX S30, NIKON
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7/23 12:21
ホシガラス。自由気ままな吟遊詩人を彷彿させるコイツ、好きだな〜
五色のハイマツ林を抜けるといよいよトムラウシのお姿がっ!お花畑も見事!
2017年07月23日 12:34撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 12:34
五色のハイマツ林を抜けるといよいよトムラウシのお姿がっ!お花畑も見事!
化雲、さんちょ!カウンのヘソと呼ばれる大岩とは初対面です
2017年07月23日 12:53撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 12:53
化雲、さんちょ!カウンのヘソと呼ばれる大岩とは初対面です
化雲からトムラウシまでは実際の距離以上に長い道のり。やっと見えた本山。それでもまだ遠いのが遥かなる山たる所以
2017年07月23日 15:54撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 15:54
化雲からトムラウシまでは実際の距離以上に長い道のり。やっと見えた本山。それでもまだ遠いのが遥かなる山たる所以
この日はもう疲れてしまい山頂はあきらめ巻道でテントサイトへ直行〜。この日はテント張って飯食ってバタン!夜中に目が覚めて見あげた星空は忘れられない
2017年07月23日 16:47撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/23 16:47
この日はもう疲れてしまい山頂はあきらめ巻道でテントサイトへ直行〜。この日はテント張って飯食ってバタン!夜中に目が覚めて見あげた星空は忘れられない
【4日目】天気晴なれど下界は雲海。朝の景色ですね
2017年07月24日 05:25撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/24 5:25
【4日目】天気晴なれど下界は雲海。朝の景色ですね
カラミでトムラさんちょ!ご来光は逃したけど朝の凛とした空気を感じることはできました
2017年07月24日 05:38撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 5:38
カラミでトムラさんちょ!ご来光は逃したけど朝の凛とした空気を感じることはできました
山頂から石狩岳方面と沼ノ原
2017年07月24日 05:44撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 5:44
山頂から石狩岳方面と沼ノ原
大雪山の盟主、旭岳と表大雪の山々
2017年07月24日 05:52撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 5:52
大雪山の盟主、旭岳と表大雪の山々
オプタテシケ山〜美瑛岳〜十勝岳。その向こうに鋭利な稜線を覗かせているのは芦別岳でしょうか?
2017年07月24日 05:53撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 5:53
オプタテシケ山〜美瑛岳〜十勝岳。その向こうに鋭利な稜線を覗かせているのは芦別岳でしょうか?
いつか登りたいニペソツとウペペサンケのシルエット…いつまでも眺めていたいカムイミンタラの本領がトムラウシ山頂からの景色に凝縮されているように感じました
2017年07月24日 07:24撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 7:24
いつか登りたいニペソツとウペペサンケのシルエット…いつまでも眺めていたいカムイミンタラの本領がトムラウシ山頂からの景色に凝縮されているように感じました
パッキングを終えいよいよ最終日の下山開始。トムラウシ公園からの本山ですが化雲から見る山容とは別の山のよう
2017年07月24日 07:55撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 7:55
パッキングを終えいよいよ最終日の下山開始。トムラウシ公園からの本山ですが化雲から見る山容とは別の山のよう
トムラ公園を俯瞰
2017年07月24日 08:17撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 8:17
トムラ公園を俯瞰
コマドリ沢の源頭はまるでカールの様です
2017年07月24日 08:45撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 8:45
コマドリ沢の源頭はまるでカールの様です
長く暑く辛い下りでしたが終焉も間近です
2017年07月24日 12:12撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7/24 12:12
長く暑く辛い下りでしたが終焉も間近です
で、下山。温泉&ビールが待っている♪
2017年07月24日 13:46撮影 by  E-PM1 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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7/24 13:46
で、下山。温泉&ビールが待っている♪

感想

 旅の道具の一切合財をバックパックに詰め込み、シンプルな山の生活を楽しむバックパッキングという遊びは本当に楽しい。大雪山の広大なフィールドを旅するのは縦走登山というよりもバックパッキングと呼んだ方がふさわしいと勝手に思っている。大雪山系と呼ばれる地域で未だ歩いていない場所もあるし、同じ場所を何度訪れても飽きない。だから何度でも、人一倍大きな荷物を背負って大雪山を目指すのである…。

【1日目】黒岳7合目〜黒岳石室
 旭川から層雲峡行のバスで起こったまさかのトラブルで到着が遅れてしまった。層雲峡にあるセコマで最終の買い出しを終えると時刻は午後1時をわずかに回っていた。ロープウェイとリフトを乗り継ぎ7合目から事実上のスタート。ここから黒岳山頂までは1時間程度の行程である。スライドする登山者に山頂の様子を聴くと口々に「物凄く風が強かった」とのことである。やれ「記念撮影は山頂標識にしがみついた」とか「四つん這いになって歩いた」とか、こういうのは話半分に聴いておくものだが、いやいや。実際に山頂に立つと本当に強風でバックパックが風にあおられて真っ直ぐ前に進めない。まったくもってこれでは立ち止まって写真2、3枚写すのが限界で(これも話半分で聞いておくとよい)山頂を後にし石室へと歩を進める。
 石室でテント泊の手続き(1泊/500円)を終えてテントを張ろうとするが強風に難儀する。すると先行してテントを張り終えた外国人が「君の小さなテントならこっちのスペースに張ればいいんじゃない?」と(たぶん、英語でそういったと思う)ハイマツに覆われた二つのテントの間にある僅かなスペースを指差した。傾斜地であったが確かに防風効果はテキメンの場所だ。おまけに設営を手伝ってくれたりして…お礼に下界から持ち運んだ貴重なサッポロクラッシックビール(北海道限定ビール、だ)を差し出すと満面の笑みで受け取り「自分は東京に住んでいるが故郷はドイツ。クラッシックは最高のビールだよ。ありがとう!」(と、いったと思う)ふーむ、ビールの本場であるドイツ人に褒められるクラッシックビールは道民にとって誇り高いことだが、このドイツの青年もなかなか上手いな、と思ってしまったよ。
 しかし、ここのテン場はかなり埃っぽい。風が強いとなおさらでテント内も脱いだ靴の中も食べ物も…あっという間に砂埃まみれ。今まで何度か泊まっているが今回は特に酷い。まともに食事さえできないと判断し石室を頼りに中を覗いてみると先のドイツの青年をはじめ常連風(?)の人々が食事をしながら談笑しているではないか。中に入って聴けばこれまで受付カウンターのみだった場所を改装しフリースペースとして開放しているという。管理人に断ってから話の輪に加わるとすぐに打ち解けた。こういうスペース、なかなかイイな。ひとしきり飲んで話して、テントにもぐりこんだのは夜10時頃だったろうか。夜半から降り出した豪雨がテントを叩く音に明日からの旅にわずかな不安を感じながらも、いつの間にか眠りの渦の中に落ちていった。

【2日目】黒岳石室〜白雲岳避難小屋
 翌日は大雨の朝。少し小雨になったかなと思った刹那、さらに強い雨足でテントのフライシートを打ちつける。これではなかなか寝袋を抜け出すことができない。とは言えいつまでもテント中に居る訳にもいかない。石室で天気の情報収集をすると午後に向けて空模様は回復傾向とのこと。ならば鳴くまで待とうホトトギス。待機するのも山のうちだ。
 やがて予報通りに天気は回復し、遅まきながら大雪山バックパッキングのリスタートだ。ほぼ5時間遅れのスタートは今日の予定変更を余儀なくされたが、まぁ、計画厳守より晴れた大雪山を歩くシアワセの方を取るね、僕は。うん。
 増水気味の赤石川を渡渉し、例年遅くまで残る雪渓の上を歩き、緩やかな斜面を登りきると北海岳の山頂だ。ここからのお鉢平の景色は最高なのだが、生憎ガスが立ち込めてきた。視界の利かない中、北海平の方向から軽快な鈴の音が聞こえてきたと思ったらトレイルランナーだった。風のように颯爽と大雪の自然を駆け抜けたらさぞかし気持ちだろうなーと素直に感じる。ここ数年でトレイルランナーは本当に市民権を得たなぁ。
 北海平を進むにつれガスも晴れ白雲岳のごつごつとした山肌も露わに。その山の基部を回るようにしてハイマツ帯に入ると灌木の切れ目から白雲避難小屋が見えてきた。白雲岳避難小屋のキャンプ指定地には遠目からも数張のテントが確認できたが思ったより数は少ないようだ。テント場は今朝の雨の影響もなくグランドはすっかり乾いている。昨日濡れたテントもシュラフカバーも衣服も見る見る乾いていく…夏のキャンプはこれだからありがたい。雨の影響で出足が遅れ移動距離も短くなってしまったが、その分のんびりテント生活ができるのがうれしい。僕は山道を歩いている時と同じくらい(いやそれ以上に?)テントの中でのんびりすることが好きであり、これが僕の理想とする山の生活なのだ。

【3日目】白雲岳避難小屋〜南沼キャンプ指定地
 野鳥の鳴声のサラウンドで目が覚めた。テントから起き出し外の景色を見やると昨日は雲に覆われていた高根ヶ原からトムラウシまでの景色がクリアになっている。これはまさに僕が今日一日かけて歩こうとしている景色の全容であり否が応でもテンションが上がる。モルゲンロートまではいかない控えめな朝の光景の中、夕べ仕込んでおいたアルファ米の五目御飯とスープで軽い朝食を済ませ早々に出発。アルファ米は全部食べてしまわず行動食としてしまうのがいつものパターンだ。
 高根ヶ原はアップダウンがほとんどない広大な溶岩台地で晴れていれば最高の見晴しと気分が堪能できる、僕的には大雪山の核心部の一つと思っているエリア。今日のシチュエーションであれば最高の部類だ。青空にハイマツの濃いグリーンや残雪をわずかに纏わせた周囲の山々のコントラストが素晴らしい。足元にはコマクサをはじめとするたくさんの高山植物。大きく切れ込んだ左手にまだ半分くらいは雪の下ではあるが高原温泉の池沼群が広がる…。地形的に荒天の時はかなりヤバいことになるがこの日はハイリターンだった、と山の神様に感謝するしかない。
 忠別岳、五色岳と溶岩台地の続きのような山をパスして五色のハイマツ帯を抜けるといよいよ大雪の奥座敷とも言われるトムラウシ山が見えてきた。その山の大きさたるや、他の山を圧倒的に凌駕しその存在感は大雪山の主峰である旭岳よりも大きいのではないかと感じてしまう程だ。五色岳から化雲岳へのなだらかな斜面に広がる花畑とその向こうに聳えるトムラウシとの光景は大雪山ベストショットのひとつ。そんな中を歩くのだからもう堪らない。
 木道を歩き、化雲の頂上で休憩していると初日から行程が一緒だったドイツの青年が追いついてきた。彼は天人峡に下山するため今日のキャンプ地はヒサゴ沼だという。僕は初日、二日目の遅れを取り戻すためにもう少し歩を進めて南沼のキャンプ場まで行きたい。ならばここでお別れだ。固い握手で短い国際交流はおしまい。
 化雲からトムラウシまではアップダウンの大岩のガレを歩く、思ったよりハードな行程だ。一服の清涼剤はナキウサギの愛らしい鳴声であろう。このあたりは大雪山系でも最もナキウサギ密度が濃いところではないだろうか(といっても2度ほどしか姿を見たころが無いが…)
 かれこれ11時間の行動時間の末に北沼までたどり着いたが、頂上まで登りきる末脚は残っていない。素直に巻道を選び頂上の反対に位置する南沼のキャンプ指定地へと直行した。溢れる雪渓の溶け水とお花畑に囲まれた素晴らしいテントサイトなのだがトイレ問題が仇となって「日本一汚いテント指定地」などと呼ばれてい
るのが残念だ。
この日はテントを設営し、虎の子の一本となったビールを開けて(これには脳ミソにガツンときて五臓六腑にジワーンと沁みたぜっ!)簡素なごはんを食してバタンキュウ。明日の晴天に期待だ!

【4日目】南沼キャンプ指定地〜東大雪荘
 おとといの白雲避難小屋といい夕べといい、星空の凄さったら無かった。ちょうど新月が近かったため星や天の川が際立ってクッキリと見て取ることができた。
 朝は昨日登れなかったトムラウシ山をカラ身で登頂する。ご来光には時間が遅かったがそれでも朝焼けの残像を感じながら大雪山の山々を俯瞰できたのが嬉しかった。山頂からは旭岳をはじめ昨日までに通過してきた白雲岳、忠別、五色、化雲岳の山々の景観が・・・そして十勝連峰の峰々、東大雪の山々、と眺望がバツグンなのだ。ちょうど大雪山と十勝連峰の中点に位置するこの山ならではの景色だと思うのだが、ここから見る大雪山の全容はまさに神々の遊ぶ庭=カムイミンタラと呼ぶにふさわしい。
 テントサイトに戻ってパッキングを済ませ、後ろ髪をひかれる思いで下山。東大雪荘まではアップダウンも多く、長く、暑い道のりであったが、下山後の温泉とビールでひと心地つくとじんわり旅の思い出がこみ上げてきた。そして定刻通りに東大雪荘を発車したバスは僕一人だけを乗せて新得の街へと向かった。

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