扇沢〜爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳〜五竜岳〜唐松岳〜八方
- GPS
- 52:20
- 距離
- 23.9km
- 登り
- 3,008m
- 下り
- 2,501m
コースタイム
6:30柏原新道登山口〜10:00種池山荘10:35〜11:20爺ヶ岳南峰12:00〜12:15爺ヶ岳中央峰〜13:20冷池山荘〜テント場
●7月17日(日)
4:10冷池山荘〜5:15布引山〜6:10鹿島槍ヶ岳南峰6:35〜7:10北峰分岐、北峰往復7:20〜8:50キレット小屋(本隊5人と分離)9:10〜10:05口上沢のコル10:10〜12:45五竜岳13:15〜13:55五竜山荘
(本隊5人は15:25五竜山荘着)
●7月18日(月)
4:35五竜山荘〜7:05唐松頂上山荘7:15〜7:30唐松岳7:50〜8:05唐松頂上山荘8:30〜9:00丸山〜10:05八方池〜10:50八方池山荘
天候 | 3日とも 晴れのちガス |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー 自家用車
タクシー利用の場合、近くの駐車場を利用できる。 ・兎平〜八方駅 : リフト、ゴンドラ ・八方駅〜白馬駅 : 徒歩 ・白馬駅〜信濃大町駅 : JR大糸線 |
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所 八峰キレット、唐松岳南の牛首周辺。 クサリやハシゴもあって難なく進めますが、岩場に慣れていない人は止めたほうが良いと思います。 |
写真
感想
●7月16日(土)[扇沢〜爺ヶ岳〜冷池山荘]
広島から1台、岡山から1台の計2台で信濃大町へ向かい、マイクロバスで扇沢の登山口まで乗り付ける。
各自準備をして柏原新道を歩き始めたのは6:30。今シーズン初の重装備のためか、ふくらはぎ、ウエストベルトが当たる脚の付け根が痛い。
1時間ほど歩くと高度も大分上がり、扇沢のターミナルが眼下に、その上には大雪渓と針ノ木岳、蓮華岳が並ぶ。
空が晴れて暑いことには暑いが、道が尾根の山腹西側に付いていてずっと陰のため、体力の消耗は少なく済む。
小さな花を咲かせたゴゼンタチバナが並ぶ中を進み石畳を過ぎると、傾斜は緩くなって楽になり、種池山荘もだんだん近付いてくる。
谷を回り込むように雪渓を通過して少し進むと、周りの樹々が低くなり急に草原になる。1年振りの高山植物との対面だ。ミヤマダイコンソウ、数は少ないが蕾を付けたコバイケイソウの群落、チングルマなどの写真を撮りながら階段を進むと種池山荘に到着する。
扇沢から湧いてきたガスのために針ノ木岳や蓮華岳は見えなくなったが、爺ヶ岳、トイレの前からだが鹿島槍ヶ岳、種池の西には立山が望める。山荘の玄関で休みながら皆のジュースのおこぼれをもらい、爺ヶ岳へ向けて出発する。
少し進むとハイマツ・シャクナゲ帯になり、ところどころに淡い色の花の塊が見える。正面に爺ヶ岳、左手には鹿島槍ヶ岳。後ろを振り返ると立山はガスに包まれていたが、種池山荘の右手に剱岳が現れ、メンバーのテンションも上がる。
爺ヶ岳への登りは直線的な尾根に礫状のジグザグ道が切ってあって、脇にはミヤマダイコンソウが多く咲く。ジグザグ道を登り終えると爺ヶ岳南峰の頂上に着くが、鹿島槍ヶ岳をガスが覆い始めていたために今までの疲れは吹っ飛ばない。
40分程休んだあと爺ヶ岳の中央峰へ向けて出発し、少し進んだ中央峰との鞍部でコマクサを発見する。初日からこれほどの高山植物に出会えるとは嬉しい限りだ。
南峰より僅かに高い中央峰の頂上は狭いが、西には雪に覆われた棒小屋沢の先に剱岳の山体が見える。
北峰の基部をトラバースしたら冷乗越へ向けて緩く下り始める。赤岩尾根の分岐、冷乗越を過ぎ、10分ほど歩くと目的地の冷池山荘に辿り着く。
小屋組と分かれて「小屋から8分」と書いてあるテント場まで辟易しながら歩く。
平地は既に埋まっていて少し傾いた場所になったが、4人が各々のテントを張れた。
睡眠不足も影響して疲れきっていたので、昼寝をしてから小屋に戻ることにする。
小屋に戻って6人で晩御飯を食べた後は、外のベンチで爺ヶ岳を見ながらウメシュキーとおつまみ。酔ったMささんが喋った下ネタと、誕生日プレゼントを買ってもらう約束を取り付けたことしか覚えていない。
テント場に戻ると丁度良い時間で、剱岳のシルエットと北方稜線に沈む太陽に酔う。
●7月17日(日)[冷池山荘〜鹿島槍ヶ岳〜五竜岳〜五竜山荘]
この日は長丁場のため、明るくなり始めた4:20ごろに冷池山荘のテント場を出発する。
正面にどっしりと待ち構えるのは布引岳、鹿島槍の双耳峰。稜線の東斜面にはシナノキンバイやコバイケイソウの花が咲き乱れている。
小さな雪渓の脇を過ぎ低木の間の道を進んでいると、大きな葉に白い花弁の花を見つけ、これがキヌガサソウだとkazumiさんに教わる。
やがて緩い斜面のハイマツ帯に差し掛かると、左手に雲海に浮かぶ立山と剱岳の姿が見えてくる。背後には、爺ヶ岳のみならず針ノ木岳、蓮華岳、高度が上がるごとに他の山々も顔を出し始めてくる。
布引岳のジグザグ登りを始めてしばらく進むと、西斜面にハクサンイチゲの大群落を見る。西斜面はまだ陰で暗かったが、陽が当たったときの剱・立山とのセットは極上の風景だろう。
この日最初のピークである布引山で大展望をおかずに一休みし、鹿島槍へ登る精力をつけて再出発する。先の緩い道でもやはり西斜面にハクサンイチゲが多いが、基部からの登りにかかると辺りにはだんだん礫が増えてきて、礫斜面のジグザグ道になる。
朝の涼しい空気の中を歩いて来たので、予想以上にあっさりと鹿島槍の南峰に着く。
皆が弁当を食べている間に全方向の景色を見て写真を撮る。南東奥から雲海の上に奥秩父の山並み、八ヶ岳、富士山、南アルプス、中央アルプスが覗く。北アルプスでは手前に爺ヶ岳、蓮華岳、針ノ木岳、奥には常念山脈、槍・穂高連峰、黒部川源流部の峰々。さらには薬師岳、立山の間に白山も覗える。北方に目を移すと、これから向かう五竜岳までの豪快な稜線、奥には白馬三山と東西に延びる稜線が良く見える。
南峰に30分弱滞在した後、八峰キレットへ向けて下り始める。山頂では皆上着を着ていたが、日差しが強くなったためすぐに仕舞い込む。ところどころに落差の大きい段差がある岩稜が続き、それらを攻略していくのが楽しい。
後の行程が厳しいので他のメンバーは北峰には寄らなかったが、僕一人だけ寄ることにする。狭い北峰からは見応えのある南峰北面、五竜岳への稜線を垂直に望む。
北峰を下りて再び岩稜下りを再開する。東斜面が開けたところからはカクネ雪渓が見えて美しい。キレットの核心部に入るとクサリ伝いに岩壁を巻き、ハシゴを上る。ここのキレットは別名である「窓」のように囲いの外から光が射している。「窓」から出ると強い日照りと無風で夏の空気。早く西側に戻らなければ、と考える。
再びクサリ伝いに岩壁を巻き、少し下るとキレット小屋に着いて一休み。前日同様、皆のジュースのおこぼれをもらう。
メンバーのペースがなかなか上がらず、早く行かないと五竜岳がガスに包まれてしまうし、五竜山荘のテント場がいっぱいになってしまうので、Mささんの3人用テントを預かって先を行くことにする。
キレット小屋を出るとしばらく登りが続き、急な岩場を何度か下ったら再び登り。口ノ沢のコルへ下って小休憩を挟み、コルから30分弱程長い登りをこなすと北尾根の頭に着く。
東からガスが湧いてきており展望は狭くなるが、日照りは相変わらず続くという都合が悪い状態。ふくらはぎは泣いているし、五竜の山頂へはまだ2時間以上の登りが続くので危うい。
次のピークはG5。下から見上げると非常に急な斜面だ。ところどころにクサリ場があり、疲れているときにはそのクサリ場が面白くない。
G5を通過し、しばらく緩い道を進み砂礫のやせ尾根を過ぎると、正面に立ちはだかる五竜岳の登りにかかる。登り口にはオヤマノエンドウ、ウルップソウ、ミヤマオダマキがそばに咲いていて癒される。デカくて急でゴツゴツしている山体は僕を苦しめるが、遠くから見た姿はデーンと構えていてかっこいいので全く憎めない。
キツい登りを終え五竜岳の頂上に着くが、周りはガス。望みは断たれる。
五竜山荘と白岳、唐松岳まで薄らと見えたのがせめてもの救いだが。
山頂手前の分岐で休みながら、同じ行程で来ていた年配メンバーの一人と話して時間を潰し、五竜山荘に向けて下り始める。
5分か10分経ったあたりだったか、岩場をジグザグに下る箇所で正面の岩に滑落注意のマークを見つける。道は左後ろに折れていたが向きを変えるのが面倒だったので、その正面の岩を使って高さ1mくらいの段差を下りようとする。が、足元が滑ってしまい、そのまま下の段差に落ちてしまった。
右腕を少し擦っただけできれいに着地したので良かったが、たった1度の横着が重大な事故を招く可能性があることを身を以て知ることになった。あの「アッ!」と思った一瞬は記憶に留めておかなくては。
気を取り直して小屋までの道を下る。疲れた脚では長く感じる道だが、小屋まであと10分というところで前から歩いて来た人が道脇を見て嬉しそうな顔をしている。そこには予想通りライチョウが居たので、便乗させてもらいその写真を撮った。
小屋に着くとまたもテント場の平地はほとんど埋まっていたが、小屋とベンチの間、道脇にスペースを見つけ、テントを張って任務完了。冷池のテント場もそうだったが、頑張れば収容数の2倍近い数が張れるようなので、日暮れ近くに着いた人たちも断られずにテントを張っていた。
後ろの5人が到着してから晩御飯まで時間がかなりあったので、小屋の玄関のテーブルについてお酒とおつまみ。pupuさんの壊れたザックの話、Mらさんお勧めの雲ノ平の話、ライチョウの話。
晩御飯のカレーを食べたあとは3人用テントに全員が入って3次会。
トリスウイスキーと強いウイスキーをコップに入れて回し飲みしていたが、最後に残ったコップにどちらを入れたか分からなくなり、僕が収拾を付けることになった。
そういえば、遠くで雷が鳴っていたり、「星が見える」と騒いでいた人がいたような。
●7月18日(月)[五竜山荘〜唐松岳〜八方]
この日は天気が下り坂ということと、岡山組がその日のうちに帰らないといけないので、4:30過ぎに五竜山荘を出る。
前日の五竜岳からの眺望はお預けだったので五竜岳を往復してから出たいところだったが、チームの行程があるので名残惜しい気持ちを抑えて五竜岳に別れを告げる。
小屋を出てすぐ、遠見尾根の分岐である白岳からは、五竜岳の大きな山体、唐松岳への縦走路が見渡せる。
礫とハイマツに覆われた道を最低鞍部へ向けて下り始める。道脇にはミヤマダイコンソウ、ゴゼンタチバナ、チシマギキョウなどの花がところどころに咲く。
陽が出てしばらくすると東側の展望も開け、最低鞍部まで来ると、近くには戸隠連峰〜頸城山塊、奥には前日と同様に南アルプス北部〜奥秩父、さらには浅間山〜四阿山〜岩菅山〜苗場山のラインも見える。西側には毛勝三山の左に剱岳、立山も姿を見せる。
大黒岳の登りにかかると道は次第に岩が多くなり、気の抜けない岩稜へと変貌する。唐松岳の手前には牛首という鋭峰が聳え、そこへの道が急な登りでキツいが、ときどき後ろを振り返って見る五竜岳の武骨な姿が気休めになる。
コマクサが咲く急斜面の横を抜けると、牛首の難所に差し掛かる。痩せた岩稜の西側に取り付けられたクサリを伝って登る箇所は、前日の八峰キレットに顔負けしていない。
全員が難無く通過すると、唐松頂上山荘は目と鼻の先。
山荘にザックを置いて唐松岳へ向かう。左右にコマクサの花が並ぶ砂礫の中を進み、石の多いハイマツ帯の中の道を登って行くと、間もなく唐松岳の頂上に到着。
西から少しずつ雲が増え始めていたが、展望を遮るほどのものは無く、360°の絶景を堪能する。蓮華岳の手前には初日に歩いた種池山荘付近も僅かに見え、縦走の達成感に浸る。
北側に目を回してくると、毛勝三山の右手には薄らと能登半島や黒部の平野部、真北には不帰ノ嶮越しに天狗ノ頭、鑓ヶ岳、鑓ヶ岳の肩から少し白馬岳が覗く。
小屋まで戻って休んだあと、八方池山荘まで最後の下りに入る。西側の峰々が見えなくなって寂しいが、少し下ると五竜岳の左に鹿島槍ヶ岳の双耳峰が現れ、反対側には白馬三山が良く見える。
丸山ケルンから小規模の扇雪渓を下り、周囲はハイマツ帯から低木の樹林、草原へと変化して行く。途中、道脇の斜面にニッコウキスゲの群落が見え、暑くてダレそうな気分を回復させてくれる。そこから15分程度歩くと観光客で賑わう八方池に出る。八方池に映る白馬三山の姿が綺麗らしいが、それより綺麗なものを見てきたはずなので、池の南の尾根を通過する。
池から下は2本の平行する木道が付けられていて、ずっと登山道を歩いてきた僕には若干歩きにくいのだが、ところどころに花畑もあって良い道だ。
やがて、リフト頂上の八方池山荘に到着。気付かぬ間に追い越していたメンバーを待って、皆でリフトに乗った。
久々の高山帯でのグループ山行はとても面白かった。
知っている人は花の名前や山の名前を教えてくれるし、小屋やテントでの談笑、宴も6人それぞれの個性が消えることなく、楽しい時間だった。
みんな、ありがとう。
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