好天の表銀座〜槍ヶ岳〜新穂高温泉
- GPS
- 21:23
- 距離
- 32.6km
- 登り
- 2,733m
- 下り
- 3,070m
コースタイム
- 山行
- 5:43
- 休憩
- 1:20
- 合計
- 7:03
- 山行
- 5:17
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 6:28
天候 | 26日・晴れ 27日・快晴 28日・曇り時々晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2017年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路:新穂高温泉からバス平湯乗り換えで松本駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
1日目:燕山荘まではひたすら急坂で汗を絞られる。喜作レリーフまでは気楽な稜線漫歩、最後のヒュッテまで大天井岳を巻く道は岩稜的でやや険しい。/2日目:西岳ヒュッテまでは低木の混じる楽な道、その先の東鎌尾根は緊張する激しいアップダウンで体力を要する。/3日目:千丈分岐点までカール内を急降下、その後も岩、石が多く足を取られやすい森の中の道が続く。穂高平小屋前から右俣林道をショートカットする登山道は整備がやや悪く、最後に一気に下って林道に再合流する。 |
その他周辺情報 | 新穂高温泉から10分ほどの深山荘の温泉が絶品。蒲田川に張り出す三段の露天風呂の最下段は女性も湯着で混浴可(裸の男と一緒だけど)。宿泊者には、同じようなロケーションの貸切露天風呂もある。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
装備
個人装備 |
ヘッドランプ
予備電池
1/25
000地形図
ガイド地図
コンパス
筆記具
保険証
飲料
ティッシュ
バンドエイド
タオル
携帯電話
計画書
雨具
防寒着
ストック
水筒
時計
緊急保温シート(1)
着替え
|
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共同装備 |
非常食
ツェルト
ファーストエイドキット
GPS
|
感想
【26日】 前夜、最終あずさで松本に来てビジネスホテルに一泊し、雨上がりの穂高駅でalps165ことDr.エモンと合流した。ストリートビューとは駅前広場の反対側に移っていたバス停から中房温泉行バスに乗車。ほぼ満席だったが、客が多い時は続行便を出すらしい。
1時間余りで中房温泉に着いた時には、すっかり晴れていた。実は昨年計画した表銀座縦走。それが台風連発で日程延期の末、休みが調整できなくなって針ノ木岳1泊山行に目標を変えたのだった。今回は天候に恵まれたようだが、標高1450mというのに蒸し暑く、いきなり始まる急登で早速、汗が噴き出した。
名にし負う急登ながら人気の燕岳・燕山荘へのアプローチであり、特に危険個所もないので老若男女あらゆるレベルの登山客が歩いている。当方、さして健脚でもないが山慣れない様子のグループは次々と追い抜いて、順調に合戦小屋に到着した。Dr.のおごりで名物のスイカいただき小休止。再出発して7、8分歩くと手前の稜線の向こうに槍の頭が顔を出した。
気が付くと木々の背が低くなって視界が開けだしており、ほどなく行く手に燕山荘と燕岳が仰ぎ見えた。トリカブトやヤマハハコなど数種類の高山植物が道端に咲き競う区間で上を見やると、もう燕山荘がすぐそこだった。
ベンチを借りて弁当を広げる。下界は雲に隠れがちだが、北には白い燕岳、南には槍穂高連峰などがはっきり見えている。景色を堪能して、いよいよ表銀座コースに踏み出した。しばらくは槍穂高や笠ヶ岳を目の保養にしつつ、なだらかな尾根を伝う。足元にはコマクサが目立つが、惜しむらくはほとんどが終わりかけだった。
そろそろ大天井岳が正面に近づいてきたところで大下り。高山植物を励みに登り返して稜線を進み、最後に大天井に向けて少し登ったところが分岐点だ。左はきつい坂で山頂と大天荘に至る道、右はトラバース状に今夜のお宿大天井ヒュッテに向かう道。迷わず右を辿ったのは良かったが、最初の角を回った先で岩場を辿る隘路に変わった。ほどなく後ろのDr.が「あっ」と声を上げ、振り返ると姿は見えずに靴底だけが見えている。なんと右足を登山道から踏み外し、密生したハイマツの上に仰向けに倒れていたのだった。
助け起こすと「ベッドみたいで気持ち良かった」と軽口をたたいたが、偶然しっかりしたハイマツが生えていたから良いようなものの、気をつけなくてはいけない。慎重に進むうち足下の鞍部にヒュッテが見え、無事に投宿した。
通されたのは廊下の突き当り右下の区画で、まっすぐ立つのは無理だが一応2人分の個室になっている。もっとも、蒲団と直角の向きの壁に1,2,3,4と番号が書いてあり、混雑時はそれだけ詰め込む仕様と知れる。
ところで、朝食時間が山小屋でも早い4時半と言われて驚いたが、夕食時に小屋番さんから説明があった。いわく、夕食後の日没時と朝食後の日の出に合わせて宿泊客を絶景の牛首展望台に案内するためなのだとか。疲れた体にビールを入れてしまった今、夕焼けを見に標高差130mを登るのは勘弁と思ったが、写真好きらしい小屋番さんがノートPCの画面を見せつつ、「朝は槍ヶ岳のモルゲンロートがきれいです」と話すのにはそそられた。
【27日】 夜中に原因不明の鼻づまりに見舞われて難儀したが、前日Dr.とも衆議一決した朝日見物に行く腹を決めて朝食に臨む。気が付くと夕食はほぼ満席だったのが、もう三分の一は出発した後のようだ。ぐずぐずして5時直前に靴を履き、宿の脇の急坂を急いだ。すでに東の空は黄色味を帯び始めている。
ぎりぎり日の出前に頂上に着くと、いたのは何と一眼レフを提げた小屋番さん一人だけだった。「誰も来ないのかと思いました」「夕日は今年1,2を争う美しさだったですよ」と小屋番さん。確かに槍穂高連峰をはじめ360度を山々の絶景が取り囲む素晴らしい展望台だ。見えている山の名前を教えてもらううちに、灰色に沈んでいた槍ヶ岳の山体がスーッと赤色に染まった。いわゆるモルゲンロート、山の朝焼けだ。夢中でシャッターを切ったが、鮮やかな赤色の輝きはほんの1、2分で消えてしまった。
さらにしばらく明け行く北アルプスを見守った。北の方には昨年登った蓮華岳と針ノ木岳、そこから間近に見えた剣立山連峰の姿が見える。南を見れば南アルプスのシルエット。その時、ふと視界に動く小さなものがよぎった。オコジョだった。距離わずか3m、写真に納める間もなく視線が合ったとたんにハイマツに隠れてしまった。
小屋へ戻ると、6時前にして我々以外は全員出発していた。みなさん、北鎌とか厳しいロングコースを取るのだろう。こちらは槍ヶ岳までだから、コーヒーを飲んでから出発。大天荘に泊まったらしい登山者と前後して、まず赤岩岳への巻道を進んだ。サルの親子がダケカンバの枝を揺らして通り過ぎる。標高2500mで何を食べているのか。ライチョウを捕食するサルがいるというのだから、可哀そうでも急ぎ駆除が必要だろう。
右に槍穂高連峰、左に常念山脈の絶景を楽しみつつ赤岩岳、西岳を巻いてヒュッテ西岳に到着。ほろ酔いで東鎌尾根も物騒だから缶ビールは自粛し、ン十年ぶりかでコーラを飲んだ。ストックをしまって、ガラリと様相の変わった登山道をまずは梯子と鎖で一気に200m下る。そして登り返し、小さいアップダウンの末、再び下って最低鞍部の水俣乗越へ。行く手はまだまだ険しく遠い。
30分足らずで垂直の長い3連梯子を下る「窓」に至った。15m以上あるだろうか。なかなか高度感がある。そしてすぐまた登り返し。梯子のハシゴを強いられながら「まさかあそこまで?」と思った岩の所までよじ登らされ、窓から1時間余を経てようやくヒュッテ大槍に着いた。今度は本当の窓から槍の見える席でこってりした味噌ラーメンを食べて、消耗したエネルギーを補給した。
さすがにここまで来れば、あとはわずか。殺生ヒュッテに下りる道を左に分けて、40分で槍ヶ岳山荘に着いた。すると、「イモトは遅れていて下の殺生あたりにいる」と話す声が聞こえた。なんでも日テレの24時間テレビで芸能人が槍に登るという企画らしい。部屋にリュックを置いてトイレに行くと、途中の2階の部屋が臨時の調整室になっていて、モニターからわあっと歓声が聞こえた。小屋の前にその彼女が到着したようだ。騒ぎに巻き込まれたら迷惑だなと思ったが、槍の穂先に向かおうとした際、入口のテーブルに着いて水を飲んでいるイモトさんと行き合った。スタッフ数人が取り巻いているだけで、いたって自然に休んでいるのでホッとした。
反対に穂先への登りは覚悟していた以上の大渋滞。テレビスタッフのせいではなく紛れ込んだ超初心者のせいで、さらに頂上の梯子脇に陣取って勝手に登頂者を制限するおかしな男の存在が拍車をかけていた。「上は満員」「一人ずつだけ」と散々待たされ、さて上がってみれば山頂には10人もいない。思わず大声で「あと10人来ても大丈夫。どんどん上がってください」と後続に知らせてやった。
モタモタしているうちに雲が湧いてしまい、この騒ぎで気分もクサクサするので、Dr.とすぐ頂上を辞すことにした。といっても、「みなさん、ご迷惑おかけしました。高所恐怖症なので二度と来ません」と後から謝って回った女性の立往生で、登り以上に時間がかかってしまった。ようやく小屋前まで下りると、ロープアップして穂先に向かうイモトさんとすれ違った。
今日の槍ヶ岳山荘は、布団共有というほどではないが大繁盛の入りだ。夕食後、すぐ寝る特技を持つDr.にならって6時半に布団をかぶったが、寝付けない。外へ出てみると満点の星空に槍ヶ岳のシルエットが浮かんでいた。
いったんカメラを取りに帰り、仰向けに岩にもたせ掛けてセルフタイマー+15秒露光で星空を撮ってみた。傍らでスマホ片手に「カメラがあったらみんなに見せられるのに」と嘆く女性たちがいたので、カメラのモニターで画像を見せてあげたら、「あ、この画面撮らせてください」とスマホでパチリ。なるほど、その手があるんですな。
部屋へ戻ると、真下の食堂でテレビクルーたちが大騒ぎしてうるさかったが、さすがに8時過ぎには鎮まった。
【28日】
朝、外を見ると雲が多い。日の出前に防寒着で出てみたが、昨日のような赤く染まる山稜は見られなかった。ただ、下界に低い層雲は出ているものの、幸い上空の雲底は高いので見通しは利く。朝食後、もう一度槍の穂先を訪ねてみた。今度はすいていて、どんどん進める分、逆にちょっと緊張する。冷たい西風が強く、今日も早々に頂上から退散して小屋でコーヒーブレーク。おもむろに下山の途に就いた。
一昨年、鏡平から登った際、雨で何も見えずに通過した西鎌尾根を少し見てやろうと、ルートは千丈乗越経由を選択。冷たい向かい風のカールを急降下し、西鎌尾根の入口部分を歩いた所で再び左のカールの底へ向けて急坂を下った。ふっと風が収まり、岩だらけの風景が草の緑に変わった。
飛騨乗越からの合流路で団体を追い越し、しばらく下ると周囲に木々が増えてきた。「最後の水場」を過ぎ、小岩の目立つ登山道を辿って槍平小屋に至った。年配のグループが昼食休憩しているが、まだ早いので当方はパス。一休みして滝谷を目指した。
森の中の道になったが、時折り遥か左上に恐らく西穂へ続く山稜が見える。涼しい風が吹き下ろす滝谷の岩に腰かけて昼食休憩。後生大事に背負ってきた非常食代わりのフリーズドライのパスタとスープをDr.にも振る舞った。
リュックは軽くなったが、脚は疲れて重くなってきた。徐々に岩が減ってきた登山道をさらに1時間余歩き、やっと大きな堰堤が見えて白出沢出合に到着した。林道終点で大勢の登山者が休んでいる。3000mの高地と違って暑さを感じる中、ホースから水の噴き出す水場で給水し、木漏れ日の林道を辿った。
牧場の牛が見えれば、ほどなく穂高平小屋。8年前の記憶を頼りに林道を外れてショートカットの登山道に入ると、思った以上に整備が悪くて戸惑った。岩稜のような危険のある道ではないが、疲れた足には少々こたえる。時間はかかっても迂回する林道の方が楽かもしれない。
再び林道に戻れば、後はただ歩くのみ。やがて新穂高ロープウェイの駅が見えてきた。平日ながら駐車場はかなり埋まっている。新穂高温泉バス停で汗を拭き、さらにひと足伸ばして深山荘の露天風呂に無事ゴールした。
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