硫黄尾根〜西鎌尾根 厳冬期単独縦走
- GPS
- 120:06
- 距離
- 43.7km
- 登り
- 3,373m
- 下り
- 3,211m
コースタイム
- 山行
- 15:03
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 15:08
- 山行
- 7:37
- 休憩
- 0:04
- 合計
- 7:41
- 山行
- 9:22
- 休憩
- 0:08
- 合計
- 9:30
- 山行
- 6:11
- 休憩
- 0:18
- 合計
- 6:29
29日雪、暴風 -18℃ 朝方だけ晴れ
30日晴れ -20℃
31日雪、暴風20m以上 -25℃
1日 雪、暴風20m以上 -25℃ 夜は時々雪
過去天気図(気象庁) | 2017年12月の天気図 |
---|---|
アクセス | |
予約できる山小屋 |
|
写真
感想
2017.12.8-2018.1.1
北アルプス 硫黄尾根厳冬期単独縦走
葛温泉〜高瀬ダム〜湯俣〜硫黄尾根〜西鎌尾根〜槍ヶ岳山荘〜新穂
精神的にも体力的にもスゴくやられてしまい、今回の冒険は激しかったと思います。
特に後半は死と向き合った時間が長く、精魂疲れ果ててしまいました。
Day:1 葛温泉ゲート〜硫黄尾根2020m地点 雪-15℃
28日0:00に葛温泉ゲートを出発、前日降り始めた雪で電車が止まるほど積もったようなので無理をしないほうがいいとタクシー運転手から言われ、新雪舞う中ダムへ向かう。
1時間程歩いた所で、ザックのウエストベルトのバックルが壊れてしまい先が思いやられるスタートとなった。
高瀬ダムのトンネルを超えるとワカンを装着、薄いトレースがあるので前日人が入っているのだろう。林道なので迷う事はないが膝下のラッセルをしながら7:00湯俣名無し小屋にたどり着いた。
1時間ほど休憩し、出発。トレースは明瞭2:30程で吊橋に到着。左岸を少し登った所で、トレースは右の尾根に続いている。北鎌方面にはトレース無し。とりあえずトレースを追い途中で下に降りる事とした。
トレースはトラバースからどんどん上へ伸びている為適当なルンゼを下降しようとしてみるが、腰まで埋まり止まる感覚がよろしくない。ソロでこの状態であればリスクが高いと判断。まだトレースが残る硫黄尾根へ進む事とした。
16:00 硫黄岳P1手前の樹林帯の中に風がよけれそうな所にツエルトを張る。
Day:2 硫黄尾根2020m地点〜硫黄岳先のどこか。雪-20℃
2:30に起き準備をしたのだがなんだかんだ冬は時間が掛かる。7:00頃出発し進んでいくと硫黄岳手前で一回目の懸垂。
微妙なトラバースの所にはスリングがあった。
硫黄岳手前のピークに立つと5人組のパーティが見える。大体3-4時間の差か。トレースに感謝しながら進むが、所々トレースの真横にクラックが入っていたりし、大回りをすると腰までのラッセルになる。13:30頃硫黄岳山頂に着くが段々天候は荒れていく。先へ進んでいるトレースも風が強い所は消えかかっている。少し進んだがあまりの風に薄手のバラクラバでは凍傷になりそうな程顔が痛い。手頃な所に雪洞を掘り2:30行動中止とした。今思えばこの日もう少し進んでおけば大変な目に合わなくてすんだのではないか。
買ったばかりの寝袋を燃やすし、燃えた火の粉でエクスペドのエアーマットにも穴が空き終始マット無しになった。
Day:3 硫黄岳先〜赤岳の先のピーク山頂-18℃
目が覚めると風の音が小さくなっている。雪を崩して外へ出ると快晴。最高の天気だ。今日は行けるだけ進もう。
懸垂を7.8繰り返す。途中トレースをはずし変なルンゼへ降りるがなんとか修正。2.3mの4級程度のポイントが何箇所もある。この日はまだ正気を保てる程度の丁度よい緊張感で一日を終えた。ピーク下の岩陰に丁度よいビバークポイントを見つけるが、今度はヘリテイジ’クロスオーバードーム’のテントポールのゴムが伸び切ったままで戻らない。テーピングで補修してなんとかテントを張る。一日としてなにも無い日がない。
Day:4 赤岳ピーク〜槍ヶ岳山荘冬期小屋-25℃
今回最大の山場
赤岳ジャンダルム群を過ぎもう少しで西鎌尾根へ合流するとうい5.60m地点で11:00ホワイトアウト。まったく白い世界で方角が分からない。GPSを頼りに進むと2m程先に雪庇の先が見え方向転換する。風雪とガスで視界は10m程。一歩ずつ慎重に先の方に見える黒い影へ足を進める。少しガスが晴れた時にやっと縦走路に出た事をGPSで確認できた。しかしその先、この雪壁を乗越した所が雪庇の先ではないかと緊張がたえない。降雪と風でもちろんトレースもない。10mおきにGPSで現在位置を確認しながら進む。
少しガスが晴れ視界50m程。右側は雪庇で下までキレ落ちている。左側も雪庇だと思うが、覗き込むわけにもいかない。真ん中を慎重に進むが、胸まで埋まる。緊張はMAX。死にたくない。最悪を考え、下まで亀裂を入れるわけには行かないので四つん這いになってラッセルし、体重を分散させなんとか通過した。
15:30千畳乗越へ到着。
普段なら1時間半程の道のりだが、3時間程掛かるだろう。轟音が鳴り響き、まともに立っていられない。これを降りれば安全圏だが、もし、明日晴れ間が出たら後悔するだろう。
それならば、槍ヶ岳山荘冬期小屋までがんばれば、少しはゆっくりできる。がんばろう。言い聞かせ風速20m以上の風の中一歩一歩岩に捕まりながら進む。ウエストベルトで固定されていないため、風でザックが振られ危ない目に何度も合う。暗くなりどこをどう歩いているか分からない。夏道は尾根の反対側。わけの分からないルンゼをよじ登り、夏道の方へ進む。
息を整えるために停止すると、とたんに体いうことを効かなくなる。眠い。気がつくと体中が凍っている。ガタガタ体が震えはじめ眠気がすごい。こうやって人は死んでいくんだ。でも、ここで死ぬわけにはいかない。キツくても体を動かすんだ。バイルを引っ掛け尾根を乗越すと夏道が見える。GPSで確認すると後5.60m。吹雪で視界は5m程。とりあえず道らしきものを進むと標柱が見えた。GPSではすぐ近くに小屋があるが全く見えない。右側に見えた影の方へ一歩岩を登ると、目の前に冬期小屋が見えた。「やった。助かった。」
小屋の中に入り凍った服を脱ぎ、火を焚いてその日は飯も食わず眠りについた。
Day:5 槍ヶ岳山荘冬期小屋〜新穂-25℃
6時に目が覚め外を除くが強い風とガスで、槍の穂先が見えない。このままボロボロの体で進むのも気が進まない。
天気予報をチェックすると、夜〜朝まで天気が落ち着く予報だ。雪崩警報も出ている。どうするか。。
出発前『自然に逆らわず、自然に登らせてもらうことが大事だ』という言葉を頂いたのを思い出した。
この状態で無理して穂先に登り下へ下るよりも、夜まで天候が落ち着くのを待ち、気温が下がる時間帯に雪崩危険地域を通過する方が良い。そのためには十分休息をとらなければ。
朝おかゆを4食分食べ、昼はラーメンとうどんを食べ十分に睡眠もとった。時間を掛けパッキングしていると予報道理15時位から風が落ち着いてきた。予報とおりだ。
18時外に出、飛騨沢を下降し始める。最初は目を空けていられない程の風雪だったが、高度を下げると共に空が晴れてきた。雪崩を起こさないように慎重に進み、左へ左へトラバースしていく。槍平に着く頃には月明かりのラッセルとなった。槍平から先は、トレースもしっかりしてきており、随分楽をしたが、白出沢までの途中は小規模雪崩が何箇所も発生しており夜間下降は正解だったなと思いながら、足を進めた。
1月1日午後11時57分新穂高温泉へ到着。
一気に緊張が解けた。
ボロボロになりながらアノ地獄から6時間程でこんな天国にいれるなんて。
待合室の暖かさがありがたかった。
生きて帰れた事が本当にありがたかった。
北アルプスの厳しさを感じることが出来た今回の山行だった。
やっぱスゲー!
年末年始は天気悪かったからマジ心配した!
liewさんハンパないって!
アノ天気悪さもアルプスならではって感じてたまらんよね★
本当は動画とかも編集したいんだけど、忙しくて中々。、
毎回本当にストイックですね。
命を削るような山行の数々は尊敬以外の言葉がありません。
また文章がドキュメント風で読ませますね(゚∀゚)
臨場感が伝わってきて読んでるだけでドキドキしてしまいます。
こういった山行の繰り返しで今のスタイルがあるのでしょうけど
ファンの一人として命だけは本当に落とさないようにしてくださいませ
と、言わせて下さいm(__)m
いやいやw
僕はalsoさんみたいに足も早くないし長い距離歩くしかないので、どこまで行けるか毎回楽しんでいるだけです。
ただ、人間頑張ればどうにかなるもんですね。
同年代なので、alsoさんの達の山行も楽しみに読んでいますよ★
いつかまだどこかで会えるといいですね。
liew2fowさん、こんばんは!
今回の記録は一流クライマーの書籍を読んでいるかのようにドキドキしました。
硫黄岳は僕も狙っているので(無雪期の藪岩)以前からある程度は調べていました。
この年末年始でソロは本当に驚きましたし、その状況を予想しながら突っ込める勇気と冷静に状況を判断する能力は想像を絶します!
この先もアグレッシブな山行を行うと思いますが、alsoと同じようにヤマレコでは数少ない尊敬できるファンの一人として死だけは避けてください。
私にとってヤマレコで一番衝撃を受けた記録になりました。 お疲れさまでした!
kaikairei さんお疲れ様です。
硫黄岳〜赤岳は今まで行った山の中で一番ボロボロでした。無雪期は僕は行ける気がしませんww
30日の朝名無小屋を出発しました。トレースは1800Mくらいまで窪みがわかる程度ついてましたが、あとはほとんどなく樹林帯のラッセルに苦労しました。31日に硫黄岳下の小次郎のコルに達しましたが、次の日は時間切れとその後の天候に期待が持てず気力が続きませんでした。硫黄岳までで引返しました。
あの積雪の中をソロで登った人がいるのがわかり、すごいと思いました。と同時にとても悔しい気持ちもあります。でも、心の底から称賛します。おめでとうございます!!
僕も2月までにもう一度トライしてみます。
hositotakibi2sさんこんにちは。
友達から他にも行っている人がいるよ、とブログが送られてきたので拝見していました。
31日は昼からは天候悪かったですね。あそこから引き返すのもかなりのものだったんじゃないですか?
硫黄岳〜赤岳ジャンダルム群はソロでは何箇所か難しい所もありますが、それより西鎌尾根が結構厳しかったので気をつけて下さい。
成功をお祈りしております。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する