鈴鹿セブンTHE DAY
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- GPS
- 13:45
- 距離
- 49.2km
- 登り
- 4,617m
- 下り
- 4,602m
コースタイム
- 山行
- 13:13
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 13:45
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
最後の下りに差し掛かる。
あと数キロ、やっと長旅が終わる。
そう思った瞬間、体が宙に浮いた。
バキッっ
下り斜面で足を踏み外し、転倒して石畳の上に打ち付けられ、何か鈍い音がした。
左腕に激痛が走り動けない。
最後の最後で何やってんねん。。。
そう呟きながらも、意外と冷静にゆっくりと体を起こし、激しく打ち付けた左腕を動かしてみる。痛いが、動く。恐る恐るスマホを取り出す。よかった、無事だ。
椿大神社の本殿に旅の無事を報告して、念願の鈴鹿セブンTHE DAYを達成した。
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鈴鹿セブンを達成したい。それも、鈴北岳と御池岳を含めた「ナインマウンテン」として。
そう思い立ったのは、今年の5月。UTMFの前哨戦としてちょうどいいんじゃないの?と軽い気持ちで挑んだが、雨と寒さで御在所リタイヤという屈辱を味わった。
もう失敗は許されない。
別に誰に許してもらう必要もないのだが、今回こそ達成したいという決意は強かった。前回達成できなかったのは雨と寒さが原因だったのか。そもそもナインマウンテンは無理があるのか。まずはセブンを確実に達成するべきではないか。
椿大神社の駐車場に車を停め、自転車でスタート地点まで向かう暗闇の中で自問自答と葛藤を繰り返した。
やはり、確実にセブンを達成しよう。
そう決意し、自転車の針路を藤原岳登山口駐車場に変更する。時刻は午前3時。辺りはまだ暗闇の中、初めて登る登山道に不安が募る。駐車場からここまで自転車で32km、既に疲労感がある足を休めるため朝食のカステラを食べながら準備をしていると、トレラン姿の3人組が登山準備をしていた。彼らもワンデイ鈴鹿セブンに挑むようだ。
不安が一気に解消された。先行する3人組が照らすヘッデンが希望の光に見える。明瞭な登山道を進み、淡々と高度を上げていくと眼下には素晴らしい夜景が広がる。見上げれば満天の星空。感動で立ち尽くし、ヘッデンを消してしばらく眺めていた。この先に待ち受ける過酷な試練の幕開けとも知らず。
4:45 1座目 藤原岳
夜景と星空に囲まれ、まずは一丁上がり。まだまだ余裕がある。この調子だとすぐに達成しちゃうんじゃないの〜。と、かなり調子に乗っていた。このあと打ちのめされるとも知らない能天気な自分を褒めてあげたい。
さー、次行きますかー。ルンルン気分で藤原岳を後にしようとした瞬間、目を疑うような激下りが待ち受ける。先行3人組のトレランチームも慎重に下っていたが、私が後ろから不意に小石を蹴ってしまった。「危ない、ファァー」前方に危険を知らせる掛け声を知らず、思わずゴルフ風の声を上げてしまった。さすがにトレラン組の方も煩わしく感じたのだろう。「お先にどうぞ」と道を譲ってもらった。ここから先、御在所岳までは前回通った道のハズ。何とか乗り切りたい気持ちで、蛍光テープを頼りに進んでいく。劇登り、激下りが連続し、何度もピークらしき山頂に出るのだが、竜ヶ岳はまだ先のようだ。
時間は刻々と過ぎていくが、前に進んでいる感じがしない。ひたすら上り下りの連続、急な斜面が太ももの筋肉をじわじわと傷めつける。辺りはうっすらと明るくなってきた。見渡せば森の中で紅葉した木々たちが朝陽に照らされて、さらに真っ赤に染まっていく。竜ヶ岳の山頂が姿を現すと同時に、お天道様が顔を出した。写真を撮りまくるが、写真では伝わらない絶景がそこにはあった。
6:38 2座目 竜ヶ岳
ここまで2つでスタートから約3時間、あと5つなので7時間半後にはゴールできるかな。この甘い考えは竜ヶ岳からの下りで儚くも崩れ去る。再び登場する激下り、直登の連続。とにかく足を止めずに進み続けることだけを考える。夜が明けたのでここらで朝ごはんモグモグタイムとしよう。深夜に家を出たので、食料はスーパー玉出で調達したおにぎりとパン。気温は低いが、結構発汗していたのだろう、おにぎりの塩味が身に染みる。持参した水分は、お茶、水、コーラのペットボトル3本分。約1.5Lの貴重な水分なので、がぶ飲みしないように気を付けないと。おにぎりだけでは足りない気がしたので、ルヴァンのバターロールにTrailbutterをたっぷりと挟んで延長モグモグタイム。あかん、口の中の水分が急激に奪われていく。思わずお茶をがぶ飲みしてしまった。なんてことだ、御在所岳まで水分補給の場所は無いというのに。
絶景を見ながら、いくつもの峠やピークを次々と消化していく。次の目的地はまだまだ見えない。セブンマウンテンと名付けられているが、〇〇岳と命名されたピークの数は7つ以上あると思う。下っては登り、登っては下る。次の目的地はまだまだ見えないが、確実に近づいていると信じるしかない。見渡せば絶景。それだけが励みだ。苦しさの中に、自分の体が自然に溶け込んでいく心地よさを感じる。
8:40 3座目 釈迦ヶ岳
あそこを登り切ったら釈迦ヶ岳かな。という期待を裏切られ続けていたので、ピークを迎えたときは。あ、着いた。というあっけない気持ちだった。これで3つ。鈴北岳からスタートしなくて本当に良かったと思う。走る足はまだまだ残っているのだが、上り下りを繰り返し、前に進んでいる感じがしない、精神的なダメージが大きい。あと4つ。とにかく次を目指して進むしかない。
前回チャレンジした時は、釈迦ヶ岳から御在所岳に直接向かってしまったので、次の雨乞岳は初挑戦となる。若干下り基調の走りやすいトレイルを、コースアウトしないように慎重に、気持ちよく進んでいく。徐々に高度を下げていくと、川のせせらぎが聞こえてきた。紅葉と川が織りなす森の雰囲気は疲れ切っているはずの体に再びエネルギーを与えてくれるようだった。高島市で開催されるFairyTrailのスーパーロングコースで見たような「癒される森の景色」がずっと続く。あまりの美しさに、ザックを下ろし、森の中のランチを楽しんだ。熊さんと出会っていたらランチを共にし、一緒に歌っていたかもしれない。
川のせせらぎと、小鳥のさえずりしか聞こえないはずが、足音が近づいてくる。「まさか、熊さん?」とビビっていると、トレラン2人組が追い越していった。今朝会った3人組から一人離脱して2人になったのかと思い、森のランチ休憩で回復した足を飛ばして2人組に追いつき、確認してみると、全く別の人たちだった。来週、セブンに挑む予定で下見をしているそうだが、「やめた方がいいですよ」と心の中で呟いた。
まもなくお昼の12時。御池鉱山旧跡から杉峠を越え、雨乞岳に向かうトレイルはハイカーさんたちで賑わっている。こんにちは。スミマセン、通ります。ありがとうございます。声をかけながら淡々と進んでいく。勾配は急だが、気持ちのいいトレイルが続く。杉峠を越えると絶景が広がる。関西の山とは思えないヨーロッパの山を眺めているような景色だ。ちなみにヨーロッパに行ったことは無い。今度来るなら、御在所岳から雨乞岳のループコースが気持ちいいんじゃないかと思った矢先、背丈ほどもある熊笹に大歓迎される。ここでは、ゲイターは必須装備だ。
11:27 4座目 雨乞岳
山頂は大勢のハイカーで賑わっていた。「山走るってスゴイね。どこから来たん?」ハイカーさんから聞かれたので、待ってましたとばかり、「藤原岳から来ました。ここまで8時間くらいです」と答えると、周りのハイカーさんも一同に驚いていただき、今日中に7つ全部回りたいので失礼します。と気分よく山頂を後にした。行くと言ってしまったのでやるしかない。一気に御在所岳を目指すも、またもや熊笹に遮られた。痛タタタ。ゲイターは必須である。そして、再び渓流沿いの気持ちいいトレイルに突入する。本当に幻想的な風景が広がるが、道も狭く、駆け抜けるには勇気のいる斜面が続く。ハイカーさんに声をかけ、先を急いでいるとコースロストしてしまった。御在所岳への登りが全く見当たらなかったので、もう一度戻る。追い抜いたハイカーさんたちと再びすれ違い、慎重に御在所岳への登りを探すと、えっ、ここ?という、あまり踏み跡のないトレイルに突入する。次第に岩が多くなり、御在所岳感が出てきたので山頂付近だと信じ、ジャングルを抜きた。ついに到着か、と思いきや、お寺の裏側に出てきた。お寺の裏側からゴソゴソと表側に出ていくと、参拝するハイカーさんたちから「どっから出てきたんや」という熱い視線をいただいた。がん封じのドラを鳴らし、三角点へ。
13:06 5座目 御在所岳
風が強くなってきた。汗冷えしないように、ウィンドブレーカーを羽織り、水分補給のため売店を目指す。コースから売店までは片道1kmのロスになるが、ここが最後の補給ポイントになるはずなので、リフレッシュも兼ねて売店に向かう。売店は大賑わいで、もし空いてればカレーうどんでも。という甘い考えは崩れ去る。自販機でコーンスープ、麦茶、コーラを購入し、売店の水をコソっと補給させていただいて、目標時間通り15分の休憩で先を急ぐ。次に目指す鎌ヶ岳は、ラスボス感たっぷりの様相だ。一旦級坂を降りて、また登る。これまでと違い、鎌ヶ岳山頂は常に視界の中にあるので、気持ちが切れることは無かった。なぜか運動靴姿の若いハイカーが多い。
14:28 6座目 鎌ヶ岳
山頂からは、ぐるっと360度パナラマの景色が見渡せる。なるほど、若いハイカーが多かったのは、この高揚感を感じたいからかと納得した。どんどん風が強くなる。あと1座、ここまで来たらもう達成したようなもの。山頂で小さくガッツポーズしてみたが、この考えが甘ちゃんであることをこの時はまだ知らない。さぁ、最後の入道ヶ岳はどっちかなー。ん?これは道ではない。思わず目を疑うほどの断崖絶壁。しかも痩せ尾根が続く。ここは本当に関西だろうか。信州のキレットはもっとスゴイのか。鎌ヶ岳から入道ヶ岳までは下り基調のトレイルだと思っていた自分が恥ずかしくなった。とにかく行くしかない。断崖を下り、痩せ尾根で強風に煽られ、断崖をよじ登る。それをひたすら繰り返す。最後の1座は今までの集大成のごとく、中々近づいては来ない。山に浸り、山の中で過ごす至福の時間。あと少しで終わってしまう寂しさを感じながら。のような感傷に浸っている場合ではない。とにかく進まないと、お天道様が呆れて沈んでしまう。何とか明るいうちにゴールしたい。いくつかのピークを越え、ついに椿大神神社奥の院にたどり着いた。そこから入道ヶ岳山頂の鳥居が見える。ようやくたどり着いた。最後くらい走ろうと思い、山頂までの緩斜面を駆け上がろうとするが、足が動かない。かなりのダメージが蓄積されているようだ。そしていよいよ山頂の鳥居をくぐる。
16:16 7座目 入道ヶ岳
やった。やりました!あれっ、入道ヶ岳と書かれた山頂プレートが無い。どこを探しても見当たらない。辺りは強風が吹き荒れ、止まると冷える。誰もいない山頂でおしっこに行きたい子供のようにモジモジしながらプレートを探したが見つからなかった。プレートを諦め、写真を撮りまくり、あとは下りを駆け抜けるだけ。そう思い走り始めた瞬間、冒頭の転倒劇が待っていた。
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車に戻ると朝お会いした3人組の方たちと駐車場で再開した。どこかで抜かれたのか気になって聞いてみると、雨乞岳をショートカットされていたようだ。
大阪から車で2時間程度の場所に、ここは関西かと思うほどの壮大な山が連なり、山に足を踏み入れると、そこには気持ちの良い森の雰囲気と絶景が待っている。
終わってみれば、苦しかった思い出は楽しさに変わり、また行きたくなるから不思議ですね。左腕の痛みが消えるころ、今度は逆ルートで、またチャレンジしているかもしれません。知らんけど。
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