雪融けの八丁平へ☆北兄谷右岸尾根〜峰床山〜鎌倉谷右岸尾根
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- GPS
- 08:42
- 距離
- 14.3km
- 登り
- 1,122m
- 下り
- 1,145m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
一台で中村の江賀谷林道(林道中村線)の入口に |
写真
感想
yamanekoさんにお声かけいただき、八丁平を訪れました。
かつての八丁平の姿をよくご存じのHB1214さんとも初めてご一緒させていただきました。
中村からの入山ルートはよく通るところですが、江賀谷林道途中からの北側斜面は初めてでしたので楽しみでした。
尾根に出たあと、一旦右俣の最上部に下って滝に出会い、また登り返しましたが、このミニ探検は楽しかったです。少し古い地図によると右俣回りの登山道が付近を通っていたようですがその道跡はありませんでした。
鎌倉山からの稜線に出ると、雪はほとんど消えています。ほんの2週間前、何度も足をつりながら歩き通したラッセル山行の際の雪深い景色がうそのようです。乾きかけた地面を楽々と歩きながらオグロ坂峠に出ました。峠では前回雪の下に埋もれていたお地蔵様はちゃんとそこにありました。
峠から、雪の消えた湿原を右に見下ろしながら六尺道を下り、一気に南端まで歩きました。
今回はまだ歩いたことのないルートを歩いてきたためか、新鮮な気持ちで八丁平へ入ることができました。
西側へ回ってp916へ続く眺めの良い斜面へ足を運びました。
八丁平の湿原内の雪はとけており斜面に雪が残る程度です。まだ花も葉も出ないこの季節、雪がなくなるとほぼ茶色一色の風景です。木々の上部を見上げると、葉の無い広葉樹の枝に、鳥の巣のようなヤドリギだけが緑色の葉を付けてよく目立ちます。
HB1214さんによれば、かつて湿原内はササに覆われており、湿原の風景は全く違っていたそうです。ずっと前からこの風景なのではなく、湿原は少しずつ姿を変えているということがわかりました。
フノ坂分岐のベンチでyamaneko さん,yamaizuさんから今回もおいしいお昼ご飯をご馳走になりました。HB1214さんからは色々とお話を聞かせていただき楽しい時間でした。
この後、いったんクラガリ谷の分岐点まで歩きました。HB1214さんはかつてここに立っていた山小屋「新芯荘」に滞在されたこともあるそうです。
クラガリ谷へは入らず、p926に向かって登りましたが、ここでも倒木が目立ちました。
眺めのよい峰床山山頂に達しましたが、HB1214さんによればこの山頂はかつては今ほど広々とはしていなかったそうです。
山頂からオグロ坂峠へ続く尾根から、八丁平の広い北西斜面に下りました。斜面下からは、二つの緩やかな谷と真ん中の小さな尾根が美しい曲線を描いていてとても特徴のある風景です。
帰りは鎌倉山を経由せずp935付近から武奈ヶ岳の絶景ポイントを経由して林道へと下りました。
近年、山歩きで登り下りが続くと後半はよく足が攣るのですが、今回は2週間前のラッセル山行で鍛えられたのか、足が軽く感じて楽に歩けました。
1日だけの山歩きなのに様々なルートを体験させていただき非常に楽しかったです。皆様ありがとうございました。
今回はyamaneko0922さんのお誘いで八丁平を満喫しました。
八丁平へは1999年に行ったきりで、なんと21年ぶりとなります。21年前といえば、まだクマザサで覆われていた頃で、北山、比良といわず、どこに行っても山はクマザサの藪ばかりでした。今のように登山道を外れて周辺を自由に歩き回れるということは考えられなかった時代で、クマザサとの格闘(藪漕ぎ)の末に体力を消耗してしまって、目的の山までたどり着けなかったこともありました。
それが、そのクマザサが数年の間に一斉に消えてなくなったのです。どうしてなくなったのか、簡単に言うと鹿が新芽を食べ尽くしたからです。
クマザサは数十年に一度、一斉に花を咲かせて枯れ、代替わりをするとされています。あっ、そうそう、クマザサ、クマザサって言いますが、実のところササは種類が多くて、それが本当にクマザサかどうかというのは、私も含めて大方の人はわかっていないらしいです。多くの亜種があって、それぞれに名前があるのですが、みんなが大きな笹は全部クマザサって言うものだから、一般的に大きなササはみんなまとめてクマザサで通ることになってしまったらしい。
元に戻ります。新芽は鹿に食べられるという話でした。京都から滋賀や福井にかけてのクマザサは2001年頃に花を咲かせて枯れてしまいました。ちょうどその頃、鹿が爆発的に増えたのです。鹿は大きく成長したササの葉は堅くて食べません。(鹿さんが言うには)柔らかくおいしい新芽が大好きよ。大きなのはキシャキシャして食べにくいの。消化も悪いし。ということらしいです。知らんけど。
ササの新芽という食料が増えたから鹿が増殖したのかもしれません。
ササに限らず、いろいろな植物が鹿の食害で激減する中、クリンソウやマツカゼソウなどは鹿が嫌いなものだから、ここぞとばかり繁殖しています。山芍薬なんかも鹿は嫌いらしいですよ。イワカガミやイワウチワも嫌いなんでしょうね。
鹿さんたちの影響でクマザサがなくなって山は明るくなり歩きやすくなりました。自由にどこでも歩けるのは楽しいことです。でも鹿の食害のことを思うと複雑ですね。
鹿が増えたのは、一つの理由として人の手によって天敵のオオカミが絶滅させられたからだと言われています。あとは温暖化とか造林だとか、これって全部人間の仕業じゃないですか。
歩きやすくはなったけれど、植生は豊かでなくなった。そしてヤマビルのビッグバーンもです。鹿が増えたからヤマビルが爆発的に増えた。やっぱり山にはクマザサがある方が自然なわけです。
非常に前置きが長くなってしまいましたが、そんなクマザサをかき分けて最後に訪れてから21年経ったわけです。
今回のコースはyamaneko0922さんにお任せ、どのルートを通って行っても面白くないはずがありません。それに今回お初の八丁平を知り尽くしたmichikusa78さんともご一緒。楽しくなりそうです。
中村から江賀谷の林道を歩きます。江賀谷は伊賀谷とも言われています。
「い」と「え」という発音は方言でよく入れ替わることがあります。「いいよ」「ええよ」ってのが代表的とも言えるのでしょうか。「両替」はもちろん「りょうがえ」って言うのが標準的ですが、わたしたちより年代の上の方では「りょうがい」って発音する人も多いし、などなど例を挙げればキリないのですが、伊賀谷と江賀谷も方言というほど広い地域性のものではないですが、地元一部の人たちの訛りから始まって二手に分かれて使われてきて、それぞれに漢字を充てたのではないだろうかと勝手に思います。
この話をしていたら伊賀谷(わたしは江賀谷より伊賀谷の方がしっくりくるので、今後は伊賀谷と言います)左俣のことをスズ谷とも言うとのことをmichikusa78さんに教えてもらいました。これは知らなかった。ひとつ賢くなりました。
林道を歩き、右から北兄谷が合流する地点を渡ってから伊賀谷林道に別れを告げて植林地を登ります。最初こそ仕事道っぽい踏み跡はあるのですが自然林に変わると踏み跡もほぼない状態です。次第に尾根の地形が明瞭になってくると、地面には丸く光沢ある深紅の葉が多く見られるようになります。
さてこれはイワウチワなのかイワカガミなのか。花が咲かない限りわたしは見極められませんが、聞いてみると葉の形が円形ならイワウチワ、ハート型ならイワカガミということらしいです。これだけでもややこしいのに、この地域(近畿地方北部日本海側?)ではイワウチワと思われるもののほとんどは、実はトクワカソウらしいということもyamaneko0922さんに教えてもらいました。
調べてみると、花の形は全く見分けがつかないらしいのですが、イワウチワは葉の基部がくびれているのに対してトクワカソウは円形に近いということ。
ここで見られるものはハート型の葉をしているのでイワカガミだと思います。
同様に見極めが難しい花としてはトリカブトもありますね。この近くで見られるもののほとんどはキタヤマブシらしいのですが、これは変種も含めると50種類以上あると言いますから、山を歩いていて花を見るだけでは、わたしにはさっぱりわかりません。
比良山を望むことのできる展望所を過ぎ、尾根もなだらかになってくると、わずかに地面が白くなってきました。これは残雪ではなく昨日に降った雪でしょう。やがて東からくる大きな尾根に乗ると、尾根の北側斜面を中心にわずかに残雪も見られるようになってきます。
今この尾根で既に標高は900mを超えています。八丁平の標高よりも高い。さらに八丁平は日当たりもよいので、現在地のこのような残雪状況からは、八丁平には雪はないだろうと残念ながら容易に推測できてしまいます。今季の短い雪山期間、最後のおこぼれにでもありつけて雪の感触を楽しめたらなぁと思っていたのですが、これは無理な希望というものですね。
少し尾根を西進したところで、yamaneko0922さんが、きょうは寄り道したいところがあるんです。いかがですかとのご提案。わたしは一も二もなく賛成!michikusa78さんも道草大好きのご様子なので、ではということで一旦主稜線を外れて南の支尾根に足を踏み入れます。谷に下りて対岸の小尾根を登ろうというものです。
yamaneko0922さんが興味あるところには何かがあるはず。特殊な嗅覚をお持ちですから。わたしもこういうのは大好物です。
急斜面を谷に下り立ち少し下って二俣へ。対岸尾根に取り付く予定でしたが、ここでyamaneko0922さんが新たに何かを嗅ぎ取られたようです。右岸支流を遡ることになりました。
地図を見てみると、これは面白そうな谷ではないですか。源流部から屈曲しながら等高線が急に密になり下ってきています。遷急点がハッキリした谷、こういう谷には滝があることが多い。これはワクワクです。
小さな段差の流れをいくつか越えると、あっやっぱり!滝が見えてきました。小落差ながら整った形の滝。1/25,000地形図に水線は引かれてはいるのですが、源流域の面積が狭いので普段なら水量少なく、岩を水で濡らす程度なのかもしれませんが、雪解けが急速に進んだこともあってか水はしっかり流れています。
その滝の上にもナメ滝があり両岸に岩が迫っています。しかし滝の直登は不可能で、巻きや低い位置でのトラバースも微妙。右手斜面を少し登ってyamaneko0922さんが高い位置のトラバースルートをチェックするも、石楠花の藪もあって容易ではなさそう。
ナメ滝の上で谷は右に折れているので、その先の様子をうかがい知ることはできませんが、まだ滝が続いていそうなよい雰囲気なのですが、今回はこのまま右斜面を尾根めざして登って行くことにします。
急登を終え少し尾根を進むと鎌倉山方面から来る登山道と出会いました。この稜線からは北に百里ヶ岳や三国岳、西に桑谷山などを望むことができました。さてこの先オグロ坂峠から八丁平に入るか、中村乗越まで尾根を南下するかという2通りのルートの提案がありましたが、わたしが久しぶりの八丁平ということで、八丁平を満喫できるコースにしましょうとオグロ坂峠経由コースに決定です。お気遣いありがとうございます!
久しぶりのオグロ坂峠なのですが全く懐かしさを感じられません。それは以前とは全然違う雰囲気だから。昔はクマザサが覆う深山の峠で、暗いイメージがあったのですが、今見るこの風景はとても開放的で爽やかなイメージ。同一場所とは思えません。唯一、祠があることで同じ場所だということがわかるくらいです。
オグロ坂峠を後にいよいよ八丁平の湿原に入って行きます。湿原が見えること自体がまた驚きでした。以前は登山道脇のササが人の背丈より高く、湿原は全く望めなかったのです。
湿原の奥には丘が列び(実際には900m級の山々ですが)、湿原内にポツリポツリと立つ木にはヤドリギの丸いぼんぼり、斑模様の残雪、こんな庭園風の景色は想像していなかったので、ついついカメラのシャッターを切る指も頻繁に動きます。
湿原の南端で橋を渡り、ザックをデポして、michikusa78さんおすすめの絶景ポイントへ。なだらかな北東斜面が開けている絶景ポイントからは比良山系が一望。大好きな比良山をいろいろな場所から眺めてきましたが、琵琶湖側以外で連山を見渡せる絶好のポイントとしてはここが初めてです。それにしても見る限り比良に雪はほぼなく、2月の風景とは思えません。
フノ坂からの道との合流点にあるベンチでランチの予定でしたが、ここでこの景色を眺めながらの方が良かったとyamaneko0922さん。でも荷物はデポしてきました。残念。
湿原周回路に引き返し、橋を渡って分岐のベンチでランチタイム。yamaneko0922さんyamaizuさんご夫婦に毎度のようにおよばれ。今回はイタリアン3品にブレッド、このシチュエーションに絶品ランチ、さらにmichikusa78さんにはわたしの大好きなルピシアの紅茶を淹れていただきました。
普段の山行では近所のディスカウントスーパーで買う49円オニギリ×2に4本105円魚肉ソーセージ1本、39円500㎖緑茶で軽くランチを済ましてしまうわたしにはこの上なく豪勢なランチです。
気温はおそらく10℃前後でしょうが、無風で日差しがあるため快適で温かさも感じられます。下界で10℃であれば少し寒く感じるのかもしれませんが山上では適温に感じられます。人間の感覚とは不思議なものです。
申し分ない青空の下、ちょうどいい体感温度で、すばらしい景色を眺めながら、山友と山話を交わしつつ美味しいランチをいただく。こんな贅沢なことはありません。改めて、ごちそうさまでした。
ランチタイムのあとは新心荘跡へ向かいます。同志社大学の新心荘は中学校のワンゲル部夏合宿等で何度かお世話になった小屋です。花脊峠から重たいキスリングザックを担いで、ヘトヘトになってたどり着いた中学1年生時の記憶が甦ります。
でもやっぱり現在見ているこの景色とは全く違っていたので、今と昔の記憶が交わることはほとんどありません。
新心荘は京都市が八丁平を縦断する林道建設を計画した際に、環境破壊の観点から同志社大学等が猛反対、結局林道は八丁平を通らず迂回ルートで建設となったのですが、それと同時に新心荘も撤去の勧告を受けて解体されました。京都市と同志社大学との間で色々あったらしいという話をyamaneko0922さんから聞きながら、跡地を見て回ります。
小屋の前の杉は何となく記憶と重なる気もしますが、水場は水量が随分減っていたり、小屋裏が鬱蒼とした森であったのが今は開けているなど、以前の記憶とは重ならないことの方がやはり多くあります。
そういえば小屋裏から少しクラガリ谷を奥へ行くと、ミカエリソウの群落があったように記憶しています。今はもうないのでしょうね。このことをお3方に小屋跡で話していた時にはテンニンソウと説明していたのですが、家に帰ってからあれはテンニンソウではなくミカエリソウだということに気がつきました。同じような植物で花の色が白か紫かの違いなので、おぼえ違いをしていたようです。そういえばミカエリソウは雲取山でも多く見られたし、北山では普通に見られる花だったと記憶していますが今はほとんど見かけませんし、多くの方のレコ等を見ても登場しないということは激減したのでしょうか。
新心荘跡からはクラガリ谷を行かず左手の斜面を登り尾根に出ます。この尾根には倒木が多いのですが特に通行の支障にはなりません。
途中、展望所からは堂々とした皆子山が正面に望め、大見湿原の一部を見下ろすことができます。皆子山の左には比叡山が山頂部分だけを恥ずかしそうに覗かせているし、皆子山の右手には幾重にも折り重なった京都北山の峰々が望め、最奥には愛宕山から地蔵山へと続く北山の中では他より一段高い稜線を見ることができます。
大悲山方面からの道と先ほどの新心荘からクラガリ谷を登ってくる道と相次いで合流。そこからは10分も登ると峰床山頂。山頂手前にある白骨化した杉の枯れ木オブジェが印象的です。
オグロ坂峠、新心荘跡と同様に山頂のイメージも以前とは全く違ったものでした。ササの中の小さな山頂スペースだったように記憶していましたが、今見る山頂は広く開放的でそのギャップは大きすぎます。特に西方面は以前よりもずっと開けており、北山の峰々が一望でき、その稜線の重なり具合と遠方ほど淡くなる色のグラデーションがお見事です。
山頂三角点横には大きなケルンが積まれていて、徐々に大きく高くなってきているとのこと。1m近い高さに積み上がっていますが、これは皆子山に対抗してのものではないでしょうか。
皆子山は標高971.3m、対して峰床山は969.9m。その差はわずか1.4m、この差が京都府の最高峰と第2位とをわけている。ということでおわかりだと思いますが、石を積み上げて皆子山より高くしようということだと思います。これに気づいた人がこれからも積んでいくのでしょうか。いずれケルンが1.4mの高さになったとて、もちろん地図上の標高が変更になることはありませんが。
山頂より尾根伝いにオグロ坂峠に向かう道を下ります。そして鞍部より再び八丁平湿原方面に下っていきます。ここはyamaneko0922さんがおっしゃる通り非常にフォトジェニックな場所で、ゆるやかなU字谷地形の美しい草原。その右斜面には堂々とした巨樹が番人のように草原を見下ろしているというところです。
防鹿柵があり、その中と外とでは植生が異なっていて、人工的な斑模様となってしまってはいますが、見下ろしてもよし、見上げてもよしの美しい場所には違いありません。
さらにきょうは朝から雲ひとつない申し分ない快晴なので、まだ芽吹く前の山々の枯れ草色と青空との対比が面白い。また違う季節にも訪れてみたいところです。
湿原の北側を通り、再びオグロ坂峠への道を進みます。峠手前に水場があり、ちょうど地面から地上に出てきところ、今生まれたばかりの水が流れています。
帰路は鎌倉山方面の一般登山道には行かず鎌倉谷の南の尾根に入ります。数多くの種類の樹木が混在する美しい自然林の広い尾根で、michikusa78さんは落ち葉のチェックに余念がありません。
いくつかのなだらかなピークを越えるとyamaneko0922さんおすすめの絶景ポイント。尾根の東側が崩壊して切れ落ちており、その分視界を遮る樹木がないため、思う存分に東方面の眺望を楽しむことができる場所です。もちろんここから東に見える山といえば比良山系で、北から南まで比良の主だった山々が手に取るように並んでいて、比良山好きのわたしには感動ものの絶景です。日が傾きはじめているので山肌はやや赤味を帯びてきています。もうすこし時間が経ち夕日に輝く姿もそれはすばらしいだろうと思うのですが、そこまでゆっくりはしていられません。
さてここまではゆるやかでどこでも歩ける広い尾根ルートでしたが、ここからはそれが一変、しばらく気が抜けないルートとなります。急傾斜のやせ尾根なので神経を遣います。慎重に下っていくと植林地の広い尾根に変わります。尾根らしい特徴ではない地形なので下りにはGPSかコンパス&地図が必要なところです。yamaneko0922さん曰く、先ほどのやせ尾根に比べればここは普通の下りとのことですが、いやいや結構急斜面です。
徐々に踏み跡が出てきて大きなモミの木を見ると、すぐに林道に下り立ちます。
林道を歩いていると時折見える武奈ヶ岳が見る度に高く聳えていきます。わたしたちが標高を下げているのだから当たり前のことですが、その変化が新鮮に思えます。わたしがもっとも愛する山の一つである武奈ヶ岳をそばからずっと眺められる、他の山との思い入れの違いが新鮮に見えるのでしょうね。
鎌倉山登山道が林道を横切る箇所で武奈ヶ岳の見納め。林道を離れ登山道を下ります。
安曇川の水の流れる音、国道を走る車の音が徐々に大きくなってきます。これらの音は今日の登山も終わりに近づいていることを知らせるもので、疲れたり不安だったりしている時にはホッとするものかもしれませんが、きょうは長時間歩いたにもかかわらず非常に楽しい山行で、これで終わってしまうのかと思うと、それらの音はちょっともの悲しく聞こえてきます。
そして程なく、坊村の駐車場に戻り、きょうの楽しかった山行も終了です。
久しぶりの八丁平を十分に楽しめた充実の山行でした。yamaneko0922さん、案内とルート開拓ありがとうございました。yamaizuさん美味しいランチ、それに楽しい一時をご一緒できたことありがとうございました。michikusa78さん八丁平の案内と情報、それに美味しい紅茶ありがとうございました。またご一緒しましょう。
これまでに幾度となく訪れている八丁平であるが、今年は雪の八丁平を訪れることが出来ていない。一昨日の土曜日には寒冷前線が通過したためにそれなりの降雨があったものと思われるが、それでも八丁平には少しは雪が残っているのではないかと期待して、michikusaさんとHBさんをお誘いして出かけることにした。そういえばmichikusaさんに初めてお会いしたのは丁度、二年前のこの季節、雪深い八丁平のことであった。
坊村に集合してルートを相談するが、江賀谷林道から北兄谷の右岸尾根を辿って江賀谷の左岸に連なるピークを目指す。この尾根はテープ類も一切なく、ほとんど歩かれていない尾根であるが、尾根上部までは自然林が続く。林床には馬酔木の小さな藪が頻繁に現れるが、その間を縫って進む鹿の踏み跡を追ってゆく。この尾根は昨年の冬も終わりかけの季節に長男と共に雪の八丁平を目指して辿ったのだった。
江賀谷から登ってくる植林と合流するとわずかばかりの間、植林地を進むが、主稜線が近づくと下生のない快適な自然林となる。ここからは一度、江賀谷の右俣の源頭に下降して、中村乗越から北へ続く尾根に登ることを目論む。ca950m峰から南に伸びる尾根を下ると西側の植林の急斜面を下降して谷の出合に下る。西側の谷に入ると谷の奥に小さな滝が現れる。滝に惹かれて谷奥へと入るが、奥に進むにつれて谷の右岸の斜面は急峻になってゆく。滝を左側から巻くことは難しそうなので右側から巻くしかない。対岸の斜面にトラバースしたいのだが、再び沢沿いに入ろうにもシャクナゲの群落が斜面のトラバースを阻む。大人しくそのまま尾根を上がる他ないようだ。
HB1214さんは私に特殊な嗅覚があると書かれておられるが、とんでもない、この源頭への下降は小瀧にお目にかかっただけで、あまり魅力的なところとは言い難い。シャクナゲの季節には花も咲くのかもしれないが。
再び稜線に出ると北には桑谷山が姿を見せる。オグロ坂にたどり着くと、峠の西側にそびえ立つ数本の山毛欅はそのすらりとした気品のある佇まいに視線がいく。オグロ坂から八丁平の方を眺めると、やはり八丁平には雪がない。オグロ坂のすぐ下には水場があるのだが、水を触ったmichikusa78さんの感想「意外と冷たくない」。それは雪が深く積もった10日ほど前と比べればさもありなん。
八丁平に入ると時計回りに周回して、p914の端をかすめる。このピークの北側には格好の好展望地があるので、ランチの前にリュックをデポして展望地に上がる。この展望地は久しぶりに訪れたのだが、よくよく考えたらランチ場に格好の場所なので、下にリュックをデポしてきたことが悔やまれる。
とはいえ、八丁平の南西のベンチに戻ると、ここのベンチの上調理をするのがお決まりのようになっている。そういえば以前、以前にmichikusaさんと八丁平で待ち合わせをさせて頂いた時もここでランチを調理したのだった。今回はアヒージョにリゾットを調理、michikusaさんには紅茶をご馳走になる。
後半はp926を経由して峰床山へと向かう。尾根上には倒木がかなり目立つ。一昨年の台風の後にもこの尾根も幾度か歩いてはいるが、こんなに倒木が多かっただろうか。michikusaさんによると台風で樹の根元が緩んだせいだろう、その後も倒木が増えているという。
峰床山の山頂にたどり着くと、西側の重畳たる山並みを見晴らすことが出来る。山頂の北東に出ると武奈ヶ岳の左手には三重嶽が白い山肌を見せている。空気が澄んでいれば武奈ヶ岳と三重嶽の間には白山を展望することが出来るのだろうが、この日は霞んでいるせいかそれは能わない。前回来た時に見かけたPHさんの山名標が消失していた。
峰床山から東に向かい、八丁平の北西に広がる谷から周回路へと下る。この周回路の周囲には防鹿ネットが張り巡らされているのだが、冬の季節はネットが外されているので自由に歩くことが出来る。今回は防鹿ネットを張るためのポールも引き抜かれていたので、今後はネットを張らない予定なのだろうか。
そもそも防鹿ネットを張ったのはかつてこの地に生えていた笹がネットを張ることによって復活するかを実験するためという話があるようだが、植生保護された空間の中で繁茂しているのは笹ではなく、鹿が好んで食するとも思えないような灌木であった。周回路の内側と外側ではネットの中で繁茂している灌木の種類が違うことにmichikusaさんは気がつかれる。果たしてこの灌木は今後どうするつもりなのだろうか?
帰路はオグロ坂によらず、水場から県境尾根に直接登る。鎌倉山へ向かう県境尾根から分岐して東側に向かうと、このあたりはいくつもの小ピークが寄り集まって、皆子山の西尾根と同様に複雑な地形をなす。ピークを繋ぐ緩やかな尾根には自然林が広がり、傾いた午後の陽光が黄金色に樹肌を染めている。
なだらかな尾根の東端からは東側に大きく眺望が開け、琥珀色を帯びた比良の山々を展望する。
自分の知る限り比良の山々を北から南まで間近に俯瞰するには最上の展望地に思われる。始めてこの展望にたどり着いた時には長い林道の後に植林の急斜面のラッセルの後でシャクナゲが繁茂する急峻な細尾根を登りつめたところだったので、この大展望の感動はひとしおだった憶えがある。
ここからは上述のコースを逆に辿るが、詳細はHB1214さんの記述にお任せしよう。雪が融けた後の鎌倉谷林道は随所で泥濘みが広がる。だが、この林道は山を切り開いた結果ではあるが好展望に恵まれ、坊村への登山道への分岐までは短く感じられた。最後は歩きやすい登山道を辿り、尾根をジグザグと降りる。坊村では朝には多く停まっていた車はすでに去った後あった。
坊村の近くでは図らずしも多くの蕗の薹に出遭う。早速、家で蕗味噌を作ると、ほろ苦い味わいと共に楽しい山行の思い出が立ち昇るのだった。
コメント
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興味深いルートでございます。
江賀谷林道から北側稜線へ上がれるとは聞いていたものの、等高線も密なので難度も高いだろうと考えておりました。P461から北西に上がってP835付近を通過するルートなんですね。
二股から尾根ルートを上がってP835を通過するルートもあるのでしょうね。
江賀谷右俣の上部にもルートがあるとか。往路のV字型に通られた谷ルートへ出られるのかわかりませんが、私のスキルでは谷遡行はむりなのでカシミール3Dへ登山道追記程度で終っておくことにします(笑)
もう一つ気になっている中村乗越から県界尾根を上がってオグロ坂峠近くへの稜線ルートは今回通られておられないよう。地形図上では通れそうな感じなので多分皆さんは踏まれている事でしょうね。
クマザサの話も感慨深いお話ですよね。諸先輩方の昔のレコを見ますと、一面ササ原だった箇所が、地面があらわになっていたりして同じ場所とは思えない光景を目にします。ヤマビル増加もそんな因果関係があるんですね。
そうそう、私はクマザサの「クマ」は「熊」って思っていたことがあるんですよ。誤字がまかり通っているようで本来は「隈」が正解で、歌舞伎の「隈取り」から来ているとか知りました。それも総称なんですね。また一つ勉強になりました。
いつも思いますが「yamaizuさんって凄いな〜」って。山猫さんが歩かれるバリルートを同行されておられて脚力もスキルもバッチリですね。
みなさん、お疲れさまでした。
no2さん、こんにちは
今回ほとんど雪なしでした。氷ノ山羨ましく拝見していました。
北兄谷右岸尾根は藪もあまりなく歩きやすいルートでした。ただ上部は一面イワカガミの葉が覆っているので、踏まないように気遣いながら登っていました。このあたりもyamanekoさんの広い広い庭の一部のようで、ここは忠実の尾根を行くより直進した方が早いとか、ここは尾根に見えないけれど右折とか、それはお見事に案内いただきました。
クマザサは柵で囲って保護してあるところがありました。雲取山や皆子山など背丈以上のクマザサに悩まされたものです。比良でも中峠〜コヤマノ岳間や白滝山の池周辺等でも格闘しなければなりませんでした。
わたしもyamaizuさんはすごいと思います。難所でも涼しい顔で切り抜けられています。
ののさん コメント有難うございます。
江賀谷林道から北の稜線に上がるルートは今回辿ったものの他にいくつものルートが可能です。しかし、基本的の植林の尾根が広がっており、あまり面白くない尾根がほとんどだと思います。唯一、この北見谷右岸尾根はp835の北で下から登ってくる植林と合流するまでは自然林の尾根です。江賀谷から登った場合にはオグロ坂経由で下りに使うにも使いやすいと思います。江賀谷右俣からp835に上がるルートは私は知りませんが、ここも植林地が広がっているので、どこでも登れるでしょうが、面白くない尾根になると思います。ただ、右俣の東側の谷の周辺は自然林が広がっており、源頭もなだらかなので、改めて訪れてみたいところです。
昨年の3月に長男を伴って八丁平を訪れた際にもこの北見谷右岸尾根を登っているので、念のため、以下にリンクを貼らせて頂きます。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1760054.html
上記の山行の時には中村乗越から県界尾根を南下していますが、この県界尾根はp914からオグロ坂近くの稜線に至るまで薄い踏み跡がついています。ただ一昨年の台風でかなり倒木が増えたように思います。
クマザサに関する蘊蓄有難うございます。HBさんもmichikusaさんも植物に関する知識が豊富なので、いつも色々と教えて頂くことが多いです。
家内は登山のキャリアも短く、脚力もスキルもありません。私のレコで時々書いておりますが突然スローダウンしたり、あるいはその逆もありますが、ペースが読めないことが多くて困ります。しかし、この日はHBさんやmichikusaさんの後をついて歩いたお陰で元気を頂いたことと思います。これまでにもHBさんやmichikusaさんと一緒の時は機嫌よく歩いてくれるのです。
no2さん 初めまして。この日の山行、付いて行っただけですが1日で色々な道を歩かせていただきました。いつも行く同じ目的地なのにこんなに楽しく歩けるんだな、と思いました。急な谷あたりの難しいルート選びの部分では前方でyamanekoさんとHBさんで相談しながら進んで行かれたので気楽に付いて行けました。
八丁平のササについては、京都市ホームページのPDFパンフレットによると「チマキザザ」と説明されています。クマザサの中の一種なのか、クマザサのことを京都らしくチマキザザとも呼ぶのかな?と思いました。
今年もこの付近の山を歩きたいと思います。お会いしましたらよろしくお願いします。
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