白山イグルー縦走・石徹白から白川郷
- GPS
- 41:41
- 距離
- 54.6km
- 登り
- 3,939m
- 下り
- 4,186m
コースタイム
- 山行
- 5:36
- 休憩
- 0:43
- 合計
- 6:19
- 山行
- 4:15
- 休憩
- 0:21
- 合計
- 4:36
- 山行
- 6:33
- 休憩
- 0:07
- 合計
- 6:40
- 山行
- 8:16
- 休憩
- 0:26
- 合計
- 8:42
- 山行
- 7:38
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 8:12
天候 | 1日目:雨、2日目:ガス吹雪、3日目:晴天強風朝低温、4日目:快晴風あり。5日目:晴れのちガス小雨、6日目:晴れのち曇り時々雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
帰りは高速道路バス3000圓(白川郷〜名古屋駅) |
コース状況/ 危険箇所等 |
初日雨、三日目の朝はマイナス13度くらいになったため、雪面は概して固く、スキーに適さなかった。雪の量はあり。 視界不良時の複雑な尾根線、硬いと急斜面が難所になる。総合力が必要。 |
その他周辺情報 | 冬季小屋は3軒とも使える。 |
写真
装備
個人装備 |
スコップ+のこぎり
スキー・ストック・シール
アイゼン・ピッケル
ビーコン
ラジオ+天気図
その他冬山泊個人装備(寝具一式・ナイフや灯り地図磁石)
|
---|---|
共同装備 |
ツエルト
ストーブ・鍋
6mm×10 mシュリンゲ
|
感想
20年前に富山の大門山から大笠、笈岳、三方岩までスキー縦走した。今回はその南の延長を北上する白山完結編。残念ながら松は仕事の都合で不参加。30年来のお付き合いのカタオカ(サンナビキ)さんと挑む。石徹白は美濃白山禅定道の正面玄関。峰を越え越え我が道で白山に登ろう。目方はスキー込みで三十キロ弱。
1日目:雨の林道ずぶ濡れ。銚子ヶ峰手前まで。
入山は車をニシナさんに出してもらって石徹白へ。ここは車を置いていけないし公共交通も無いのでこれしか手がない。林道はデブリが激流まで迫る危険箇所が三つ。アイゼン履いたりする。カタオカさんのシールの引掛け金具が破損し、針金で対処する。ニシナさんは石徹白杉にて引き返す。どうもありがとう。
大した雨じゃないと思っていたが、下半身カッパを着なかったため、登山靴の中がドボドボになってしまって後悔。普通、雨の季節は地下足袋で、登山靴の季節に雨ってあまりないから忘れていた。覚えておこう。宮鳩避難小屋は20年前の記憶と違ってピカピカ。冬季出入り口が高度感ある高窓で、緊張する。全身ずぶ濡れの身に、小屋の毛布がありがたかった。いつもどおり、両かかとに五百円玉大の靴擦れ。靴ももうぼろぼろだ。
2日目:樹林限界出て、三ノ峰避難小屋まで。
全然乾かず、やる気も消沈して出発。空は曇天、強風、雨は小雪ではあった。靴以外は行動でバリッと乾いた。しかし濡れた防寒テムレスは厄介だ。久しぶりに毛の手袋+オーバー手を使う。
銚子ヶ峰、一ノ峰、二ノ峰とどんどん針葉樹が減っていく。標高が2000無いのに樹林限界が低くてカリカリだ。スキーはこの日から担ぎっぱなし。視界もあったりなかったり。少々早いが霧の中思いがけずも見つかった三ノ峰避難小屋に転がり込む。風が強くてかなわない。入り口前は吹き溜まっていたが、スコップで彫りまくってドアノブまで達する。戸は幸運なことに内側開きだった。内部は清潔で簡素。白山で、福井県の県域はここより南側まで。つるが山楽会記名の毛布をありがたく使う。ここは貴重な三県境ポイントだった。またひとつ三県境を踏む。
3日目:快晴強風、別山越え
気温が下がり、濡れたものがバリッとフローズン。朝は凍った靴に足が入らず。アウターにインナーが入らず苦労する。靴ずれのかかとをゴシゴシやって突っ込む。拷問だ。初めての青空に別山が真っ白だ。白山本峰も初めて見えた。神々しい。続く稜線は片側が絶壁のところが多い。雪庇
も大きいが、庇ではなく、こんもり根がある感じ
で安定している。
大屏風の2276の下りなど、カキンカキンの急な斜面で、高度感もあり、尻もちついたら助からない長い斜面だ。地味に難しい稜線である。南竜山荘のある低い所には降りず、県境稜線を辿る。どこかの青い県警ヘリが飛んできて、頭上を越えていった。
御岳や北アルプスが全部見える所にきょうの宿りを作る。ここ数日の雨や低温が不安だったが、イグルーの出来ない雪はない。カタオカさんには初イグルー。ちょっと小さいと言われた。確かに足を伸ばせなかった。
4日目:快晴、最高点御前峰越え。スキーとアイゼンの判断目まぐるしい稜線
ちゃんと早起きして6時に出る。ひたすら白くて硬い斜面を登って広大な室堂のプラトーへ。ここも犬ぞりがほしいくらい長い。視界がないと難しいだろう。お宮にて家族の幸運をお祈りして冬季小屋の位置を確認。ここはわかりやすく黄色に塗ってあり入りやすそうだ。お宮の後ろの一番広いルンゼを登る。山頂がすぐ近くに見えても遠いところが富士山に似ている。
山頂のお宮も立派だ。20年近く前、残雪期に大白川から柳田くんとカメさんと登ったときのまま。山頂には岩の上にまでスキーの跡がある。今朝のものかもしれない。朝イチで登る著名なヤスヒロ氏一行のものだろうか。すごい。
大汝とのコルに降りてスキーと思っていたが、ここの急斜面がすごく硬く、緊張する。噴火口周辺でスキーを履いてみるが、横滑りしながら滑落しそうで、アイゼンに付け替える。大汝から東に降りるルンゼも、ちょっとスキーという気配じゃない。標高差200mは滑落しそうだ。緊張してアイゼンで下る。念仏尾根2349の平らな稜線に来てようやくスキーに。硬い面と積雪面がくるくる変わり、重荷登山靴スキーでは結構息が切れる。稜線が細くなるとスキーを脱ぎ、また履いて、間名古の頭手前のコルを見下ろす硬い急斜面で20mほどスキーでずり落ちる。50mほど下の積雪までは横滑り滑落という感じを覚悟して滑り出したが、回転もしたし、怪我しては元も子もない。やはりアイゼンに変えるべきだった。アイゼンでもバックステップするくらいのところ。いろいろ判断の迫られる稜線だ。
間名古の頭は、西側をトラバースするが、ここも樹林帯のくせに斜度45度でカキンカキンだ。100m位行って、アイゼンに替える。午後3時、この時間帯に危ないところを通るのは経験的にまずいと思った。ちょっと傾斜のゆるいところでイグルー作って泊まることにする。これがイグルーの良いところ。集中力の落ちた時間に、無理してやばいところを抜けようとしてはいけない。きょうは広いイグルーを作る。なんだかひらめいた。今回の雪は最低の質だが、足元から長細いブロックを切るには、トレンチを掘ればいいんだ。重くて硬い雪だろうが、縦割りにして使える。これで足元から三段掘れば、最期に雪捨て整形の手間も要らない。広いイグルーも遠慮なく作れるな。
5日目:オモ沢の痛快スキーと視界無い複雑稜線
間名古の嫌なトラバースを朝イチで済ませ、三叉峠からスキー滑降。僕の20年使っている板の、滑走面の接着剤がヘタったのか、みるみる剥けて取れてしまった。カタオカさんに登山靴スキーや竹ストックと共にボロい装備を笑いものにされる。僕は足首が自由に動く、登り重視の靴で登って滑りたいんだけどな。今回の山行では、結局雪面が硬く、ラッセルがなかったので、シールスキーで登降という場面は一度もなかった。ノリが剥がれ気味だったのでこれはラッキーだったかもしれない。
オモ沢乗っ越しから取り付いた稜線は、霧に巻かれ、複雑な地形で方角や雪面の傾斜が見えず、必要以上に頭を絞らされた。急な雪壁が現れ、雪庇の弱点から這い上がるポイントも有り、なかなか簡単ではない稜線だ。しかし、広い雪原に針葉樹の点在する北海道のような場所も多々あり、そんなところでは鼻歌がでる。サンサーンスの3番とか。
そろそろ集中力も落ちてきた、明日の下山射程範囲に入ったので野谷荘司山の南コルでイグルーを作る。トレンチ式、次回の講習からはこれを教えよう。
コルに下る前の高いところで岐阜バスに電話をかけ、明日の高速バス名古屋行きを予約する。電波通じた。今回は結構テン場では通じない。
6日目:三方岩から白川郷へ下山
高曇り。野谷荘司山から行く手の稜線を眺める。視界があるってありがたい。北方の笈岳が三角に、大笠が真っ白に、美しい。三方岩からの下りは北側の急斜面をトラバースして尾根に乗るのだが、ここがまたカキンカキンに凍っていて怖い。20年前はここで視界ゼロ、フワフワ新雪の急斜面で、状況は違うけど、それも怖くて不安だった。このルートは下山路にするにはあまり安心できる尾根ではない。尾根はずっと傾斜が強く、先が見えないくらい急だ。雑木林に入っても急だ。ヘアピンカーブを見て確認したのも思い出した。あのときはこの雑木林を転がりながらスキーで降りた。
馬狩の道路は大雪崩で被災していた。トンネルを越え、白川郷へ舗装道を長く歩く。有線放送で「恋はみずいろ」お昼だ。バスターミナルで靴を脱ぎ、久しぶりに足の指をぐっと伸ばし五本指靴に履き替える。クロッカス咲く合掌集落を散歩して天ぷらそばでビール。バスではどっと眠り込んだ。56歳と65歳。ふたりまもなく誕生日。
スキー板もビンディングも靴も全部オシャカになってきた。イグルー技術だけは作るたびに発見がある。
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