北アルプスパノラマ銀座縦走(燕岳〜大天井岳〜常念岳〜蝶ヶ岳)
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- GPS
- 80:00
- 距離
- 32.8km
- 登り
- 2,674m
- 下り
- 2,609m
コースタイム
【2日目】6:00燕山荘-9:00大天荘10:00-10:20大天井岳山頂10:40-10:50大天荘
【3日目】5:45大天荘-8:30常念小屋8:40-9:40常念岳9:50-14:00蝶槍-14:45蝶ヶ岳ヒュッテ
【4日目】7:00蝶ヶ岳ヒュッテ-10:00徳沢11:00-12:00嘉門次小屋13:00-14:00上高地
天候 | 晴れ時々雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
帰りは上高地〜新島々〜松本〜穂高駅でバス・電車(2,720円)で戻り、タクシー(1,700円)でしゃくなげ荘駐車場まで。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
下山後は小梨平キャンプ場の温泉(500円)に入りました。 ・合戦小屋のスイカ(800円) ・燕山荘のケーキ(500円) ・徳沢のソフトクリーム(400円) ・嘉門次小屋の岩魚の塩焼き(900円) 食べました。どれも美味しかったです。 |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
ついに憧れの北アルプスに登れる日がやってきた。一年前まだ登山始める前に上高地トレッキングで上の世界に憧れを抱き、北アルプスに登ることを目標に登山を始めた、とも言えるので感慨もひとしおだ。
今回のルートは、槍、穂高連峰を数日かけてじっくり眺められるパノラマ銀座コース。燕岳を登り、大天井岳、常念岳、蝶ヶ岳を経て上高地に下りる3泊4日の縦走だ。
出発は深夜の1時。3時間程の睡眠をとるも、興奮状態で深い眠りに付けず運転もハイな状態。初日の燕岳は結構な急登を長く登るみたいだが大丈夫だろうかと少し不安になる。
■燕岳
4時半しゃくなげ荘駐車場に到着。5時15分の中房温泉行きのバスに無事乗れた。
バスの中で爆睡。バスを下りると平日だというのに登山客で賑わっている。さすが北アルプス。
6時登山開始。いきなりなかなかな急登。道はよく整備されて登りやすいが、大股で登らされる階段がきつい。
眺望は望めない森林の道をどんどん進む。最近こういった登山が無かったので久々に感じる。奥多摩の山を思い出す。
第一ベンチ、第二ベンチは思ったより楽に来れた。地図で見ると等高線が激しいが道が整備されてる分楽だ。
寝不足による疲れ以外は至って快調。
第三ベンチ、富士見ベンチあたりを越えると、花崗岩が粉々になった砂礫の坂で、これが思いの他きつかった。足のパワーを砂に吸収されてるよう。
合戦小屋のスイカはまだか〜と念じながら踏ん張って歩くと小屋が登場。スイカ一切れ800円。
山価格で高めだが、これがすごく甘くて美味しい。
山で食べるからというのは勿論あるが、下で食べてもこれは美味しいスイカだと思った。
スイカでかなり回復し、登る元気が湧いてくる。ここまでくればもう急登もそれほど無さそうだ。少し進むと前を行ってた方が「あれ槍ヶ岳ですよね?」と指差して言った。本当だ、唐突にピョコンと槍の穂先が見える。思ったより遠くにあるがテンション急上昇。
合戦沢ノ頭という開けた場所に出るともっと槍の姿が大きく、下の方まで見えるようになった。あの存在感は一体何だろうか。
これから登る道の眺望も現れ、この日泊まる予定の燕山荘も小さく見える。その東に見えるピークが燕山頂か。
緩やかな坂を1時間程登り、やっと燕山荘に着いた。
稜線に出た瞬間目の前を見た事もない北アルプスの大パノラマが広がる。
言葉も出なかった。美しい。
空気がクリアで山肌がよく見える。
穂高・槍連峰から黒部渓谷、野口五郎岳など有名な山々が堂々と鎮座している。
去年夢想していた景色は、これだったのだ。横を向くと近くに見える燕岳のピーク。これもまた岩の形が特徴的で心を捉えられるものがあった。本当に燕の巣みたいだ。
一旦燕山荘にチェックインし、昼食をとることに。さすが人気No1の山小屋。
すごく雰囲気が良く綺麗で従業員さんの感じも良い。部屋に案内されると3畳一間位のロフトになってるような空間だった。布団が4つあったが繁忙期はここに4人で寝るのだろうか。。山小屋泊は初めてなので新鮮だ。昼食はカレーうどん。
美味しかった。
お腹もいっぱいになった所で、予定通り燕岳の山頂まで行くことにする。
大絶景の稜線歩き。
写真を撮りすぎて前に進まない。コマクサの群生が綺麗だ。
有名なイルカ岩やメガネ岩などもあり、楽しみながら山頂を目指した。
13時頃燕岳山頂。山頂標識は珍しい石の標識。
ここもまた360度の大展望。正面の立山方面にピークが三角形の気になる山があり、あれは劔だ〜いや違う、劔は立山の手前じゃない、じゃあ何だとその場にいる人達皆で地図を広げ見る等楽しい時間を過ごした。
知らない人同士でも友達のような交流が生まれるから山は素晴らしい。
燕山荘に戻りケーキを食べる。これがビックリするくらい美味しい。コーヒーをバーナーで沸かしてると隣の年配のご婦人から話しかけられ、しばし山トーク。
夕飯は、燕山荘名物のオーナーの話とホルン演奏。
燕の春は7月10日から、夏は7月20日から、秋は8月1日からという話には驚いた。
他にも色々と面白い話が聴けた。ちと長過ぎの感はあるが。
しかし夕飯が人数多すぎて3回に分けていたのだが毎回そのサービスを提供している事に驚きである。さすが人気No1の山荘だ。
■〜大天井岳
真夜中、ゴーゴーと風雨が叩きつける音で目を覚ます。
朝には晴れるだろうか...と心配するも、やはり4時になっても変わらない。
朝食を食べて計画を考える。
今日常念小屋まで行く予定だがこの天候の中7時間行動は厳しそうだ。
何より眺望も無く歩くのがもったいない。
今日は大天井岳まで3時間半程の行程を移動し、大天荘に泊まり、明日天気が好転するようなので長距離歩くことに決めた。
6時出発。始めはパラパラと降っていたが、次第に本格的に降り始める。
20分も経つ頃、空がゴロゴロと鳴り始めた。
稜線で雷に遭うこと程恐ろしい事は無いという。実際、本能的に危機感を感じる。緊張が走った。奥様はヤバいよ戻ろう!と強く言う。ピカッと空が明るく光った。まだ迷いがあったが、何が起こるか分からないし臆病すぎるくらいが正解という言葉を思い出す。
まだそれ程来ていないので引き返す決断をした。
引き返す途中、いくつかのパーティに出会う。「大天井から来られたんですか?」と聞かれたが「雷が怖いんで、引き返すんです。」と答えると、皆判断に迷ってるようで「自分達はどうすべきか」の思案をしているようだった。
もう少し戻った時、ソロでこちらにやってくるベテランの初老の方に会う。
その人にも戻る事を言うと、
「戻ったって今日は雨だよ。安曇野は大雨洪水警報だってさ。
大天井でしょ?ここから2時間だからすぐだ。雷はヘソとられちまうくらいだから大丈夫だよ。」とカラカラ笑う。
いや決して自然を侮っているわけでなく、この人自体が決意が揺らがないよう鼓舞してるように見えた。現にその後、「山にベテランも初心者も無え。大事なのはお天気。」とも「雷は怖い」とも言っていた。
その方に背中を押され、奥様に「どうする?」と聞くと「任せる」との事だったので意を決して行く事にした。賢明な判断とも思えなかったが、この日も燕山荘に留まることになると、縦走を諦めて下山の確率が高くなることもあったからだ。
雷は幸い鳴らなくなっていた。
その初老の方についていくと、自然とペースを合わせてくれてパーティになり、色々な事を教えてくれた。登山歴35年の大ベテランで槍や奥穂も良く登っている鉄人だ。低体温症にならないような歩き方、休憩の取り方、ポールの使い方なんかをレクチャーしてくれた。ガイド付き山行のようになり、環境は過酷だったがとても貴重な時間になった。
風雨は弱くなったり強くなったりを繰り返し、稜線歩きとはいえ足を踏み外せば大怪我しそうな巻道や急登もあった。
突風でよろけるような時もあり、緊張をゆるめる事なく足元に集中し続けた。
あとどれ位かと考えると気が萎えるかもしれないので、鉄人ガイドに任せて地図も確認しなかった。
かなり歩いただろうと思ったところで鎖とハシゴのポイントにきた。
喜作レリーフだ。大天荘まであと40分。
麓から吹き上げる風に耐え、ついに到着する頃、なんと雨があがった。
しかし山荘に無事着けた事が嬉しくて嬉しくて、こんなに有難いと思ったことは無かった。貴重な体験だ。
大天荘で濡れた装備を乾かす。天候も昼までは持ちそうだというので、常念岳まで行く人も多そうだっだが、明日天気が良いところでの眺望歩きを期待して決めた通り大天荘にチェックインした。10時台、早過ぎである。
パーティに途中から参加したこれまたベテランの方との山話を楽しみ、時間を過ごす。山という共通趣味、体験がある限り話のネタには困らない。
大天井岳の山頂までは10分の行程なので、軽装で行ってみる。
槍ヶ岳が間近く見える場所のようだが、残念ながら穂先は雲に覆われていた。
だがあの燕岳からの道が見え、今日の風雨の中通ってきた道があれかと思うと
しみじみ感動するものがあった。
■〜常念岳
3日目。今日は昨日楽した分頑張らなければならない。
大天井岳から蝶ヶ岳まで歩く予定だ。なかなかハードな山行になりそうだ。
5時半出発。今日は晴れのはずなのだが、いきなり霧雨がパラパラ。
あっという間にザックが濡れていくので、急いで雨装備にする。
30分程緩やかな稜線を下っていくと、雨も止んできた。
青空が徐々に開け、霧の中からアルプスの山肌が見え始める。
美しい光景だった。虹も見えた。
東天井岳を越え、雨具を脱ぐところで眼前に広がる雲海に心を奪われる。
ここから横通岳〜常念小屋までの道は、穂高連峰を眺めながら緩やかな稜線を歩く気持ちの良いスペシャルタイムだった。
しかし横通岳って大天井〜常念岳に向かうルートで横を通りすぎるだけだからそんな名前なんだろうか...可哀想だからピーク踏みたくなったけど時間の都合でやはり横を通った。
常念岳が真っ正面にドーンと見えてきた。長い急坂を下り常念小屋へ。
途中、先を歩いていた方から「雷鳥がいるよ〜!」と声をかけられ、見ると親鳥と子どもが2羽いて、クークー鳴いていた。鳴き声がとても可愛い。
常念小屋に到着し、記念のピンバッチを購入。
いよいよ常念岳に登る。
標高差400メートルのガレ坂を一気に登る。なかなかきつい坂だ。
登りきったと思ったところが山頂じゃなかったというのを3回くらい味わい、ようやく山頂についた。登り始めは晴れていたのに、あれよあれよと言う間にガスに覆われ、山頂に着く頃には全く眺望が無くなった。運が無かった。残念だ。
■〜蝶が岳
常念岳では眺望に恵まれなかったので、早々に次の目的地に向かうことに。
常念山頂から下り始めると、岩場の険しいコースでかなり道としては歩きにくかった。いつもならアスレチック気分を楽しむのだが、常念岳の登りで思ったより消耗してしまったらしい。膝や太ももにくる。標高を下げた途端また天気が回復してきた。常念岳を振り返ると山頂付近にも青空が。
常念岳には縁が無かったのかな〜と苦々しく思う。
ゴツゴツした岩場のアップダウンを繰り返し、穂高連峰が眼前に見える場所で昼食に。大天荘のお弁当、山弁当とは思えない豪華さでお腹いっぱいになった。
眺望は素晴らしいし、幸福感。
そこからかなりな急坂を下り、また登る。樹林帯に入ったがまた急登。
ここがやっと蝶槍か、と思ったのだが勘違いだった。
常念の急登と、岩場のアップダウンでもうすでにクタクタ。
気づいたら、ハイドレーションの水が切れてピンチ。
ここからゴールの蝶ヶ岳ヒュッテまで2時間、補給場所は無い。
ニッコウキスゲの綺麗な道を通り、やっと蝶槍の急登入り口に来た。
喉もカラカラで体力は残りわずかだったが、もう完全に無のようになりとにかく前に登る。
樹林帯を出てまた眺望が開けた時、穂高連峰と槍の美しく雄大な姿を見て疲れも吹っ飛ぶとはこの事かと思った。いや実際吹っ飛びはしないが、残り1時間頑張れる元気を貰った。
最後の元気を振り絞り蝶槍の頂へ。そこからこの日の宿ヒュッテまではなだらかな道で、もう身体をひきずるような感じで到着した。もっと体力つけないと...。
蝶ヶ岳に着いてびっくりしたのは人の多さ。
金曜日という事もあり、まさにごった返している。とりあえずビール。
カラカラの身体にビールはまわりが早い、が生き返る。
通された寝室は屋根裏部屋。
一つの布団を二人で使う。
こんな環境で一泊9000円もとられるのか〜と思ったが疲労困憊で即昼寝をした。
下の階の中高年の方々の宴会の騒ぎ声で目を覚ます。元気良過ぎ・・うるさすぎと不機嫌。(楽しいのは分かるんですけどね..もうちょっとモラルがあると良いなと..)
テント泊縦走できるようにならないとなぁと改めて思う。
ヒュッテの中は騒がしいので、外の日陰でコーヒーを煎れることにした。
何か人が集まって崖の向こうに手を振ったりしている。
ブロッケン現象だった。霧に映った自分の影に確かに後光がさして虹色の光彩まで見える。
こんな珍しいものが見えるなんて、と興奮。本当に不思議だ。
夕日が穂高連峰に沈むのを眺め就寝。
4日目朝、日の出が雲海から出てくるのを見る。
美しい。槍・穂高が朝日を浴びてオレンジ色になる。
荷物をまとめ出発。すぐ近くの蝶ヶ岳山頂まで登り、あとは下山だ。
名残りを惜しむように何度も槍・穂高連峰を眺める。
こんなに下山に後ろ髪を引かれた事は無い。
樹林帯に入り、眺望は無くなった。3時間の急坂をひたすら下る。登りも大変だったが、昨日のダメージを蓄積した身体になかなか堪える下りだった。
徳沢園のソフトクリームを夢想しながらひたすら下りて、ようやく到着。
ここまで来れば一安心。ご褒美のソフトクリームを食べ、明神池の嘉門次小屋で、かねてから食べたかった岩魚の塩焼きを食べる。美味い。
塩焼きに900円は高いけど美味いから来たら毎回食べてしまいそうだ。
上高地まで歩き、小梨平キャンプ場で4日ぶりの風呂に入る。
生まれ変わるかのような心地良さを味わう。水が豊富な生活ってありがたい。
そこから穂高駅までバス、電車を乗り継いで戻り、タクシーでしゃくなげ荘まで移動。約2時間かかった。
流石に3泊4日も歩くと、その距離もバカにならないのだなぁと感慨深く思い帰路についた。
北アルプスに憧れて山に登りはじめたが、一年経って実際に登ってみて何もその期待を裏切られることなく、驚きと感動の連続だった。
今日もその余韻に浸ってしまっている。
しばらくは後遺症との闘いだ。
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