憧れの剱岳・北方稜線を2泊で歩く!
- GPS
- 55:59
- 距離
- 23.2km
- 登り
- 2,639m
- 下り
- 2,637m
コースタイム
【day2】 0600富山-電鉄富山0626=0729立山0740=0747美女平0820=0910室堂-0920みくりが池温泉1020-1100雷鳥沢-1400剱御前小屋-1500剣山荘(泊)
【day3】 0600剣山荘-0725前剱-0850剱岳0930-1002長次郎のコル1022-1112長次郎の頭-1206池ノ谷ガリー-1328三の窓-1554小窓のコル-1640鉱山道入口-1720池の平小屋1730-1805仙人池(泊)
【day4】 0610仙人池-0730二股0740-0910真砂沢ロッジ0920-1000長次郎谷出合1030-1225剱沢小屋1255-1350剱御前1355-1500雷鳥沢1505-1555みくりが池温泉1635-1645室堂1700=1750美女平1800=1807立山1812=1912富山2306=(車中泊)
【day5】 0618東京
天候 | day1 晴れ時々くもり day2 快晴 day3 晴れのち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2013年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
電鉄富山〜室堂往復 6530円(アルペンルート) |
コース状況/ 危険箇所等 |
■危険箇所 剱沢雪渓は去年より雪が多いが、長次郎谷出合から真砂沢方面は一部雪渓が崩壊している、とは聞いていましたが、下から上がってくる場合に具体的にどこで雪渓に降りるか見極めるポイントがわかりにくいです。真砂小屋より上の滝になっているところの先でそろそろかな、と降りてみましたが、目の前で大きな音を立てて対岸の雪渓が崩れていったので、恐ろしくなり夏道に登り返しました。長次郎谷にほど近いあたりで振り返ると、降りようとしていたところはスノーブリッジで雪がかなり薄くなっており、登ってくる分にはそれが全く見えないので、長次郎出合までは大人しく夏道を歩いた方が賢明です。 ■小屋閉め 真砂小屋は9/28で閉めたそうです。小屋の主人と登山道で会ったので早閉めの理由を聞いたら、「8月末から小屋の修理をしていて、荷揚げした食料がなくなった」と言ってました。水場もトイレも使えないので要注意です。 ■温泉 みくりが池温泉の日帰り入浴は16時まで。入浴料600円で、石鹸シャンプー使えます。 |
予約できる山小屋 |
剱澤小屋
|
写真
装備
個人装備 |
ヘルメット
アイゼン
ピッケル
ハーネス
ヘッドランプ
ストック
カメラ
iPod (地図)
携帯電話
GORETEXジャケット
フリースorダウン
ゲイター
ニット帽
インナーグローブ
レッグウォーマー
サポートタイツ
着替え
吸水タオル
ボトル
洗面用具
救急セット
保険証
リップクリーム
日焼け止め
サングラス
|
---|---|
共同装備 |
ロープ
バーナー
クッカー
ガスカートリッジ
|
感想
3年前、お盆中に起きた遭難事故で初めて知った、北方稜線というバリエーションルート。その年、自分は登山を始めてまだ2年目で、カエラズノケンや大キレットなどのスリルある岩稜帯を歩くのが楽しくてしょうがなく、事故の起きる2週間ほど前にちょうど剱岳ピストンを含む10日間の縦走を終えたばかり。ニュースを見て、不謹慎ながら、そんな難しいところならいつか挑戦してみたい、という漠然とした憧れが生まれた。
その翌年(おととし)、知り合いの岩ヤさんに頼み込んで、「絶対にひとりでは行ってはいけない」西穂〜奥穂高間(ジャンダルム)の縦走に連れて行ってもらうことができた。そして「次は北方稜線へ行きたい」と熱望したものの、なんとなくお茶を濁され、次の年(昨年)は裏剱の下見山行にとどまったのでした。ところが下見の後、逆に相方のほうが熱心にルート研究に没頭しはじめ、検証の末イケルと判断したのか、条件つきながら今年は連れて行ってもらえることに。
その条件というのが、
1。アルペンルートでアクセスし、小屋泊まりにすること
2。ヘルメット、ハーネス、前爪のあるアイゼンを必ず揃えること
3。荷物は極力小さくまとめること
4。時期は最も雪の少ない9月末の晴天日に限ること
ということだった。
そりゃ金がかかる山行になるな、、、ってことで、8月中は山行を控えてバイトに明け暮れ、手にしたお金で装備を揃え、相方とあらゆるアプローチを検討し、時刻表とにらめっこしながら、一番小屋代と交通費がかからない行程を考えた。自分の力でできることはここまでで、あとは天気次第。どう転んでも行けるように、お彼岸明けから体育の日の連休までの平日は予定を入れず、固唾をのんで天気予報を見つめる毎日。最初にプランしたお彼岸明けの週は、出発前日に台風が2つ発生したため、キャンセル。案の定、立山では初雪が降った。そして翌週に順延。しかし次に計画した日程だと本番の中日が雨マークだったため、出発を1日早め、仕事の後そのまま夜行バスで出発という強行軍に。しかしながらフィリピンあたりを2つの熱帯低気圧がウロウロしており秋雨前線が山陰と朝鮮半島の間ぐらいにびろんと伸びているという嫌な天気図を横目にしつつ、小屋で停滞覚悟の出発だった。
早朝富山に着いてみると、とても綺麗な朝焼け。電鉄に乗り換えてアルペンルートの立山駅でチェックしたライブカメラ映像は室堂の爽快な青空を映し出しており、小躍りしたくなる!しかもバスの中から見る弥陀が原は見事な紅葉で、降りたった室堂は3回目にして初めてガスがかかっていなかった!そのまま夢のような立山パノラマを堪能しつつ美しく色づいた雷鳥沢へ降り、時間がたっぷりあるので、景観を楽しみつつ、わざわざ大日岳への縦走路へ遠回りしつつ剱御前に上がる。すると今度は剱沢方面にズラリと後立山のイケメン達が勢揃いで、しかも左手にはどっしりと聳える剱岳。。。実は今シーズンの山行は雨にふられてばかりで、こんな豪華な眺望は久々。予報は雨だけど、何とか明日もこの天気が続いてほしいと祈るばかりで剣山荘にチェックイン。そして夜のNHKの天気予報では、翌日の傘マークが消えていた。キター!
アタック当日は相方がネットで調べた情報から行動時間は約10時間だろうと読んでいたので、小屋でしっかり朝食を食べて6時出発。朝日が別山尾根を照らしながら顔を出すのを見とれながら歩き始める。前剱までの苦しい登りをやってしまったら、あとはスリルを楽しみながら山頂を目指す。縦走荷物が重いのか、前回よりも少しタイムオーバーながらも9時前に到着。見事に晴れ渡った360度の眺望を前にすると、この先が本番だとわかっていながらも30分も休憩をとってしまった。そしていざ、装備を整え「この先キケン」の北方稜線を長次郎の頭へ向けて出発。正直、今回はルートファインディングを相方に丸投げしており、自分はついていくだけのツーリスト状態だったので、どこが難しくてどう対応すべきなのか全く予備知識なし(相方は事前に一生懸命説明してくれたのに)。せめて記録だけは残そうと、絶景ごとに、だけじゃなく、なるべくルート上の要所でカメラを出すのでせいいっぱい、行動中に地図など取り出して見る余裕全然なし。覚えている危険箇所で印象に残っていることといえば、長次郎の頭をトラバースするのに大きな地球儀に張り付くみたいな体勢になることから、自分のザックを置いて行くように相方から指示されたこと、池ノ谷乗越への垂壁(に見えた)をルンゼを通って降りて行くのに、ロープで確保されつつクライムダウンするのだけど、最初の数mがツルツルで思わずぶらーんと吊られてしまってヒヤッとしたこと、あとはなんといっても池ノ谷ガリーの浮き石地獄をザレッザレと落石しまくりながらアイベックスになった気持ちで1歩ずつ歩いたこと。とにかく三の窓に着くまでに圧倒的な迫力の壁と高度感の連続で絶景ではあるものの、1歩1歩に集中力と体力をすり減らしまくったため消耗しきってしまい、その後の小窓までの2時間半あまりのことをよく覚えていない。キケンと言われていた斜度45度の小さな雪渓トラバースも登りだったしアイゼン装着したのでなんてことはなく渡れたし、牧歌的に見えた草付きの斜面が案外急で再びアイペックスをイメージしながら歩いたことぐらいか。。。とにかく小窓雪渓でアイゼンつけて下り始めた時には安堵感でいっぱいだったことを覚えている。ガスが出ると迷いやすいと言われているらしい鉱山道への入口も、なんとか晴れているうちに逃げ切り、事故が多いという鉱山道も、あー仕事道は水平でいいな〜なんて安心して歩けた。しかし、池の平小屋に着く頃には日没時間になってしまい、そこから仙人峠までのやや登りは足が上がらず非常に長く感じ、またヘッドランプをつけて歩いた仙人池ヒュッテまでの下りは何度もよろめいてしまった。小屋の若い人が到着の遅くなった私たちを心配してずっと窓の外を見張っていてくださったらしく、ランプの光を見てわざわざ迎えに来てくれたこと、玄関に到着するなり、小屋の主人に怒られるのかと覚悟したら、玄関先にチェアを出してお茶を入れてくれて、「まずはゆっくり座って、、、お風呂にしますか?食事を先にしますか?」と奥さんみたいな優しい言葉をかけてくださったことに感激するも、「じゃあビールください」と私たち(苦笑)。ちなみに、お風呂は絶妙な湯加減でたっぷり気持ちよく入れたし、食事も地の物をたくさん使って陶器によそって「サービス」してくれるし、小屋自体は2階を人が歩くたびに床が抜けるんじゃないかと本気で心配になるほどボロいけど、おもてなしを感じました。とはいえ食後は棒のような体を引きずり早々に布団に入って爆睡。
そして最終日。今日こそは雨かなと覚悟していたものの、朝の天気予報では午後3時まで曇り。にもかかわらず日の出とともに仙人池に映る紅葉と裏剱の麗しい姿を、カメラマンたちに混じってばっちり拝むことができた。去年同じ時期に下見で来た時はまだ真っ青だったので、どうやら今年はこのエリアの紅葉が早めの模様。そうはいっても道中長いためゆっくりもしていられず、小屋の人全員に見送られつつ6時には室堂へ向けて出発。北方稜線の下りで酷使した足には二股までの仙人新道がきついことといったら、まるで70代の老人になったかのように段差に弱く足元フラフラで、非常に疲れた。そして真砂沢ヒュッテまでの沢沿いの登りがまた、何度も高巻きさせられたりするので、お日様がかんかん照らす中、蒸し暑くてさらに体力消耗。なんとか長次郎谷出合までがんばってランチ休憩を取り、そこからアイゼン&ストックに切り替えてようやく雪渓の上を快適にサクサク歩いて登れるかと思いきや、なぜか睡魔に襲われて、なかなか足が上がらず前に進まない。それでもなんとか歯を食いしばって気合いで剣沢小屋についたものの、体がカフェインを強く要求するため、小屋のお姉さんにお願いしてコーヒーを淹れてもらった。そこから剱御前までの登りは足元はそれまでの道のりに比べれば歩きやすいながらも累積疲労?でしんどく、雷鳥沢に着く頃には15時をまわって霧雨につかまってしまった。相方の方は雷鳥沢からの登り返しで大分やられていてぐっとペースが遅くなり、私は私でみくりが池温泉まで階段の段数を数えて(ちなみに510段ぐらいあった)気を紛らわそうとしたが、雷鳥荘を通過した時点で例の素敵な暖炉のあるラウンジと絶景温泉を思い出し、このままここに泊まれたらどんなにいいか、とケチな自分を恨んだ。しかし、みくりが池温泉の泉質も負けず劣らず素晴らしく、まさに薬湯。一気に筋肉がやわらかくほぐれていくのを感じた。富山行きの最終バスには滑り込みでセーフ。なんとか予定通り下界に下りることができ、東京行きの夜行バスに乗り継いで爆睡。
そんなわけで、総括すると、皆さんおっしゃられるとおり、北方稜線は何しろ体力一番ですね。そして登攀技術云々というより、とにかく徹底的にルートファインディング能力を試される。下調べなしには歩けない。ヤリホあたりの切れ落ちたナイフリッジを歩くような怖さはないけれど、どこを通ったら良いのか途方に暮れるような怖さというのかな?滑りやすくもろいザレ場、アリ地獄を歩くような怖さ?悪天候だったとしたら1歩も動けないかな。できることならもう一度、逆回りで核心部のかっこいい岩峰たちを愛で楽しむ余裕を持って歩きたいですね。余談ながら、個人的な経験から見た、北アの岩稜歩きの疲労度および難易度は、
欅平〜内蔵助谷出合(下の廊下/曇天)<鹿島槍〜五竜岳(八峰キレット/雨天)<唐松岳〜白馬岳(不帰の嶮/雨天)<奥穂〜槍ヶ岳(大キレット/晴天)<<西穂〜奥穂高岳(ジャンダルム/曇天)<<<剱岳〜池の平(北方稜線/晴天)
のように思います。相方は、「次は八ツ峰」と言ってるけど、その前にまだすることがいっぱいあるような。。。(>_<)
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