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Yamareco

記録ID: 5971008
全員に公開
沢登り
北陸

【奥越】打波川最難? 水屋谷から枇杷倉山

2023年09月23日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
12.0km
登り
1,054m
下り
1,058m

コースタイム

日帰り
山行
11:50
休憩
0:00
合計
11:50
6:40
90
駐車地
8:10
8:10
300
水屋谷出合
13:10
13:10
250
17:20
17:20
70
水屋谷出合
18:30
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年09月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
美濃又川沿いの林道の崩壊箇所(起点から800mほど進んだところ)の手前に駐車。2〜3台ほど駐車できそうなスペースがあるが,平日は工事車両が来る可能性があり,邪魔にならないよう注意が必要。
コース状況/
危険箇所等
【美濃又川沿いの林道(アプローチ)】
・ 起点から800mほど入ったところで大きな崩落があり,それ以降は崩壊や藪化がひどいが,獣道が続いていて歩行可能。
・ 藪がひどい箇所では川に降りて歩きたくなるかもしれないが,美濃又川は巨大堰堤が多数できているため,目的の枝谷まで林道を忠実に辿ることをおすすめする。

【水屋谷】
・ 美濃又川の右俣である三ノ又谷の下流から数えて2番目に流入する枝谷(1番目は小楢谷,3番目は奥楢谷)。出合付近の河原が広く,堰堤が多数つくられていて雑然としており,出合を見つけるのに少し苦労するかもしれない。まず地形図にも描かれている二重の堰堤を見つけ,それから上段の堰堤の上を左岸方向に歩いて行くとうまく水屋谷に入ることができる。林道から三ノ又谷に降りるのも急斜面と藪で少し大変だが,樹林帯の中を探すと獣道が走っているため,それを辿ると比較的楽に河原に降り立てる。
・ 下部の等高線がうねった部分にこの流域では随一のゴルジュがあり,チョックストーン滝が連続してシャワーを浴びながら大股開きでの突破やショルダーでの乗り越しなど,厳しい登攀を要求されるらしい。今回は単独であることもあり,少し戻った左岸から高巻いてゴルジュ出口の8m滝の上に降り立ったが,この巻きも岩混じりの急斜面と藪が続いてかなり悪く,下降ポイントをうまく見定めないと谷に降りられなくなる可能性もあり,要注意。斜面にそれとなく走る獣道を追うとよい。
・ 他にも滝はいくつか出てくるが,直登または小さめの巻きで適宜越えられる(斜面はかなり急な草付きばかりなので注意)。この谷はナメが多く,標高990m付近二俣や,今回辿った右俣は美しいナメが長く続いて良いところ。
・ 枇杷倉山から美濃又川方面への下山はなかなかやっかいで,どの尾根も激藪かつ急斜面なうえ谷も源頭部が切り立っており選択が難しく(水屋谷の西隣の小楢谷も,谷自体は易しいが源頭部が急崖になっており下降が難しい),登ってきた水屋谷を再び下降するのが最も現実的と思われる。今回は源頭部に連続する小滝群を避けるため,水屋谷の990m二俣まで右俣と左俣の中間尾根を下降したが,上部は灌木の激藪であるものの,ある程度下ると安定した樹林となり比較的歩きやすくなる。ただ,途中に1箇所急な崩壊地が出てくるので通過注意。崩壊地の縁を灌木を掴みながら巻き気味に通過すると少しマシ。
・ なお,今回辿らなかった左俣はひどい崩壊谷で,右俣より厳しい内容のようなので入る場合は注意してください。
美濃又川沿いの林道の崩壊地の手前に車を停めて歩き出す。崩壊地は,ちょっとずつ工事が進んでいるようで,わずかに平らな部分が増えていた(ただ,この先が切り立っており通過注意)。
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美濃又川沿いの林道の崩壊地の手前に車を停めて歩き出す。崩壊地は,ちょっとずつ工事が進んでいるようで,わずかに平らな部分が増えていた(ただ,この先が切り立っており通過注意)。
崩壊地を過ぎると相変わらずひどい藪だが,そんな中にもツリフネソウの赤紫の花がそこかしこに咲いているのが一服の清涼剤。
崩壊地を過ぎると相変わらずひどい藪だが,そんな中にもツリフネソウの赤紫の花がそこかしこに咲いているのが一服の清涼剤。
左岸の山並みの中に,ひときわ目立つ枇杷倉山(西峰)の鋭鋒。こう見ても,山頂直下の傾斜が半端ないことが良くわかる。あそこまで無事たどり着けるだろうか。
左岸の山並みの中に,ひときわ目立つ枇杷倉山(西峰)の鋭鋒。こう見ても,山頂直下の傾斜が半端ないことが良くわかる。あそこまで無事たどり着けるだろうか。
林道から水屋谷出合を見下ろした図。左手に黒っぽく見えている水屋谷右岸尾根は,ずっと以前,冬季に小白山に登る際に辿ったことがある懐かしい尾根だ(その時は,少なくとも二俣くらいまでは車で来ることができた)。まさか今度はその隣の谷に入ることになるなんてなぁ。
林道から水屋谷出合を見下ろした図。左手に黒っぽく見えている水屋谷右岸尾根は,ずっと以前,冬季に小白山に登る際に辿ったことがある懐かしい尾根だ(その時は,少なくとも二俣くらいまでは車で来ることができた)。まさか今度はその隣の谷に入ることになるなんてなぁ。
水屋谷の出合。この出合を見つけるのがちょっと大変。まず樹林帯の中に獣道を見つけて林道から三ノ又谷に降り,次に「二重の堰堤」を見つけてその上段の堰堤の上を左岸側に歩いて行くと,ここまで来ることができる。
水屋谷の出合。この出合を見つけるのがちょっと大変。まず樹林帯の中に獣道を見つけて林道から三ノ又谷に降り,次に「二重の堰堤」を見つけてその上段の堰堤の上を左岸側に歩いて行くと,ここまで来ることができる。
水屋谷に入ると堰堤が3つ出てくるが,下流のものから順に右・左・右と巻いて通過することができる。3番目の堰堤は巻き道がちょっと切り立っている。
水屋谷に入ると堰堤が3つ出てくるが,下流のものから順に右・左・右と巻いて通過することができる。3番目の堰堤は巻き道がちょっと切り立っている。
水屋谷は出合から小滝がぽつぽつと出てくる。
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水屋谷は出合から小滝がぽつぽつと出てくる。
いずれも直登または小さく巻いて通過できる。
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いずれも直登または小さく巻いて通過できる。
穏やかな幕開けの中にも,岩盤質の谷であることがうかがい知れる,岩の張った小滝が多い。
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穏やかな幕開けの中にも,岩盤質の谷であることがうかがい知れる,岩の張った小滝が多い。
この7m滝は左岸巻き。
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この7m滝は左岸巻き。
すると急に谷が開ける。狐につままれたように進んでいくと…
すると急に谷が開ける。狐につままれたように進んでいくと…
今度は一転して谷が狭まり,5m滝。水屋谷ゴルジュが始まったのだ。入り口の5m滝は右手を直登して抜ける。
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今度は一転して谷が狭まり,5m滝。水屋谷ゴルジュが始まったのだ。入り口の5m滝は右手を直登して抜ける。
ゴルジュの中は側壁が高くそそり立ち,薄暗く不気味な風情。さあ,何が出てくるのか…。
ゴルジュの中は側壁が高くそそり立ち,薄暗く不気味な風情。さあ,何が出てくるのか…。
うおっ,出た! CS7m滝。1メートルほどの幅に極度に圧搾されたゴルジュ内にどうどうと落ちている。
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うおっ,出た! CS7m滝。1メートルほどの幅に極度に圧搾されたゴルジュ内にどうどうと落ちている。
ゴルジュの壁は圧倒的に岨立ち,直登しか手はない。この滝は右手の壁から登れそうだったが,過去の数少ない記録によると,この上部にもCS滝が連続してかなり厳しい登攀となるようなので,単独の身であることもあり,これ以上進むことは自重した。しかし,打波川随一の水屋谷ゴルジュを覗くことができただけでも満足だ。
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ゴルジュの壁は圧倒的に岨立ち,直登しか手はない。この滝は右手の壁から登れそうだったが,過去の数少ない記録によると,この上部にもCS滝が連続してかなり厳しい登攀となるようなので,単独の身であることもあり,これ以上進むことは自重した。しかし,打波川随一の水屋谷ゴルジュを覗くことができただけでも満足だ。
ゴルジュ入り口の5m滝を慎重にクライムダウンし,少し戻った左岸から高巻きに入る。最初はブナの立ち並ぶ気持ちいい斜面だが…
ゴルジュ入り口の5m滝を慎重にクライムダウンし,少し戻った左岸から高巻きに入る。最初はブナの立ち並ぶ気持ちいい斜面だが…
ゴルジュ上部をトラバースし谷に戻る区間が急峻な藪斜面が続いて悪く,下降可能な箇所を見つけるのに手間取って1時間ほどかかってしまった。最終的に,うまいことゴルジュ出口の8m滝の落ち口の少し上に懸垂なしで下りてくることができた。(写真はゴルジュ出口の8m滝)
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ゴルジュ上部をトラバースし谷に戻る区間が急峻な藪斜面が続いて悪く,下降可能な箇所を見つけるのに手間取って1時間ほどかかってしまった。最終的に,うまいことゴルジュ出口の8m滝の落ち口の少し上に懸垂なしで下りてくることができた。(写真はゴルジュ出口の8m滝)
高巻きを終えて降り立った地点の河原に小さなケルンを積む。帰路,再びゴルジュを巻き下る際の目印にするためだ。果たして,枇杷倉山のピークを踏んで無事にこのケルンのところまで戻って来られるだろうか。
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高巻きを終えて降り立った地点の河原に小さなケルンを積む。帰路,再びゴルジュを巻き下る際の目印にするためだ。果たして,枇杷倉山のピークを踏んで無事にこのケルンのところまで戻って来られるだろうか。
ゴルジュ終了後も,切り立った谷が続く。高巻ける斜面は限られている。ホント,うまいこと下降できてよかったな…。
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ゴルジュ終了後も,切り立った谷が続く。高巻ける斜面は限られている。ホント,うまいこと下降できてよかったな…。
この後も5m前後の滝がテンポよく続く。直登または小さく巻いて進んでいくことができる。この滝は左手の溝状の部分を登った。
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この後も5m前後の滝がテンポよく続く。直登または小さく巻いて進んでいくことができる。この滝は左手の溝状の部分を登った。
この谷はナメも多い。
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この谷はナメも多い。
こんなに幅広のナメが連続する谷は,打波川では他に桧谷・よろぐろ谷くらいではないだろうか。
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こんなに幅広のナメが連続する谷は,打波川では他に桧谷・よろぐろ谷くらいではないだろうか。
美しいナメが広がることに驚きながら,ひたひたと歩いて行く。
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美しいナメが広がることに驚きながら,ひたひたと歩いて行く。
標高990m二俣に到着。この二俣の周辺もナメが広がっており,美しいところ。(影になって見にくいが)左俣は3mほどの滝になって出合っている。
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標高990m二俣に到着。この二俣の周辺もナメが広がっており,美しいところ。(影になって見にくいが)左俣は3mほどの滝になって出合っている。
ここから右俣を進む。右俣は最初はガレたヤブ沢の風情だが,少し進むと美しい小滝とナメが復活する。
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ここから右俣を進む。右俣は最初はガレたヤブ沢の風情だが,少し進むと美しい小滝とナメが復活する。
ナメと小滝が陽光の中で輝く。
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ナメと小滝が陽光の中で輝く。
本当にナメが多い。ところどころ川床を埋めているガレさえなければ,恐らく途切れることなくナメが続いているはずだ。
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本当にナメが多い。ところどころ川床を埋めているガレさえなければ,恐らく途切れることなくナメが続いているはずだ。
岩質は全然違うけれど,同じ打波川のよろぐろ谷を思い出すなぁ。
岩質は全然違うけれど,同じ打波川のよろぐろ谷を思い出すなぁ。
初秋の日差しに光り輝く小滝が続く。
初秋の日差しに光り輝く小滝が続く。
ナメ滝が途切れない。
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ナメ滝が途切れない。
ナメのウォータースライダーのような谷だ。
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ナメのウォータースライダーのような谷だ。
源頭に入ると谷の傾斜が急激に増し,ちょっとややこしい小滝が連続するようになる。急峻な枇杷倉山を構成する岩盤が剥き出しになり始めたのだろう。
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源頭に入ると谷の傾斜が急激に増し,ちょっとややこしい小滝が連続するようになる。急峻な枇杷倉山を構成する岩盤が剥き出しになり始めたのだろう。
ほとんど直登で乗り越せるが,ホールドが微妙で神経を使う滝も多い。また,巻きも急な泥の草付きで悪い。登りはいいけど,下降では苦労しそうだな…。
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ほとんど直登で乗り越せるが,ホールドが微妙で神経を使う滝も多い。また,巻きも急な泥の草付きで悪い。登りはいいけど,下降では苦労しそうだな…。
水がほとんど切れてからも,稜線のすぐ下まで滑り台のようなナメが続き驚いた。藪漕ぎを最低限に抑えることができありがたい。
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水がほとんど切れてからも,稜線のすぐ下まで滑り台のようなナメが続き驚いた。藪漕ぎを最低限に抑えることができありがたい。
谷が終わると,猛烈な笹と灌木の藪に突入。枇杷倉山の山頂稜線に出てからも激藪が続いた。隣の小白山のような腰丈の藪を期待していたが,残念ながら枇杷倉山の藪は激烈であった。
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谷が終わると,猛烈な笹と灌木の藪に突入。枇杷倉山の山頂稜線に出てからも激藪が続いた。隣の小白山のような腰丈の藪を期待していたが,残念ながら枇杷倉山の藪は激烈であった。
時折灌木にからめとられて宙づりになりながらも,何とか枇杷倉山(東峰)の山頂に到着。枇杷倉山には(誠に遺憾なことに!)三角点が設置されていないので,一番高いところを山頂として灌木にヘルメットをひっかけ,記念撮影。といっても,ご覧の通り一面の藪である。野伏ヶ岳みたいに,誰かが残した切り開きがあったらいいな…なんて甘い期待を抱いていたが,そんなものは痕跡すらなかった。
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時折灌木にからめとられて宙づりになりながらも,何とか枇杷倉山(東峰)の山頂に到着。枇杷倉山には(誠に遺憾なことに!)三角点が設置されていないので,一番高いところを山頂として灌木にヘルメットをひっかけ,記念撮影。といっても,ご覧の通り一面の藪である。野伏ヶ岳みたいに,誰かが残した切り開きがあったらいいな…なんて甘い期待を抱いていたが,そんなものは痕跡すらなかった。
しかし,それでも山頂の東側は笹薮の背丈がちょっとだけ低く,南北に打ち連なる山並みを眺めることができた。
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しかし,それでも山頂の東側は笹薮の背丈がちょっとだけ低く,南北に打ち連なる山並みを眺めることができた。
北隣の小白山。積雪期だったら1時間くらいだが,今あそこまで行ったらメチャクチャ時間かかるんだろうな…。
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北隣の小白山。積雪期だったら1時間くらいだが,今あそこまで行ったらメチャクチャ時間かかるんだろうな…。
橋立峠を隔てた野伏ヶ岳。今年6月に草池谷右俣から登ったばかり。今いる枇杷倉山の藪も凄いけど,野伏ヶ岳はもっと凄い藪だったなぁ…。
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橋立峠を隔てた野伏ヶ岳。今年6月に草池谷右俣から登ったばかり。今いる枇杷倉山の藪も凄いけど,野伏ヶ岳はもっと凄い藪だったなぁ…。
その向こうには白山も。残念ながら御前峰は雲をかぶっているが…。
その向こうには白山も。残念ながら御前峰は雲をかぶっているが…。
南には,枇杷倉山の南の小ピークと,その向こうに桂島山。桂島山は何年か前の2月に登ったけど,無雪期はどんな様子なんだろう。
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南には,枇杷倉山の南の小ピークと,その向こうに桂島山。桂島山は何年か前の2月に登ったけど,無雪期はどんな様子なんだろう。
さて,帰路も難所が続くので,そそくさと下山(本当は枇杷倉西峰にも寄りたかったが,ひどい藪で時間的にそんな余裕はなかった)。下山は基本的に同谷下降だが,谷通しに下ると源頭の滝群のクライムダウンに苦労しそうだったので,二俣までは水屋谷の右俣と左俣の中間尾根を下ることにした。最初はもちろん激藪で,途中で崩壊地まで出てきてビビらされたが(崩壊地の縁を灌木にぶら下がって巻いてクリア),途中から安定した樹林となって下りやすくなった。
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さて,帰路も難所が続くので,そそくさと下山(本当は枇杷倉西峰にも寄りたかったが,ひどい藪で時間的にそんな余裕はなかった)。下山は基本的に同谷下降だが,谷通しに下ると源頭の滝群のクライムダウンに苦労しそうだったので,二俣までは水屋谷の右俣と左俣の中間尾根を下ることにした。最初はもちろん激藪で,途中で崩壊地まで出てきてビビらされたが(崩壊地の縁を灌木にぶら下がって巻いてクリア),途中から安定した樹林となって下りやすくなった。
無事,美しいナメ床の広がる二俣まで下りてきた。枇杷倉山の山頂では激しい藪でザックさえ下ろせなかったので,久しぶりに腰を下ろして休憩し,冷たい谷水で喉を潤した。
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無事,美しいナメ床の広がる二俣まで下りてきた。枇杷倉山の山頂では激しい藪でザックさえ下ろせなかったので,久しぶりに腰を下ろして休憩し,冷たい谷水で喉を潤した。
谷いっぱいに広がるナメ床をひたひたと下っていく。
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谷いっぱいに広がるナメ床をひたひたと下っていく。
行きに登った滝を今度はクライムダウン,あるいは巻き下り。
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行きに登った滝を今度はクライムダウン,あるいは巻き下り。
そして無事,行きに積んだケルンのところまで戻ってきた。ここから再び水屋谷ゴルジュの高巻きに入る。(ケルンは崩して原状回復しました)
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そして無事,行きに積んだケルンのところまで戻ってきた。ここから再び水屋谷ゴルジュの高巻きに入る。(ケルンは崩して原状回復しました)
この水がちょろちょろ流れる岩肌を登って高巻きに入る。行きには苦労した高巻きだが,帰りはルートが分かっているのでやはり早く,30分程度で済んだ。
この水がちょろちょろ流れる岩肌を登って高巻きに入る。行きには苦労した高巻きだが,帰りはルートが分かっているのでやはり早く,30分程度で済んだ。
谷に戻ったあと,連続する堰堤を再び巻き下って…
谷に戻ったあと,連続する堰堤を再び巻き下って…
やっと林道まで戻ってきた。緊張感が一気に抜けていく瞬間。
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やっと林道まで戻ってきた。緊張感が一気に抜けていく瞬間。
夕霧に見え隠れする険しい枇杷倉の尾根を振り返りつつ,藪に包まれた林道を引き返していった。
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夕霧に見え隠れする険しい枇杷倉の尾根を振り返りつつ,藪に包まれた林道を引き返していった。

装備

備考 ・フェルトソール沢足袋使用。それほどぬめりはひどくないように感じたので,ラバーでも大丈夫かもしれない。
・40mロープ携行。使用しなかったが,険悪な谷であるため必携。

感想

 地形図を見ただけで「これは何かある」と感じる谷はやはりある。自分にとってはその一つが打波川の水屋谷で,谷の下部に尋常でない等高線のうねり方をした箇所があり,以前,小白山に登るために積雪期の水屋谷右岸尾根を辿った際に,眼下から異様に高く響いてくる水屋谷の瀬音(今思えば,ゴルジュ内の滝群の瀑音だったのかもしれない)を聞きながら,この地形はなんだろうと不思議に思っていた。この箇所に打波川でも随一と言っていいくらいの深く険悪なゴルジュが存在していると知ったのは後年のことで,ずっと覗いてみたかったのだが,今回やっと訪問することができた。
 水屋谷ゴルジュは確かに凄かった。側壁はあくまで垂直に切り立っており,最も狭いところで1mほどの幅に狭まって,そこに黒々としたチョックストーン滝が門番のように立ちはだかっている。今回は意気地もなくこのゴルジュを高巻いてしまったので(といっても高巻きもかなり悪い部類に入る),本当の凄さはこれらの滝群を全て水線沿いに突破しないと分からないのかもしれないが,入り口から覗いただけでもなかなかの空間だった。福井岳人倶楽部の「越の谷」でも打波川で唯一「上級」のグレードが付けられており(あくまで今回辿らなかった左俣のほうではあるけれど),打波川でも最難の谷と言っていいのではないかと思う。
 また,連続するナメ床も印象的な谷だった。打波川でナメと言えば桧谷とよろぐろ谷が有名だが,岩質は異なるとはいえ,これらの谷を彷彿とさせるくらいに谷幅いっぱいにナメが長く続く区間もあり,下部の険悪なゴルジュから一転して明るく爽やかな沢歩きを楽しむことができる。ゴルジュにしてもナメ床にしても,ビワのクラに代表される枇杷倉山の隆々とした岩盤質の山体が遺憾なく剥き出しになった谷と言う感じで,枇杷倉ファンにはたまらなく楽しめる谷だと思う。全国でも数名くらいしかいないと思うけど。
 ところで,藪山に登る際は多かれ少なかれ常に付きまとうとはいえ,今回は特に独特の緊張感がひしひしと感じられる山行だった。美濃又川側から枇杷倉山に登る場合,どの尾根も急峻かつ激藪で,また谷も険しく(水屋谷の西隣の小楢谷も,谷自体は易しいのだが源頭部が急峻過ぎて下降路に使えないことが前々回の山行で判明していた),野伏ヶ岳や小白山と違って現実的に利用可能な廃林道もないので,下山ルートの選択肢として険悪な水屋谷を再度下降するくらいしか思いつけなかった。まるで藪の袋小路のようだ。枇杷倉山の山頂に立ち,緑の笹薮に輝く小白山や野伏ヶ岳を眺めながら,登頂の静かな喜びと同時に感じていたのは,いま自分は安全な場所から最も遠い地点にいるという重圧感だった。少し動けば一瞬で現在地と方向感覚の両方を見失ってしまう深い藪の中で,自分の存在すらも次第に希薄になっていくような不思議な感覚。その一種異様な感じを恐れながら,同時になぜか強く惹かれてしまう。藪山を登り続けることの,隠れた理由の一つなのかもしれない。

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