初めての北アルプス へっぽこハイカー大キレットに行く
- GPS
- 32:00
- 距離
- 41.7km
- 登り
- 2,495m
- 下り
- 2,490m
コースタイム
- 山行
- 6:59
- 休憩
- 1:43
- 合計
- 8:42
- 山行
- 8:48
- 休憩
- 1:12
- 合計
- 10:00
天候 | 晴れ 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
飛行機
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
行動食
非常食
飲料
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
ヘルメット
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感想
初めての北アルプスで初めての泊まり登山
自分がどれくらい歩けるのか不安でもあったけれど大キレットも楽しく歩く
ことが出来た。
天気予報から3日の予定を2日にしてしまったが後から天気を確認してみると
天気は崩れていなかった・・・
3日いなかった事それだけが心残り。
以下長いので時間のない方はとばしてください。
ついに北アルプスに登るときがやってきた。
社会人になってはじめての休暇である。
7月の半ばごろから、3日か4日の連休があるらしい、そんな噂が出はじめ
真偽のほどはわからなかったものの休暇に向けて計画と準備を少しづつはじめた。
登る山域は当然北アルプス。
理想として上高地からの槍穂周遊を計画していろいろと案を練ってみた。
実際はどのようになるのか間際にならなければわからないので時間の浪費の部分も
多かったもののいろいろと想像をするのも楽しいものだった。
トレーニングは出来るだけ山に登ることで筋肉をつけよう、もしくはなくならないようにと
思い予定に組み込んだ。
はしご、鎖場の経験がないのでそれも体験できるようにした。
現地までの交通手段は車、飛行機とバスが有力だった。
最終的には山の天気から飛行機を使うことを選んだもののすんなりとはいかなかった。
調べた所、東京から上高地までの直通バスがありそれに乗るのが一番良い方法で
あったのだが、仕事が終わるとどうがんばってもその時間には間に合わない。
もはや夜行バスで東京まで行きそこからバスや電車を乗り継ぐしかないかと思って
いたものの、タクシーっていくらかかるんだろうと思い何気なく検索してみたところ・・・
ヒットした!羽田松本間10800円の乗り合いタクシー!!
これにもいろいろ問題があって朝までには着くものの他のお客さん待ちのために
何時に出発するのかわからない、当然到着時間もわからない。
新島々からのバスの始発は6時だったのでそれまでどうするのかなど予定が立たない
部分もあったが天気予報で朝から登りたいと思っていたのでそれのできる唯一の
手段となったタクシーをお願いすることにした。
休暇前日
最終便の飛行機で羽田へ。22時頃に到着しタクシー会社の人と待ち合わせ。
乗客はもう一人で出発は11時を過ぎるとのこと。予約の電話をした時には到着に
5時間はかかると言われていたものの運転手さんに聞いてみると3時間半くらいかなと。
さて夜中に降ろされてからどうしようと考えながらも車はもう一人のお客さんを迎えに
移動をしていく。すると突然、ガシャン、音とともに車が揺れた。運転手さんが急いで車を
降りていく。事故発生である・・・。幸い誰にも怪我はなく車と車の事故であったが、
さてこの先どうしたものか。パンフレットにはやむをえない理由で中止する場合があると
書かれている。ここで駄目ですと言われたら計画の練り直しだなと心配していると、
申し訳ありませんが次の便に乗ってくださいと言われる。どうやらそれなりの利用者が
いるようだ。やってきた警察官から少し事情を聞かれその車から離れた。
次の車のお客さんは国際線利用なので出発は1時を過ぎるとの事。ロビーで待っていて
と言われたものの休みたかったので車で待たせてもらうことにした。
そのあとはトラブルもなく無事に出発。ジャンボタクシーは眠りながら移動するには
快適ではないものの1時間は眠れた。
4時半頃に新島々の駅に降ろされる。(沢渡までは範囲外だった)
タクシーを使って沢渡まで行こうか考えていたものの、駅の待合室が開いていて
そこで支度をしていると時間が過ぎていき始発のバス時間が近づいてきた。
切符を買って乗り込む。バスが着いた先が上高地。天気だけが気になるが
いよいよスタートだ。
1日目
上高地〜横尾
早朝の上高地はひんやりとした空気だった。
ベンチで着替え、最終的に荷物から不要と思われるものを外し、旅行かばんを
手荷物預かり所に預ける。
初の3000m峰、初の山小屋泊と初めてづくしの山行で装備をどうするか悩みどころ
だったもののここで調整することでパンパンだったいつものザックもなんとか見られる
形になった。
河童橋からの景色を眺め写真を撮って歩き始める。
槍ヶ岳山荘までの長丁場、早く着きたい思いもあるが、自分の体力がもつのかどうかの
不安もある。いつものオーバーペースになることは避けなくてはいけない。
時間を確認しつつ自分のペースで歩いていくことにした。
徳沢園に着いた所で少しペースが早いかなと思い休憩を入れる。
売店がやっていたのでソフトクリームを頼んだ。
評判通りの美味しさ。しかもコーンの先までしっかりソフトが詰まっている。
すごいぞ徳沢園。帰りも寄ることがあれば食べようかな。
ベンチで食べているときに外国人の二人組が話しかけてきた。
同じくらいの時間に歩き始め写真を撮っている間に抜いたり抜かれたり、
していた人たちだ。
おそらく「ここはどこですか?」英語なんて社会人になってから使うことがないものの
地図も出してくれたおかげで現在地を教えることが出来た。
彼らはそのまま歩いていってしまったが、もう少し話してみたいと思った僕は次に
会ったら話しかけてみようと思い横尾へと向かった。(話せないけど・・・)
ジムとビンセント
横尾までの道のりで足の付け根が疲れてきたのでここでもストレッチのために
休憩をとることにした。やはり平地を歩くのは使う筋肉が違うなあと思いながら
ストレッチしていると売店から先の二人組みが出てきた。
コーヒーブレイクのようだ。頃合いをみて話しかけてみる。
自分から話しかけておいてほんの少ししか理解できなかったが、お互い3日の予定
で来たこと。そして大キレットを計画していることはわかった。
向こうは涸沢に向かうと思った僕は明日大キレットですれ違うかもねと言って
先に進む事にした。これは間違いだったのだけれど。
彼らはジムとビンセント。また彼らとはいろいろと話をすることになる。
横尾〜槍ヶ岳山荘
異文化コミュニケーションで時間をかけてしまった僕はここから少しペースを上げてみる。
道も登山道らしくなってきたもののまだ平坦だ。途中槍見河原の標識を見つけ槍ヶ岳を
見る。標識が目立たないけれど運よく見つけられた。
1時間20分をみていた槍沢ロッジまで1時間で到着。あまりお腹も空いていないけれど
ロッジでお昼にする。カップラーメンでいいかなと思ったけれど、気温も高かったので
ラーメンはやめて牛丼にした。1000円也。
これからの登りに備えてエネルギーを補給して先にすすむ。
しばらくは両側が山で囲まれた沢沿いを進んでいく。
景色がなかなか変らないけれど晴れていて遠くまで見えるので悪くない。
歩いていると時計の高度計が2200mを越えた。今までで一番高い所は
鳥海山の山頂2236m。ここを越えると一歩一歩が記録更新。
しばらく時計とにらめっこしながらその時を迎えて写真に撮った。
天狗原分岐まで予定よりもかなり早く到着した。しかしまだ槍ヶ岳は姿を見せない。
正面に少しだけ尖った山がありそれを見ながら進んできたが、だんだんとあれが
槍ヶ岳で見える角度が悪いだけなのだろうかと思ってきた。
そんなことはないだろうと思うけれど一応写真に撮っておく。
それから10分、勾配が緩くなった所で、正面に本物の槍ヶ岳が現れた。
どう見ても間違うことのない正真正銘の槍ヶ岳。そこにいた方と、やっと見れましたねと
話をしながらお願いをしてカメラに撮ってもらった。
そこからは槍ヶ岳を見ながら登る、少し近づいては写真に撮り、また登っては写真に撮り、
後から見ると大きさの違う槍ヶ岳がたくさん撮れていた。
右手には東鎌尾根、よく見ると崖ぎりぎりの所を歩いている人がいる。あそこも気の
抜けないルートなんだな。そして後ろを振り返ると視界を塞いでいた山の背後から
ピラミダルな形をした山が現れた。
登ることに気をとられてその山が常念だとわかったのは槍ヶ岳に登った後だった。
まるで上に覆いかぶさってくるくらいの距離まで近づいた所で山荘も見えてくる。
あと少し、心配していた体力に余裕を残して山荘まで到着できそうだ。
山荘に到着するとテラスは登山者で賑わっていた。
大部分の人は既に登頂を済ませた感じでくつろいでいる。
自分も小屋での受付を済ませてから頂上に向かうことにした。
ここで初めてヘルメットを装着。似合ってない格好で山頂を目指す。
山頂へ
自分が登る時間は頂上に向かう人も少なかった。途中で写真を撮ったり、
はしごの脇に楽に登れそうなところを見つけそっちを登ったりと、自分のペースで
登らせてもらった。
最後の垂直に立っている長い梯子、それを登り山頂に到着。
残念ながらガスで眺望はなし。それでも登りきった事には満足。
山頂は円形かと思っていたら細い豆のような形だった。その一番奥に山頂の祠が
置かれている。十数人で満員になりそうな特等席は5,6人がいるだけで座って
休んでいる。自分も写真を撮った後ガスが晴れる一瞬を期待して休ませてもらった。
隣で座っている関西訛りの方がなぜかとんがりコーンを持っている。よかったらどうぞと
言ってくれたが、なんで空身にとんがりコーンの箱を持ってくるのかわからなかった。
何なんだろうと思っていると、「やっぱり槍ヶ岳ですからとんがりコーンでしょ!」
なんと、関西人はここまで笑いを持ってくるのか!
すると後から登ってきた関西の若いグループがそれを見て、しまった、持ってくるんだったと
悔しがる。その場はとんがりコーンで盛り上がり、各々とんがりコーンを指にさして再度
記念撮影となった。
しばらく山頂でくつろいだ後山荘へ戻る。
やはり登りよりも下りが難しい。足場が見えにくかったり、前向きで下りるか後ろ向きに
なるか微妙な斜度だったり。明日もあるので慎重に下りた。
明日の予定
山荘のテラスで少しの間余韻を楽しみ、中に入ろうと戸を開けたら目の前に外国人が
立っていた。ビンセントだ。なぜ彼がここにいるのかわからなかったが、僕を見るなり、
「明日は雨だ。雪になる可能性もある。大キレットは危険だ。」といった。
天気予報は明日の午後から雨のはず。予報が変ったのだろうか。それは誰に教えて
もらった情報なんだろう。聞きたことはたくさんあったが何も聞けずじまいだった。
その場からもう一度テラスに出て話を聞く。明日彼らは天狗原を通って下山する予定に
切り替えたようだった。自分はすぐには決められないので保留にした。
ところでジムはどうしたんだろうと思い聞いてみると「登っているよ」と山頂を指差した。
山荘の夜
初めての山小屋での僕の場所はかいこ棚の上の段の端だった。
心配していた布団一枚に二人とはならず、ひとり一枚だった。
晩御飯までどうしてよいかわからず外に出たり、自分の場所に戻ったり、そんなことを
していると放送で晩御飯の呼び出しが流れた。
テーブルにはとんがりコーンのメンバーも案内されてきてまたその話で盛り上がった。
晩御飯の後また外に出たり入ったりをしていると、ジムが話しかけてきた。
いろいろ話してくれた中で理解できたことは、二人は同じ会社に勤めていてジムは
ビンセントのボスであるということ。ジムはスキーも趣味でなんとニセコに別荘を
持っており2,3週間はそこで過ごすこと。など。
ビンセントはその間カメラで景色を撮影していて、ジムに撮らないの?と聞いたら
カメラマンがいるから撮らないって。なるほど、さすがボス。
そこで彼らがここに来る前に訪れた場所を見せてもらった。白川郷で彼らはそこの
観光に満足していた。
ジムとも明日の予定の話題になり先程ビンセントから聞いた予定で行くようだった。
下山したあとどうするの?と聞いたら、車で京都まで行って観光するとのことだった。
自分はというと、天気が悪ければ同じルートになると思うけど明日になってから判断
すると話した。伝わったのかわからないけれど。
そうしているうちに消灯時間が近づき眠る準備をすることにした。
横になってもなかなか眠れない。ようやく眠ったあたりで頭が痛くて目が覚めた。
これが高度障害か。呼吸が浅くなると出て来るんだな。
深呼吸をしていたら治ったので再び布団へ。今度は耳栓をつけて就寝。
こうして3時間近くの睡眠の後二日目をむかえる。
2日目
初めてのご来光
目を覚まし時計を見ると4時を少し過ぎたところ。
日の出時刻は5:31。昨日ビンセントに訊かれ調べたんだ。
まだしばらくあるなと思って布団にいる。
起き始める人が多くなってくる。
”みんな早いな、日の出までまだ時間あるのに。”
”あれ?朝焼けって・・・。” ”うわっ日の出前だった”
あわてて時計を見ると5時を少し過ぎたところ。
急いで着替え外に出る。外はうっすらと明るくなってきていた。
曇りだと朝焼けは期待できないと思っていたけれど幸運だ。
ヘッデンを点けて穂先に登っていく人もいる。
あぁ失敗、今から準備しても間に合わない。
テラスから日の出まで見ていることにした。
だんだんと空が赤くなってくる。
すると白みを帯びた柱が現れた。
あ、サンピラーだ。あそこから太陽が昇るんだ。
その程度しか思わなかったけれど、後で見る事が出来てラッキーな現象だったとわかる。
さらに空は赤くなり、そして太陽が顔を出した。
テラスの人が皆写真を撮る。
みんな林屋ペーパーになったひと時だった。
出発まで
自分はもう少し小屋の周りで景色を眺めていたが、皆は小屋へと戻っていく。
朝ごはんは5時半からなんだ。
早い人は食べ終わった頃に食堂に。少し冷えたので温かいお茶や味噌汁が
ありがたかった。
食べ終わり食堂を出ると皆がどんどん出発していく。
うわー、遅れをとったー。と思い出発準備にとりかかるも、もたもた・・・。
だいぶ寂しくなった部屋を後にして外に向かう。
へっぽこハイカー
完全に明るくなった外に出ると雲の上に遠くの山々が浮かんでいる。
穂先には当然登って眺めを堪能している人がいる。いい時間だ。
その時とんがりコーンの人が話しかけてきた。
「天気がいいので予定を変更してもう一度登って行きます」
出来れば早い時間に下山したいと昨日話ていたが、やはりそうするよね。
ジムとビンセントも出てきた。ジムはりんごをかじっている。
どこで調達してきたんだろう。
ジムと遠くの山を見ながら話していると「富士山が見えるぞ」と指差した。
確かに富士山のような形をしているとは何となく思っていたけど、あれだったか・・・。
富士山がどっちに見えるかなんて計画を立てている時から少しも思わなかったよ。
あれが富士山とはわからなかったと言いたかったけれど、出てきた英語は
「アイドントノウ」だった。
それでもジムは何を言いたいのかわかってくれたようだった。
その後やってきたビンセントも同じ事を言い富士山を指差した。
当然答えは「アイドントノウ」
それを聞いてビンセントはびっくりした表情をした。こいつ富士山を知らないのか!
そんな感じだったので、でもさっきジムが教えてくれたと話した。
「ジム、ティーチミー」
ビンセントにはおかしな英語を理解するにはもう少し経験が必要なようだ。
一方ジムは大きな声で笑っている。
へっぽこハイカー、異国からの旅人に富士山を教わる。
向かう先
小屋の前のおかしな会話も楽しいけれど、そろそろ先に進まないと。
彼らはもう下る気でいるから景色を楽しみながら行くだろうけれど、
自分は大キレットを実際に見てそこで判断することにしたからだ。
ただ彼らは知らない。言葉がわからないから伝えようがないからだ。
記念に3人で写真を撮りたいと思いカメラを出しているとビンセントが気づいてくれて
カメラを取り上げる。あー誰かに頼まないとと思っていると、腕を前に出した。
自撮りだー。慌ててスマイル。
さすがカメラマン、いい写真を撮ってくれた。今回のいい思い出だ。
ありがとうビンセント。
3人同じ道を歩き始める。
テント場の中に入ると右手に笠ヶ岳。その奥遠くにも山が見える。
手前に目を移すとガスが山の稜線を越えて流れていく景色が飛びこんできた。
すかさずジムを呼んで見てもらった。彼らにはどう映ったかな。
その後10分ほど歩いた所でビンセントの撮影中に自分が前に出る。
少し歩いて振り返るとずいぶんと差が開いてしまった。
向こうから歩いてくる人がいたので話しをする。60代の男性だ。
スマートな見た目できれいな言葉を話す人だった。
大キレットを越えてきたという。もう最後だと思ってとの事。
しっかりした足取りだったけれど、まだまだ大丈夫ですよとは言えなかった。
自分はこれから初めての大キレットに行くための情報を聞こうとしているんだから。
天気は白山も富士山も見えているから大丈夫でしょうとの事。
念のため小屋でも情報収集したらいいと言ってくれた。
ここで大キレットに向かうことはほぼ確定した。
お礼を言って別れたが、この方のような人に朝日連峰で話をしたなと思い出した。
呼び止めれば聞けたものの違っていたら悪いなと思い止めた。
その後下って登り返していく途中で景色を見ながら歩いてくるジムとビンセントを発見。
小さくなった彼らに手を振り大キレットへと進む。
大キレット
南岳小屋で天気の情報を教えてもらうと、もしかしたら明日は動けなくなるかもしれない
との事。今日のうちに下ろうかと思うと話した自分に、正しい判断だと答えてくれた。
ここで北穂から下山するプランで決定するのだがはたして・・・。
南岳小屋からすぐの所には獅子鼻展望台。
大キレットを見渡せるとの事だったが・・・
これ、向こうに続いているのかな?
でもどうやって下りるの?見えないよ。
キレットの底から先は見えるけどそこまでの道が見えない。
いきなり崖ですか?
なんて所だと思っていると、そこに一人の登山者が現れた。
写真を撮ってくれというのでお互い撮影。
聞くと西穂からジャンダルムを越えて来て、その後の大キレットは特に怖いと
思わなかったという。
おー、エキスパート発見。
大キレットは消化試合でしたねと話をして別れる。さて自分はどうだろう。
大キレットは優しく迎えてくれた。
意外なことに始めは石の階段からスタート。トントンと進んで行く。
けっこう下った所で鎖、そしてハシゴが現れる。
手掛かり足掛かりが確実にあるのだから滑ったり外したりしないようにだけ
気をつける。
鎖、ハシゴで一気にキレットの底付近まで下ってきた。
そこからはしばらくほとんど手を使わない道が続く。
少しだけ見た目で気持ちが引き締まる所があるけれど、岩が安定しているので
慎重に歩いて通過する。
それ以外は幅のある道でいつものペースで進んで行く。
キレットの底から少しづつ登りになり再び手を使いながらの登りになった。
そのまま登って向こう側が見えたとき近くに対抗者のパーティを発見。
みんなでロープをつないで鎖場を通過中だ。
あらら、なんだか難しいところで出合ってしまったなと思いながら待機する場所を
探す。近くの大きな岩のうえに行けばすれ違えそうだと思いそちらに移動してみると、
なんと、Hピークと書かれている。
ここが長谷川ピークか。あの人たちにここで会わなければ知らずにスルーだったよ。
パーティが来るまでしばし休憩。来た道や周りの景色を写真に撮る。
長谷川ピークの文字も入れて自分撮りもしてみる。
無事に通過したパーティの方々にお疲れ様でしたと声をかけて先へ進む。
ついさっきはタイミング悪いなと思っていたけれど今は感謝。ありがたや、ありがたや。
稜線をそのまま進むのかと思いきや少し進んだところで稜線を外れ鎖で下りる。
ここが信州側から飛騨側に乗っ越すって所なのかなと何となく思いながら下りる。
進むと木の橋が現れた。橋といっても2メートルくらいだから足場かな。
ずっと岩場の道だったからなのか思わずにやりと笑ってしまった。
そこを過ぎ目の前に立ちはだかる岩の壁へと進んでいくとA沢のコルの標識が。
地図ではザックを下ろして休める唯一の場所と書かれてあった気がしたが、すぐ手前に
同じようなスペースがあったしそっちの方が落石を気にしなくていいぞと思った。
休憩をすることもないのでそのまま岩壁に進んで行く。行けそうな所を登っていけば
大丈夫なのだがペンキマークがあると安心していける。
と思っていたら手をかけた石がぐらっと動いた・・・
危ない危ない。一見動きそうにない石なのに。手だったから良いものの足だったらと思うと。やはり下りは要注意だ。
途中振り返って景色を見る。歩いてきたキレットの道がばっちり見える。
そしてHピークの鋭い稜線。これを本当に越えてきたのかなと思ってしまった。
見た目ほどではないような・・・。まあ稜線をずっと歩いたわけでないからね。
登っていく途中で何度も来た道を振り返り写真を撮る。少し登るだけでも全然違う。
そうしていると登りはいったん終了。横方向に進んで行く。すると鎖が登場、親切に
足場までついている。雨天時には頼もしいけれど、今のコンディションでは必要ないかな。
そのまま通過する。
そこから再び縦方向への移動がメインになってくる。
途中展望台と書かれた場所に到着。何の展望台なのかわからなかったが、きっと
滝谷に違いないと思い断崖を撮影。上を見ると断崖の上に北穂小屋が見える。
休憩後、北穂小屋まであと少しと出発。
北穂まで200mのペイントを過ぎると最後の登り。
下から見ると小屋が落ちてくるんじゃないかと心配になりながら進む。
ここでもつかんだ岩がぐらっと動く。やはり落石、滑落要注意だと最後の登りを
慎重に進む。
その岩場を登りきると北穂小屋に到着。入り口とかでなく、いきなりテラスに出るの
だから周りの雰囲気がガラリと変わる。テラスでは何人かの人がくつろいでいた。
自分も場所を確保して休憩する。
北穂小屋では有名なコーヒー北穂ブレンドを飲んでみたいと思っていた。
景色を眺めながらコーヒーを飲む。北穂ブレンドはやさしい味だった。個性のある味
よりもこのような味が登山には合うだろうなと思った。
素晴らしいひと時だった。
友達に豆をお土産にしようかと考えていたものの豆の販売はないそうだ。残念。
テラスから初めて涸沢を見ることになった。思っていたより小さいスペースだなと思った。
予定ではここから涸沢へ下りていくことになる。けっこうな高度差だ。
ここで隣の席のソロの方と話しをすることが出来た。
涸沢にテント泊を張っていてこれから穂高小屋経由で戻るとの事。
あれが自分のテントですと教えてくれた。
会話の相手が穂高経由で行くとなると自分もそうしたいと思えてくるのだけれど・・・。
会話をしながら悩むわたし。
しかしこちらの天気、ルートの知識のない自分にとって下り坂の天気予報の中、
難易度の高いルートを進むのはためらいがあった。
途中雨になったら穂高から涸沢までの区間を問題なく下れるのか心配だった。
しばらく一期一会の時間を楽しみ、お互いの方向へ進んで行った。
もう下るだけとなってしまった自分は時間だけが気になるところだった。
一気に下るには時間との戦いになるし、かといって涸沢に泊まるとなっても中途半端な
時間になりそうだった。
とにかく涸沢まで一気にくだって考えることにした。
涸沢
急な道をいいペースでくだる。なかなか涸沢の建物は大きくならないけれど、
高度が下がっていることは景色からわかる。鎖なども通過して進み、いいかげん
疲れたころに涸沢に到着。初めての涸沢に北穂からくる人ってマイナーだよね。
とりあえず近い涸沢小屋に向かう。
テラスから評判の景色を眺めながら時間の計算。
最終バスまでなら十分なのだけど、手荷物預かり所の閉まる時間が問題なんだよね。
下りて行って手荷物を受け取れないとそこで宿探しだ。それは辛いな。
でもプッシュすれば間に合いそうだ。ここで昼を食べようかと思っていたものの急ぎ
出発をすることにした。
もしここから穂高がはっきりみえていればここでのんびり過ごしていたのかもしれない
けれど、初の涸沢はただの通過点となってしまった。
初の涸沢を通過点にする人ってマイナーだよね。
へっぽこハイカー本領発揮
涸沢小屋を後にして本谷橋方面へすすむ。ここから横尾までコースタイムのどれくらい
で行けるのかキーポイントになる区間。
ヒュッテに向かう階段を下り、まっすぐ進んでいくと登山道があるはずなのだが・・・。
道が消えた・・・。あったペイントも先には見えない。
すぐそこにはヒュッテに続く石畳の道があるのだけれど、自分の進みたい道がない。
なんと涸沢で道迷いをしてしまった。初めてのロストだ。
どこに道があるかわからずしばらくあっちこっちとウロウロ。結局進んできた方向に
そのまま進んで道を見つけたけれど、こんなところで本領を発揮してしまうとは・・・。
外で作業をしていた工事の人も変な人がいるなと思ったに違いない。でも恥ずかしくて
聞けないじゃないか、「あのー、ここから出るにはどうしたらいいですか?」なんて。
マイナーの極みである・・・。
とにかく進む
無事?難易度の高い涸沢を通過し、あとはタイムの計算できる横尾まで一気に進む。
地図ではもう少し斜度のきついところもあるのかと思っていたもののスピードにのって
進んでいく。あまり景色がいいと言えないところも時間を稼ぐのには好都合。
1時間で本谷橋に到着。そこから横尾まではフラットな道が続いた。
本谷橋はのんびり休憩をしたい所ではあったもののそのまま通過。
横尾についてやっと手荷物を回収できる確信が持てた。
とにかくペースを上げて歩いてきた甲斐があった。
あとはいつものペースで行けば十分なのだけれどアドレナリンが出ているからか
ペースを抑えていくのが難しい。どんどん進んで徳澤到着。
あ、おやつの時間だ。二日続けてソフトクリームを食べるとは思わなかったものの
休憩がてら美味しくいただく。
旅のおわり
さて、時間があればもう一度河童橋からの眺めを楽しもうかなと思いながら、進む。
この時間でもすれ違う人が多いのに驚く。徳澤、横尾泊まりなのかまた戻るのか。
結局この時間まで雨が降らずの一日だった。
荷物を回収すると良いタイミングでバスの出発があった。
ここで帰るのはもったいないと思いながらも上高地を後にする。
次はいつになるだろう、その時はしっかりと山を楽しむ時間を持ちたいな。
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