(過去レコ)北鎌尾根
- GPS
- 56:00
- 距離
- 47.9km
- 登り
- 5,034m
- 下り
- 5,032m
コースタイム
- 山行
- 8:55
- 休憩
- 2:05
- 合計
- 11:00
- 山行
- 9:15
- 休憩
- 1:15
- 合計
- 10:30
- 山行
- 9:40
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 11:10
また、険しい稜線の鍛錬として事前に妙義山(表妙義)を縦走しました。
天候 | 13日=晴れ(山はガス) 14日=晴れ(山はガス) 15日=快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
一ノ沢林道は梅雨末期の大雨で崩壊し、青年の森キャンプ場から奥はゲートで遮断されていた。このことは事前には知らず、ヒエ平まで歩いて入ることになる。初日の泊りとなる大天井ヒュッテまでは中房温泉からの方が近いが、中房温泉からは燕岳〜大天井岳を日帰りしたことがあり、まだ歩いたことのない常念小屋〜大天井ヒュッテ間を歩いてみたかった。
初日の天気予報は曇りのち晴れだったが、早朝から快晴。一ノ沢の上部には所々に残雪があった。
常念乗越ではサブザックにカメラと水、おにぎりを入れて常念岳へ向かう。乗越では槍〜穂高が素晴らしい眺めだったが、登頂した時には可成りガスが掛かっていた。その後、時間の経過とともにガスは濃くなる一方だった。
大天井ヒュッテの管理人、小池さんは初対面だったが事前にヒュッテのHPはよく見ていたので顔はすぐ分かった。一泊二食+翌日昼の弁当で9500円の支払い(翌日泊まったヒュッテ大槍も全く同額)。
宿泊手続き後、夕食まで時間がたっぷりあるので牛首展望台へ行く。
展望はすこぶる良かったが、眼前の大天井岳にはガスが掛かっていることが多かった。槍の穂先のガスも消え、北鎌尾根は全貌が見えていたが、逆光で霞み、精彩を欠いていた。
展望台には一時間ほどいたが、意外にも他の登山者は誰も上がって来ない。小屋へ戻り、明日は北鎌をやるという3人パーティーと話し込む。
小屋では天気予報専門のテレビが、台風が近づいており明後日は雨だろうと報じていた。
夜中の3時頃だったろうか、出発の準備をする人たちの騒々しさで目を覚ます。ヒュッテで朝食を済ませ、急いで身支度を済ませて歩き出した時、弁当を受け取っていないことを思い出して引き返す。歩き出して1〜2分後だったから良かったが、貧乏沢を下る途中だったら北鎌は断念していたかも知れない。
貧乏沢入口の表示の所で大勢の女性のパーティーに追い付く。山側へよけた女性に対し、「済みません。私、ここから入りますから」というと、「えっ?どこへ行くんですか?」と。北鎌尾根とは言わず、「槍へのバリエーションルートです」と答えたが、大勢の中にはここが北鎌尾根入口だと知る人もいたと思う。
貧乏沢の下りは、上部はハイマツ、下部は灌木に掴まりながらの急な下り。所々に浮石の多いガレもある。踏み跡は明瞭で迷う所はない。今朝も多くの人が下ったらしく、生い茂った草が無造作になぎ倒されている。
昨日、小池さんに「早い人は小屋を何時頃に出るんですか?」と聞くと、「3時頃出る人がいます。却って危ないんですけどね」と。浮石の多い急な下りをヘッドランプで下ることになる。
天上沢へ出る手前で男三人女二人のパーティーが食事中。その内の一人の男性は昨夕小屋のベンチで話をした、都内から来た非常に屈強そうな初老だった。多分、パーティーのリーダーだろう。
7時10分、天上沢に出る。水量が多く、暫く上流へ進み、靴を濡らさないで渡れる所で対岸へ。下調べどおりほぼ20分で北鎌沢出合。
上方を二人が先行していて、追い付いてみるとその人達も昨日小屋のベンチで話をした人たちだった。
出合から10分ほどで右俣と左俣に分岐で、北鎌のコルへは伏流となっている右。この先で確実に水流があるかどうか不安だったので、豊富な流れの左俣で500ミリのPB4本を満たす。
ザックが急に重くなり、一歩一歩にずしりと響く。右俣の伏流は分岐だけで、水流が出てからしばらくは切れることなく続いていた。
どうやら最終水場らしい所でPB1本分を飲み溜めし、追い付いた二人も時間を掛けて飲んでいた。
標高2400m付近にも微量の流れがあったが、コップ一杯に3分ほど掛かりそうな細い流れだった。
上方でルートが左右に分岐している所で右に進んだら途中で深い草むらとなり、中央からやや左寄りに上がるとコルに出た。
千天出合から尾根を辿った場合、この北側に出るはずだが、踏み跡らしきものは全くない。
天候は一応晴れてはいたものの、山の上部には濃いガスが掛かっていた。結果的に、このガスが槍への到達を早めてくれた。ガスが掛かっていなかったら景色を眺めては頻繁に写真を撮り、時間が掛かったと思う。
コルからほとんど絶壁のような急斜面をハイマツに掴まって攀じ登る。非常に急だがルートはよく踏まれて分かりやすく、邪魔になるハイマツは切り払われて歩き易い。
天狗の腰掛は東西に長く平らな所で、前方には独標の岩壁が立ちはだかる。その基部までは小さくて鋭い岩場が続く。
腰掛の先を少し下った所で中年男性3人のパーティー、その先では中年カップルを追い抜く。こういう所ではすぐ道を開けてくれるのがありがたい。
どんどん進んでいると踏み跡が消えた。少し迷っていると、後方の3人パーティーが「ルートは少し戻って左上だよ〜っ」と大声で教えて下さった。すぐ近くからは見えにくいが、離れた所からは見えやすい…これが北鎌尾根の特徴かもしれない。
独標の手前も分かりにくかった。踏み跡がいくつもあり、どれが正しいのか歩いてみなければ分からない。
前方に男性3人連れがルートに迷っていた。どうも先へは行けないらしい。私はその人達の20〜30m手前で左上へ続く踏み跡を見つけ、そこを上がった。3人連れから「そっちにトレースがありますか〜っ」と聞かれる。3人は少し戻って私の後を上がったようだが、至る所に岩場があり、岩陰に隠れて3人の姿は見えなくなった。
大きなルートミスもなく、独標と思われるピークに立つ。表示も目印も全くない、2畳ほどの砂混じりの平らなピークだった。高度計の表示で独標に間違いないと思ったが、後方(北側)に人の立てそうにない鋭い岩の林立している所があり、ここより高いようにも見える。
15分休んで後続の3人パーティーを待っていたが、上がってくる様子はない。のんびりしている訳にもいかず、先を急ぐ。
”独標から先は基本的には尾根通し”とあるガイドブックの記事が頭にインプットされていたのでそのとおりに進んでいたら大変な岩場に出た。
左右からの岩が上方で合わさり、手前に色違いの2本のザイルがある。岩の窓から手を伸ばせば向こう側のザイルにも届くが、オーバーハング状で手前のザイルに掴まっても岩の上には上がれない。
行き詰まった結果、右下へ下ったがその周辺に踏み跡は全くない。大きく上がったり下がったりして何とか難関を切り抜けたが、この行き詰まった稜線が私にとっては北鎌尾根最大の難所だった。
前方に二人の人影が見え、追い付いてみると学生風の青年。その後は困難を極める岩場はなかったが、ガスは次第に濃くなって見通しが利かず、ずっと千丈沢側を巻く。
13時30分、明らかに北鎌平と思われる平坦地に着き、水をごくごく飲む。ガスの中で槍の穂先が見えたり隠されたりしていた。砂地から僅かに下がって右側を進む。今度休憩するのは槍の頂上だと思うとわくわくしたが、次第に巨岩だらけの急な上りとなる。靴底が汚れないので、トレースははっきりしない。何とか尾根伝いには行けそうだし、ペンキマークも所々にある。
やがて頂上直下のチムニーに差し掛かる。ハーケンにザイルを通してリング状に垂れ下がっているが、とても手の届く位置ではない。この岩場は大天井ヒュッテのHPに書かれていたとおりに従い、割れ目の右側を攀じ登る。落ちたら軽傷では済まない岩場だが、ホールドは安定していた。
濃いガスの中から人の声がよく聞こえるようになり、頂上の近いことが分かる。大きく息を弾ませながらもペースを落とさず、岩を相手に掛け声を掛けながら掴まり、巨岩を縫うようにして槍の穂先へ。
頂上にいる人の顔が見えるようになり、「おーい、あそこを見ろよ。人が上がって来るぞ!」とか「○○(人の名前)が今度槍へ来る時はここから上って来るんだぞ!」という声が聞こえる。
14時25分、大願成就。頂上の祠のすぐ横に上がる。祠の傍に立って記念写真を撮る人の列ができていたので、祠の横は空いていた。
大勢の登山者の注目を浴びたが、暫くの間は声も満足に出ず、息が大きく弾むだけ。
昨夜大天井ヒュッテで食事をしていた時、テーブルの向かい側にいた温厚そうな顔付きの青年が頂上にいた。どのくらい前に登頂したのか聞いたら、その人の方が一時間ほど早かった。
いくら長時間歩いても滅多に腰を下ろすことはないのだが、下りの鉄梯子に近い平らな石に腰掛け、大天井ヒュッテの弁当を食す。頂上までで飲んだ水は500ミリPB1本半〜2本程度。
頂上は濃いガスで展望は全くなかったが、前回来た時は快晴下の頂上に2時間余りもいて絶景は堪能済みだった。
今日追い抜いた人は18人で、そのうち女性は3人。湯俣から入ったという初老の単独行もいた。追い抜かれた人はいなかったが、砂地に真新しい靴跡があったので私より先に登頂した人はいると思う。
ザイルなしで登頂できたのは極めて強い達成感であった。
30分後に下山の列に加わる。上りは空いていたが、下りはずっと渋滞していた。当初は槍ヶ岳山荘泊の予定だったが、翌日の行程を短くしたいのでヒュッテ大槍泊に変更。
2巡目の食事を終えて外へ出て見ると吐く息は白かった。気温は低かったのだろうが、私の心身は興奮冷めやらぬ熱さがほとばしっていた。
三日目。ヒュッテ大槍から登山口へ下る。
台風の進路は予報から大きく逸れ、三日目にして終日快晴。
好感度のとても高い若い女性の小屋番さんに挨拶し、小屋を出て下山開始前に小屋裏の岩場に立つ。ここからの眺望はパーフェクトな素晴らしさである。
大天井ヒュッテの小池さんは背中に槍の文字が入ったつなぎを着て広場の端に何かを造成中だった。
帰路の高速道は諏訪湖花火大会で渋滞。
山にのめり込んだ三日間だった。
【山行記録投稿=2018年10月13日】
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