槍ヶ岳
- GPS
- 33:30
- 距離
- 36.9km
- 登り
- 1,754m
- 下り
- 1,751m
コースタイム
8/5 4:00殺生ヒュッテ-5:10槍穂先-6:00殺生ヒュッテ(朝食)7:05出発-8:30天狗原分岐-9:10大曲(10分休憩)-10:15槍沢ロッジ(軽食休憩)-12:20横尾(昼食)-14:00徳沢(アイスクリーム休憩)-15:05明神-16:05上高地
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ポストは上高地BTにあります。 槍の穂先以外、危険という程の箇所はありません。ババ平より上では雪渓は多数残っていますが上を渡る距離は短く、また平坦なのでノーアイゼンで全然OKです。 槍沢ロッジ〜ババ平は日差しのある急坂が一部有り、また、大曲以降、そこまで急という程でもないのですが、だだっ広い景色の中で進んでいる感じがしづらい中でそれなりに急坂が地味〜に長時間続きますので、結構しんどく、体力勝負です。唯一の救いは、雪渓の上を吹く谷筋の風がかなり涼しい事でしょうか。 槍の穂先は、言われる程までは難易度もなく、(私の山行経験の中での)他山のハイライト詰め合わせ30分コースぐらいの感じで、地蔵岳のオベリスク直下へ登る感じに似てました。落ち着いて呼吸を整え登る事、三点確保でしっかり安定して真っ直ぐ立つ事、辺りのキホンは大事です。 |
写真
感想
8月。
今夏のハイライトはどこにしよう、と考えていました。
それ以前に、最近はお疲れモード。特に意欲心理面。
一番の趣味のはずの山まで、純粋に楽しめておらず、ともすれば無意欲、無感動になってしまう時がありました。これではダメだ。
自分にとって、山は自然を感じる場であり、美しいものを見る場であり、娯楽の場であり、苦難を乗り越え達成する喜びを味わう道場であり、人と触れ合い、感動を分かつ場であり、そして、なんていうか、再生の場でもあります。
まだまだ初級者な今の自分にどうにか登れるかどうか、ぐらいの山。
今夏のハイライトに相応しい山は・・・
北アルプス、槍ヶ岳。
片道約20km、標高差1500m弱。行程は難しくないながら、1泊2日には十分な距離です。最悪は、途中に小屋も沢山あるし、敗退でも構いません。とにかくやり遂げるつもりで挑戦したい。
とまあ、どっかの漫画みたいな展開で、思い立ったが吉日、前日はあまりよく寝付けず結局寝たり起きたりの仮眠4時間ってトコでしたが、上高地へ。
朝8時過ぎ、少し遅めのスタートになりました。
山小屋の現在状況の情報を知りたく、上高地BTの宿泊案内所に行きました。
「今の時期はどこでもいっぱいだから、もう今の時間からだと出発遅いし、3時前に槍沢あたりで電話して宿泊予約すれば夕食付きでも準備してもらえるでしょう。小屋の連絡先一覧の紙をあげるから持って行きなさい」との事で、紙をもらいました。
まだこのコースは大正池〜明神までしか行った事がありませんでした。
山に登り始めたばかりのあの頃と、どのぐらいの差があるのでしょうか。
槍の肩付近を今日の目指すゴールとし、スタート。
明神までは30分少々で着きました。次の徳沢までも同じぐらい。
我ながら良いペースです。道すがら、明神岳、段々回りこんで前穂が見え、雄大な感じでした。登山者、下山者共に沢山いて、すれ違う毎に元気に挨拶しながら行きました。
横尾までは約9km、2時間で着きました。この分なら、今日中に槍の肩まで行けそうです。しかしここからは登り、段々日も高くなり暑くなるし、油断は出来ません。
横尾を過ぎると程なく山道へ。沢沿いなので、水の上を風が渉り、また標高も少し高い所なので十分涼しい感じです。
段々高度を上げ、槍沢ロッジ、そしてババ平へ。樹林の中はいいけど、一歩出ると天気に恵まれすぎて暑くもありました。
お昼、電波が少しだけ入るロッジ付近で、貰った紙に書かれていた番号に電話してみました。今日は殺生ヒュッテ泊にしようと思います。ところが、なんだか電話口で話が噛み合いません。番号はあってるはずだけど、間違い電話をしてしまったようです。お詫びを言って、「まー米も4人前、スティックパンも6,7本持ってるし最悪夕食はこれで…」と諦め先へ進みました。
大曲を過ぎると樹林はなく、ひたすらカール状地形の底を歩いていきました。
高度もあるので気温も少し低くなり、天狗原分岐までは途中、雪渓の脇を通る事が多く、その上を吹く風が涼しいので、お昼の暑い中でも何とか時々励まされました。
周りにも人は割と多いのですが、暑さとじわじわ来る登りでへばっている姿も見受けられました。
見上げると横に、赤沢山の岩むき出しの壁が、高く高くそびえています。槍沢のカールは緩やかに見えますが、槍へは少なくともこの壁の頂上より高い所まで登る、という事を考えると、相当先は長そうです。
天狗原分岐からはいよいよの更に急な登り。ジグザグにザレた斜面をカール右方へと登って行きました。もう足があまりスタスタとは前に進まず、小さな歩幅でゆっくりめに登って行きました。水も1口ずつ味わう様に飲んではいますが、そろそろ底をつくかも知れません。地図にある水場を希望に高度を稼ぎますが、まだあと2時間はかかりそうです。
水の流れている音がしたので見ると、登山道の脇から小道が。その先には小さな滝になってる小川が見えます。これが水場!?そこに居た2人組の方に聞くと、「多分そうじゃないかと…」地図で見ても、ここがそうな様な気がします。
水は冷たく、澄んで見えました。背に腹は変えられず、とりあえず非常用にマヨネーズの入れ物みたいな携帯浄水器のデリオスをいつも持ってたので、これで漉して飲む事にしました。グビグビ飲んで、とりあえず生き返りました。
ちょっと登ると、さっきの小川の上の流れに出たり、そこでも水に集まる人達がいたり…やっぱ水場じゃなかったんじゃ…でもまあ大丈夫そうな雰囲気ではありました。
道すがら、ツアーと思しき登山者も沢山居ましたが、韓国からのツアーの方も多く何団体かみかけました。言葉は通じませんでしたが、ジェスチャーで「ザックの水を取って」と示され取ってあげたり、向こうから水をくれようとしたり、或いは笑顔で手を振ってくれるおかあさん登山者も居たり…旅を楽しまれ、山が好きな人はやっぱ共通かなあ、と思いました。
カール状地形の右の壁の下へと辿り着き、そこに沿う様に雪渓の上をトラバースしたりしながら回りこむと・・・ついに槍の穂先が見えました。小屋も見え、元気が出ます。見えてからがまだまだ長い感じでした。雄大な景色はこれだから・・・
グリーンバンドに入ると、いつしかハイ松と、そして花が目につきました。黄色、白、皆今がまさに旬といった感じで伸びやかに明るい色で咲いています。目をあげると、上の方まで一面花畑でした。この景色に励まされながら、最後の一登り。
小屋の前に辿り着いた時の嬉しさ。
外であらためて穂先を眺め、夢中で写真を撮った後、外で他の登山者と暫く立ち話。
中に入って受付をしようとすると、何と4時過ぎなのに、「準備出来次第」という事で夕食付きにもしてもらえる事に。これは本当に有難かったです。
とりあえずビールとバッジも買って、荷物も置かずにまた外に出て、槍見酒。
ああ、もし小屋が無い時代だったら、この高山の自然の真っ只中にポツンと自分。
小屋って、人って、有難いなあ、としみじみ感じます。
2日滞在されて景色を楽しみながら良い写真のチャンスを狙っている方、新穂高の方から登られて肩の小屋は一杯で泊まれなかったのでこっちに降りてきた方、等、何人かとお話したり、写真を撮ってもらったり。いい運動したせいとやっと着けた&穂先を見上げるすぐ下にいる嬉しさで、ビール1本で饒舌な酔っ払いになってしまいました。山友さんにも電話して「槍に来ましたよ〜」と報告。山友さんは最近、岩木山、岩手山に登ったそうです。
夕食の準備が出来、荷物を宿泊する部屋に置いて、食卓へ。愛知から来られているちょっと若い男性2人とペアで、談笑しながら食事。山の上だし贅沢な食事ではないけど、暖かい味噌汁が、ご飯が普通に旨い。
食後日が暮れて来ると、外は一気に冷え込んできました。
小屋入り口付近のテーブルに腰掛け、ランプの明かりの下で、先ほどの男性2人とビール片手に登った山の話、旅行の話、つい私ばかりメインで喋ってしまいましたが、いつもより口の滑りも大変よく、軽快なテンポでオヤジギャグや冗談を交えながら、旅先での珍しいものの話など。二人も上高地から登ってきてやっとこさ着いたばかりとの事。明日朝は5時半から朝食との事ですが、私は荷物を置いて朝4時から登るプランを話しました。2人もそれに乗ってきて、小屋の方に伺った所、あまり遅いと困るけどまー少々ぐらいなら…と言って頂けました。
消灯時間の8時間際まで話し込み、ヘッデンほか出発時に必要な荷物だけだして準備、布団に潜り込みました。
初日の疲れも相まって、8時間たっぷり睡眠。4時少し前に3人とも目覚めました。
まだ外は真っ暗ですが、窓からは満月の月明かりに照らされ、大喰岳方面の稜線が見えています。外を見るとヘッデンの明かりもわずかにチラホラ。外は冬の様な寒さでしたが、ヘッデンの明かりを頼りに進む内に暑くなって来ました。標高差200m程の、肩までのジグザグ道は割と長く、30分以上かかり稜線に上がる頃にはヘッデンが不要な程明るくなっていました。人はまだそんなに多くはないものの、十分ご来光渋滞で数十人程度は居る様に見えます。
槍の肩で呼吸を整えなおした後、いざ、目の前の道を穂先に向けてスタート。
最初は緩やかな岩地の傾斜をトラバース気味に上がって行きました。右の沢を見ると高度感も少しだけありますが、道幅も十分あり、何という事は無い程度です。
少し行くと、道正面は下りの向こうから降りてくるルート、登りは左へと分かれていました。岩の上には目印が沢山書かれているので、ルートファインディングも軽く出来れば十分程度で、迷う事もありません。岩場は割りと長く、高度感を感じる箇所もありました。
登りきったトコで6〜7mぐらいの梯子。3点支持で焦らずしっかり登ります。
ここまでで、標高差100m程のもう半分以上は登った感じです。
岩場をしばし行くと、4段の短い梯子を登りその天辺から鉄筋の杭が出ている場所へ。ここが話に聴いていた核心部でしょうか。鉄筋の間隔は確かにちょっと広めですが、乾いていた岩のグリップも良いので、ちょっと岩場慣れしてればそう怖がる事もありません。自分的には、甲斐駒駒津峰からの「直登」ルートの方が余程手ごわかったです。そしてすぐ鎖場へ。ここを超えると、もう上の方に山頂は見えています。最後の梯子へと近づいていくと、山頂から降りてくる韓国の団体さんで既に渋滞開始。待つ事5分程、ようやく皆降りて行って登る事が出来ました。
5mと10m程の梯子、最後の梯子を登りきると、狭い岩の山頂へ。10人程人が居て、既に足の踏み場も少ないぐらいごった返しています。
東の空が眩しい。
見ると、雲海の上に360度の大絶景。
富士が、穂高が、乗鞍が、御岳が、八ヶ岳が、浅間山が、…
山頂の祠は、何か神聖な雰囲気すら漂っていました。ああ、穂先の天辺まで来たんだなあ。しばし浸りましたが、食事の時間もあるので早々に下山開始。
下りは団体さんが居て、登って来る人もいて、またもや渋滞…
鎖のトラバースが多くあるものの、下りも高度感はそこそこ多少あるものの、そう大変な岩場ではありませんでした。
肩の小屋に降りた時には5時半少し過ぎ。ヤバイ…時間オーバー。
しかも数m先を行っていた同行の2人が見当たりません。きっと先に下ったものだろうと思い、自分もダッシュで殺生ヒュッテまで下山。こういう時に限って、団体さんパーティーが前を歩いていたり。穂先みたいな危険もある箇所では絶対に急かしたりする気にはなれませんが、ここでは気がちょっと急きました。
息を切らせて小屋に飛び込むと、朝食の準備は出来ていました。
あれ?二人が居ない…
「渋滞してた?食事準備できてるよ」声をかけて頂けましたが、
二人がまだ降りてきてない;肩まで辿り着いてはいるはずなのですが…
その事を伝え、外に出て上の様子を伺うものの見当たりません。とりあえず先に食事だけでも頂いて二人を探しに行く事に。ですが食べ終わる頃に二人が降りてきました。どうも肩の小屋にちょっと寄ってたら、下りの渋滞に巻き込まれていたようでした。
朝ごはんを頂いた後、出発準備。
「今日も天気が良く暑くなりそうだから、水もいっぱい汲んで行ってね」
と笑顔で声をかけて頂けました。いやー、時間読みミスで食事の時間に遅れ迷惑までかけてしまったのに(スミマセン)、快く送り出して頂けました。
どこかで「愛想があまりない」等々書き込まれているのも見ましたが、自分は全っ然そんな印象を受けませんでした。大変親切で色々声もかけてくれたし。上高地で貰った番号一覧について尋ねてみると、「あれ?これ古いんじゃない?ここには電話ないよ」との事でしたorz
現地に携帯はなく、冬季連絡先と書いてある地上の事務所にかけると、こちらの小屋に連絡が来る、というシステムとの事でした。
ハイシーズンなのに、意外とまだ空いていて、昨夜は10床以上空いていて悠々と布団も1つ一人占めでした。肩までは40分ほどかかりますが、空荷で上がれるし、穴場だと思います。
小屋を出て下りへ。天狗原まで1.5時間、槍に別れをつげガレ場を下りて行きました。途中暑く、仲間の一人が昨日からの疲れもありグロッキー。急がず、休憩を多く取りながらゆっくり降りて行く事にしました。大曲、槍沢ロッジで大休止。槍Tシャツやポスター等、等お土産を買い込んだり、コーヒーとハニードーナツでまったりお茶にしたり。
そこからはまだフラフラしてる仲間にストックも貸して、横尾で昼食。焼き鳥丼がうまかった。目の前に餌をぶら下げて歩く元気を出す作戦にして、次の徳沢ではソフトクリーム。これも冷たく甘くて美味しい。
仲間の1人は歩けていますが、明らかに空ろな顔。んー…山自体登るの1年ぶりの人が槍は無謀かも…?水もちゃんと飲んでるし休憩もきちんと取って涼んでるし…危険箇所もないし、後はとにかく平地を歩いて上高地まで行くのみ。
途中俊足山ガールに追い抜かされ瞬く間に見えなくなったり、上高地付近では登山暦三年目のおば様が、昨日は槍、仲間は大キレット〜穂高に行ったけど私はリタイアで下で…とか全くケロっと元気な顔で言われてて颯爽と歩いていたり…
「ホラホラ、ガンバガンバ!」仲間を励ましつつ、上高地まで辿り着きました。
16時のバスがすぐに来たので、乗って降りる所で解散。
運転手さんが話し上手な面白い方で、釜トンネル付近の話や旧道の話などを冗談を交えながらガイドしてくれました。「昔はこの細い橋の上をバスで走ってて、私なんてコワいもんだからいつも目つぶって運転してました」とかの小噺にドッと笑いが起こり、最後まで楽しく過ごせました。
暑い日が続きますね。
槍ヶ岳、充実した山行ですね
小屋泊まりも気の合う人との出会いがあって
羨ましいです。
>苦難を乗り越え達成する喜びを味わう道場..
なんだか、今回とても共感します(・∀・)
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