〜風は秋色〜槍-大キレット-ジャンダルム-西穂高大周回
- GPS
- 56:00
- 距離
- 29.3km
- 登り
- 3,391m
- 下り
- 3,392m
コースタイム
20日6:15槍ヶ岳山荘−6:38大喰岳−7:15中岳−8:15南岳−9:55長谷川ピーク−10:25A沢のコル-12:10北穂山荘−12:40北穂−14:55涸沢岳−15:15穂高岳山荘
21日5:50穂高岳山荘−6:30奥穂高岳−7:55ジャンダルム−9:05天狗のコル−9:40天狗の頭−10:25間ノ岳−11:55西穂高岳12:00−12:40ピラミッドピーク−13:05西穂独標−13:55−13:40丸山−14:00西穂山荘14:05−14:50西穂高口駅15:30−16:10新穂高温泉駅−16:20新穂高温泉駐車場
天候 | 3日間とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
6年前に初めて奥穂の頂に立ち、馬の背の向こうに屹立するジャンダルムと初めて対峙したとき、自分にはまだその力量はないがそのうちいつかはあの頂に立つ、と心に誓った。それから100名山制覇、日本3大キレットのうち大キレット以外のキレット経験、ボルダリングジムや冬山の経験を積み、メスナーのナンガパルバット単独行、山野井泰史の垂直の記憶を読んで孤独と恐怖をコントロールして歓喜に昇華する方法を学び、山の神様もそろそろお許し下さる頃だろうと思えたので、登山靴のソールを貼り替え、槍から大キレットを越えて北穂、奥穂、ジャンダルム、西穂へと単独縦走する計画を実行する機会を伺っていた。未だ制覇していない3000級の山々もこの山行で一気に片付けられる。10月19日-21日は3日通しで晴れの予報が出てまさしくこのタイミングを逃したらシーズン終了と思われた最後のチャンスが回ってきた。
木曜の夜、台風の余波の雨をついて走らせる車の中で、私の気持ちは最高に高ぶっていた。
今回の一番の目標は怪我をせず、事故に遭わずに踏破すること。そのためにはタイムを気にせず、転ばないように一挙手一投足を慎重に行うことを胆に銘じた。
新穂高温泉の無料駐車場に車を置き、紅葉の中を歩き始める。まだ雲は低く立ち込めている。金曜日のせいか、登山客は少なく、槍平小屋に着くまで人らしい人とはほとんど出合わなかった。初日の目標の槍ヶ岳山荘は時間に余裕があるので、先日のトランスアルプスジャパンの選手が駆け抜けた西鎌尾根を歩いてみたくなり、中崎尾根に出た。尾根に出た途端、雲海の上に青空が広がり、目指す槍やその先の穂高の峰々が一斉に姿を現した。ルートが近いことと今回はテントを持ってこなかったせいもあり、槍ヶ岳頂上までの道は昔上高地からテントを背負って登った時と比べて大して苦もなかった。頂上は360°の展望を長い時間独り占めすることができた。
その夜の小屋の利用者は10数人とかなり少なく、自分と似たような単独行者達とすぐに打ち解けて話が弾んだ。ほとんどの人が大キレットを越えて北穂小屋か穂高小屋まで行く予定という。金曜日に登ってくる連中はやっぱり胆が据わっている。
その夜はOM-Dで星空の撮影にチャレンジした。高感度に設定することで槍の穂先をバックに星空を映しこむことに成功した。
小屋の朝食は6:00だという。これでは早出ができないし、日の出と重なってしまってモルゲンロートの撮影に差し支える。とはいっても私は朝食と昼食だけは自炊する用意でいたので、影響を受けることはなかった。
翌朝、6時過ぎに小屋を出る。10月の3000Mの稜線はやはり非常に寒い。それでも南岳に到着するころには身体も温まってきた。
最初の難関は長谷川ピークである。ナイフリッジ上を右に行ったり左に行ったりする必要があっていやらしかったがなんとか通過。
次が飛騨泣きという急斜面の登り。急斜面ではあるが、ホールドがしっかりしているので、マークをたどって慎重に登れば怖くはない。怖いのは落石だ。幸い早出したので、上方に人がいなかったので良かった。今回ヘルメットをしてきたがこのルートでは必須だと思う。7-8月に人が多い時期は相当落石にひやひやすると思う。
北穂の頂上直下でライチョウ一家に出くわし撮影のためしばし足止め。5-6羽の一団だった。
北穂を過ぎるころから飛騨側よりガスが出始めるが、多少雲があった方が写真に味が出るので良しとする。
最後の涸沢岳の登りに差し掛かった時はもうかなり足に来ていて昔通ったときの印象より苦労した。
2日目の穂高岳山荘はトイレが温熱便座、水洗、手洗い場で水が出るし、寝具も毛布が2枚などかなりアメニティが高い。1泊夕食のみ7,700円は槍ヶ岳山荘と同じ。ただしメニューは槍ヶ岳山荘の方が少し良かった。
2日目の夜はオリオン座流星群が期待できるとかで、ニコンD800を担いで登って来た人もいたが、生憎ガスが出ていて前日のようなきれいな星空ではなかった。
穂高山荘も朝食6時開始であった。前日同様私は自炊したが、電気が5:20まで点けてもらえなかったのには閉口した。
3日目は6時少し前に出発する。小屋の前の取り付きがいきなりの急斜面で温まらない身体でこの斜度は堪える。間もなく、日の出。奥穂頂上もまだそれほど人がいるわけでもなく、落ち着いて記念撮影できた。奥穂から先は自分にとって未知の領域だ。
馬の背に差し掛かったころ、後ろから外人カップルに抜かれる。この難所を軽快にこなしていた。「アナタハハジメテデスカ?」「ワタシタチモハジメテデス」と日本語で話しかけられた。しばらく彼らの後を追っかけていたら海外のマッターホーンにでもいる気分であった。
そしていよいよジャンダルムの前にやってきた。飛騨側に回れば緩い登りがあることは分かっていたが、ここは信州側から直登すると決めていた。ペンキでバツ印がしてあったが無視させていただいた。1本ロープが垂らしてあるところがあり、この岩棚に足が乗るかどうかが鍵となる。1回目のトライではびくついてうまくいかなかったが、山野井泰史だったらどんな風に登るだろうかとイメージしてからとりついたら、楽に登ることができた。何ごともイメージすることが大切だ。
外人ペアとは天狗のコルで別れ、また一人での岩稜歩きとなる。最もやばかったのは 西穂前の赤岩岳の登りだ。このあたりのマークは薄く、なかなか目に着かない。コルからは真っすぐに目の前の大岩をよじ登るのが正規ルートだったのだが、この印が近くからは全く分からない。それよりも飛騨側にゆるゆると登っていく道らしきものがあるので、こちらに迷い込んでしまった。いくら進んでもマークが現れないのでやっと間違えたことを理解したが、もう少しこの辺のペンキはしっかり付けてていただきたいものだ。
西穂から先のピークは標高を落とす一方なので、新穂高側からの登山だったら喜びもひとしおであろう独標などに到着しても何の感慨もなかった。それから先は早くロープウェー駅に着きたい一心で気は急いたが、疲労で足がはかどらず結構時間がかかった。ロープウェー駅では紅葉見物の観光客が多く、下りに乗るのに30分も並ぶ必要があった。ロープウェーから見下ろす紅葉は見事なもので、見上げる西穂もかっこよかった。最後に2本目のロープウェーで新穂高温泉につく直前に熊棚の上の熊を目撃した。この場所に巣があるなら新穂高温泉に現れても何の不思議もない。帰り際にはいつも立寄る橋の下の露天温泉「穂高の湯」で一息入れた。
とうとう念願の縦走を達成し終え、感想としては技術的、体力的な問題は無かったといえるが、これからの山登り人生の目標を何に求めて行けばよいのかという新たな問題を抱え込むこととなった。
以上
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する