剱岳から槍ヶ岳へ マイテントとガスと雨と時々晴天と


- GPS
- 170:24
- 距離
- 75.2km
- 登り
- 6,466m
- 下り
- 7,710m
コースタイム
7/27 7:30室堂8:00-12:08剣沢キャンプ場
7/28 剣沢キャンプ場5:00-8:14剣岳-11:07剣沢キャンプ場12:50-14:50雷鳥沢キャンプ場
7/29 雷鳥沢キャンプ場5:16‐7:20一ノ越山荘
7/30 一ノ越山荘4:55-6:58獅子岳-8:30五色ヶ原山荘8:50-11:25越中沢岳-14:52スゴ乗越小屋
7/31 スゴ乗越小屋5:20-8:14間山-9:54北薬師岳-11:15薬師岳-12:00薬師岳山荘12:25-13:45薬師峠キャンプ場
8/1 薬師峠キャンプ場8:30-11:08北ノ俣岳-14:41黒部五郎岳-16:25黒部五郎小舎
8/2 黒部五郎小舎4:53-7:10三俣蓮華岳-8:57双六小屋9:10-10:02樅沢岳-13:04千丈乗越-14:47槍ヶ岳山荘16:15-16:38槍ヶ岳16:56-17:18槍ヶ岳山荘
8/3 槍ヶ岳山荘5:22-7:49槍平小屋7:57-11:12新穂高温泉
天候 | 7/27 ガス のち 昼過ぎから土砂降りに雷 7/28 ガス のち 昼一時土砂降り、以後小雨のちガス 7/29 暴風雨 7/30 雨、風強し のち ガス 一時日差しあり 7/31 晴れ 夜 土砂降り 8/1 朝土砂降りに雷、ガスのち昼過ぎより晴れ 8/2 ガスと小雨、昼より晴れ 8/3 晴れ! |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り: 新穂高温泉11:30~12:00平湯バスターミナル13:05~14:35松本 2800円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【道の状況】 室堂~雷鳥沢キャンプ場 遊歩道 雷鳥沢キャンプ場~剱御前小舎 一部雪渓あり、整備良好 剱御前小舎~剱沢キャンプ場 整備良好 剱沢キャンプ場~剣山荘 雪渓を横切る、整備良好 剣山荘~一服剱 ザレ、整備良好 一服剱~前剱 浮き石多い、岩場あり、鎖あり 前剱~剱山頂 有名な難所、濡れているときは特に注意 雷鳥沢キャンプ場~一ノ越 所々わかりにくい。雪渓が使えなくなっている場所でのルートロスあり 一ノ越~ザラ峠 雪渓あり、一部梯子あり ザラ峠先~五色ヶ原山荘先 木道 五色ヶ原山荘先~スゴ乗越小屋 整備良好だが、濃霧時は印に注意、時に岩あり、だんだんと樹林帯となる スゴ乗越小屋~間山 整備はまずまず。森林限界にくるとガレが混ざる 間山~薬師岳 岩がちとガレ 薬師岳~薬師平 ガレ 薬師平~薬師峠 沢沿いの歩きにくいゴロゴロ岩を歩く。増水時注意 薬師峠~北ノ俣岳~黒部五郎 前半木道もある。基本整備の良い道のはずが、雨天後のせいか、少し石、岩がごろごろとあり。黒部五郎へはガレの登り 黒部五郎~カール~黒部五郎小舎 小川を横切ったり、濃霧時は注意を要するが印がまめにあるのでたどれば良い。最後は樹林帯を横切る。 黒部五郎小舎~三俣蓮華岳 整備の良い道。 三俣蓮華岳~丸山~中道~双六小屋 整備の良い道 双六小屋~西鎌尾根~槍ヶ岳 樅沢岳へはガレ、その後はだんだんと岩場が出てくるが整備良い道。千丈乗越からはガレの登り。穂先は岩場と梯子 槍ヶ岳山荘~飛騨乗越~槍平小屋 ガレの下りと整備された登山道 槍平小屋~新穂高温泉 白出沢出合までは整備された登山道、ほぼ水平で沢を横切るので増水時注意。その先は林道。 |
予約できる山小屋 |
|
写真
装備
個人装備 |
靴 1
ザック 1 90L アークテリクス Bora 95
ヘッドランプ 1 予備電池含む
レインウェア・ザックカバー 各1
水筒 2 プラティパス2L+ペットボトル500ml 3本
地図・コンパス 各1 エアリア(立山・剱+槍・穂高)
行動食・通常食料 適宜 2日分相当予備
防寒着 1 TNFの化繊のジャケット
グローブ 1 予備2
サンバイザー 1
タオル 2 ファイントラック ナノタオル+モンベル 化繊バスタオル
ゴミ袋 4 大2 小2
常備薬・非常用薬 1 ロキソニン、バナン、ロペミン、ダイアモックス、ガスター、リンデロンVG軟膏
ティッシュ 1
保険証 1
マッチ 1
ナイフ 1 ツールセット
日焼け止め 1
予備衣料・スタックバック 1式 下着2揃い、半袖T2枚、スラックス1枚、スキンズ長袖+タイツ
コンロ・食事道具・ガス 1式 ガス缶 大1
ストック 1 ブラックダイアモンド Zポール ウルトラディスタンス
携帯電話 1
財布 1
お風呂道具 1式
ウェットティッシュ 1 アルコール入り
テント 1式 MSR ハバHP
シュラフ 1 7度対応ダウンシュラフ+ゴアテックスカバー
テントマット 1 サーマレストZライトソルS
ランタン 1 ブラックダイアモンド オービット
ロールペーパー 1
サンダル 1 クロックス
時計 1 プロトレックRey
歯ブラシ 1
|
---|
感想
けだるい風と蝉の声を聞きながら、何度目かの洗濯機の音を聞く。丁寧に洗った山靴は、少しシミができている。まだ乾ききるには時間がかかりそうだ。
体と心が慣れるのにもまだもう少し…。
ギリギリ一杯で仕事を終え、ギリギリの電車に飛び乗る。今までで一番大きな荷物に、平らな道を歩くだけで息が上がりそうになる。できるだけ乗り換えの少ない経路でまるで人目を避けるように集合場所へと向かう。
集合場所に着いてさえ、よいしょと荷物を下ろすのはつい端の方。普段は目が回るように忙しくとも、この一週間だけは何があっても呼び出さない、その不文律がある。そんなことが許される職場はそう多くはないのだろうか。さらに気兼ねするような家族があれば、またのんきな旅にでるわけにもいくまい。つまりは贅沢なのだが、なぜかコソコソとしてしまうのはなぜなのだろう。
何度か利用したバスの旅、今回もあまり変わることなく登山口の室堂へ。あたりはガスに覆われ、小雨も降っている。ここで急いで動き出すと、私の場合はまずいのだ。大体2800メートル付近にある高度障害の壁にぶつかることになる。去年はすっかり忘れ果てて出立し、これでもかと言うほどの障害にぶつかった挙げ句に最後まで引きずってしまった。今回はその轍は踏むまいとブレーキをかける。朝ご飯を食べなおし、周囲をいろいろとうろうろ動き回る。駅なのでうろうろするにはちょうど良い。登山届けもポストに投函すると、ゆっくりと身支度を調えた。
階段を上がって外に出れば、記憶にある景色が広がっていた。
あのときは修学旅行で6月、夏の制服で来てしまった人たちは吹雪にさらされるはめになり、景色は全くなしのほぼホワイトアウトであった。
そして今回もまたガスの中に景色は隠されていた。
幸い小雨で徐々に上がりつつあった。当初の予定は立山を縦走しながら剱沢キャンプ場に向かう、としていたのだが、なにせ予報がよろしくない。午後から本格的な雨なのだ。さらに悩ましいのが翌日の午前に天気が保つかもしれないという。
雨なら剱岳をあきらめようと考えていた私の心は揺れに揺れた。
チャンスがあるのなら、という心と、ひどい天候に捕まる前に南へ下って穂高方面への可能性を延ばそうという気持ちがぶつかった。
出した結論は、可能性があるのなら、行ってみよう、であった。
無理もせず、ちょうど展望がなく立山に呼ばれていない気がしたので、そのまま剱沢へと向かう。荷物は重く、足はゆっくり。それでも進むものである。目的地に着いてテントを立てて一段落したところで雨が落ちてきた。しばらくするとそれは大粒となり、道は川に、山には雷が轟き渡った。テントの下にも小川ができ、できる限りの対策をする。なぜか天井から水滴が漏れるので見上げると、シーリングが劣化してぽろぽろになっていた。
防水スプレーなどは役に立たない土砂降りの雨の中、仕方なしに天井の小物入れに日本手ぬぐいのアジサイ柄のハンカチを広げた。あまり笑えない事態のはずだが、かわいらしく風流だ。まあ、なんとかなるだろう。
雨の収まる気配のないまま夕飯を作り始める。冷凍のペットボトルに挟んだ冷凍肉を焼き肉にして、ジュウジュウと言わせる。ハーブ入りの塩こしょうをまぶして生米から炊いたご飯で頂いた。おいしい。気づけば高度障害も起きていない。頭痛もなければ食欲低下もない。続いて生卵で卵かけごはん、さらに野菜のスープを作ってしっかり食べる。
身支度を調えたらあっという間に寝てしまっていた。
朝になった。雨は降っていなかったがガスが剱岳の山頂を包み込んでいた。
予報では少し晴れるかもともなっていたが、降っていないだけよい。とにかく身軽にして出発。剣山荘から出発するグループが沢山おり、その渋滞に前剱まで引っかかりながら進む。しばらく行くと金属の橋と向こうに岩盤をへつる鎖場が見えた。
風が吹き通り、ぞっとする。少し待って後続の2名が進んで、風がまだよくなってから進む。やはり鎖場よりもこの橋が怖い。鎖場は取り付いてしまえば足場もあるし幸いガスの中で高度感は全くないので怖さは少ないのだ。ガスで見えにくい目印を目をこらしながら探して進む。数々の鎖場もあり、刺激になってあっという間に山頂が近づいてきた。
カニの縦ばい、有名な難所だ。鎖、というよりその固定してあるボルトに結局は頼ってしまうしかない。横ばいもそうであったが、これを長次郎はなにもなしに昔の装備で通過しているはずなのだから、凄まじい人だ。そんなことを考えながら比較的平らになった山頂への道を進んだ。15人ほどであろうか、座ったり周囲を歩き山頂でくつろぐ人の姿があった。
天候もいつまで保ってくれるか分からないので早々に山頂を後にする。
今度は横ばい。足下を切ってあるのでそれに沿わせて手は鎖かボルトで体のバランスをとる。それが終わってもまだまだしばらくの難所である。飽きることはなくあっという間に戻ってきてしまった。
テントに戻れば、もう昼前である。つい昼食を優先したら、予報通りに雨が降ってきた。それもまた強い。少し待ってみたものの、上がる程でないかと判断して、どうせ雷鳥沢キャンプ場までなのだからと雨の中の撤収と決め込んだ。
大型ザックに適当にとにかく詰め込む。背面に水抜きのあるポケットがあるのでそれにテントを詰め込むと完了である。重くずしっとしたザックを背に、ゆっくりゆっくりと坂を登る。雨は徐々に上がり、雷鳥坂で上がってきた。雨上がりの風はそよそよと服を乾かしていった。
明日は雨予報、梅雨前線上に低気圧が発生し、通過していく。またしても大荒れの朝を迎えるはずである。テントを張る位置を吟味して、今日は周囲に掘りを作る。
そして夕食である。テントの前室でコロッケを作る。上手くは作れないが、おいしく感じる。ご飯がすすむ。
明日に思いを馳せて、眠りにつく。周りではまだ学生が騒いでいた。
雨音とともに目を覚ます。予測通りの強い雨と風。予報をまずは最終チェック。
剱岳山頂の予報で12時に毎分17メートルの強風。雨も強くかなり行動は厳しい。突風が吹けば20メートルを超えるのは目に見えている。つまりは自分の行動限界にほぼ近い。
まずは稜線に上がって、体調と相談することにする。
雷鳥沢のキャンプ場を発つと、学生達もすぐに追いついてきた。どうやら同じ行動計画らしい。彼らに道を譲って慌てずに登る。道はすっかり沢になり、小さい滝を作っている。雪渓も残る道で一部経路を外してしまうが、とにかく登る方向は分かっているので慌てふためかず風雨の中を一定ペースで進む。
一ノ越に上がると一気に風が叩きつけてきた。このまま進むのには気力が一杯ではない。さらに昨日楽しく飛んで跳ねていた影響で足に筋肉痛が軽く走っている。
これではどうにもならないと、朝早いが停滞を決め込む。室堂に戻ることも考えたが、可能ならばスゴ乗越までの長めの行動を考えると一時間のアドバンテージは捨てがたいと考えた。
とにかく濡れてしまった装備は乾かし、のんびりと過ごす。昼寝の間も、雑誌を読む間も強い風と雨が山荘の窓をたたいていた。
次々と登山者が到着するが、この天気である、比較的空いていた。のんびりと夕食を頂くと、テレビでは豪雨の話題。明日はどうなのだろうか。
同室のパーティーも同様の縦走計画だったが、一旦明日は撤退とのこと。私はとにかく進むことにする。今日ほどではない風予報が後押しした。
朝は誰もいない食堂で朝の雑炊を作る。静かに済ませて出発しようとすると、山荘のスタッフから気を付けて、と声を掛けていただく。
とにかく気を付けて、事故なく進まなければ。礼をして今日の歩みを進める。
昨日よりもおとなしくなった雨と風がそれでも叩きつけてくる。周りはガスが渦巻いている。それでもそこに稜線があるのが大切なのだ。
まずは稜線を登り、五色ヶ原への分岐を曲がる。ここから先はしばらく簡単なエスケープルートがなくなる。唯一は五色ヶ原からの黒部湖のみ。心を引き締める。
道は時に雪渓の縁を、雪渓を横切って進む。その縁取りは春の花。景色を遮る靄もここまでは届かない。
東西に尾根を巻くたびに、風も強弱する。風の前面に立つときには一気に、足をとにかく止めずに進める。ザラ峠では突風で体が振られる。昨日に通ることを考えればなんと言うことはない。気温も高めだ。
五色ヶ原の手前から木道になる。周囲の湿地は晴れていればきっと素晴らしい絶景なのだろう。心の絵を描いて慰める。
山荘にお手洗いを請う。山荘内側とのことで快適に使わせていただいた。話を伺うと、使用料はないという。それではあまりに申し訳なさすぎるほど、可愛いバッチを一ついただく。
山荘から踏み出して、さらに越中沢岳を目指す。水滴がしたたる花を目の栄養にして足を進める。少しだが雨は弱まってきた。風は相変わらずだが。
ふと道の先に目線をあげると、雷鳥がとことこと歩いている。しばし、緊張がほぐれる。
雨は上がり、ついにガスが晴れてきた。わずかに見える山肌、緑がうれしい。
足はそれに反して重たい。さすがに疲れてきた。樹林帯をジリジリと進むと今日の終着点、スゴ乗越小屋に到着した。樹林の中の昔ながらの小屋。なんとなく、去年の熊の平や高山裏を思い出す。
今日の同宿のテントは私の他に2人。いずれもソロ。女性は同じように下山の新穂高は決めているが、どうするか考え中とのこと。
夕方に着いた男性は、なんとここから薬師をピストンして五色が原まで戻るとのこと。いろんな方がいるものだと感心しきり。
初めての晴天の朝。今日は薬師岳へ。向かいの裏銀座の山並みも誘う。赤牛岳の尾根の張り出しが主張してまるで牛の肩のよう。
くう、くうと、声がする。茂みのなかに目をやるとそこに雷鳥が。ここは静かで住み心地はよいのだろう。
森林限界を再び超えると絶景が広がっている。雲ノ平から先の山まで、そして歩いた稜線が気持ちを浮き立たせる。左手に薬師岳のカール群をのぞきながら歩みを進める。足下はガレと岩。小鳥が羽ばたいていく。
薬師岳の山頂は静か。参拝してから景色を楽しむ。風が強く、遠くの山の上に風がつくる雲の芸術品が見える。楽しくなる。
そういえば、昼ご飯がまだであった。新しい薬師岳山荘ででうどんを頂く。今回入れ忘れたので気に掛かっていた一品だ。
ごろごろの沢を薬師峠のテント場へ。
テント場には水が豊富。テント場の管理人さんは太郎平から来てくれる17時まではいてくれて、冷え冷えのビールとCCレモンを売ってくれる。
みんな笑顔で飲んでいる。
明日の天気はまたよろしくはないようだ。
今晩は雨と西風が強そうだ。茂みの東に隠れるようにテントを張って、シーリングが傷んだテントの内張と外張りの間にビニール袋を広げておく。
案の定、あっという間に雨になってきた。今日はお好み焼き。なかなかうまく焼けないのはご愛敬。
夜はやはり雨は降り続き、薬師峠に下りてきた沢はゴウゴウと音を立て続けていた。
朝は雷と大雨の朝。さすがにテント泊の人たちはほとんど動けない。水場とトイレへの道も川になっている。水場のホースも外れたらしく、後では水が取れないとのことであった。
雷が収まって雨が少し収まってきた。さて、どうするか。朝の7時半ごろ。
当初の薬師沢への道は連日の雨と夕べの雨で下る気はしない。選択肢は黒部五郎へ。6時間みて少なくとも日中にはつくだろうとの甘い考えで急いで撤収。
隣のテントのペアも同様に行くとのこと、スゴ乗越からの女性は考え中。とりあえずの別れを告げて、出発する。
ゆっくりとしか足が進まない。昨日あたりからの左の土踏まずの痛みが引いていない。マメになっているのはわかっていた。さらには左右の親指内側と母指丘。歩いて鍛えていない証拠なのだからしかたない。とにかく悪化させないことだ。
それにしても歩みが遅い。コースタイムを大幅に超過している。このペースだと本当に夕方だ。少し焦りの気持ちはあるが仕方ない。
先行する男性ソロの存在が支えになった。大丈夫、大きくは遅れていない。雨も上がった。そして昼になり、ガスが晴れて沢の源頭の姿が見える。ここはとても有名らしい。まさに天国の終わり方になるのだろう、そんなことをつらつらと考える。
ガスが切れて、立派な山容の黒部五郎が姿を見せた。少しだけ圧力を感じさせるがそれでいて優しげ。
ぐんぐんと登って肩まで達する。ここで大荷物を降ろしてほぼ空身で山頂まで飛んでいく。体はこんなに軽かったのか。久しぶりの感覚を楽しむ。
黒部五郎のカールの中は大きな庭園。花が咲き誇り、小川がのどかに流れ、樹林を横切って黒部五郎の小屋に着いた。小屋前のお客さんが拍手で迎えてくれた。気恥ずかしいど、とても嬉しく、「ついたー」っと、本音が口をついて出た。
テントを張り、装備を乾かす。生のキュウリをほおばって、一息。
今晩は鍋。すき焼き風の味付けで頂く。明日はどうするか。双六では短い。槍ヶ岳、がんばってみよう。
横になるとあっという間に寝てしまった。一番の熟睡した夜であった。
夜が明けると雨は降っていなかった。とにかく片付けて出発。
三俣蓮華への登りを30分で雨が落ちてきた。ガスにもいつの間にか包まれていた。
足のまめは相変わらずだが、とにかく気を付けて足を置くことにする。
三俣蓮華の山頂までは快調。何となくだが、近くにまで来たことがあるということは安心感をもたらすのだろうか。前回の双六岳の赤線ときれいにつなげたいので中道まわりを選択する。
晩秋とは異なる景色を眺めながら、双六小屋まで到着する。少し休憩を取らせてもらい、気合いを入れ直す。再び歩いたことのない道へと踏み出す。
15年ほど前に眺めて以来、歩きたいと思った稜線。ようやく実現しようとしている。それも思いも寄らない方向から、思いも寄らない日程で。
大分荷が軽くなったからか、今日は比較的快調でコースタイムと少しくらいで歩けている。自分の決めたタイムリミットもちゃんとクリアしてきている。
雨がついにあがり、ガスも晴れてきた。ばっと目の前に飛び込んできたのは硫黄尾根の特異な山容だった。つい声が上がる。硫黄の香りも風に乗ってきた。目をこらすと、だんだんと険しくなる道の先に、ギザギザした尾根が見え隠れする。北鎌だ。そして、その向こうに、なんとなくだが壁のようなものが一瞬見えた。
そして、ついにガスが晴れて、天に突き刺す槍の穂先が現れた。
なぜだろう。その時に鳴り響いたのは、クラッシック曲、華麗なる円舞曲か結婚行進曲か、そのあたり。とにかく、心は軽かった。
千丈乗越からは、ザレ。ここに来て新しく踵に痛みが走ることに気づく。他のマメをかばっているうちにひどくなったらしい。
つま先に乗ることが左足はできない。しかたないのでロボットのような歩行で登っていく。おかげで呼吸は苦しくはない。
ゆっくりではあるが、久しぶりの槍ヶ岳山荘に着いた。平日にもかかわらず沢山の人であふれている。テントの受付を何よりも優先させる。場所は、端。大丈夫なんだろうかと思うような場所だが、とにかく行ってみるときれいに区画されていてそこまでの不安はない。できるだけがっちりと固定して穂先に向かう。
ここで、実は脚力を使い果たしていることにようやく気づく。
以前に登ったときは、ほぼ空身で元気なまま、飛んで登った印象しかなかったが、体が重い。左足のつま先にもできたまめと踵のマメのせいでまともな登り方ができないのが拍車を掛けてなんとかえっちらおっちらと登った。
山頂はのんびりとした雰囲気で絶景を楽しむ。来た方向を眺めて、その距離感を感じて感傷に浸る。つい、じんわりと涙がでそうになる。
雲海の天国を満喫し、本日の宿から夕方の風景を楽しむ。今晩は星空も楽しそう。
そう思いながら、またしても寝付く。
夜中に目が覚める。少し肌寒い。気温は8.3度。道理でである。ついでにテントから頭だけ出して空から降る星空を眺める。あまりの数に、天の川しか分からない。
満足して再び寝息をたてる。
朝はいつものように3時に起床。ゆっくりご飯をつくり、日が昇るのを撤収しながら鑑賞する。テントの木札を返し、雲海上の晴天を名残惜しく飛騨乗越へ。
ぐんぐんと高度を下げ、沢沿いの道を新穂高に向かった。だんだんと空気は夏へと向かった。
***********************************************************
食事リスト
1日目 朝 途中のコンビニでグラタン、室堂についてからおにぎり2個
昼 おかずパン
夜 焼肉、卵かけごはん、野菜スープ
2日目 朝 パンと肉そぼろ入りスクランブルエッグ+スープ
昼 野菜の具入りインスタントラーメン(正麺・塩)
夜 コロッケ+スープ(青森さんのスープ・洋風)
3日目 朝 たまご雑炊
昼 インスタントラーメン(ラ王・しょうゆ)
夜 小屋の食事(ホワイトシチューなど)
4日目 朝 雑炊(オニオンスープと卵)
昼 行動食兼用
夜 アルファ米+天野フーズのチキンカレー
5日目 朝 野菜雑炊
昼 薬師岳山荘で肉うどん
夜 お好み焼きとお味噌汁
6日目 朝 マジックパスタ
昼 行動食兼用
夜 すき焼き風鍋+スープ
7日目 朝 卵スープ雑炊
昼 行動食兼用
夜 インスタントラーメン(正麺・ちゃんぽん)+スープ
8日目 朝 オニオンスープ雑炊
昼 下山していろいろと…
komadori さま
グレートジャーニージャマイカ
今宵、へべれけ。。。
なのでコメするとメタメタになりそであぶないので、、、
明日にでもじっくり拝見して再度
しかし、2/3はメシ類のような気がする
下室はテントとシュラフ
上室の2/3は食事関連
長期化するとやっぱりちゃんと食べられるものを持っていきたくなるから大いにかさばります
基本、食いしん坊なんですねぇ
komadoriさん、お早うございます。
8日間もよく頑張りましたねー。大した精神力だと思います。小生は最大で3泊しかやったことがなく、雲ノ平周辺一週間とか夢想しています。
課題は食事でして、高所でインスタントラーメンを食べると吐き気がしちゃうんですよ・・・不思議。メニューリストを見習って、ちょっと研究してみたいと思います。
今年も派手な・・・すごい・・・とんでもない
天気には恵まれなかったようですが、
ルートを吟味しながら、ほんとによく歩ききったと思います。
しかしまー、この記録のルート図は地図帳尺度ですよね
ほんとにとんでもない山行だわ
ついでに記録もとんでもない長さで、読み切るにも苦労しましたよ
色々とんでもなくごくろうさまでした
メニューが役にたつと嬉しいです
私も去年の山行では後半にアルファ米もマルタイのラーメンも体がうけつけなくなりました
それなのに最後に泊まった小屋の食事は全く問題なく入ったっという
私にとって、食事はとっても大事
でも、軽量化も捨てがたいので、乾燥食材でできるおいしい食事を追求してみたいなと思います
あ、北アルプスの山小屋だと牛乳が手に入るので、ホワイトシチューなんかも作れそうだと思いました
タイトル読み間違えて、ドリップ山行って読んじゃった(笑)
ん? コーヒーはドリップしてないぞっと
今回は、誰よりもゆっくりと歩く、がコンセプトだったのでコースタイムよりかなり遅いし、そういう意味では地味~な記録です
距離はありますけど、標高差は大したことないし
ま、普通な脚力しか持ち合わせてないし、どちらかと言えば山旅のための山行でしたしね
まだまだ行ってないところが盛りだくさんなので、今度いかがかな?
あ、長文はいつものことってことで
コメントありがとうございます!びっくりと共に嬉しかったです。
Komadoriさんの見事な決断に背中押され、
ゴローに到着できて良かったです。
やまレコははじめたばかりで、
頂いたコメントの返信をどこに返すのかわからず、自分のページでコメントしちゃいました。
それにしても、見事な縦走ですね。素早い行動力にはキャリアを感じます。
私もKomadoriさんに憧れて、テントで独
たくなりました。
あの日、本当に歩いて良かったと思いながら幸せに歩けました
予想より時間がかかってしまったのは読みが甘かったのですが
キャリアは中断があるので長く見えますけれど、実際はここ数年ばっかりです
コメントはコメントが入ったところに返すので大丈夫です
自分がしたコメントはマイページからたどることができます
テントでのんびり気ままに縦走もたのしいですよ
もちろん、一緒に、は違う楽しみがありますよね
正直うらやましくもありました
またどこかで会えたらと思います
北アルプス、こんな
大縦走してみたい。
本当に羨ましいです!!!
高度障害、靴ずれ、雨など
大変だったと思いますが、お疲れ様でした。
レコに拍手どうもありがとうございました。
まさに大縦走ですね、読んでてただただ感心するばかりです
僕もいつかそんな縦走できる日を夢見てますが・・・休めないかなあ
今回は、高度障害は薬で抑え込んじゃいました
なのであまり困らずに忘れちゃってましたよ
剱岳に出発する頃にはすっからかんに頭の外
雨と靴擦れは、まだまだ未熟なのが露呈しましたが
それも長期縦走の醍醐味かと
raichouさんの脚力があれば、きっとさらに充実した縦走ができると思いますよ
精力的な山行、本当に頭が下がります
毎週行かれるのも、それもまたうらやましい
私もしばらくは長くの休みが取れないのでスキマ、スピード山行にならないと
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する