(鳥倉登山口BS)→三伏峠→荒川中岳→赤石岳→聖岳→上河内岳→光岳→(畑薙臨時P)
- GPS
- 192:55
- 距離
- 73.6km
- 登り
- 6,589m
- 下り
- 7,439m
コースタイム
新宿 0800
↓ 京王バス
松川IC BS 1220
↓ 徒歩
伊那大島 1300 1425
↓ 村営バス
小学校入口BS 1515
↓ 徒歩
赤嶺館 1520
8月25日(日) DAY-1
小学校入口BS 0738
↓ バス
鳥倉登山口 0838 0848
↓
塩川林道三叉路 1141
↓
三伏峠小屋 1212
8月26日(月) DAY-2
三伏峠小屋 0506
↓
烏帽子岳 0601 0608
↓
前小河内岳 0652 0658
↓
小河内岳 0740 0750
↓
板屋岳 1009
↓
高山裏避難小屋 1056 1116
↓
荒川ガレ場下 1345
↓
荒川・前岳 1541 1546
↓
荒川・中岳 1603
↓
中岳避難小屋 1608
8月27日(火) DAY-3
中岳避難小屋 0614
↓
荒川小屋 0728 0804
↓
大聖寺平 0833 0840
↓
小赤石岳 1023 1036
↓
赤石岳 1109 1231
↓
百間平 1357 1431
↓
百間洞山の家 1513
8月28日(水) DAY-4
百間洞山の家 0507
↓
大沢山・中盛丸山鞍部 0616 0621
↓
中盛丸山 0645 0648
↓
小兎岳 0740 0750
↓
兎岳 0847 0910
↓
聖岳 1146 1211
↓
奥聖岳 1223 1229
↓
聖岳 1247 1302
↓
小聖岳 1349 1351
↓
薊畑(あざみばた) 1435
↓
聖平小屋 1505
8月29日(木) DAY-5
聖平小屋 0530
↓
南岳 0714
↓
上河内岳 0759 0801
↓
茶臼小屋分岐 0911
↓
茶臼岳 0935 0946
↓
仁田池 0959
↓
希望峰 1022
↓
易老岳 1202
↓
光小屋 1449 1515
↓
光岳 1537
↓
光石 1552
↓
光岳 1611
↓
光小屋 1628
8月30日(金) DAY-6
光小屋 0524
↓
易老岳 0714
↓
希望峰 0855
↓
茶臼小屋分岐 1000
↓
茶臼小屋 1010
↓
横窪沢小屋
↓
ウソッコ沢小屋 1322
↓
ヤレヤレ峠 1430
↓
畑薙大吊橋 1455
↓
畑薙ダム 1607
↓
臨時駐車場 1630
↓ 車
白樺荘 1650
8月31日(土) DAY-7
白樺荘 0905
↓ 車
井川駅 0945 1035
↓ 大井川鐡道 井川線
千頭駅 1222 1242
↓ 大井川鉄道 本線
金谷駅 1357 1409
↓ JR東海道線
静岡駅 1440 1448
↓ JR東海道新幹線「こだま」
品川駅 1609
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
|
写真
感想
8/24(土)DAY-0 移動日
新宿の京王バスターミナルから、8時丁度の飯田行きの高速バスに乗る。乗客が多いのか、1号車、2号車と増発し、さらに臨時発着場を使っていた。とは言え、予報によれば思わしくない天気の週末なので、渋滞は無いだろうと甘く見ていたのが大誤算で、いきなり初台から渋滞に巻き込まれ、相模湖を過ぎる辺りまで遅々として進まない。その後も、バスの運転手は、遅れを回復する気は全くないようで、途中の双葉SAでトイレ休憩もたっぷり取り、結局、松川ICでバスを降りたのは12時20分ぐらいになってしまった。このため、12時に松川ICを出発する鳥倉登山口行きのバスを逃してしまった。
しょうがないので、次の大鹿村まで行く村営バスに乗ることにしたのだが、2時間待つ必要がある上に、バス停の場所が不明で(松川ICのバス停に物凄く判り難い、いい加減な地図が貼ってあった)、地元の人に聞いても判らず、結局、伊奈大島駅まで約30分歩く。幸い曇天で、風も涼しく、ついでに下り坂だったので良かったが、こんなことなら、やはり確実なJRにすれば良かったと反省する。
伊奈大島駅の登山者用ベンチに座って、双葉SAで買ったパンを食べ、1時間20分程待つ。長かった。駅は、町の中心から外れているようで、周囲に店は見当たらず殺風景だった。
大鹿村行きのバスは、定刻より数分遅れて出発。他には乗客1名。大島の町を抜け川沿いに登って行く。小渋ダムを越え、とても立派なトンネルを幾つか抜け、鹿塩(かしお)の集落でUターンし、その先で塩川への道に入る。終点一つ手前の「小学校入口BS」で下車。
今宵の宿となる「赤嶺館」は、バス停のすぐ先だ。同じBSで下車した同乗の人も、同じ宿だった。赤嶺館は、とても小奇麗で気持ちの良い宿だ。荷物を置いて、少し休憩し、その後、村内を少し探索する。山間の落ち着いた感じの村だ。歴史を感じさせる小渋橋からは、晴れていれば赤石岳の眺めが良いとのことで、ここから赤石に登ったウェストンの新しい碑が建っていた。宿に戻り、風呂に入って、夕食を食べ、9時頃には床に着く。新しく、綺麗で、雰囲気も良く、夕食も美味しい赤嶺館は、とても良かった。このコースを採るチャンスがあれば、また利用したい。
天気予報では、明日は雨。
8/25(日) DAY-1 鳥倉登山口→三伏峠小屋
朝、目が覚めると、小渋川のせせらぎの音に交って、雨音のようなシトシト音が・・・カーテンを開けると雨!しかも、結構降っている。天気予報によると、昼ぐらいまでは降っているとのこと。「止まないかな〜」と思いながら、美味しい朝食を頂き、身支度をする。傘を貸してもらって、BSで鳥倉登山口行きのバスを待つ。数人しか乗っていなかったと思うが、バスは2台でやってきて、誰も乗っていない2号車に、同宿だった方と乗り込む。
雨は、止む気配はなく、どちらかと言うとだんだん激しくなって行く。バスは、晴れていれば遠望が利きそうな林道をグイグイ登って行く。駐車場のところでゲートを越え、終点の鳥倉登山道入り口に着く。霧のため景色は見えない。登山口に、明日は、三伏峠小屋は、「地元の中学校の貸し切り」などと書いてある。明日にしなくて良かった!
登山届を出して、いよいよ登り始める。相変わらず雨は降っている。綺麗な落葉松林の中を、ジグザグに急登する。三伏峠までの距離(?)が、1/10等と書いた看板があるので、状況が判って心強い。
それにしても、10年使っているレインウェアなので、性能が劣化しているのか、ベンチレーションが悪く、蒸れて汗が噴き出てくる。相変わらず雨は止む気配が無い。十分に汗が出た頃、傾斜が緩んで、山の北面をトラバースするようになる。雨に濡れた木々や苔の緑がとても綺麗で、いかにも美味しい水の南アルプスらしい。所々に丸太の階段や桟道がある。雨にぬれて滑りやすいので注意が必要だ。距離を示す看板が、5/10を越えると、気持ちも楽になる。
汗をかかないように、30分毎に休憩を入れ、ゆっくり歩くのだが、汗で次第に内側から濡れて来る。休業中の塩川小屋からの道が合わさる三叉路に着くころには、汗でびしょぬれだ。なお、塩川小屋への道は、崩落のため通行止めになっていた。あまり長く休憩していると、濡れた服が冷えて寒いので、三伏峠への最後の登りにかかる。8/10、9/10と過ぎて行く。気持ちの問題かもしれないが、最後の9/10から小屋までが遠かったが、「三伏峠小屋まで、あと200歩」の看板に力づけられる。
三伏峠小屋に着く頃には、かなり本降りとなってしまった。宿泊の手続きをして、汗でぐっしょり濡れたので、下着から、ズボン、上着まで、全て着替える。十分に絞れるぐらいだった。小屋の人の話では、今年は異常気象で、例年よりも5度くらい気温が低いとのことだ。先日は、雹も降ったらしい。今日も寒い1日で、フリースを着て、ダウンジャケットを着て、ズボンの下には厚手のタイツを履いて、人心地ついた感じだ。
丁度、お昼時だったので、熱いうどんを食べ、同宿の方々と話をしたりして、夕方まで過ごす。天気予報と違って、昼を過ぎても雨脚は弱まらず、時々かなり激しくなり、夕方まで降り続いた。昨日、赤嶺館で同宿だった方は塩見小屋まで行くとのことだったが大変だったんじゃないかな?ストーブ2つを使った乾燥室は、とでもパワフルで、夕食を食べ終わる頃には、ぐっしょり濡れていた衣類もすっかり乾いていて、とても助かった。この日、山中で足をねんざした方がおられるようで、奥さんが救助隊の方達と無線で連絡を取り合っていた。
8/26(月)DAY−2 三伏峠小屋→中岳避難小屋
雨は、昨夜の内にすっかりあがり、三伏峠小屋の前から見る、朝焼けの空を背景にした塩見岳の姿が、なんとも凛々しい。今日は、荒川・中岳までの長い行程で、天気がよさそうなのは有りがたい。
まずは、朝の気持ちの良い森の中を行く。なだらなか道だ。すぐに、塩見へ行く道を左に分ける。しばらく行くと、鹿除け柵のある原っぱに出て、緩やかに上って行く。崩落した崖に突き当たり、崖沿いの道になり、暫く行くと烏帽子岳の懐の樹林に入る。樹林から出ると、山頂は近い。
烏帽子岳山頂は、眺めが良い。北アルプス、中央アルプス、塩見、荒川、小河内、甲斐駒、仙丈等が良く見える。
烏帽子からは、右側が崩落した、眺めの良い稜線を行く。風も適度に冷たく、適度に強く、とても心地よい。遥か前方には、緑のなだらかな小河内と避難小屋が見えている。前小河内岳を過ぎ、崩落沿いの道から、低木の中の道に変わる。ゆっくり登って行く。三伏峠小屋の上空と思われる辺りでは、昨日の捻挫した人を救助するため、ヘリコプターが活動していたようだ。
小河内からも、眺めは良い。空気の層が見えるような富士山が、ちょっと印象的だった。荒川・中岳への、これからの道筋も確認できる。小休止後、小河内を発つ。
小河内から急斜面を下り、すぐにハイマツ帯に入り、やがて樹林帯になる。この樹林帯は、荒川・前岳への最後の登りにかかるまで、ずっと続く。持っていたGPSが示す大日影山は、テントが一つ建てられるくらいの広さの、木に囲まれた小さな広場で、看板等は無かった。大日影山から、少し下って行くと、すこし開けた台地に出る。ここで登山道は、左に90度向きを変える。その先には、やけに尖った山が目につくが、あれが板谷岳だろうか?再び樹林帯に入り、左に木々の間から小河内を見ながら進んでいく。次第にきつい登りになる。やはり、あのトンガって見えた山が板谷のようだ。登りきったところに、小さな標識があり、板谷岳である事を示していた。木々に囲まれた山頂で、展望は無い。
板谷岳から樹林の中を下り、崩壊地脇に出たり、樹林の中に入ったりしながら下って行く。ガスが出ていて、あまり見通しは良くなかった。しばらく行くと、高山裏避難小屋に着く。そこで、三伏峠小屋で作ってもらった弁当を食べ休憩する。高山裏避難小屋からは、しばらく、テント場の中を行く。森の中の気持ちがよさそうなテント場だ。樹林の中を少し登ると水場に出る。冷たくて美味しい水をたっぷりと補給する。水場からも、樹林の中を行く。やがて、晴れていれば、左手の眺めがよさそうなところに出てきた。小河内を出てから、ずっと樹林の中で景色が良くなかったので、少し気分が良い。ここまでは、あまり急勾配ではなかったが、ここから、いよいよ荒川・前岳へ向けての急勾配になるので、休憩を入れる。
いよいよ、標高差500m以上の急登だ。Very Hard!30分毎に休憩を入れ、ゆっくりと登る。すっかり曇天になってしまい目指す荒川の稜線は雲の中で、どれ位登るのか、先が見えない状態だ。荷物が重い。低い樹林の中を、頑張って、登って行くと、前岳のがれ場の下に出る。相変わらず、霧で稜線は見えない。
ジグザグに、がれ場を急登して行く。あと250mぐらいの標高差の辺りまで来た頃、霧が切れて稜線が見えた。岩場に張り付いた緑が、しっとり湿って美しい。稜線は、思ったより近くに見える。もう少しでがれ場は終わりそうだ。振り返ると小河内が見えそうだが、そこはまだ霧の中で、麓しか見えていない。時折、日が射し、霧も切れてきている感じだ。
再び、霧に曇ってしまった中を登って行くと、荒川の崩壊地の左手に出る。雲から出たり、隠れたりする赤石の眺めが良い。崩壊地を右に見て、最後のがれ場を登って行く。左手に、中岳と避難小屋が見えてくる。前岳まであと少しだ。左手を振り返ると、雲が切れて、遠くに塩見が見え、その手前に小河内等、今日、縦走してきたコースが見える。さらに登ると、曇天にもかかわらず富士山が迎えてくれた。
崩壊地ギリギリの淵を通って、前岳に着く。曇天の下、崩壊地の向こうに、素早く動く霧に見え隠れする赤石の長大な尾根が、ごつごつした黒い背骨のように見えて印象的だ。ふり返ると、形の良い悪沢が構えている。その左手遥かには塩見が、やはり霧に見え隠れしている。そして、塩見と中岳の間、雲海の上に顔を出しているのは間ノ岳か。ひと登りで中岳避難小屋に着く。
夕食を用意し、管理人さんや、同宿の人たちと話をして過ごす。管理人さんは、小屋のノートパソコンから、アマゾンに注文したHPのプリンタを、荒川小屋から担いで来たばかりで御機嫌だ。とにかく保存環境が、素晴らしく良いとのことだ。今や、山も下界と同じ情報社会のようだ。また、高山裏の水場から一緒で、とても体力がありそうな方は、ネパールから見えているとのことで、ヒマラヤでガイドもしているとのことだった。
それにしても、高山裏からが遠かった。高山裏までは、大凡、標準タイムできたが、高山裏から、がくんとペースが落ちてしまった。
夜、屋根をたたく雨音が激しく、トイレに起きた時は、霧の中だった。明日の天気はどうかな?
8/27(火) DAY−3 中岳避難小屋→百瞭胸海硫
朝、目を覚まして外に出ると、霧で白い世界だ。朝食を用意し、食べていると、少しだけ青空が見えたりしたが、またすぐに霧に閉ざされてしまう。
霧の中、中岳避難小屋を発つ。昨日の道を、荒川小屋へ下る分岐まで戻り、左に曲がって、ジグザグに下って行く。霧が無ければ、きっと眺めが良い素晴らしいお花畑が広がっているのだろう。塵除け柵がある辺りに着く頃から、霧が晴れてきて、天気がぐんぐん回復し始める。荒川小屋まで30分の標識があるところに着く頃には、頭上には青空が広がり、赤石岳が鮮やかに見えてきた。遥かには、青空に富士山が浮かんでいる。
荒川小屋の辺りには、なんという名前の花だろうか、大きな青紫の花がたくさん咲いていて綺麗なお花畑になっていた。荒川小屋で小休止し、水場でおいしい水を補給する。
天気が回復し、青空が広がる下、気持ち良く荒川小屋を出発する。最初は、樹林の中を行くが、木の間から赤石につきあげる尾根が見えてくる。昨日、黒い背骨のように見えた尾根だが、今日は、青空の下、緑の美しい尾根に見える。やがて樹林から抜け出し、左に尾根を見ながら、山腹につけられた、なだらかなとても気持ちの良い道を行くようになる。ここは、以前、朝日を浴びながら通った時も、とても気持ちが良かったところだ。大聖寺平までは、このまま緩やかに登って行く。
また、下からガスが湧き始め、振り返ると荒川は雲に隠れてしまった。赤石の方にも、真っ白な雲が、すごい速さで迫っている。上方には、青空が広がり、太陽も燦々と輝いているので、なんとか頑張ってほしいところだ。
大聖寺平からは、赤石への登りになる。これも記憶に残るジグザグの急登だ。休憩を入れながら、ゆっくりと登って行く。ガスが次第に濃くなってくる。風も冷たく、右の方から、ガスがどんどん流れてくる。聖方面への縦走路も、最初は見えていたが、今は雲の中だ。
小赤石に着く。眼前の赤石は霧の中だ。それでも、休憩していると、霧が晴れてきて、立派な赤石岳が姿を現す。天気は回復傾向にあるのか、青空も広がりつつある感じだ。
小赤石から30分、赤石まで頑張る。赤石小屋への分岐を越え、山頂目指してジグザグに急登する。辿り着いた山頂は、風は少し冷たく強かったが、遥かに聖を望むことができた。荒川は、霧の中だ。ここの三角点は、日本で一番高いところにある三角点とのことだ。広い山頂の先にある赤石岳避難小屋のベンチで、小屋を風よけにして昼食を作って食べる。ここからは、雲に出入りする聖の眺めがとても良い。「遠いなあ」というのが印象だ。
食後に、小屋の先にある、「赤石岳」のもう一つの標識のところまで行ってみる。前回、なぜか行かなかったところだ。ここからは、赤石小屋へ下る道が良く見える。急勾配を下って、登り返し、また下って行く。あの道は、思ったよりも遠かった記憶がよみがえる。十分に休憩し、12時半ごろ、避難小屋を後にする。
赤石からは、大きくがれ場を下る。雲の切れ間から、聖への明日の縦走路が見え隠れする。がれ場を下りきると、なだらかな道になり、赤石の山腹を行くようになる。左手には、これから向かう百間平らしき広大な台地が、尾根沿いの縦走路の先に見えている。時々、霧がかかったりするが、まずまずの天気だ。聖の眺めが良い。兎と思われる山塊には雲がかかっている。振り返ると赤石が大きい。荒川は、相変わらず低くたちこめる雲の中だ。
百間平に向かって、気持ち良く尾根を行く。風が吹くと冷たいが、太陽は温かい。百間平に着くと、「小屋まで後40分」とあったので、石に座って、百間平の向こうに広がる膨大な赤石の眺めを楽しむ。赤石は、とても立派な山だ。南アルプス本来の名前が、赤石山脈だったことが良く判る。荒川にかかる雲が切れないか、待ってみたが、断念して百間平を後にする。
百間平から、小山の間を抜けて驚いた。百間洞までは、かなり下らなければならないようだ。遥か下方の谷底にテントが見える。正面には、大沢山と思われる山があり、その急斜面にはジグザグの、相当に急勾配の道が張り付いていて、インパクトがある。昭文社の地図で、短い距離にもかかわらず1時間40分とある理由が良く判る。この時点で、大沢山はパスする事に決める。大沢山から聖へ続く山塊と百間平は、谷を挟んでいて、その底に標高2400mの百間洞がある。明日の行程が思いやられる。
百間洞へ下る急斜面に思ったよりも時間をとられ、15時過ぎに百間洞へ着く。赤石からのがれ場も長いが、それ以上に、百間平からの下りは長かった。小屋は、かなり混んでいて、狭いスペースで寝るはめになる。夕食も数回に分けているようだ。小屋が小さいとはいえ、平日の真中なのに、なぜ、あんなに混んでいたのだろう?建物は綺麗で、沢のせせらぎの音は心地よかったのに・・・
8/28(水)DAY-4 百瞭胸海硫箱聖平小屋
予定通り、大沢山はパスし、中盛丸山への鞍部を目指す新道を行く。朝焼けの聖を見ながら木々の中を行く。青空が広がり、天気も良い。鞍部までは、標高差200mぐらいの結構な急登だ。鞍部に出ると、眺めが良くなる。今日は快晴で、赤石、荒川・塩見・兎・聖が綺麗に見える。遥かに、中央アルプス・恵那山・富士山を望む。
鞍部から中盛丸山へは、急登する。振り返ると、塩見の横に、仙丈、甲斐駒が見えている。目前には、大きな兎岳がせまり、その緑の岩肌が美しい。すがすがしい朝だ。中盛丸山から、大きく下って登り返すと小兎(看板が無かったので、たぶん)に着く。小兎から、さらにもうひとつ小さなピークを越えると、いよいよ大きな山塊の兎への登りになる。がれ場の急登だ。左手の赤石が形良く、まさに平らな百間平も良く見える。たどり着いた兎岳山頂は、小さな広場で、小休止する。ここから見ると、聖へは、大きく下って登り返すようだ。ふう〜!
兎岳から急降下し、避難小屋の脇を通って、木々の中に出入りしながら、進んでいく。「なかなか聖の登りにつかないなあ」と思いながら行く。
いよいよ聖の登りとなるが、その前にエネルギー補給。岩場の急な登りから始まり、しばらく続く。やがて、少しなだらかになり、崩壊地の脇に出る。崩壊地の脇を進む。昨日、今日の縦走路が良く見える。ようやく百間平の高さぐらいまで登り返したようだ。しばらく崩壊地の横を直登すると岩場に出る。汗ばんだ体に、風が心地よい。急な岩場を登りきると、聖の山頂が眼前に迫る。白い霧が、右手の谷から湧き上がってきているのが気になる。そして、ひと登りで、聖の山頂に着く。360度の展望だ。左に赤石、その横に荒川、さらにその左手には仙丈。右手には、上河内、茶臼等の光につながる明日の縦走路。
聖から奥聖を見ると、直ぐそこに見え、あまり高低差があるようには見えない。荷物をデポして、奥聖に向かう。左に赤石や今日の縦走路、右に上河内や光等の明日の縦走路を見ながら行く。奥聖は、丸い小さなピークで、ケルンがある。奥聖から聖を見ると、今度はなぜか思ったよりも高く見える。風が冷たいので、早々に引き揚げる。
聖に戻り、少し休憩していると、聖平の方から、続々と登山者が登って来る。これから百間洞まで行くのかしらと思ったが、聖平を往復するとのことだ。
いよいよ聖から下り始める。この頃から、赤石や兎に雲がかかって来る。一方、上河内や光にかかっていた雲は、切れて来た。聖からは、またまた、長いがれ場を下る。ガスが下から湧いて来る。時々、下から登って来る人がいる。振り返ると、聖山頂は、いつの間にか雲の中だ。ジグザグに、どんどん高度を下げて行く。
長いがれ場を下りきって、少し行った先が小聖だ。明日の縦走路が良く見える。光は、まだまだ遠い。上河内への登り返しも、また厳しそうだ。小聖から少し行くと、道は樹林帯に入る。青紫のトリカブト(たぶん)と黄色い花が綺麗に咲いているお花畑の中を行く。聖から見た時は、聖平小屋は、それほど遠くには見えなかったが、この下りはとても長く感じた。それでも、薊畑(あざみばた)を過ぎて少し行くと、聖平小屋への木道が見えてきた。小屋は、木道の先にある。ここも、なぜか満室に近いぐらい混んでいた。
8/29(木)DAY−5 聖平小屋→光小屋
朝もやの中、木道を行く。直ぐに樹林帯に入るが、やがて岩頭に出て、聖が良く見えるようになる。がれ場をひと登りすると、眺めが良い南岳に着く。天気も良好だ。南岳から、気持ちの良い稜線やお花畑の中を行き、上河内の分岐につく。荷物をここにデポし、上河内を往復する。荷物が無いと、本当に身体が軽い。
上河内山頂も、360度の展望で眺めがとても良い。正面に、聖がドンと構え、その奥に、赤石や荒川が顔を出している。富士山も見える。残念ながら、光の方は曇っているようだ。それにしても、風が強く冷たい。写真を撮って、そそくさと退散する。
上河内からは、気持ちの良い稜線を茶臼に向かって歩いて行く。所々に、湿原らしき原っぱがある。茶臼小屋への分岐を越えると、ひと登りで岩がごろごろした茶臼に着く。いつのまにか、聖は、雲に隠れてしまった。振り返ると、登りに見たなだらかな形とは全く違う、上河内の鋭鋒が印象的だった。
茶臼を過ぎても、気持ちの良い稜線はしばらく続く。やがて、樹林に入り、少し行った先が希望峰だ。後は、光までずっと鬱蒼とした森の中を行く。これが、実に遠い。登ったり、下ったりが延々と続く。光への最後の登りは、岩場の長い急登だ。これがきつい。岩場の登りが果てしなく続く。水場で水を仕入れ、登りきると湿原に出て、気持ちが良い。湿原の突き当たりに、立派な光小屋がある。
小屋で手続きをして小休止後、「明日の天気が読めないので、今日の内に」と思い、光岳山頂へ向かう。所謂、深南部へ下る道を分け、樹林の中を行く。光山頂は、木々に囲まれた、なんの変哲もない小さな山頂だ。そのすぐ先に展望台があったが、霧であまり展望は無かった。光岩まで7分とあるが、疲れた体には長かった。
光岩は、大きな花崗岩(?)で、確かに、天気の良い日に遠くから見るとぴかぴか光りそうな感じだ。光岩から小屋への帰りは、登りなるので少しきつかった。この小屋も思ったよりも混んでいた。
夕食を用意している頃、椅麗に富士山や上河内が見えてくる。もしかして、明日は良い天気?と期待するが、時間とともに、富士山に笠雲がかかる。伝承によると、これは雨の前触れ?やはり、明日は天気が崩れるのか?
8/30(金)DAY−6 光小屋→白樺荘
夜通し風が喰りを上げる音が聞こえていた。朝起きると、完全に白い霧に包まれ、雨まで降っている。風は激しい。「う〜ん。茶臼の稜線が嫌だな」と思いながら、朝食を食べ、天気の回復を待つが、回復の兆しなし。易老度に下ろうかとも思ったが、タクシーが高額(最寄りの伊奈まで三万円ぐらいかかるらしい)になるので断念し、意を決して小屋を発つ。
まずは、茶臼小屋まで辿り着くことを目標にする。昨日の湿原に出る。霧にかすむ湿原は良い感じだ。霧で何も見えないはずのイザルケ岳はパスする。水場で水を補給。昨日直登した岩がごろごろする長い長い急坂を下る。雨にぬれた岩で滑らないように気をつけて歩く。
急坂を下った後も、樹林の中アップダウンが続く。樹林の中なので、風はそれほどない。汗で、レインウェアの中はぐっしょり。着ているFox Fireのシャツが、速乾と言うほどの性能ではないのも問題だ。それなりの値段だったのに、これは失敗だ。時折、吹いて来る冷たい風が、むしろ心地よいくらいだ。この辺りでGPSの電池がついになくなってしまう。樹林帯の中だと電波が受かり難いからなのか、電池の消耗が速いようだ。この辺りから先は、記念トラックが残せなかったのは、少し残念だ。ほんの少し残っている予備電池は、茶臼の分岐を見つけるのに使おう。
きつい登りの易老岳を登りまた下る。希望峰は、まだまだ遠い。樹林の中のアップダウンを、我慢して歩き続ける。こんな天気にもかかわらず、登って来る人がいるのは驚きだ。そして、ようやく希望峰につく。こんな天気では、文字通り「希望」の峰だった。当然、仁田岳はパスする。GPSに予備電池を入れる。
希望峰を過ぎると、森林限界なのか樹林帯から抜け出る。風が猛烈に強くなる。雨もレインコートを突き破るような勢いで身体をうつ。これは、10年物のレインウェアには厳しい。ここはケチらずに新調することにしよう。
霧と風と雨の中、森林限界の湿原を行く。やがて茶臼の登りにかかると、さえぎるものが、いよいよ何もなくなり、風雨が激しさを増す。かなり前に1名、ずっと後ろに十名ぐらいのツアーがいる事は判っていたが、ここは怖かった。昨日通って、稜線歩きは1時間程度と判っていたし、茶臼小屋への下降点の場所もおおよそ把握していたので良かったが、初めての道だったら、相当にビビったところた。にもかかわらず、果敢に登って来る人が数名。
霧の中、茶臼岳は、さっさと通り過ぎ、茶臼小屋への分岐を見落とさないように、GPSも見ながら、注意して下って行く。そして、分岐の道標が霧の中た現れた時は、本当にほっとした。
分岐から下り始めた途端、今までの事が嘘のように風が無くなる。やがて、霧の中に突然、茶臼小屋が現れる。まずは休憩とばかりに、小屋に駆け込む。
ここで、先行されていた昨晩同宿した方に追い付く。相談したり、小屋の人の話を問いたりして、二人でとりあえず横窪沢小屋までは下ることにして出発する。長い下りである。霧は、次第に晴れてきて、雨も止んできたようだ。下界は、それほどひどい天気ではないのかもしれない。ジグザグの道がついた急斜面をどんどん下って行く。これを登るのは、相当に大変に違いない。ようやく横窪沢小屋に着き休憩する。
横窪は、今日が小屋仕舞いとのことだ。昼食もないとのことなので、行動食を食べる。一緒に下って来たおじさんにもらったラスクが美味しかった。行動食を食べながら、さてどうするか、おじさんと相談する。未だ12時だし、畑薙まで2時間50分とあるので、1日の行動時間としては長くなるが、思い切って下る事に決める。宿は、白樺荘が良いだろうという事で、小屋のお兄さんに予約してもらう。
横窪を後にする。雨は、降ったり止んだり、太陽は出たり隠れたりしながら、延々と続くジグザグの急坂を下って行く。本当に登りには採りたくない道だ。ウソッコ沢で冷たい水を飲み、再び同じような道を延々と下る。ようやく文字通り気持ちを表している「ヤレヤレ峠」に着く。だが、畑薙大吊橋は、まだ遠かった。木々の問からダム湖を左に見ながら、緩やかなアップダウンを繰り返して行き、ついに吊橋に出る。記念写真を撮り、橋を渡って林道に出る。ダム湖の水位は、随分と低いようだった。
実は、ここからがまた長い。雨もまた降ってきた。歩いても歩いてもダムが見えてこない。結局、吊橋から1時間半ほど歩いて、臨時駐車場に着く。ここから、おじさんの車に乗せてもらって白樺荘に向かう。
白樺荘は、新しくて小奇麗な県営(だったと思う)の宿だ。早速、濡れた服を脱いで、一週間ぶりの温泉に入る。肌がつるつるして来るような良い湯だ。正面に見える筈の茶臼岳は雲の中に頭を突っ込んでいるが、まだ荒れているのだろうか?強引に下ってきて良かった。おじさんとビールとコーラで乾杯し、楽しく話しながら、豪華な夕食を満喫した。
8/31(土)DAY−7 移動日
朝起きると青空が見える。山上は判らないが、下界は良い天気のようだ。白樺荘のおばさんお薦めの朝−の湯に入る。おいしい朝食を食べ、おじさんに、井川駅まで送ってもらう。名残惜しいが、おじさんとはここでお別れする。お世話になりました。有難うございました。
井川駅から、観光用のトロッコ列車に乗る。青空が広がり、緑が美しく、開け放った窓から吹き込む風が気持ち良い。トロッコ列車は、綺麗な渓谷沿いを下って行き、終点の千頭に出た。
ここで昼食の駅そばを食べ、大井川鉄道に乗り換える。懐かしい近鉄ビスタカーだ。これも空いていて、車窓からの眺めも良く、椅子も座り心地が良く、快適だった。途中の駅で、大井川鉄道名物の蒸気機関車C−11とすれ違う。あれは、満席のようだった。でも、蒸気機関車は乗るよりも見る方が良いな。椅子も座りにくい垂直椅子だったと記憶している。
大井川鉄道終点の金谷で、東海道線に乗り換え、静岡に出て、東海道新幹線「こだま」で品川に出て帰宅する。金谷に出ると、すでに山は遠く、日常生活が営まれている世界だった。
色々な人と出会った長い山旅だった。南アルプスは、一つ一つの山が独立していて大きいと聞いていたが、まさにその通りで、登り下りが毎回大変だった。でも、重い荷物を背負って、長い縦走を完遂できたので、それなりに自信がついた。100点の天気ではなかったかもしれないが、いろいろと素晴らしい景色に巡り合うことができた。一番印象に残った景色は、百聞平の向こうに、どしりと構える赤石の姿だった。ただ、10年物のレインウェアは更新しよう。GPSの設定も、電池が長持ちするように変更しよう。
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