奥秩父主脈縦走(瑞牆山荘〜奥多摩駅)
- GPS
- 72:38
- 距離
- 74.4km
- 登り
- 5,917m
- 下り
- 7,094m
コースタイム
- 山行
- 7:59
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 8:39
- 山行
- 13:37
- 休憩
- 1:33
- 合計
- 15:10
- 山行
- 13:38
- 休憩
- 1:26
- 合計
- 15:04
- 山行
- 4:25
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 4:45
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
良好。西御殿岩東側の尾根歩きは危険。 |
その他周辺情報 | 下山後はもえぎの湯(3時間1,050円)を利用。 |
写真
感想
前々から憧れていた奥秩父主脈縦走、2月に瑞牆山へ行った時にその憧れを強くし、機を見て決行しようと思っていた。今年のGWは4連休になるのと、天気も心配なさそうなのと、何と言っても家族の許しが出たので、実行に踏み切った。
5時半に家を出て鈍行で行くこともできたが、起きてきた娘に、「パパお山行ってくるね」と言いたかったので、1時間ほど出発を遅らせて、八王子駅からあずさ1号に乗った。しかし、満席。大月駅を過ぎたら座れたが、今年のGWの混雑は尋常じゃない気がする。
韮崎駅に下りるのは初めてだが、ホームから八ヶ岳や富士山が見えて、素晴らしい立地だった。幸先いい気分だが、バスは行列。臨時便も出るようだったが、少しでも早く着きたかったので、座れなくても1便のバスに乗った。しかし、1時間余り立ちっぱなしは、なかなかしんどかった。
瑞牆山荘周辺は車でごった返しており、次々に下りるバスの乗客によって、人も溢れ返った。本当にすごいにぎわい。とは言え、登り始めれば静かな山歩きになった。
都会の喧騒を離れたくて、様々の人間関係から解放されたくて、山に来る。でも、山に入ると、かえって人が恋しくなったり、日常に戻りたくなったりする。「人を思えば山恋し、山を思えば人恋し」とはこういうことなんだろうか。
富士見平小屋に大きな荷物をデポし、瑞牆山をアタック。2月にも登ったばかりだし、あとの行程を考えると省略することもできたが、せっかくここまで来たからには、登らない選択肢はなかった。
瑞牆山とは相性が悪いのか、2回登って2回とも眺望はなかったが、3度目の正直は快晴。富士山も南アルプスも八ヶ岳も、これから登る金峰山もよく見える。こんな眺望のいい山だったとは。
富士見平小屋まで戻り、重たいザックを再び背負って縦走開始。一気にペースが落ちる。重たいザックとは言え、今回は軽量化を図ってテントは持たず、代わりにツェルトを持ってきた。カメラの機材も最小限にとどめた。しかしながら、重い。この先の長丁場が思いやられる。
改めて考えると、ぼく一人、泊まりで縦走するのは初めてだった。そんなことを考えると、今までさんざん山には登っているはずなのに、心細くなってしまう。なかなかペースが上がらないと、自信も失ってしまいそうになる。そんな時、いちいち自分を励ましたり、奮い立たせたりする。初日からこんなで、縦走を完遂できるのだろうか。
金峰山へ続く奇岩の稜線には心を打たれながらも、きついものはきつい。とにかく大弛峠まで行きたい、そんな思いでがんばったが、さほどペースは上がらない。以前、大弛から金峰をピストンした時は、ずいぶん楽だった記憶だが、日帰りの荷物でないとこんなに苦しいものだろうか。過去の記憶とは曖昧なもので、こんなにアップダウンがあったのかなとも思う。
金峰から先は残雪も多く、チェーンスパイクを使用した。今年は雪が少ない年だったが、意外とこのあたりは残っているものだ。時間が思いのほかかかり、朝日岳で夕日を見るはめになった。
瑞牆山荘や富士見平小屋周辺で、ガチな登山者を何人も見た。みな、この奥秩父主脈縦走に出かけるのか。実際、何人かに声をかけたら、やはりそうだった。テント泊が多かった。所要日数は3日から5日。3日でやろうとしてる人の中では、ぼくのペースはビリだろう。荷物は少ないはずなのに。テン泊フル装備のかっこうで、ガシガシ歩いていくから、本当にみなさんすごい。この縦走路には猛者が集う。
しばらく進んで平らな朝日峠に至り、もうだいぶ暗く、寒くなってしまったため、大弛まで行くのを諦め、ビバークしようと決意した。平地だったので、寝る場所には困らなかったが、寒さと風のせいかノーマルカートリッジのガスでは全然お湯が沸かず、芯の残った冷たいご飯とラーメンをお腹に入れ、とにかく眠った。疲れのおかげで眠りに就くことはたやすかったが、寒さのせいでたびたび起きてしまった。
3時に起床し、撤収して、4時に出発。本当は大弛を4時に出発する計画だったので、がんばって遅れを取り戻そうとする。大弛から先はだいぶ明るくなって、主脈からは少し外れるが、奥秩父最高峰の北奥千丈岳のピークも踏んだ。
そして、国師ヶ岳を過ぎると、ようやく雪がなくなった。朝夕のため踏み抜きはなかったが、金峰以降の残雪で時間も体力も結構削られた気がする。
雪がなくとも、アップダウンは激しく、特に、甲武信ヶ岳やその手前の水師へ至る急登は、相当苦しかった。ちょっと登るだけですぐ息が上がってしまうし、頭も痛い。重力に逆らってる感がものすごく、足取りは重かった。もしかしたら、2500m前後の標高だが高山病なのかもしれない。前の晩の寝不足も要因だろう。
きつい、苦しい、つらい、そんなことばかりが頭に浮かぶ。絶景や小鳥のさえずりや可憐な花に感動するのはほんの一瞬で、ほとんどの時間、頭の中はネガティブな感情ばかり。そんなことは、別に今回の山行に限ったことじゃないが、なんで一瞬の感動のために、大半の苦労を我慢するのだろう。不思議だ。でも、人生もそんなものだろう?
苦しい縦走ではあるが、この縦走路のほとんどの場所から富士山が眺められる。富士山の存在感ってすごい。改めて見ると、本当に端正な姿をし、奇跡的な美しさを備えている。甲武信あたりからの富士山は、なんとなく、今まで見た富士山の中で、最も左右対称に見えた気がする。
甲武信は、今回通過する4座の百名山のうち、唯一初めて訪れる。しかし、山頂でのんびり感動にひたるわけにもいかず、先を急ぐ。本当は、埼玉県の最高峰である三宝山のピークも踏みたかったが、主脈から外れるし、時間も押していたので、今回は断念。次の木賊山は、巻かずに縦走した。
「主脈縦走」と銘打ってるからには、できるだけ巻かずに、稜線を歩きたいと思っている。我ながら律儀な性格だから、体力的・時間的にきつくても、ピークをシラミつぶしに踏みたくなる。
雁坂嶺あたりを歩いていた時、不意に、今まで山では嗅いだことのない生臭さを感じた。足元を見たら鹿の毛と骨が転がっていた。前に雁坂嶺あたりは鹿が多い、鹿の死体を見たと聞いたことがあったが、やはり本当だった。他にも2頭の白骨や毛を見たし、翌日の飛龍山でも白骨を見た。
律儀なピーク踏みが続く。一部巻き道もあったが、水晶山、古礼山、燕山と、登れるだけ登った。そうこうしているうちに、本日も宿泊地に着く前に日没を迎えてしまった。元々小屋やテン場を使うつもりがなく、門限がないから、行動時間が伸び、遅くなってしまう。
雁峠までたどり着き、今日は屋内に泊まれると気分が上がったものの、小屋に「倒壊の恐れがあるので立入禁止」と張り紙がしてあり、がっかりした。ここはもう避難小屋としては使えないようだ。しかたなく、そばの平地でまたビバーク。でも、前日とは違って寒くもなく、風もなかったので、格段に快適だった。翌朝までぐっすり眠れた。
3日目も4時から行動開始。なんとか奥多摩駅の終電に間に合いたい。そんな願いを胸に早朝からがんばる。
笠取山の山頂には多くの登山客が集まってる。みなさん、日の出待ちなのだろう。確かに快晴で、しばらく待てば絶好のモルゲンロートが期待できそうだった。が、ここは先を急ぐ。ゆっくり富士山を眺める余裕はなかったが、途中途中で見る、雲海に浮かぶ富士は絶景だった。こんな無理な縦走なんかしていなければ、じっくり撮影したいところである。
今回は縦走の完遂が第一で、写真は二の次にした。三脚や替えのレンズも置いて軽量化を図った。しかし、それでも荷物が重い。テントも置いて、ツェルトにしたのに重い。まだまだ自分の背筋とか脚力とかが足りないのだろうか。長い道中、自責の念みたいなものが次々と起こる。自分ならコースタイムの8掛けで歩ける、なんて計画を立てたが、机上の空論、ネット上の空論だったのではないか。もはや自信喪失。しかし、なんとか3日で縦走を終えたい。苦しい体に鞭打ってがんばる。
唐松尾山を過ぎて、絶好の展望ポイントである西御殿岩にも寄った。奥秩父がぐるりと見渡せるいい展望台だった。分岐からピストンするのがロスに感じたから、あまり踏み跡のない縦走路を行くことにした。しかし、これが難儀。ほぼバリエーション。多少巻けたと思うが、ピストンしたほうが無難だっただろう。
山ノ神土から将監峠まではアップダウンがなく、難なく行けた。さあ、ここから飛龍山(大洞山)までがたいへんそうである。しばらくすると、飛龍山の大きな、先っぽのとがった山容が見えてきて、あれを登るのかと萎えそうになる。それでも、8掛けの計画からさほど遅れずに山頂まで来ることができた。
飛龍山から雲取山は去年も縦走したルートである。一度歩いているからという気持ちで歩いたが、こんなに長かったっけという意外さのほうがまさった。北天のタル、狼平と、そんなにアップダウンがないのに、巻けず。三条ダルミでしばし休息。
だんだん本日中の下山が厳しくなる。三条ダルミから雲取山までの登りは、ラスボスのように立ちはだかっている。休み休み、ゆっくり登っていく。靴ずれした足も痛い。
雲取山からは石尾根を奥多摩駅方面へ進んでいく。何度か通ったことのある道。しかし、これまでの経験が全くあてにならないほどつらい。七ツ石山直下の登りに直面したところで、また足が止まる。ここで、本日中の下山を諦める。
宿泊地の鷹ノ巣山避難小屋まで痛い足をこらえながら歩いていく。水も尽きたので、七ツ石小屋近くの水場まで下りて、翌日の分まで確保した。
また夕暮れが迫ってくる。高丸山、そして日陰名栗山と、巻き道は使わずに、ピークを踏んで鷹ノ巣山方面へ向かった。ようやく避難小屋に到着。小屋内は意外と1名しかおらず、広く快適に過ごせた。前日、前々日と違って、屋内というだけで本当に幸せ。ぐっすり眠ることができた。
4日目はゆっくり起きて6時過ぎに出発。体調はいい。が、とにかく足が痛い。ひどい靴ずれだ。登りと下り、どちらかと言うと下りのほうに自信があり、下りで巻けると思っていたが、下りだと余計爪先の靴ずれが痛んで、ペースが上がらない。
ただ、痛いのは足だけ。体力と根性はまだあるから、どうにか動ける。また、これまでの3日間とは違って、そこまで激しいコースではないので、さほど休憩しないでも進むことができた。
奥多摩まで来ると、夏のような暑さを感じる。3日前、瑞牆や金峰を歩いた頃はまだまだ早春のような気候だったのに、東へ進むにつれて、季節も進んでいるようだ。
市街地まで下山した時、ちょうど奥多摩町の防災無線が入り、鷹ノ巣山避難小屋近くで遭難があったとのこと。山岳救助隊が向かったそうだ。くわばらくわばら。
11時頃、やっともえぎの湯(3時間1,050円)に到着。4日も登山した体で電車には乗りたくないので、お風呂に直接やってきた。4日分の汚れを落とす。石鹸が全然泡立たなかった。その後、館内で腹ごしらえも済ませ、駅前のバテレで生ビールを飲み干す。いろいろ反省の多い縦走だったが、締めは最高だった。
もう二度とやりたくないと思う縦走ではあるけど、またレベルアップしたらやりたいと思うのだろうか。
青梅線で立川駅くらいまで来ると、そのにぎやかさに安心感を抱く一方、また都会に戻ってきてしまったというさびしさも生じた。そんな矛盾の日常が再び始まろうとしている。
コメント
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いつしか、和名倉山や埼玉県と山梨県と長野県堺の縦走するときに、都合付けば、お付きあいください。
コメントありがとうございます。
避難小屋ではお世話になりました。
登山歴2年とは思えない精力的な活動に、私も刺激を受けました。
ピークをつぶさに踏む姿勢もすごいなと思いました。
そうですね。
せっかくのご縁ですし、ご一緒させてください!
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