黒部横断 扇沢~スバリ岳~大スバリ沢~黒部湖~御山谷~室堂~カガミ谷~馬場島


- GPS
- 80:00
- 距離
- 39.6km
- 登り
- 3,871m
- 下り
- 4,223m
コースタイム
0540 日向山ゲート
0730 扇沢駅 0750
1040 マヤクボ沢出合 1105
1420 スバリ岳 1425
1540 スバリ~赤沢間コル 1615
1640 大スバリ沢下部の滝(左岸高巻き) 1730
1730 C1 黒部湖畔
DAY2(黒部湖~御山谷~室堂)
0650 C1 黒部湖畔
0730 御山谷出合
1420 一ノ越 1505
1540 C2 雷鳥平
DAY3(室堂~雄山~室堂~カガミ谷~馬場島)
<雄山へ早朝の一本>
0445 C2 雷鳥平
0600 一ノ越 0615
0705 雄山
0715 ドロップポイント 0725
0735 C2 雷鳥平
<帰路>
0925 C2 雷鳥平
1000 室堂乗越 1150
1340 馬場島荘 1355
1515 冬季ゲート(車デポ地点)
過去天気図(気象庁) | 2015年03月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
・扇沢手前の日向ゲートまで別の車で移動し、入山 ※後ほど両方とも回収 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・扇沢は、日向ゲートまで(扇沢まで乾いた道路を6kmくらい歩く) ・針ノ木大雪渓は真っ白! ・大スバリ沢は上部に雪が無く、コルまで下りてから滑った。滝は埋まっていない。 ・黒部湖は完全凍結! ・御山谷は快適に登れる(当然ながら古いデブリは沢山ある) ・室堂は、除雪が始まり、小屋関係者の足跡が見られた ・カガミ谷は、デブリランド ・馬場島荘~冬季閉鎖のゲートまでは、3kmくらいあり、その半分までは除雪されており、それより上は雪がありました。それぞれ歩きとスキーで踏破。 |
写真
感想
<プロローグ>
当初女性二人だけの計画だった山行に便乗して行ってきた黒部横断3日間。
リーダーは、某山岳同人所属の女性AKさん。女性だけで大脱走ルンゼを滑ったり、ペルーへ遠征したり、とにかく実行力も経験もある強いスキーヤーだ。もう一人の女性、ニッシーとは、カナダで出会い、共にカナディアンロッキーでクライミングや山登りに興じた遊び仲間である。メーカーからサポートを受けるプロのボーダー。板は割ってます。今回は彼女からAKさんを紹介してもらい、一緒に黒部を渡ることになった。
横断前に簡単な山行を二回重ねて、いざ本番へ。期間は3日間でしたが、予備日を4日取り、24㈫~31㈫の間で、天気の良さそうな日を選び、山に入ることにしていた。この緩いスケジュール縛りは、無職ないし自由業の特権。我々はほとんど前者と言える。
<出発前日>
数日前に入山日を決め、前日に長野県某所で落ち合い、三人、車二台で伊折へ車をデポしに向かう。富山県条例で積雪期の登山が制限されている場所なので、計画書は20日前までにリーダーのAKさんが県警に登山届、登山名簿を提出してくれていた。
当初の計画は、以下の通り。
DAY1 日向山ゲート→扇沢→スバリ岳→大スバリ沢→黒部湖
DAY2 黒部湖→御山谷→一ノ越→雄山→真砂岳→別山→別山沢→三の窓雪渓
DAY3 三の窓雪渓→池ノ谷佐俣→白萩川→馬場島→伊折
しかし、三日目の「池ノ谷佐俣」は、計画書提出後に積雪期の「特別危険地区」指定されていたため、「別山沢→二股→小窓雪渓→西仙人谷→白萩川」という風に変更した。計画中の二日目は、行程が長く、体力を要する。さらに一旦安全圏とも考えられる室堂に辿り着いておきながら、再度黒部側に戻る(別山沢への滑走)という意味で精神的にもハードルが高いルート取りと言える。
車をデポするため馬場島へ向かった日、上市署に立ち寄りヤマタンを受け取る。レコの写真にも載せたが、思っていたより小型かつ軽量な代物である。遭難した際の捜索に使うこの装置の持ち運びは任意のようだ。同時に警察署で直近の信州大学山岳部の登山時の状況(積雪量の話など)や黒部横断に失敗したパーティのお話(雪が少なかったか、凍結していなかったかで横断できなかったそう)などを伺った。
車は、冬季閉鎖のゲート手前まで除雪が終わっていたため、そのすぐ手前に車を停めることができた。そのまま安曇野まで車で戻り、翌日の準備をし、1時頃就寝。
<3/26 DAY1, 扇沢~スバリ岳~大スバリ沢~黒部湖>
翌朝は3時頃起きて、朝食、準備を済ませ、扇沢へ向かう。こちらも冬季閉鎖の日向山ゲートまで車で入ることが出来た。ここにも一台車をデポして、出発する。AKさんは、持ち前の体力と入念な軽量化のせいか、歩くのがとても速い。のんびりした性格の我々を置いて、どんどん先へ行ってしまった。朝一のアスファルト歩きはしんどいが、快晴の空と遠くに見える白い峰々に突き動かされ、扇沢まで歩くことができた。扇沢駅横のゲートからすぐに沢へ入り、堰堤を巻いたり、真ん中を直登したりしながら、ハイクアップし、すぐに大沢小屋へ到達した。
あとは延々と針ノ木大雪渓を詰めるのだが、濃紺の空と白銀のカンバスが美しく、見ていて全く飽きない。最高のスタート、来てよかった、という感じ。マヤクボ沢出合で少し休んでから、少し急になる斜面をジグ切りながら登っていく。終始50cm以下のくらいの積雪があり、ラッセルはくるぶしから上くらい。クラスト斜面にクトーを想像していたので、思いがけず快適だ。
雪質も最高のパウダーで滑り出したくなるが、これからの行程が長いので、思いとどまる。稜線に出ると剱・立山連峰、真っ白の黒部湖が眼下に広がった。果たして黒部湖はしっかり凍っていてくれているのか。稜線へは、少し巻いてからスバリ岳手前のコルへ乗り上げた。スバリ岳は100mくらい先に見えたのだが、直下の雪壁が迫力だ。スキーを脱ぎ、アイゼンを履いて山頂へ向かう。
スバリ岳の雪壁は、新雪が乗り、柔らかかったので、ステップを切って難なくクリア。山頂で数枚記念写真を撮って、これから滑りこむ大スバリ沢を覗く。山頂直下のルンゼだが、雪が少なく、凍結し、石も出ている。先は細くなり、雪が繋がっているのかわからない。「これは無理でしょう」という結論に達し、三人で雪を探して下る。
稜線は雪が飛ばされていて、結局コルまで下り、さらにそこから150mほど下りてようやくドロップポイントに着いた。下りは凍結しており、悪いクライムダウン箇所もある。シールを剥ぎ、滑走準備を始める。準備ができたAKさん、ニッシーの順でドロップ。私は写真撮影をしてから最後に出たが、思っていたような絵は撮れなかった。
滑走の写真を撮るのは簡単でない。雪は、期待していなかったパウダースノー。皆で歓声を上げながら、下る下る。
AKさんが事前に情報を得ていた下部の滝は、埋まっておらず、残念ながら滑り下りることができなかった。左岸側の急な雪壁を高巻きし、尾根を一つ乗り越すと、さらに雪の溜まった沢が出てきたので、ここを滑り下りる。
なんとか暗くなる前に黒部湖畔に着くことができた。水場のある快適な天場を確保し、炊事をして就寝。できるだけ軽量化してきたので、水を確保できることはガス缶の節約を考えるとかなり重要だ。夜は満点の星空だったが、少し月が明るすぎた。立山の中腹にある「だいかんぼう」が煌々と発光していた。
<3/27 DAY2, 黒部湖~御山谷~室堂>
朝予定より30分寝坊し、4時過ぎに目を覚ます。ニッシーが気温を測ると-10°まで冷えていて、この寒さで夜中は何度も目を覚ました。ナルゲンボトルに入った水とブーツのインナーが凍っていたせいで、準備が手間取り、出発が遅れた。
結局出発は7時前。AKさんを先頭に黒部湖へ突っ込む。今回の旅における私の一番の懸念は黒部湖面が割れ、水中に落下すること。泳げない私にとって、これは即死を意味する。
しかし、湖畔は良く凍っていて、割れそうな感じはまるでない。私が計画段階で主張していたアンザイレンも必要ないくらいだったが、AKさんが気を遣ってロープを出してくれた。フラットな面がいかに歩きやすいか、というのを実感しながら、湖面を横断し、無事「黒部横断」を果たした。
ロープをしまい、御山谷を登っていく。ここから陽が出てきて、一同末端を温め、ホッとする。その後は、また広い沢を延々と詰めるのだが、寒かった後は灼熱の太陽に照らされ、喘ぎながら登る。高度障害が出たのか、ニッシーは下を向き、元気がない。御山谷は、広く、景色の規模が良くわからない。近くに見える景色が歩いてみると意外に遠く、一ノ越にはなかなか到達できなかった。
7時間弱もかけ、やっと登り上げたが、時間的に当初の計画を完遂するのは難しく、
またメンバーに疲れも見えたので、この日は雷鳥平に下り、そのまま幕営することにする。誰もいないと思っていた室堂には小屋関係者の方のものと思われるトラックが刻まれていた。また、アルペンルートの除雪も既に始まっている。
室堂へ滑り込むが、ここも最高のパウダー。夕陽が差し込み、奇怪な地形が美しい。雨が創った縦縞も綺麗で、見ていて飽きなかった。
この日は、まだ陽が出ていて、誰もいない雷鳥沢キャンプ場でのんびりしながら丁寧にツェルトを張った。
<3/28 DAY3, 室堂~カガミ谷~馬場島~伊折>
前日の打合せでこの日は9時出発と決まった。予備日を使ってもう少し山に滞在するプランもあったが、南岸低気圧が翌日35cmの雪を降らす、というヤマテンの予報などもあり、この日のうちの下山を決定。ルートも、時間的に別山沢~二股~小窓雪渓は難しいので、最も簡単な室堂乗越~カガミ谷~馬場島へ変更した。
出発までは時間があるので、私は一人雄山に早朝の一本に出かける。予定通り4時に起きて、出発準備をし、思っていたより時間がかかり、起床から45分後にようやく出発。指が冷え切り、温めながら歩くので、なかなかペースが上がらない。
一時間あまりかけて一ノ越へ。一ノ越の峠付近はクラストしていたので、手前の斜面に足場を作り、アイゼン、ピッケルに着替える。雄山への登りは思っていたより急で、氷も固く、ピッケルを振ってピックを差し込んで登る場面もあった。
雄山に着いた頃には当然ながら陽が登っており、日の出の瞬間は望めなかったが、焼けた山の斜面や遠く歩いてきた後立山連峰が美しかった。
滑走斜面を確認したが、固く凍っており、滑りだせない。横滑りで行けないこともないが、エッジが外れて、ローソク岩に激突すると困るので、少しクライムダウンし、
ローソク岩上でドロップ準備。無線交信で、ベースにいる二人にも連絡を取る。
山崎カールの下部はまだパウダーが溜まっていて、そこそこ楽しめた。3ピッチに分けて滑走し、雷鳥平に下ると、二人がベースでのんびりお茶を飲んでいた。
朝食を済ませ、出発準備をし、予定より30分ほど遅れて室堂を出る。室堂乗越へのハイクは、200mくらいの登り。これはスキーで斜面をトラバースして乗り上げたが、スプリットボーダーのニッシーは、斜面が固いことを懸念し、つぼ足で登ってきた。
カガミ谷は、北面でパウダーが期待されたが、風で少し飛ばされていて、思ったよりバフバフではなかった。剱岳と早月尾根が見え、その先に馬場島があると考えると、もう帰ることが間違いなく思われ、緊張は無かった。今回初めてのピットチェックを行い、三人で話し合い、ドロップポイントを決める。
奥大日のスティープラインも雪が良さそうで垂涎ものだったが、ここは大人しくカガミ谷を降りる。ニッシーだけ少し遠くに歩き、最初に滑走した。所々サンクラストがあるが、3日目も快適なパウダーを楽しみ、開けた沢心に出る。そこからは、デブリを避けながらひたすら下る。ストップスノーも出現したが、基本的に滑りは良く、快適に進む。スプリットボーダーは、やはり時々板を脱ぐ必要がある。
堰堤が出てきて、林道に合流したあたりで大休止し、残りの行動食を平らげる。橋を渡り、しばらく歩くと山岳警備隊のスノーキャット跡が現れる。馬場島荘には、警備隊員がいてくれて、到着すると珈琲とお茶菓子を出してくれた。有難く頂戴し、山での出来事を簡単に報告する。一通り話してから、ヤマテンを返却し、帰路へ。車をデポした地点まではおよそ3kmで、うち半分は雪が残っているが、残り半分はアスファルトが出ているそう。
前半部は下り基調なので、問題なく進めた。アスファルトが出てからは、スキーを背負う必要があるので、一旦荷物をデポし、走って車まで行き、戻ってくることをAKさんに提案した。走り始めてしばらくするとマウンテンバイクをデポしていた別のスキーヤーに追いつかれ、世間話をする。と、車をデポしている地点の先にゲートがあり、これが閉まっているとの情報を頂いた。デポ時はゲートが開いていたため、これは盲点だった。仕方なく走って戻り、改めて荷物を背負って帰ることにした。
無駄に時間がかかったが、予定していたよりは少し早く車に到着することができた。着替えて、温泉に向かう。アルプスの湯で汗を流し、一路安曇野へ。安曇野では打ち上げのビールが待っている!上市から見える美しい山並みを見ながら、次はどこへ行こうか、などと話し合いながら帰路に就いた。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
Tomahawkさん、すごいですね
こんなルートを取れるなんて、まさに若者の特権&山スキーの達人!!!
お天気に恵めれて良かったですね。
出来たら、写真に解説文を入れて下さい。
楽しみにしてます。
mizuki
mizukiさん、コメントありがとうございます。
最近になってIDをGeldfelsから変更しました。
YSHR先生からもらった有難いニックネームですw
更新遅くてすみません、やっと解説入れました。
これからタイムと感想更新していきます、、、
トマホークさん、こんばんは。
ユーザーID、変えたのですね。
しかし、大変なことやってますね。
十字峡で横断するよりマシですけど、すばらしい記録です。
さて、ワプタトラバース完遂してきました。
レコもアップしましたよ。
お暇なときにでも、見てください。
クマ
クマさん、こんばんは!
はい、IDはYSHRさんにもらったあだ名を使うことにしました。
横断は、去年徒歩でS字峡を渡ったのですが、
今回の黒部湖の方が百倍楽でした!
十字峡も大変なんですね。
そのうちこちらも横断することになるのかな、、、
今回の横断は、結果的に体力的な難易度は低いものになったと思います。
本当はもっと趣向を凝らしていたんですが、また今度ですね。
いずれにしても天気に恵まれたこと、
リーダーAKさんの計画と実行力のお蔭でできた山行です。
そして、ワプタトラバースお疲れ様でした!
記録拝見しましたが、良さそうでしたね ~
こちらは、別途コメントさせて頂きました!
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する