北アルプスの水をめぐる旅【後編】(一級水系源流完全制覇の旅31/109黒部川水系源流・鷲羽岳)
- GPS
- 16:34
- 距離
- 39.0km
- 登り
- 2,355m
- 下り
- 3,588m
コースタイム
- 山行
- 8:47
- 休憩
- 1:59
- 合計
- 10:46
- 山行
- 4:57
- 休憩
- 0:56
- 合計
- 5:53
天候 | 8/19:晴後曇 8/20:曇後晴(出発前に三俣山荘周辺に通り雨、下山後に新穂高温泉で雨) |
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過去天気図(気象庁) | 2024年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
一級水系源流完全制覇の旅 第28夜は北アルプスの水をめぐる旅後編として、黒部川源流碑や鷲羽岳、そして足を伸ばして水晶岳へ行ってきました。
この後編は、山仲間4人と赤木沢遡行した流れで、最後の宿泊地・太郎平小屋でメンバーと別れソロで歩いた記録です。
黒部川は、その源を富山県と長野県の県境の鷲羽岳(標高2,924m)に発し、立山連峰と後立山連峰の間に峡谷を刻み北流し、黒薙川等の支川を合わせ黒部市愛本に至り、その後は扇状地を流下し、黒部市・入善町において日本海に注ぐ、幹川流路延長85 km、流域面積682km²の一級河川です。前編で訪ねた赤木沢はこの源流域の沢のひとつ。今回後編で訪ねた黒部川源流碑はさらに源頭側にあり、源流碑から岩苔乗越に向けてはその源頭部を詰めていくようなルートで歩くことができました。
太郎平小屋で夜を明かし、明け方赤木沢遡行メンバーを起こさないように準備をしていたのですが、出発の4時半にはみんな起きて小屋の前で見送ってくれました。そのときの様子を写真に撮っていたメンバーがいたのですが、空が白み始める中ヘッデンのあかりで進む自分と見送るみんなの背中がすごく良い絵になっていました。
太郎平小屋からは前々日と同じルートでまずは薬師沢小屋へ。薬師沢小屋で買いそびれていた手ぬぐいを購入した後、吊橋を渡って河原からすぐの大東新道との分岐を雲の平方面へ。ここからは標高差約500mの急坂の登りです。登り口すぐのところに薬師沢小屋の水源があり、『黒部源流山小屋暮らし』で読んだホースで水を引いてくる場所ってここなんだなぁと眺めていました。雲の平への急登はひたすら大きな岩やわずかにあると梯子をひたすら登るルート。なだらかになり木道が出てくると、雲の平の西端・アラスカ庭園と呼ばれる場所です。青空の下視界が開け、薬師岳や水晶岳、三俣蓮華岳など黒部川源流域を囲む稜線が一望でき、ここから日本最後の秘境と呼ばれる雲の平の庭園歩きが始まります。
木道の庭園歩きの先、右手に赤い屋根の山小屋が見えてきます。これが人気の山小屋、雲の平山荘。軽食も非常に美味しくメニューもオシャレと評判なのですが、到着時刻が朝7時半だったため時間が早過ぎてまたの機会にとなりました。曜日限定のハンバーガーも美味しそうでしたね。
雲の平山荘を後にし、雷岩で雲の平キャンプ場への道を分け、スイス庭園を左手に見て木道を進むと、祖父岳分岐の手前ではガレ場のトラバースを通り、右手に雲の平の全景を眺めながら急坂を登ります。水晶岳へは祖父岳を経由した方が早く楽なのですが、今回の旅の目的のひとつ・源流めぐりのために祖父岳を巻き日本庭園を経由して谷間へ降っていきます。巻いていく最中に、それまで祖父岳の影になって見えなかった、今回の旅の目的地・鷲羽岳の姿がやっと見えてきました。急坂を降っていくと、ロープが張られた渡渉箇所。ここを渡って、分岐を三俣山荘側に少し登ると沢の源頭部を渡渉した先に黒部川源流地標の石碑が立っています。小さめの広場になっており、一旦ここで休憩。
ここからは分岐に引き返して岩苔乗越へ向けて標高差約400mの登り返し。思いのほかここのルートが楽しく、黒部川源流の流れに沿って、この豊富な水量ゆえか標高2,700mまで登山道傍はずっと花畑。登りの疲れで立ち止まると咲き誇る花が目を楽しませてくれました。岩苔乗越からはザレや大きめの岩のルートを通って水晶小屋へ。正面にはずっと水晶岳の山容がどーんと構えており、気持ちを高めてくれます。あとで三俣山荘でご一緒した方から聞いた話ではこの日岩苔乗越でライチョウを見ることができたそうで、タイミング逃したのが残念でした。
行動時間が7時間となり、水晶岳に登る前に水晶小屋で一旦休憩することに。噂に聞いていた水晶小屋名物・力汁をいただきました。お餅2つにちくわ、ごぼう、人参などが入った味噌仕立てのお雑煮。塩分と水分をまとめて補給できる一品で、縦走中には嬉しい料理でした。幸い小屋の前のデッキに席を確保でき、裏銀座の稜線の絶景を眺めながら一服する贅沢な時間。ゆっくり休んで回復したところで水晶岳までのピストンへ。
途中までは広い尾根道ですが、長い梯子が見えた先からは巨岩の登下降やトラバースで山名標のある水晶岳南峰へ。三角点があるのは北峰ですが、こちらは読売新道を歩く時のお楽しみに置いておくことにしました。水晶岳山頂は狭いので、少し休んだ後はすぐに水晶小屋へ引き返し、量り売りの水を1L購入した後は稜線コースで鷲羽岳・三俣山荘へ向かいました。
水晶小屋で小屋の方とハイカーの方の会話が聴こえたのですが、水晶小屋から三俣山荘まで、楽と言われるのは黒部川源流地標経由のルートだそうです。小屋の方はどちらでも変わらないと思うんですけどね、とおっしゃっておりどんなものかなと思って歩き始めました。
ワリモ岳で一旦登った後、ロープのある急坂を降って、『黒部の山賊』にも遭難者が出た場所として出てくるワリモ岳と鷲羽岳の鞍部に下り、そこから急坂を登り返して鷲羽岳へ。念願の鷲羽岳に到着した時の感動はなかなか言葉にできないものがありました。運良く槍穂高方面の雲の切れ間から槍の穂先が見えた瞬間の写真を抑えられたのも良い記念でした。午後から雲が湧きやすい予報だったところをなんとか逃げ切れたことにホッと一息。しばらくのんびりと黒部源流域の風景を眺めてからこの日の宿・三俣山荘へ向かいました。
三俣山荘への下りはザレの九十九折がひたすら続きます。確かにちょっといやらしい道ではあるので、登りの急坂含めて黒部川源流地標ルートの方が楽に思う方も多いのかなと思いました。
三俣山荘に到着した時は展望食堂での昼カフェが終わったすぐ後。夜カフェ営業を楽しみに、チェックインして荷解きし色々整えました。
泊まった日の話ですが、三俣山荘では水不足(雨不足?)で水道から水が出にくくなっており、飲み水はテント場の水場から汲んでほしいとのこと。水場では豊富な水量でコンコンと流れていましたので、安心して水の補給ができました。
三俣山荘のお楽しみといえば、夕食や朝食に出されるジビエメニュー。夕食には長野県北信のシカ肉のジビエシチュー、朝食には長野県北信のイノシシ肉のサルシッチャ(腸詰肉だが燻製していないもの)が出され、非常にご飯が進みました。夕食後にはこれも楽しみにしていた夜カフェ。ソロの方(途中、水晶岳直下でもスライドした方)と相席して話をしながら、名物のサイフォンコーヒーとりんごのシブーストのケーキセットをいただき、スライド上映されている伊藤新道の風景を見ながら、ここでも贅沢な時間を過ごしました。
最終日、明け方4時前に目が覚めると雨の音。三俣山荘では電波が拾えず雨量レーダーを確認できないもどかしさを感じながら、朝食の時間を迎えました。朝食前にはしっかり降っていた雨が、朝食後一旦止んでいることを確認し、すぐに雨具を装備して下山開始。
三俣蓮華岳は霧の中でしたが、空が明るく霧も薄くなってきたことから下の雨具を解除して双六岳へ。もともと予報で双六岳方面は朝のうち風が強いとも聞いていたので、現地で雨風が強ければ中道コースへ変更するつもりでしたが、だんだん空が晴れ、風も弱いままだったため、当初予定通りの稜線ルートに向かいました。ルート上から見える双六岳への稜線、振り返って見える三俣蓮華岳への稜線や鷲羽岳が思わず足を止めて見惚れてしまう風景でした。
双六岳といえば、双六岳直下の「天空の滑走路」。槍穂高に雲がかかって槍の穂先がずっと見えていたわけではありませんでしたが、それでもこの稜線の気持ち良さは充分に感じられました。
双六小屋で一旦水分補給などの休憩を取った後は、少し急ぎ気味に弓折乗越へ稜線をたどります。せっかくなので弓折岳へのピストンもして鏡平山荘へ。双六小屋あたりからは青空で暑いくらい。到着が8時半と早かったので心配していましたが、すでに軽食営業が始まっており、名物のかき氷(宇治金時)をいただくことができました。フワッフワの氷に甘さが絶妙なあんこと抹茶シロップが絶品。暑さの中を歩いてきた疲れも飛びます。
そんな風にかき氷を小屋前のデッキで味わっていると、小屋から放送が。空輸ヘリが来るとのことで、デッキにいる人は全員小屋の土間に入ってくれとのこと。慌てて荷物とかき氷を持って小屋の中に駆け込みました。ぎゅうぎゅうの小屋の土間でしばらく待っていると、小屋の方からヘリが何度か来るため出発する方は今来ているヘリが飛んだらすぐ出るようにとの話があり、自分はOKが出た時点ですぐに出発。鏡池を越え、小池新道を一気に下っていきました。
途中、前日の三俣山荘夜カフェでご一緒した方と再会。少しお話しした後、自分は先行させていただきました。小池新道は涸れ沢と何度か交差し、また道自体も大きめのガレが敷き詰められていて、リズムよく下っていけました。途中、シシウドヶ原、イタドリヶ原、上涸れ沢、下涸れ沢、秩父沢などポイントごとに小さな木札が立っていて、休憩適所は色々ありました。左手に蒲田川左俣谷が見えてきて大きな岩が転がる崩落箇所を抜けると小池新道登山口に到着。ここからは左俣林道で下山となりひと安心。
左俣林道に入ってからのお楽しみは、ワサビ平小屋のそうめん。鏡平山荘から一気に下山した疲れと、小池新道で受けた陽射しの暑さを癒してくれる冷たいそうめんは絶品で、さらに小屋前の水槽で冷やしている飲み物やトマト、きゅうりも足を止めざるを得ない魅力を出しています。ワサビ平小屋から新穂高温泉までは山と高原地図のコースタイムで約1時間あるため、小池新道を下り切った直後のワサビ平小屋で一服することでもう一踏ん張りいける感じがしました。
新穂高温泉に到着後は中崎山荘奥飛騨の湯をゴールにして、温泉で汗を流し3泊4日(+夜行バス)の旅を振り返りました。
一度も下山せずの多泊縦走は4年前の奥秩父縦走以来でしたが、当時に比べて運用が上手くなったかなと思うところ、まだまだ改善や上達していけそうなところ、色々あったので、これからに向けて検討を重ねて次の縦走に活かして行きたいですね。
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