11歳児があこがれ続けた北岳&さらにハードだった小太郎山【日本・山梨百名山】
- GPS
- 15:32
- 距離
- 14.9km
- 登り
- 2,070m
- 下り
- 2,080m
コースタイム
- 山行
- 7:04
- 休憩
- 2:19
- 合計
- 9:23
- 山行
- 6:23
- 休憩
- 0:38
- 合計
- 7:01
天候 | 1日目:晴れときどきくもり 2日目:晴れのちくもり |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
北岳:きれいに整備された道、危険箇所などはとくになし 小太郎山:ハイマツの猛攻と少ないピンテ、常にルートファインディングを意識する必要あり。他にも岩登りや足元のゆるい急坂などが多く、ヤマレコや道しるべ他のコースタイムは速すぎる。このタイムで計画すると少し危険、1.2-1.4倍くらいかかると考えたほうがよさそう |
その他周辺情報 | 金山沢温泉 小ぢんまりしているけれど清潔で快適な温泉。14:00くらいでまだお客さんはまばらだった |
写真
感想
今年の夏休みはめいっぱいおやまに登ろう。息子と春のうちからそう決めて、よさそうな日取りをおさえては各山のプランを立てて宿をとってきた。
その甲斐あって、夏休みだけで鳳凰三山・赤岳・白山と3座の名だたる日本百名山に登ることができた。
そして夏休みをしめくくる息子との大チャレンジが、北岳→間ノ岳→農鳥岳の縦走だった。北岳肩ノ小屋と農鳥小屋を予約して万全の体勢で臨んだ8月下旬。
大きな台風がきてしまった。
何度も何度も天気を確認して、だめなのかなあという息子。台風は関東に上陸こそしなかったものの湿った風を送り続け、南アルプスはずっと雨の予報のままだった。予約した両小屋にキャンセルを伝える。息子はとても悲しそうだった。
9月の連休にと思ったけれど、その時点では北岳肩ノ小屋も北岳山荘も週末は満室。今年は北岳は無理か、すまん息子よ。と思いつつちょくちょく両小屋の空き状況を確認していたところ、ある日北岳肩ノ小屋に空き室が出ているのを発見。よし! 行ける!! 早速おさえて妻の許可を取る。
もともとお肉大好きな息子に名物・肩ロースを食べさせたいという思いもあって肩ノ小屋を選んでいた。あとは天気だ。長期予想では晴れだったものの、南で台風が発生しちょっと雲行きがあやしい。数日間、週間天気予報と「てんくら」とにらめっこして過ごす。結局「てんくら」で前日までCだったが決行することにした。ひどい雨なら撤退することも視野に。
さて初めての北岳、高低差と標高の高さを考えると朝イチから動きたい。バスの第1便は5:15、その次が5:30。朝早く、というか夜中動くとしたら寝不足になりそう。高山病に寝不足は大敵である。車中泊を考えたけれど、調べてみたところ南アルプス温泉ロッジの素泊まりがかなり安いことがわかった。温泉付きで親子で7000円。
土曜日は予定があったので、17時半から車を予約していた。しかし前の利用者の返却が遅れ、18:30の出発になってしまった。これでは20:00までの温泉に入ることはできないが、しかたない。
南アルプス温泉ロッジ/白峰(はくほう)会館は建物が3つに分かれていて、メインの受付、宿泊&温泉棟、道の向かい側にある食堂。20時を過ぎると受付が閉まるので宿泊棟の宿直の方に直接料金を支払うシステム。
なんとか21時までに到着し、部屋へ。広い。やたらと広い。これでこのお値段は正直破格である。安心して眠りにつくことができた。夜、雨が降ってきて天気だけは心配だったけれど。
翌朝、4:30に起床。30分で息子を起こし、4時から開いているという食堂へ。部屋の鍵はここに返却する。
5:30のバスで広河原に向かうつもりでいたが、白峰会館の方が「5:30だと甲府発のだからたぶん座れないですよ、5:15のほうがいい」と教えてくれた。ここで朝ごはんを食べるつもりでいたが「おにぎり買って向こうで食べるといい、とにかく急いで乗りな」と。そこへ乗合タクシーの方が「あと2名乗れます」と募集に来た。会館の方は空きがあるならタクシーは便利、という。それなら、とおにぎり片手に乗り込ませてもらった。会館の方の的確な指示ときたら!
夜叉神のゲートを越えて南アルプス林道へ。途中、ものすごい朝焼けが見えた。心配した天気もひとまず大丈夫そう。タクシーはバスには出せなさそうなスピードでどんどん奥に進んでいく。途中運転手さんが「ここから北岳に登る人もいる」「雨が降るとここが崩れて通行止めになる」などの話をしていた。
45分後、乗合タクシーは広河原に到着。バスは1時間かかるので、確かにこれはちょっといい。
バス:大人1750円・子供730円
タクシー:大人1700円・子供1400円
※大人のみ南アルプスマイカー規制協力金を含む
大人だけの場合タクシーのほうが安いが、タクシーには子供料金の設定がない(協力金の分だけ大人より安い運賃になる)のでバスのほうがずっと安い。今回の場合、630円バスより多くかかったことになる。息子は「でも15分早いんだからその価値はあるんじゃない?」という。その通りだ。
広河原のインフォメーションセンターはとても立派な建物。ベンチに座り、白峰会館で買ったおにぎりをいただく。高山病予防のために呼吸法を確認、こまめに水分をとるためのペットボトルも準備する。トイレを済ませて、さあ登ろう。
インフォメーションセンター2階から林道に出て、つり橋をわたっていよいよ山登りスタート。最初の最初だけ、道が錯綜していて一瞬迷いそうになる。
初めのうちは沢に沿ってあまり傾斜のない道を進む。しかしもうすでに暑い。息子の足が止まる。堰堤のようになっているところで少し涼む。前日は広河原が25℃になったという。南アルプスでもまだふもとに秋は来ていないらしい。
通行止めになっている大樺沢コースとの分岐点(御池分岐)に小さなスペースがあったのでここでも少し休む。歩き続けると暑いので息子の足が止まる。このあたりに真っ赤なキノコと立派なイグチが生えていた。
この分岐から、これぞ聞いていたとおりの北岳、という急登が始まった。とはいえこれまで登ってきた幾多の不人気山などと比べればそれほどでもないので、たんたんと登っていく。
高さ日本第2位のだけあり、そしてようやく来た晴れの日であり、ハイカーさんは多い。速い方に抜いてもらい、じっくりの方にゆずってもらいながら登る。
「てんくら」とにらめっこしていたことが可笑しく思えるほど、陽がさんさんと差し込むいい天気。樹林帯を上がっていくので直射日光が当たるわけれはないけれど、それでも急坂を上っていると汗がしたたり落ちる。
しばらく汗まみれで登っていくと、ベンチが登場。これがまた、思いっきり日のあたるとこに設置されている。ちょっと遠慮して日陰で休憩。
このあたりから木の階段が増えてくる。下りてくるハイカーさんも増えてきて、ゆずりあいながら進む。
しばらくして第2ベンチに到着。ここもめちゃくちゃ日があたる。なぜなのか。
もう少し行くと道しるべがあって登山道が左にほぼ直角に折れる。ここからは斜面に対してトラバースの道、ほぼ傾斜がなくなる。やはりなんとなく、ほっとする。
こけむしたいい沢があり、息子のタオルをひたして首にまいてやる。ものすごく気持ちよさそうなので自分もやってみる。ふたりともびしょぬれである。このあたり、息子にすごいねと声をかけてくれた優しいハイカーさんとお話をしながら進む。
道がかすかに下りになって、白根御池小屋に到着。遅くなったらここでランチかな、と思っていたけれど順調に進んだので9:40。まずはトイレ、それからひと休みする。
小屋の向こうに御池があり、その周辺がキャンプスペースになっている。池の周りに色とりどりのテントがあるのはなかなかきれいな風景だった。
御池の奥から、いよいよ噂に聞いていた「草すべり」のスタートである。今年一緒に白山に登った義母によれば、人生でいちばんきつかったのは北岳、なかでもこの草すべりだという。
うん、たしかに急だ。しかし斜度だけでいうならもっとひどいところはいくつも登ってきた。目印も何もなく崩れる砂の急登だった鶴ヶ鳥屋山に比べれば、目を楽しませる花のたくさん咲いているこの草すべりはむしろ楽しい。
ミヤマコゴメグサ、ミヤマキンバイ、ミヤマシナノオトギリ、タカネナデシコ。白山でいっぱい見たハクサンイチゲもある。きれいなトリカブト、これは確信はないけれどキタダケトリカブトだろうか。ここが一面のお花畑になるころ、また来てみたいと思った。
草すべりのあと、道は急斜面を縫うようなつづら折りになる。巨大な木が倒れていて避けるように道がついている。長いベンチがあってハイカーさんたちが休んでいる。暑さはずいぶんゆるんできた。
右俣コースと合流するところで、どうやら森林限界を抜けた。真っ青な空! 行きかうハイカーさんが口々に「晴れてよかったですよね!」と声をかけてくれる。曇り、下手すると小雨を覚悟したなかでこの快晴、ハイカー全員が浮かれていて面白い。もちろん我々も浮かれっぱなしである。
このあたりから鳳凰三山がきれいに見える。7月に登った時にあちら側から見ていた北岳に今、来ている。あのときは辻山から白根三山が美しく見えたものの、三山に登ったときには厚い雲に覆われていて、むしろ黒い雲がやってくる怖い山に見えた。今日鳳凰三山を歩いたらさぞかし絶景だったことだろうと思う。
尾根に乗るちょっと前、展望台のようになっているところに女性の方がいらした。息子に元気だねすごいね、と声をかけてくれた。いろいろ話をしてみたところ、医療パトロールの方だそう。長野出身とのことで、北アルプスにも来てねと息子に言ってくれた。
さあ、尾根に乗った。下山されるハイカーさんが「仙丈ヶ岳バッチリですよ!」と教えてくれたそのとおり、この尾根に出たとたんに仙丈ヶ岳がどかーん!と見えた。これはすごい。反対側はまだ雲があるけれど、富士山が一瞬頭を出してくれた。北岳山荘に行かれるというハイカーさんと少し一緒に歩く。
小屋に向かう尾根はもう、ご褒美そのもの。周りの山々が美しく見え、ひとすじのトレースが続いていく。こんな楽しいところを歩けるなんて、山登りをしていてよかったと思う。
小屋の前、軽い岩のぼりが立ちはだかる。よし登るか、というところで息子の腹が限界を迎えた。12:30。相変わらず息子の腹時計は正確無比である。とはいえ肩ノ小屋でランチにしたいので、ここはむきぐりを与えるにとどめておく。
栗パワーのおかげもあって、岩登りをさっとクリア。あとはのんびり稜線歩きで、12:55に北岳肩ノ小屋到着。やった!
なにはなくともまずは「北岳に来ただけ。」のところで写真。そのあと、お待ちかねのランチにする。息子は迷わず鍋焼きラーメンをチョイス。ガスが出て山は見えなくなってしまったけれど、涼しい標高3000mの屋外で食べるラーメンの美味いことときたら! 気温は12℃、動いていないと肌寒い。
小屋にチェックインし、寝床(2名1組パーテーション式2段)に荷物をおいて北岳にアタックすることにする。
岩っぽい道、でもそこは日本百名山。たくさんの人が登るから、整備もととのっているし歩きやすいトレースもできている。危ないところはなく、ほぼご褒美登山。向こう側には北岳山荘、そして間ノ岳に行く吊尾根が見える。来年こそあそこを歩こう、と息子と話し合った。
ニセピークを巻いて、ほどなく頂上。ついに来た。日本第二位、非火山としては日本一の高山、北岳。息子とあれだけ登りたかった山が、いま足元にある。もうなんともいえない感動である。
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