真夏の大峯奥駈道(吉野-熊野本宮)
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- GPS
- 32:00
- 距離
- 85.1km
- 登り
- 5,663m
- 下り
- 5,840m
コースタイム
- 山行
- 18:20
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 18:30
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路 熊野本宮 −(龍神バス)− 紀伊田辺駅 −(JR特急くろしお・近鉄)− 生駒 |
コース状況/ 危険箇所等 |
熊野古道5箇所の中で、距離、難易度ともにずば抜けて高い奥駈道。熊野古道は熊野本宮詣でをするための道だが、奥駈道は通過すること自体が修行になるため危険個所が目白押し。その中でも特に注意が必要と思われる箇所を以下に列挙。 阿弥陀ヶ森・・・倒木多いため、コースをロストする危険が高い。 阿弥陀ヶ森〜行者還・・・朽ちた木の階段、鎖場、崩壊した斜面など気の抜けないポイント多い。 釈迦ヶ岳・・・切り立った崖と道を覆うほどの笹の葉が連続する。足を踏み外して転落しないよう注意。また、偽ピークも何カ所かある。 行仙岳〜笠捨山・・・トレイルが不明瞭な上、道標が途切れ途切れなのでミスコースのリスク大。特にナイトハイクする場合はリスクは増大する。 地蔵ヶ岳・・・小さな岩峰が連続。急傾斜の岩場、鎖場が連続し、気が抜けない。 ○確認で来た水場(時期によって状況は異なる) 小笹ノ宿・・・小屋脇の小川、水量豊富 行者零水・・・水量少なめだが補給可 楊枝ヶ宿・・・水量僅か補給困難 鳥の水・・・水量少ないが補給可 深仙小屋・・・水量少なめだが補給可 持経ノ宿・・・小屋から400m林道を下った先にある滝 水量豊富 玉置神社・・・境内に湧き水あり。また、境内から15分離れた駐車場に自販機あり。ここが熊野本宮までの最後の給水ポイント。 |
写真
これプラス、重たくなるがクマよけスプレーも追加。幸いクマに遭遇しなかったものの、同じ日に釈迦岳登った人のレコ読んだらツキノワグマに遭遇していてビックリした!
感想
以前から挑戦してみたかった吉野から熊野本宮までの大峯奥駈道を踏破してきた。
ネットで見る限り、奥駈道に挑戦するのに適している時期は気温が温かくなってきたGWか、暑さが和らいだ10月前後というのがほとんど。ネットでいくら探しても真夏に踏破したという記事は見当たらなかった。
「だったら自分がやってみよう!」
そんな勢いで挑戦してみたのだった。
ちなみに真夏を避けた方が良い理由は以下の通りかと(主観)
実際に歩いてみて夏場は避けた方がよいことを身を持って知った感じ。
.▲襯廛垢犯罎戮徳澗療な山の標高が低い。
最高峰の八経ヶ岳1,915m以下、多くの山が標高1,000m前後なので山の上でも麓とほとんど変わらない高温になる。
⊃緇譴限られている。
コースのほとんどは稜線上なため、水場が遠い。また、夏だと水場が枯れていることがある。
M襪糧生。
真夏の空では積乱雲が発生しやすく、落雷のリスクが高まる。孔雀岳付近で空が曇って「ゴロゴロ」と雷が鳴りだしたときは生きた心地がしなかった・・・
カテゴリーは「トレラン」としたが、実際はファストハイクスタイル。下りやフラットな場所では走ったりしたが登りは全歩き。長丁場に備えてできるだけ無理のないペースで進んだ。
また、バックパックもアルティメイトダイレクションFASTPACK30を使用。アマゾンレビューを見ると「荷物が重くなると歩き辛くなる」とか、「走行中にロールアップのストラップが緩んでくる」など、否定的な意見が見られ、すこし購入を躊躇した。
しかし、パッキングをしっかりしていれば使用に問題はなかった。
8月9日(金)仕事を終えて大阪の職場から生駒の自宅へ一旦帰宅。シャワーと夕食を済ませ、最後の準備を済ませる。奥さんと娘は翌日から実家の横浜へ帰省するため、しばしの別れとなる。
22:15に東生駒から近鉄に乗り23:50に吉野駅到着。
トイレと準備を済ませ、8月10日(土)00:10にスタートした。
寝静まった吉野の参道を抜ける。街灯や家の明かりがついていて、深夜でも明るめ。
この辺りは細い路地が入り組んでいるため道が分かり難い。一昨年、実家の両親と吉野の桜を見に来ていたので、その時の記憶を頼りに迷うことなく吉野水分神社までたどり着いた。
水分神社を過ぎると街灯や人家がなくなり一気に真っ暗闇に。下界を離れ、いよいよ山の中へ足を踏み入れるという緊張感を感じながら林道をゆっくりペースで走っていく。
山中モノレールの軌道沿いにトレイルを進み、二蔵宿小屋に到着。小屋の軒下にハンモックが吊るしてあり、外国の方が寝ていてビックリした。外国人にも歩きに来る人がいるのかと意外な感を受ける。
二蔵宿小屋を過ぎるて大天井岳を目指すが、どこで道を間違ったのかトラバースルートに入ってしまったらしく、大天井岳を登ることなく五番関に到着。そのまま山上ヶ岳を目指す。
先週末、実家の母親と麓の洞川温泉に宿泊した際、山上ヶ岳〜稲村ヶ岳をぐるっと一人周遊ランしてきた。なので鐘釣岩や西の覗はパスして山頂を目指す。出発から5時間今日で大峯山寺到着。小休止してから先を目指す。
阿弥陀ヶ森では倒木が多く、途中でロストしてしまった。「おかしいな?」と思ったら、最後にコースを確認できた場所まで戻るのが大切だと実感。これができなるかできないかが遭難するしないの分かれ道になると思う。
大普賢岳へ向かって歩いていた最中、尿意を催して立小便。すると、尿の色が見慣れない茶褐色の色をしていてビックリ!「血尿か?」と恐ろしくなった。でも、身体はどこも痛くないし気分も悪くない。余り深く考えずに先へ進むことにした。
大普賢岳から行者還までのトレイルは鎖場、朽ちた木製梯子、崩れた崖など通過するのに緊張感が半端ない危険個所が続いた。
行者還を過ぎるとトレイルはたおやかで開けた雰囲気の良い場所に。
「ここのトレイル、好きだな」などと感じながら鼻歌交じりで歩いていく。
が、この辺りから気温が徐々に高くなってきた。八経が近づいてきたせいか登山者も徐々に増えていった。
それまで緩やかな登りが続いていたが弥山の直前で高低差200mを一気に上がる激坂が立ちはだかる。暑さも手伝って坂を上る足が一気にペースダウン。
「弥山から下山しようかな・・・」と本気で悩んだほど。
暑さに苛まれながらもようやく弥山に到着。山小屋で冷え冷えのコーラとポカリを1本ずつ購入。1本300円するが、こんな山の上で冷たいジュースが飲めるなんてありがたい。持っていきたカロリーメイトと一緒に一気に飲み干すとだいぶ元気が出てきた。
弥山で休憩後は再び出発して八経ヶ岳へ。2年前に天川村川合からピストンしたときは生憎の天気で眺望はイマイチだった。しかし、この日は天気良く、遠くまで綺麗に見渡すことができた。これから向かう山山を見て、気持ちが引き締まった。
八経を過ぎると登山者は誰もいなくなり一人旅に。気温はいよいよ高くなり汗が止めどなく流れていく。
奥駈道は水場が限られている。特に暑い夏場は枯れている場合もあるため、水場についたら必ず給水することが大切だ。
弥山小屋の次の水場は楊枝小屋。日陰のほとんどないトレイルを2時間歩き楊枝小屋に到着。小屋から5分程斜面を下って水場についた。しかし、水はほとんど出ておらず、ペットボトルに全然たまらなくて_| ̄|○。仕方なく先へ進むことにしたが、この先、水が足りるのか不安を抱えたまま歩きだした。
楊枝小屋から1時間ほど歩いて鳥の水に到着。
「ここの水場も枯れているかもしれない・・・」と、心配していた。
こちらも水量は少なかったが、1分程でペットボトルが一杯になるほど水が出ていた。楊枝小屋で水が給水できなかっただけに、涙が出るほどうれしかった。しかも、ひんやりと冷たくて火照った体に気持ちよく吸収されていった。
鳥の水で給水していると、いつの間にか空が雲で覆われてきた。にわかに遠くで雷鳴も聞こえだした。
「やばいな・・・」
雨ならまだしも雷まで発生したら逃れる術がない。雷が発生したら山小屋に避難するしかないが、次の小屋まではまだ4劼眄茲澄先を急ぐことにした。
釈迦岳に近づくにつれ、道が険しさを増していった。高さのある崖を登り下りすることを何度も繰り返した。さらに、笹の葉が深く茂り、藪をかき分けながら道を進んだ。
「わっ!」
いきなり道を踏み外し、崖に落ちかけた。笹の葉で足元が隠れ、トレイルが切れているのが分からなかったのだ。
思わぬアクシデントに冷や汗がでた。
その後、偽ピークを何度か乗り越えてようやく釈迦岳に到着。疲労もたまり、釈迦岳に到着した感動も薄く写真だけ撮って先へ急いだ。
釈迦岳からの下り坂の途中、奥駈道の石の道標があった。そこに、初めて玉置神社の表示があった。
気になる距離は31.7辧
「遠いな・・・」
これまでのペースを考えると31.7劼だいぶ遠く感じた。
深仙小屋で水を補給し、今日の宿と決めていた持経の宿を目指す。深仙小屋にあった石の道標には「持経小屋まで9.4辧廚箸△辰拭
出発から18時間30分程で持経の宿に到着した。
お盆休み中だし、小屋はさぞや賑やかだろうなと思ったら、誰もいなかった。
幸い、小屋は利用可能だったので利用させていただくことに。
利用の心づけをポストにいれ、夕飯と睡眠を取って翌日に備えた。
2日目は00:30に出発。
暗闇の中、熊野本宮を目指す。
ジェル中心の補給をしていたせいか、朝から空腹を感じていた。
出発前に弥山小屋で急きょ購入した菓子パンとお茶を食した。
しかし、軽量化しすぎて食料を削ったため、やはり足りなかったようだ。
1時間に1本のペースでジェルを飲んでいたが、それでは全然足りなくなってきた。
かと言って、予定以上のペースでジェルを飲んでしまうと早々に無くなってしまう。
空腹にさいなまれながらも時間通りにしかジェルを口にできないもどかしさ。
「このままゴールできるのだろうか?」
物凄く不安になってきた。
空腹の中、2日目の最高峰、笠捨山に取り付いた。
トレイルが不明瞭なうえ道標が少なく何度もトレイルをロスト。
そのたびに来た道を戻る羽目に。余計に体力を使ってしまった。
「ただでさえ腹へってるのに・・・」
不満も自然と口をついて出てくる。
ヘロヘロになりながら笠捨山山頂に到着。
山頂に例の石の道標が。ここで、初めて熊野本宮の文字が。
気になる距離は・・・27.5辧
食糧がもつのか、水が無くなりはしないか、不安要素しか出てこない。
なんか・・・行ける気がしなくなってきた。
しかし、辞めたいといってもここは人里離れた山の中。嫌でも先へ進まなくてはならない。
2日目の最高峰、笠捨山を通過して、後のルートは幾分楽になるのでは?と、期待した。しかし、そんな淡い期待はすぐに打ち砕かれた。
次の山、地蔵岳は岩峰の集合体。登り下りは危険な鎖場が連続し一瞬たりとも気が抜けない。
「よくもまあ、こんな危険な場所をルートに選んだもんだ」
誰に向けるともなく、ふつふつと怒りが湧いてきた。
険しい地蔵岳をようやく抜けた。鎖場はなくなったがトレイルが険しいことにかわりない。さらに相変わらず空腹は収まらない。ついでに、地蔵岳で感じたやり場のない怒りも収まらなかった。
とりあえず、コース上で唯一の自販機と売店がある(であろう)玉置神社をめざすことに。
2日目も好天。時間とともに気温が高くなり、流れる汗が留まることを知らない。
出発から8時間30分でようやく玉置神社に到着。神社の境内には食料、自販機を打っている売店が見当たらない。
「どこかで食料と飲み物帰る場所ないですか?」と、神社の方にお尋ねすると、
「ここから15分歩いた先にある駐車場にあります」との返事。
(神社の駐車場なのに15分も離れているの?)訝しく思うもののすぐ解明。
玉置神社は山の上にあるため、立地条件により駐車場は離れた場所に作らなくてはならなかったとの事。そのため、駐車場から神社まで15分かかるとのことだったのだ。
来た道を戻って駐車場へ向かうことには一瞬躊躇した。しかし、熊野本宮まで16勸幣綮弔靴洞銘嵜声劼最後の補給ポイントになる。それを考えると駐車場に行かないという選択肢はなかった。
さらに、神社の方にカロリーメイトの提供を受けた。吉野から歩いてきたと話したところ、親切に私物を分けてくださったのだ。まさに天の恵み、涙が出るほどうれしかった。
自販機でコーラを買ってカロリーメイトを胃の中へ流し込む。出発時から続いていた空腹の虫がようやく収まった。
ここからようやく本領発揮できた感じ。いいペースで先へ進んだ。
大森山、五大尊岳など、標高は下がったとは言うものの厳しい登り下りは相変わらず続く。気温は最高潮に昇り、さらにトレイル上に幾重にも張り巡らせられた蜘蛛の糸がいちいち顔にかぶさりイライラが募る。
「どんだけ人が歩きに来ていないんだ!」と、不満が爆発しそうになった。
暑さは尋常ではないくらい高くなった。さらに標高が下がったせいで昨日感じた以上の体感温度になった。空腹で力が入らないのに、何か食べると吐いてしまいそうなくらい気分が悪くなった。それでも、何も食べないと更に悪いと思い、炎熱サプリとパワージェルを口の中に含み、水で無理やり胃の中に流し込んだ。
体調不良を感じながら吹越峠を越え、ついに眼下に熊野本宮を望む展望台にたどり着いた。
「やっとここまで来た・・・」
感無量だった。ゴールできないと何度思ったことか。
あとは、あの鳥居めがけて山を下ればいいだけだ。そう思った。
ところが、ここから先が長かった。ゴールはすぐそこなのに、目の前には階段の登りが現れる。さらに、道標には「熊野本宮3辧廚諒源が。やすやすとゴールさせてもらえない。大峯奥駈道は最後まで厳しい道のりだった。
山を下り、ようやく熊野川が目の前に広がった時は嬉しかった!
熊野川へ足を踏み入れた時の気持ちよさは最高だった。
真夏の大峯奥駈道。「もう一回やる?」と、聞かれたら「二度とやらない!」って、自信を持って答えられる、それぐらいしんどいコースだった。それだったからこそ、やり遂げられた充実感は半端なかった。
1日目 走行距離:55.39辧[濱冑弦4,479m
2日目 走行距離:37.49辧[濱冑弦2,814m
(SUUNTO のバッテリーロングライフモードで計測したためGPSの精度はやや落ちるかと思われる)
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