白金温泉から十勝岳連峰、大雪を縦走して層雲峡へ
- GPS
- 73:55
- 距離
- 52.9km
- 登り
- 3,741m
- 下り
- 3,036m
コースタイム
白金温泉涸沢林道登山口(12:10)→天然庭園(14:10)→美瑛富士避難小屋(16:20)
8/7(2日目)
美瑛富士避難小屋(5:50)→石垣山(6:45)→ベベツ岳(7:00)→オプタテシケ山(8:15)→双子池キャンプ指定地(9:55)→1668mピーク(11:00)→コスマヌプリ(11:25)→1558mピーク(12:20)→ツリガネ山付近1580m(13:35)→三川台(14:55)→南沼キャンプ指定地(16:30)
8/8(3日目)
南沼キャンプ指定地(6:30)→北沼分岐(7:05)→天沼(8:30)→ヒサゴのコル(9:05)→化雲岳(9:55)→五色岳(11:00)→忠別岳避難小屋分岐(11:35)→忠別岳(12:35)→忠別沼(13:10)→三笠新道高根ヶ原分岐(14:50)→白雲岳避難小屋(16:10)
8/9(4日目)
白雲岳避難小屋(7:10)→白雲分岐(8:00)→北海岳(9:20)→黒岳石室(11:35←昼食→12:10)→黒岳(12:40)→黒岳七号目リフト(14:05)→黒岳五号目ロープウェー駅(14:45)→層雲峡温泉(15:15)
過去天気図(気象庁) | 2011年08月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
白金温泉涸沢林道駐車場に車を置き出発。 (林道入口はナンバー錠で施錠されていますので、事前に営林署に鍵の番号を問い合わせる必要があります。) <帰り> 黒岳7合目からはリフトとロープウェーを利用して層雲峡へ。 層雲峡から道北バスで上川、上川からJRで美瑛、美瑛からタクシーにて涸沢林道駐車場まで移動して車を回収(詳細は以下の通り)。 ↓ 層雲峡(7:45)→上川(8:15): 道北バス \800 上川(8:28)→旭川(9:47): JR普通列車 \1410(美瑛までの乗車券) 旭川(9:55)→美瑛(10:24): JR富良野・美瑛ノロッコ1号自由席 美瑛(10:30)→白金温泉涸沢林道登山口(11:00): タクシー \6,000 |
コース状況/ 危険箇所等 |
涸沢林道から美瑛富士避難小屋までは熊笹の刈り掃い道がメインだか、途中の林間は苔むして庭園のようになっていて美しい。途中、雪渓が二ヶ所あって水が取れるが、今回、上側の雪渓が涸れていた。 美瑛富士避難小屋からオプタテシケ山を越えるまでは巨岩帯がメイン。ナキウサギも多く見掛ける。ガスった時はルート取りに注意。オプタテシケ山頂付近は道が痩せているので滑落等にも注意が必要。オプタテシケ山の雪渓で水は取れたが、もう数日で涸れそうな感じ。 オプタテシケ山頂を越えて標高1400m付近からはハイマツと低木帯が三川台まで続く。ルートは明瞭で、刈り掃われたのか道幅も広く歩きやすい。休憩時は比較的大きなハイマツに身をかくせば、日射しを遮ることができる。三川台までは水場なし(三川台もかなり降りないと水場に辿りつけない)。 三川台から南沼キャンプ指定地までは広くて快適な大雪山系らしい登山道。途中の小沼でも水は汲めるが、おたまじゃくしのようなものが泳いでいるような水なのでお勧めはしない。南沼キャンプ指定地は大量に水あり。 南沼キャンプ指定地から化雲岳まではロックガーデンで迷いやすい。実際、晴天にも関わらず何回か間違った。化雲岳から五色岳までは前半は木道、後半はハイマツ帯を行く。ハイマツは結構茂っていて道を塞いでいるが、ストレスになるほどではない。 五色岳から高根ヶ原、白雲岳避難小屋までは、忠別岳山頂を越えると多少ルートがわかりにくくなるが、ケルンなどを目印に小石の多い箇所を辿って行く。高根ヶ原はペンキが付いて随分とわかりやすくなった。白雲岳避難小屋や周辺の雪渓も水は豊富。 白雲岳避難小屋から北海岳、黒岳方面は歩いている人も多く特筆して危険箇所もない。ちなみに御鉢平を流れてくる赤石川の水は鉱水なので飲めません。 |
写真
感想
<1日目>
夏休みを利用して、毎年、悪天候で中止を余儀なくされた3年越しの十勝岳連峰縦走にチャレンジ。本当は望岳台から十勝岳を越えて行きたかったが、前日の熱中症気味の仕事疲れが抜けなくて白金温泉涸沢林道の美瑛富士登山口からスタートする。林道ゲートを通って、一番奥の駐車場に着くと車は四台ほどで空いている。我が愛車あこもここで四泊するので状態の良さそうな場所を選んで駐車して、一緒に出発した御年配とゆっくりと登って行く。照りつけるような日差しに暑さを感じていたら、雨が降ってきた。山頂は雲が発達して雷がゴロゴロ言っている。文字どおり嫌な雲行きだ。とはいえ樹林帯では木が傘代わりになって殆ど濡れなかったが、やがて樹林帯が途切れ始めると雨具を着るしかない。ブッシュの中では湿度も100%近くゴアテックスも効果がない。不快指数が極めて高いので、雨の状態を見ながら雨具を脱いだり着たりを繰り返して登っていく。
十勝岳連峰は7月を過ぎると水の確保に苦労する山で、途中の水場で水を汲もうか迷うが、小屋の直下にも雪渓があったはずで、一昨年は同時期に水が取れたから上で汲もうということに決め進むとなんと涸れている。「しまったぁ」と思いつつも「3L近く残ってるので何とかなるだろう」と、あまり気にしなかったが、後程、水の確保に苦労することになる。
美瑛富士避難小屋には先客が二人。彼らは同じ涸沢林道を早朝に出発、オプタテシケ山まで往復して今日は小屋で一泊のようだ。オプタテ山頂は霧で何も見えず、ベベツ岳あたりで落雷にあって恐い目にあったと話していた。小屋の外は相変わらずのガスの海。夕食を取った後、ラジオの気象情報に耳を傾ける。明日は高気圧の圏内だが、台風の湿った空気の影響で大気の状態が不安定だと伝えている。特に2000m級の山々が連なるような地域は雲が発達しやすいだけに「これは今年もダメかなぁ」と溜め息を一つついて、気分的には殆ど明日山を降りるつもりで就寝した。
<2日目>
朝、4時起床。天候不純。重い気持ちで朝食を取りつつ、オプタテシケ山までは行くことに決める。あきらめが悪いが、運良く晴れて縦走が続けられる可能性を信じて重い荷物も背負っていく。他の二人は美瑛岳と美瑛富士に、御年配はオプタテシケ山ということで各々出発する。私以外は小屋にデポして身軽な状態。小屋の外は相変わらずガスが掛かりドンヨリとした空気。朝露に濡れたハイマツを掻き分け、足取り重く進んでいく。すぐの岩場でナキウサギの観察などしながら、ゆっくりと登って行こうとするがナキウサギにも嫌われたよう殆ど姿を捉えられない。こんな視界の悪い中、重い荷物背負って何やってるんだろうと思った矢先、スーっと晴れ間が見え始める。奇跡到来。みるみるうちに美瑛富士と美瑛岳が顔をのぞかせる。「やったぁ」、ここまで遅かったペースが一気に早くなる。身体は縦走する気満々だ。こうなったらオプタテシケを8時30分には通過したい。同じペースで登っていた御年配に申し訳なく思いつつ、一気に離して進んでいく。晴れたのは良いが今度は急速に気温が上昇。日差しはギンギン。ハイマツ漕ぎで濡れた服も一気に乾いてしまった。ベベツ岳を過ぎた岩場で着替えようとザックを降ろした時に、ジーっと物思いにふけっているようなナキウサギを発見。こういう瞬間があるから山はやめられない。ありがとうとお礼を言って当面の目標のオプタテシケ山を目指す。
少し遅れたが8時15分にオプタテシケ到着。これから行く稜線を眺める。無数のピークを貫いて一本の道がトムラウシまで続いている。ここに立って眺めているだけで心が折れそうになる。昨晩、小屋で出会った人達に縦走することを話したら「オプタテから先は覚悟を決めないと行けないからね」と言っていたが本当にそうだ。自分の脚でこの距離が歩けるのか急に不安になるが信じて行くしかない。
休憩の後、進み始めるといきなりの痩せ尾根、片側は崩落していて落ちたら間違いなく天国に行けそうだ。地図では標高差700mはあるものの、ジグを切りながらを降りていくため、それほどの困難は予測してなかったが、痩せ尾根を越えると巨岩帯が拡がっていて結構体力を消耗する。おまけに、途中で脚をすべらせて足首をひねってしまう。幸い、登山靴のサポートで普通に歩く分には問題ないがひねると痛い。猛暑で水も随分となくなってきた。昨日、水場で汲まなかったのが効いている。何とか700mの下りを降りきったあたりで、ほんのわずかに残った雪渓から水を取る。あと数日で涸れそうな状態なので本当にラッキーだった。煮沸している時間がないのでフィルターで濾過して飲料水として確保。ここで、今朝、南沼を出発して来たという青年に出会う。お互いの走破時間を交換して、何とか16時ぐらいに南沼キャンプ指定地に着けそうな感触を得る。途中の三川台で泊まるのもいいだろうと。振り返ると降りてきたオプタテシケ山がドーンとそびえ立っている。オプタテシケ山がこんなに奇麗に見える場所はここしかないだろうなぁと感動してしばらく眺めていた。
さてオプタテシケ山を降りた段階で、標高は1400mまで下がった。ここからは標高1500〜1600m台の無数のピークを登ったり降りたりして進んでいく。最終的には標高1700mの三川台、そして1970mの南沼キャンプ指定地が目標だ。道はハイマツと熊笹のブッシュで時折、ダケカンバがクネクネと曲がって立っている。湿度は限りなく100%に近く、気温も29℃。不快指数はMAXに到達する。予測に反して水の減る速度が速い。もはや水を飲んでも汗が蒸発しないわけだから、意味はないはずだが喉の渇きが止まらない。照りつける日差しに体力も奪われていく。涼しい風でも吹いてくれれば、どうということはない標高差の緩い登りが続いていくが、休み休みのためペースは全然上がらない。これはまずい。約18kmの行程の内、まだ1/3ほどしか来ていないのにと気持ちがあせり始める。地図で残り距離を確認しながら目標到達時刻を計算しつつ進んでいく。このペースでは16時に三川台がギリギリかもしれない。
コスマヌプリを越えると比較的勾配がゆるやかになり、少しペースが回復する。それでも30分動いて休憩を繰り替えさないと熱中症になりそうだ。幸いハイマツのブッシュが続いているため日陰を探すのは容易。もう半径6km圏内には誰一人いない。慎重にいかないと本当にヤバイ。トムラウシ山の南には巨大な積乱雲が発達し始めて時折落雷の音が聞こえる。ラジオは新得から鹿追・上士幌までの大雨洪水警報と落雷注意報を伝えている。あの雲がこっち来るとマズいなと思いながらも、照付ける太陽を恨めしく見上げながら少しは曇って欲しいと矛盾する考えを抱く。休憩を挟みつつもペースは良好で時速1.5〜2km/hをキープしている。あれほど遠かった三川台の台地もすぐ近くに見えてきて、気がついたらツリガネ山を通り過ぎて最後の1580mピークに到達していた。この時点で三川台に15時、南沼16時も可能かもしれないと希望が出てくる。脚は疲労で重いが気分的には先が見えて晴れやかだ。1500mのコルに降りて最後の登りに取り掛かる。ハイマツのブッシュの中、ついに最後の水を飲み干してしまう。あとはポットのお湯が残っているだけ。渾身の力で三川台へと続く急坂を上がる。
三川台では、水が涸れているためか今日は誰もテントを張っていない。下には雪渓と沼地が拡がっていて、とても奇麗なのだが、すぐそこに水があるのに何で手に入らないんだろうという考えが先行する。三川台からは片側が切り立った崖なので、疲れた脚がもつれないよう気をつけて進んでいく。見覚えのあるトムラウシ山周辺の景色が見えてくると一緒に人の姿も確認した。キャンプ地から散策に降りてきたらしい。今日は朝から誰にも会っていないので、人が傍にいるって本当に安心する。一言二言会話をするが喉が乾いているせいか、声がかすれてうまく出せない。
南沼キャンプ指定地には念願の水が大量にあった。雪渓も例年より随分と残っている。いっぱい使いたいのでテントは水場のすぐ横にした。早速、水を取りにいく。汁物中心に食事をしてようやく落ち着いた頃にはもう日が傾いている。体力もだいぶ回復して、テントの周囲で写真を撮ったり、お酒を飲んだりしつつ、広島から来たという隣のテントの人と話をする。中々に辛い一日だったけど、終わりよければすべて良しで、すべて帳消しになってしまった。一旦、眠ったあとは空を見上げる。一片の曇りもない星空。南の空には月、北の空には北斗七星とカシオペアが明日進むべき道を示していた。
<3日目>
翌朝4時30分起床、青空が拡がっている。今日の予定は全くの白紙。幸い天気も良いということで、とりあえず化雲岳まで行くことにする。トイレブースのそばにテントを張っていたおっちゃんと暫く話をして、6時30分に出発。今回はトムラウシ山は登らずに北沼のエスケープルートを通っていく。このルートは花と沼と雪渓が合わさって、ものすごくきれい景色が堪能できる。殆どの人はトムラウシのピストンで満足して帰ってしまうが、北沼を経由して一周しても1時間も掛からないのでお薦めだ。北沼の南にある雪渓が構成する名もなき沼の水面には、北沼からロックガーデンに抜けるピークがきれいに映り込んでいた。
北沼にもトムラウシ山が映り込んでいたが、登山ルート上からは全部が奇麗に水面に収まるポイントがない。北沼からピークを越えるとロックガーデンが眼下に拡がる。その名の通り一面の巨岩帯。噂には聞いていたが、これほど広大とは思わなかった。ナキウサギも時折顔を出して動き回っている。ここで昨日隣のテントにいた広島の彼が追い付いてきた。彼は南沼でもう一泊。今日は化雲岳まで行ってトムラウシ山の全体を写真におさめたいと言っていた。そんなわけで彼と化雲まで即席パーティを結成。ロックガーデンからはお互い幾度もルートを見失いながら進んでいく。晴れててもこんなにルートを間違うんだから、ガスったらとんでもないことになりそうだ。ようやくロックガーデンを抜けたら、天沼があまりにきれいだったので、ここでしばらく休憩にする。イワイチョウの白い花が奇麗に咲いている。時折、雪渓の氷が割れて水に落ち、水面に波紋を形成する。穏やかな大雪に心から癒される。
更に進むと右手にヒサゴ沼が見えてきた。ヒサゴ沼は良いところだが、稜線から標高を200mぐらい下げるのと、人気の山小屋でいつも満杯のため敬遠していたが、来年にでも季節をずらして行ってみたくなる。化雲岳の山頂に着くとトムラウシ方面は雲が出てきたが白雲岳方面は良好。ここで電話して層雲峡の温泉宿が取れれば、白雲岳避難小屋にもう一泊して層雲峡に行くルートにしようと決め、電話をするとあっさり取れてしまう。時間が少し早いが、お腹が空いたので少しだけ食事をして、広島の彼と別れて出発する。化雲平のチングルマはほぼ終了でエゾカンゾウやリシリリンドウなどが見られる。昨日の誰とも会わないような状況が一変して、高根ヶ原のまでの区間では結構な人数とすれ違う。みんな夏休みということで思い思いのルートで山を楽しんでいるようだ。
高根ヶ原の中間あたりからは脚が重くなってきて急速にペースが落ち始める。昨日の疲労が効いているらしい。まぁ、それでも「昨日の辛さを思えば楽勝だ」と言い聞かせて進んでいく。白雲岳避難小屋の近くの雪渓の水で頭と顔を洗う。しょっぱい水が目に入ってしみる。よほど汗がたまっていたらしい。石鹸なしとは言えサッパリして、残り200mの道程を歩く。最後は道を覆い隠すハイマツにすらてこずって進めないほど疲弊していたが何とか到着。小屋は私も含めて5パーティ。今日はとても空いている。白雲岳避難小屋は管理人さんが二人いて、今回は小さい方の管理人さんだ(名前がわからないので便宜上大小で呼んでいる)。前回お世話になった大きい方の管理人さんは明日上がってくるらしい。途中で会えたらいいなと思いつつ、2Fの階段傍に陣取ると、山の情報を交換したり、水や食事を用意したりであっと言う間に日が暮れていく。五色岳の稜線の奥には発達した積乱雲、忠別岳の上空にはガスがどんどん高く伸びていき、奇麗な夕暮れの景色を演出していた。
夜は何故か21時過ぎに目覚める。準備をして外へ。今日も南の空は月が明るい。北側の小泉岳の稜線上は星でいっぱいだ。何枚も写真を撮り続ける。暗くてファインダーに何が映っているのかわからないので撮ってみてのお楽しみ。写真にすると肉眼では見えなかった情報も見えてくる。高根ヶ原の平ヶ岳よりの向こう側は雲に覆われているようだ。但し、低い雲。どうやら明日もいい天気になりそうだ。
<4日目>
朝4:30起床。写真を撮りに小屋の外にでる。筋肉痛で身体が痛い。天気はやや薄曇りだがそれでも今回歩いてきた山々が全部見える。忠別・五色・化雲・凡忠別と一周するループが大きな噴火口のようで、もしこれが爆裂火口の跡なんだとしたら、かつては4000m級の山があったかもしれないなどと想像してみる。小屋の周囲を散策していて、よくよく思えば避難小屋もペンキを塗りなおしたばかりでピカピカだったので写真に収めておく。
この3日間、よく眠れてはいるが長い旅も今日で終わりと思うと、気が抜けてしまいダラダラと朝食を取って準備をする。管理人さんに挨拶して、避難小屋出発は7時過ぎ。小屋のクモイリンドウは一輪だけ咲いている。一緒に泊った女性が10時ぐらいには全部が開くと言っていた。小屋の周囲はトカチフウロやダイセツトリカブトが見頃、チングルマは綿毛になっている。ゆっくりと登っていると後から出発した夫婦に追い越されてしまう。でも体力的にはこれがMAXスピード、花などの写真を撮りながら行っているから尚更遅い。白雲分岐に着くと、銀泉台に降りる夫婦に手を降って別れる。
あとはひたすらゆっくり進む。北海岳から黒岳の間は雪が遅くまで残っているため、結構花が楽しめる。見頃はチシマクモマグサで、コマクサやイワブクロなども見られる。チングルマの綿毛も奇麗で、思わず風景をバックに写真を取ってしまった。北海沢への下りで白雲小屋の管理人さんとバッタリ出会う。子連で来ると聞いていたが明日から天気が崩れるので一人で来たらしい。少し立ち話をして「紅葉時期にまた行きます」と約束をして別れる。
当初はのんびりと山を楽しみながら降りて、黒岳石室でお疲れさんのビールを飲もうという計画だったが、長旅の疲れと容赦ない日差しのため、北海沢に降りた辺りから熱中症気味になってきて気持ちが悪い。石室に辿りついた後もビールどころではなくて、日陰で冷たいポカリで首もとを冷やしつつ何とか凌いでいる状態。日陰にいると幾分楽だが、太陽の下に出るとフラっとする。管理人の後藤さんに、例によって「泊ってくかい?」と声をかけられるが、層雲峡に宿も取ってるし、明日の天気も悪そうなので降りると言って、しばらく昼食をとりつつ、山の話をしたりしながら、日陰で休んでいると大分気持ち悪いのが治まってきた。太陽が雲に隠れた瞬間を狙って名残惜しいが石室を出発。黒岳のピークを越えて反対側にでるとガスがかかって太陽を遮ってくれる。これはありがたい。リフト乗り場に着いたらエゾシマリスが出迎えてくれた。
宿泊先の銀泉閣では、風呂に入って、待望の美味しい食事とビール。和風懐石とバイキングの組み合わせで、驚いたことに飲み放題もついている。それで10,000円なのだから何とリーズナブルなこと。結局、4杯ちかくもビールを飲んでフラフラになりながら部屋に戻り、軟らかい布団で眠りについた。
<5日目(山行ではなく車を回収しに行く)>
朝5:30起床。なんだか山の生活で早起きがすっかり板についてしまった。朝風呂につかって、朝食を食べた後、早めにチェックアウト。白金温泉の涸沢林道に置いてきたあこを迎えに行く。まずは道北バスで層雲峡から上川に、去年も言ったがここで乗り換えたほうが安くすむ。普通列車に揺られること1時間ちょっと。旭川駅に近づくと何やら富良野線が高架になっていることに気がつき、そのまま列車が駅に入線すると、「なんじゃこりゃぁ」、鉄骨を美しく組み合わせた近代的な駅になっている。もう急行宗谷が走っていた頃の面影はまるでない。いつの間にこんな立派なのができたんだろうと写真をとっておく。
その後は富良野・美瑛ノロッコ1号で美瑛まで移動。接続が良かったのでこれにしたわけだが、テーブル席になっているのでお茶やお菓子を並べて食べながらの移動ができたのは嬉しかった。美瑛からはタクシーで涸沢林道に。乗車前に「いくらで行けますか?」聞いたら意外にも6,000円ぐらいとの回答が返ってくる。山岳代行業者に車を運んでもらったら20,000円を越えてしまうのに、昨日の温泉宿の宿泊費を入れてもお釣りがきてしまう。タクシーの運ちゃんは元自衛隊員で、上ホロカメットク山の300階段も自衛隊が整備したんだとか色々な山にまつわる裏話を教えてくれた。ゲートを開けてもらって涸沢林道に入り、駐車場まで500mほどのところでメーターが6,000円を越えるが「最初に言ってた金額でいいよ」とメーターを止めてくれる。何ともありがたい。
さすがに5日放置したから車上荒らし等が心配だったが、あこは全然無事で何食わぬ顔で
「あっ、帰ってきたんだ」的な感じ。下界はとにかく暑かったので、このあたりで遊んでから帰ろうとタクシーの運ちゃんに教えてもらった青い池に向かう。美瑛川の砂防施設に温泉成分を含んだ水が溜まって青白くなっているらしい。先にある美瑛川も青白い色をした水が流れていた。
その後は更なる涼を求めて白金不動の滝に行ってみる。2段に別れた滝から水が勢いよく落ちてきて、風が吹く度にものすごく涼しい。滝を中心とした遊歩道の中には、昭和の初期に作った88ヶ所巡りもあったが、もうほとんど使われていないのか道が不明瞭。何故こんな場所に88ヶ所巡り作ったんだろうと思いつつ滝を後にする。
その後はいつもの十勝岳温泉凌雲閣に向かう。白雲岳避難小屋で出会った横浜から来た夫婦が凌雲閣に新しい犬がいたと言っていたので見に行くが、カメラを向けた途端に警戒された挙げ句に吠えられた。こりゃ写真はだめだと先に温泉に入ることに。温泉では上海から来た親子連れと話をする。英語で話すのは随分と久しぶりだったけど以外と覚えているもんだ。中学生の子供達(双子)がポケモン好きで、今回の彼らの主目的はポケモンセンターでのショッピングだったらしい。父親のほうはと言うと、上海は結構ゴミゴミしているので、この景色はすばらしいと北海道を満喫しているようだった。風呂から上がると凌雲閣のおっちゃんに犬の名前を聞いてみる。ミルクとシナモン。おっちゃん曰くゴン太と違ってバカ犬で営業妨害だとグチグチ言っていたが、凌雲閣に犬がいないというのも寂しい話だし、これで良かったんじゃないかと思う。外に出て眠っているすきにすかさず2匹の写真を撮った。多分白いほうがミルクで、茶色いほうがシナモンなんだろう。
5日間の長い旅もいよいよ終わりで、山行自体は辛かったが、なんだか色んな出会いが会って面白かったなと思いつつ帰路についた。
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