槍ヶ岳・飛騨沢


- GPS
- 17:52
- 距離
- 28.5km
- 登り
- 2,284m
- 下り
- 2,234m
コースタイム
- 山行
- 5:05
- 休憩
- 0:43
- 合計
- 5:48
- 山行
- 9:52
- 休憩
- 1:58
- 合計
- 11:50
天候 | 二日間とも快晴!小屋の中の気温は夜間でも0度、2日目の出発時は-8度、一番寒いタイミングで-10度、日中は2度。快晴なので太陽が当たっている間は体感気温はもっと高い。風は基本的になかったが、乗越を越えてから多少の風があった。 |
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過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
1600mくらいから夏道は雪が繋がるが、シール使えるのはチビ谷を過ぎてから。雪が少なくなって通過に若干苦労する箇所あり。 |
その他周辺情報 | 松本ICを降りて最後のコンビニは新島々手前のセブンイレブン。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
装備
備考 | 穂先にまで行くのであれば、12本爪アイゼンとピッケルは必携。朝早いうちは飛騨沢がガチガチなので、クトーがないと厳しい。 新穂高からしばらくはシール歩行出来ないので、アプローチシューズ利用。デポる前提だったので、ミドルカット(足首から雪が入るので)+チェーンスパイク(途中凍ってた)が一番良かったと思う。 |
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感想
3年前の4月に訪れた槍ヶ岳は、快晴無風。これ以上ないというコンディションだったのに・・・私の技術力、体力の不足のせいで、パーティーの残り3人に槍登頂のチャンスを逃させてしまった(https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1436044.html)。このときの口惜しさと申し訳なさはずっと心から消えることはなく、「槍ヶ岳の穂先まで、自分の力で行く」というのが、この3シーズンのテーマになっていた。それ以降、「山スキーで必要なん?ww」といわれつつもアイゼントレを毎シーズンやり、沢にも手を出し(なぜ沢なのかはなかなか分かってもらえないので省略)、沢のために岩にも手を出し・・・と、その後の山活動の広がりはこの槍が背景にあると思っても過言ではない。それくらい、特別な思いを抱いていた。
昨年はコロナ禍(と自分の技術力不足)で断念、今年も正直なところ2月まではyoshikitoのシール歩行技術ではサポートがもう一人いないと無理だと思っていた。が、入笠山をきっかけに一気にコツをつかんだらしく、シール歩行問題も解消。強力なリーダー抜きでの山行経験も1シーズン積み、スキー歩荷トレ、宿泊山行の経験も積んだし、これならいけると確信を持つ。あとは「yoshikitoとtartletの泊まり山行は必ず悪天中止」という謎のジンクスだけが心配だったものの、この週末は高気圧に覆われ、約束された晴天。これ以上ないチャンスがやってきた。
2時にピックアップしてもらい、新穂高温泉には7時頃到着。狙い通りの快晴で沢山の登山客がいたが、どうもみんな西穂方面に行ったらしく、槍を目指す人は少数。例のごとく雪が出てくるのはしばらく先なので、駐車場からは板&ブーツを担いでアプローチシューズで進む。私は先週より寝袋も小さくしたしビールも持ってないのに、何故か23kg。重い。yoshikitoは本気のパッキングで35Lに抑えていたので驚異的。
少し前の記録では白出沢あたりからシール歩行に切り替えられたらしいけど、どう見ても雪がつながっているように見えず、結局シール歩行に切り替えたのはチビ谷を過ぎて沢に降りたところ。ここでアプローチシューズをデポしてGPSでマーカーを残す。ついでに水づくりを避けるために沢の水を各自2.5L担ぐことにする。ここで諸々やっている間に、上流から3人組のパーティーが来たと思ったら、岐阜県警の山岳警備隊の人が南岳の遭難者を探しているという。我々と同じく山スキーヤーらしく、気が引き締まる思いがした。
シール歩行に切り替えてもなかなか素直には通過することができず、崩れやすい場所や通りにくい場所が点在する。特に滝谷の沢が出てしまっていて、それをどう越えるかに苦労させられた。よく考えると登山者のトレースを素直に追って渡渉すればよかったのだけど、上部に沢が繋がっている個所があったので、つい高巻きしてエラく苦労させられることになった。若干木登り気味?その後もワンポイント悪いところがあり、板を受け渡しながら登ったり。二人いるから何とかなるけど、ソロで来ている人は苦労しないんだろうか。
滝谷を越えると快適な沢地形が続くようになり、沢筋も埋まって安心してシールで上がれるようになった。結局槍平小屋に到着したのは14時ごろ、6時間弱の行程。前に来た時より行程も大幅に縮まっているし、何よりも気持ちの余裕が全く違う。前に来た時はバリエーション系登山をほとんどやったことがない状態だったし、落ちたら沢、なんてシチュエーションも初めてだったわけだから、そりゃ怖くても仕方ないわな。その頃と比べると、体感的な難易度は全く異なるので、多少は成長したんだろうか。
随分早く着いたのでイグルー作る?という話が一瞬出たものの、ベンチを作ってお茶だのゴハンだのにしようということに。快晴で汗だくだく、ビールが恋しくて仕方ない。本番山行だからとビールを置いてきたのは、やっぱり失敗だったかもしれない。結局日が落ちはじめると寒くなり、夕飯は小屋の中で。他はソロ3人だけで、17時には早々に寝てしまっていたので、その頃から夕飯をダベりながら食べ始めたのは肩身が狭かった。その状況で話をしているわけにもいかず、18時半ごろには就寝。耳栓をしていたものの物音で数回起きたが、睡眠不足だったからかかなり熟睡できた。(ちなみに一番早い人は1時半には出発してた。日の出狙い?)
二日目は3時起床。一人を除いては出発済み、必要な荷物だけをザックに入れ、残りは小屋にデポ。4時半には出発。シールは良く効き、ルートも明確。すぐに明るくなってきて、快適な登り。あれー、こんなに楽だったかな?と思っていたら、前回と同じく沢が東に大きく曲がるあたりで急斜面&ガチガチになってきた。シールだけで行けなくもないけど、無理をしても仕方ないのでクトーを使うことにした。こんな斜面でシールだけで登っていた過去の私を誉めたい。というか、私の師匠はシールだけで問題なく登っていたのは、本当に驚異的。。
クトーを使っても直登するには結構厳しい角度。ヒールリフトは1段にして、クトーを効かせ、少し斜め気味に登って高度を稼ぐ。乗越までシールで上がるのは無理だと分かっていたので、最後の急斜面が始まる前の2650m付近で12本爪アイゼンに切り替えた。そこからも直登は厳しく、斜めに登っていく。他の人のトレースがまっすぐ直登なのはすごい。時折後ろに広がる絶景を眺めつつ、これから滑る飛騨沢のルート確認をしつつ、ついに飛騨乗越まで到着。快晴の空に、槍の穂先が輝いていた。
ここでスキー板はデポ、槍ヶ岳山荘へ移動してポールをデポしてピッケルに持ち替える。ついにあの時の雪辱を晴らすことができると、気分は高揚。と同時に、さすがに冬季の槍の穂先に向かうということで、ハシゴも出てるし鎖も半分出ていると知りつつも、少々緊張。夏の槍ヶ岳は登ったときがあり、その時は物凄く怖いと思った覚えがないのだけど、実際に積雪期に登ってみると安定感が悪いスキーブーツに12本爪アイゼンだということもあって、なかなか緊張感を強いられる。それに岩や鎖が必ずあるわけではなく、ピッケルをダガーポジションにして確保する必要がある個所も。計画書に「ピッケル:任意」と書いたのは失敗だった。こりゃ必携だ。yoshikitoがちゃんとフルサイズのピッケルを持ってきてくれていて良かった。最後の長い長いハシゴを登ると・・・ついに槍ヶ岳の祠が見えた。快晴無風の空の下、雪に覆われた北アルプスの山々が360度広がる。「あー、ついにBCで槍ヶ岳に登ることができたんだなぁ」と思うと、目ににじんでくるものがあった。続いて登ってきたyoshikitoも良い笑顔。yoshikitoが35Lザックに忍ばせてきたコーラで、祝杯。この光景と達成感は、一生忘れることはないと思う。
一通り写真を撮ったり景色を楽しんだあとは、登りより怖そうな下り。実際、下りのほうが気を遣うし、足場を探すのが難しかった。ダガーポジションで確実に確保しつつ、アイゼンが安定してかかるところを探す。こりゃー、アイゼントレをしっかりしていないと無理だわ。3年前の私はアイゼントレの意味など知らない頃だったのだから、むしろ登頂を前に白旗をあげたのは正しい判断だったんじゃないかと思える。あのときに無理に突っ込んでいたらと思うと、ぞっとする。3年前は、穂先への挑戦権を持たないまま槍ヶ岳に来ていたことに気付かされて、心の中で苦笑した。無事に山荘まで戻ってきたところで、yoshikitoとグーパン。が、「山スキー的にはこれから本番ですよ」と言われて、まだこの山行で一回も滑っていないという事実に今更気付いてしまった。
山荘前で休憩、飛騨乗越に戻っての滑り始めは11時半ほど。岩場をアイゼンのまま降りて、滑り込めそうな位置に移動してから滑走モードに。岩場をかわしてから滑り始めるも、上部はこの時間でもガチガチで、シュテムターンや踏み替えでターンを切らざるを得ない。が、2600mあたりくらい?から雪も緩み始め、北アルプスの広大な沢で好きなようにシュプールを切る。これは気持ちいい事この上ない。苦労して登った沢も、ものの30分で槍平小屋まで戻ってきてしまった。
ここで再度パッキング、トリッキーになりそうな下山滑走のはじまり。しばらくは樹林帯、その後は明確な沢を滑っていく。時折沢は割れ始めているけど、ルートに気を付ければ問題ないレベル。行きに苦労した滝谷のところは、一人渡渉してから板を渡して二人目が渡る作戦で突破。アプローチシューズをデポした地点まで戻り、ここから再び板を担ぐ。ここからが地味に長い下りの始まり。ローカットシューズには雪が容赦なく入るし、時折踏み抜きがある。3時間弱のツライ下山作業をこなして、ついに新穂高温泉に戻ってきた。さすがに疲れてはいたけれども、倒れる寸前だった前回に比べたら、まだまだ体力に余裕がある。気持ち的にも十分余裕があったのは、この3年間の成長ってことかな。
天候にも恵まれ、最高の状態でリベンジを果たせて、やっと自分の中で一区切りついた気がする。今シーズンの目標山行に付き合ってくれたyoshikitoには本当に感謝。今シーズンで間違いなく最高の山行になりました!!
【備忘録】
・すき焼き(2人分):牛肉細切れ250g、ネギ2本、春菊適量パック、厚揚げ小1枚、マロニー、卵2個、うどん2袋、アルファ米1袋、割り下(醤油80cc、味醂80cc、酒40cc、砂糖大2.5、だしの素適量)。明らかに量が多すぎた。炭水化物はアルファ米があればうどんは1つでOK。味も濃すぎたので、飲み干さないとならないことを考えると醤油60ccを軸にした量で充分そう。厚揚げは崩れにくいしカロリーそこそこ高いので、豆腐よりGoodだった。
・寝袋はモンベル#3を利用、これにフリース、ダウン上下でまぁまぁ耐えられる。寝袋にハードシェルを入れると暖かい。
・行動中は基本的にLWアンダーの上にTシャツ。これに体感にあわせて長袖Tシャツ、フリース、ウィンドブレーカ―を組み合わせて調節。ハードシェル上を雨具に替えるか悩んだものの、飛騨乗越を越えて風があったときはかなり寒かったので、シェルがあって良かった。が、雨具+フリースで耐えられるような気もしなくもない(写真映えはしないけど)。朝はかなり寒いので、防寒用の帽子はやはりあって良かった。ヤケーヌがあればバラクラバは不要。
・軽量ピッケルのリューシュ、常に持っている120cmスリング&環付カラビナをたすき掛け(スリングは2つ折りで両端をビナで止める)にして、ピッケルに60cmスリングをカウヒッチでつけ、ピッケル側にオーバーハンドで輪を作って使った。手で持つ、体に付ける、は十分できたので、これで問題なさそう。
・荷物にまだまだ無駄が多い。今回確実に要らなかったのは、お玉、シェラカップ1つ、多すぎた行動食。焚火缶は小×2を二人で分担したほうがお互いに省スペースになるかもしれない。
・使ったガス、70g。水を作らずに済んだのが大きいんだろう。
・食べた行動食、豆デニッシュ(430kcal)、クルミ蒸しパン(520kcal)、メイプルパン(490kcal)、柿ピー少々。これらのパンを軽いものにすれば場所も重さも楽になるとしりつつも、パン好きな私。。
・水は往路のチビ谷付近で2.5Lを二人で満タンにしたら、復路の同位置まで十分足りた。滝谷で汲んでも良かったかも。帰りも念のためナルゲン満タンにしといたが、暑さで喉が乾いたので正解だった。
山スキーでは初の3000m峰、槍ヶ岳に行ってきました。
tartletさん、目標山行達成おめでとうございます。
強い人なら日帰り行程でこなしてしまうのだが、過去記録を読んでいると泊りでも辛そう。そもそも山スキーの記録を載せている人は、無雪期標準よりも数段階強い感じがある。最近は調子上がってきてきたので、泊りであれば問題なく行けそうと感じていたものの、tartlet氏の話からもこれは本気山行だなと思い、いつも以上に入念に準備を始めた。
1日目 01:45発
新穂高温泉は遠い、基本的に遠出となる山スキーのいつも以上にさらに遠い。運転を交代しつつ、できるだけ寝ながら移動。到着して準備して8:30発。長い林道から始まるが、気合が入っているのかtartlet氏の足が速い。氷点下なのに玉のような汗が!と言っていたが、そらスキー担いで上り坂を早歩きしたらそうでしょうと思った笑
チビ谷あたりからシールに切り替える。滝谷を過ぎた辺りからは雪が繋がり出して右俣沢の中を歩ける。振り返るとアルプスの山並み、無雪期もだがアルプスはやっぱり良い。予想していたよりも短時間で避難小屋に到着し、ゆっくり過ごした。お茶して夕飯食べて早めに就寝。軽量化のために寝袋は小さいものにしたが、シュラフカバーと寝袋の間にいろいろ詰めると暖かい。先日の山行で教えてもらったシュラフカバーの底に冬靴、ではなくスキーブーツのインナーを詰めてみたが防寒性能抜群だった。自分は足が冷えて眠れないことが多いが、今回はホクホク。シールも結構暖かい。水はやっぱり冷たかった。プラティパスを忍ばせた右半身だけ熱が吸われた。夜中に用を足しに外へ出たが、快晴で星が綺麗だった。
2日目、4:30発
歩き始めは思っていたよりもシールが効く。標高が上がるに連れて、雪面がより硬くなり2500m辺りで滑り始めたのでクトーを装着。上手くなれば、まだ登っていけるそうなので訓練が必要だな。これ以上は無理というところでアイゼンシートラに切り替えて急斜面を登る。この辺りで北アルプスの山に朝日が差し始めて、良い感じになってきた。硬い斜面も緩んでくれそうな気配。ピンクテープに導かれながら、飛騨乗越に到着。まだ山頂に立っていないが、この時点で壮大な景色が広がっていた。スキーをデポして、槍の基部へ。気を引き締めて登り始める。感想としては、結構難しい。いろんな技術の基本ができていないと危ないだろうなと思った。山岳会に入りいろいろ教えてもらったけど、それぞれの要素を含んでいるようだった。急斜面でダガーが使って、雷鳥さんありがとう。岩と氷の間にハンドやフィンガージャムが決まって、yachimayuさんありがとう。アイスクライミングの基本動作が効いてきて、Yさんありがとう。ミックスで岩がでているところは、アイゼントレ企画した自分良くやった。などと感じながら登った。いろいろやってて良かった。そして遂に山頂へ。絶景の一言に尽きると思う。槍ヶ岳に来たのは初めてだけど、いろんな山から何度も見た。自分は山座同定が得意ではないが、槍は分かりやすい。いろんな場所から見えるということは、当たり前だけどいろんな所が見える。360°パノラマで快晴。無雪期と違って山頂にいるのは自分達だけ。来て良かった。北側には湯俣から北鎌尾根、そのうち行きたい。東側は表銀座、無雪期は人が多そうなので積雪期かな。燕山荘は年越し宴会できるらしいので気になる。南側はキレット。西側は歩いたことのある裏銀座縦走路が良く見える。日本オートルートもやりたいな。ひとしきり眺望を楽しんだ後、慎重にクライムダウンして槍ヶ岳山荘のベンチで休憩した。飛騨乗越から少し下ってから、スキーを履いた。所々岩が露出していたが、上から見て行けそうなラインが繋がっていたので良かった。ここからはアルプス、飛騨沢の滑走になる。ハードパックの急斜面で緊張するが、景色が最高に良い。大きい。晴れてるし。
やっぱりあっという間に槍平まで滑走し、パッキングして再出発。まだスキーは履いているが、しばしば割れている箇所があるのでライン取りに注意しながら。この辺りは春スキーの難しさでもあり、面白さでもあると思う。デポした登山靴を回収して、あとは延々と歩く。長かった。途中まで踏み跡が良く分からなかったので探りつつだったが、ルートが明瞭になってからは無心だった。ロボットのように足と手を動かし続けた。やっと新穂高に下山して、お風呂入って。この日は行動時間が12時間程度、久しぶりに長時間行動だった。面白い山行でした。ありがとうございました。
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