北アルプス中部周遊(水晶岳・鷲羽岳・薬師岳と湯俣温泉・高天原温泉)
- GPS
- 42:06
- 距離
- 74.6km
- 登り
- 5,626m
- 下り
- 5,573m
コースタイム
- 山行
- 2:35
- 休憩
- 0:09
- 合計
- 2:44
- 山行
- 8:07
- 休憩
- 0:02
- 合計
- 8:09
- 山行
- 5:27
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 6:17
- 山行
- 6:42
- 休憩
- 4:09
- 合計
- 10:51
- 山行
- 8:30
- 休憩
- 2:08
- 合計
- 10:38
天候 | 9/21:晴れ,9/22:雨,9/23:晴れのち曇り,9/24:晴れ,9/25:晴れ,9/26:雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
タクシーは次の2社のいずれかを予約すること ・アルピコタクシー (0261-23-2323) ・アルプス第一交通 (0261-22-2121) 帰り:折立=(タクシー100分・18,500円)=富山=(北陸新幹線)=東京 タクシー会社は大和交通 (076-421-8181) を利用,バスは本数が少ない |
コース状況/ 危険箇所等 |
9/21 (晴れ) 信濃大町=(タクシー)=高瀬ダム〜湯俣温泉 信濃大町駅には11時15分にあずさ5号で到着.出発前に駅近くの昭和軒で腹ごしらえをする.大きなカツののったソースカツ重にサラダと味噌汁がついて1000円と大変お得だ.昼食後,信濃大町駅に戻り予約していたタクシーが来るのを待つ.12時半に駅を出発し七倉を経て高瀬ダムに向かう.途中,七倉の管理事務所に立ち寄って登山届を提出した.七倉から高瀬ダムへは歩いて入ることもできるが,タクシーに乗れば6kmほど距離を稼げる.初夏や晩夏の客が少ない時期には,工事関係車両の往来が多くなるらしく,通常より時間がかかることもあるそうだ. 高瀬ダムに到着後,準備体操をして出発.高瀬ダムの右岸に沿って林道を進む.初めのうちはほとんどがトンネル区間となっている.ダム湖の南端あたりで林道が終わり,本格的な登山道に入る.この先は高瀬川の右岸を歩いて徐々に高度を上げていく.湯俣温泉の晴嵐荘は高瀬川の左岸にあり川を渡る必要がある.しかし,もともとかかっていた吊り橋が流失してしまったため,サンダルに履き替えて渡渉する必要がある.実際の地図よりもかなり手前で川原に降りて,トラロープに従い渡渉する. 湯俣温泉の晴嵐荘はテント場を備えた浴場付きの山小屋で,内湯に入るには1人1000円かかる.水場やお手洗いも併設で,こちらはテント泊なら無料で利用できる.ここより少し上流には,湯俣温泉の源泉で国の天然記念物の噴湯丘があり,川原に温泉が湧いている.しかし,湯温の調整が難しいので内湯を使った方が良いだろう.また,噴湯丘まで行こうとすると,複数回川を渡渉する必要がある.特に最後の渡渉は平常時でも川が深く,慎重に渡れる場所を探す必要がある. 9/22 (曇りのち雨) 湯俣温泉〜水晶小屋 晴嵐荘の前に建てられた「竹村新道」の看板から登山開始.ここから先,水場がないので十分に水分を補給しておく.登り初めてすぐに尾根に取り付き,急な坂を登っていく.途中,標高1644m付近には展望台があるものの,通りかかった時にはまだ暗くて何も見えなかった.道端に草刈機が置いてあったので,この辺りは刈り払われているのだろう.日陰の森 (木かげ処) 付近からは笹が登山道にせり出している箇所もある.特に朝方は露で濡れているので,スパッツがあった方が良いかもしれない. 湯股岳付近からは木々が色づき始め,傾斜も落ち着いてくる.しかし,ここで雨が降り出したので雨具を着用した.湯股岳からは晴れていれば槍ヶ岳や野口五郎岳が望めるのだが,到着時にはすでにガスで何も見えなくなっていた.この先,一旦100mほど下り,再び400mほど登り返す.この辺りで再び傾斜が増し,標高も相まって徐々に苦しくなってくる.南真砂岳に着く頃には完全にガスに包まれており,山頂は素通りして先を急ぐ.崩落地の縁を巻き,真砂岳をトラバースすると真砂分岐に至る. ここまでの登りは本当にしんどくて,頼まれても2度と登らないと思う.これまでに日本3大急登と呼ばれるコースは全て歩いたが,竹村新道はそのどれよりもしんどかった.水晶小屋の方や,途中ですれ違った方の反応から察するに,竹村新道はどうやら下りで使うのが普通らしい.水場がないので荷物も重くなりがちで,辛い登山になることは覚悟しておいた方が良いだろう. 真砂分岐からは100〜200mほどのアップダウンを経て水晶小屋に至る.一瞬ガスが切れて眼下に紅葉が広がるタイミングもあったが,小屋に着く頃には雨も風も強まっていた.水晶小屋は標高が2900m近く水の確保が難しいため,1人が利用できる水の量が厳しく制限されている.そのため,多めに水が必要な場合には岩苔乗越まで往復1時間以上をかけて汲みにいく必要がある.しかし,お手洗いはとても清潔で,暖かいお布団も用意されていて,素晴らしい山小屋である. 9/23 (晴れのち曇り,風強し) 水晶小屋〜水晶岳〜赤牛岳〜赤牛岳北西稜線2750m付近 (往復) 前日雨を降らせた前線は東に抜けたものの,新しく日本海に現れた低気圧に吹き込む西寄りの風が朝から非常に強い.午後からはにわか雨の予報もあり,前日の疲労も抜けていないことから,本来予定していた薬師見平へのアタックは断念した.しかし,ここまできて手ぶらで帰るのも悔しいので,薬師見平の偵察だけはすることとした.水晶小屋から水晶岳を経て赤牛岳までは開けた稜線で,眺めは良いが吹きさらしとなるため非常に寒い. 赤牛岳の山頂からは読売新道が延びる北東稜ではなく,北西稜に足を踏み入れる.道はついていないものの,稜線の左側を伝っていけば容易に先に進むことができる.浮石が多いため落石には要注意だが,難易度自体は全く高くない.薬師見平の見えるポイントまで進み,薬師見平を観察した.9月になっても大きめの池塘が残っており,浄水器さえ持っていけば水は汲めるだろう.ただし,途中の稜線にテントを張れる場所はないので,薬師見平で1泊する必要があると思われる.今回はアタック断念となったが,薬師見平単体に絞ってアタックすれば到達できるという確信が得られたので,是非遠からずリベンジしたいと思う. 9/24 (晴れ) 水晶岳〜鷲羽岳〜祖父岳〜高天原山荘 前日とは打って変わって風も弱くスッキリと晴れた日となった.日の出前に水晶岳へと向かう.野口五郎岳からのご来光が素晴らしかった.北アルプスの丁度真ん中に位置する水晶岳からは,360度全ての方向に北アルプスの名峰を望むことができる.立山・剱や白馬三山,槍・穂高,さらにその奥には八ヶ岳や富士山,白山まで見える.まさに息を呑む美しさで,どんな美辞麗句を並べ立てても表現することはできないだろう.しばし,山頂からのパノラマを楽しんで鷲羽岳へと向かった. 水晶岳からワリモ北分岐まで下り,そこにザックをデポした.一旦ワリモ岳に登ってから,少し下ってワリモ岳に登り返す.ワリモ岳には,山頂を巻くように登山道がついているが,岩を伝って簡単に山頂まで登れる.鷲羽岳はこれで3回目の登頂になるが,初めてガスのかかっていない山頂に立つことができた.鷲羽岳までくると,槍ヶ岳が随分と近くに感じる.4年前に西鎌尾根を歩いた夏合宿が懐かしく思い出された. 鷲羽岳を後にして,ワリモ北分岐を経て岩苔乗越まで下る.ここで再び荷物をデポして,今度は祖父岳に向かう.祖父岳への道にはハシゴが設置されている箇所もあるが,危険箇所は全くない.所々火山性の赤い岩が転がり,山頂部はだだっ広い安山岩の広場となっている.ここから眺める北アルプスは非常に優美で,雲ノ平を抱くようにピラミダルな黒部五郎岳と,たおやかな薬師岳,そして黒々と切り立った水晶岳が聳えている. 祖父岳から岩苔乗越へ戻り,荷物をまとめて高天原温泉方面へと下っていく.登山道は沢を横切って対岸に渡り,トラバース気味に高度を徐々に下げていく.途中,水晶池があり,水晶岳の絶好のビュースポットとなっている.風がなく,池に水が満ちていれば,逆さ富士ならぬ「逆さ水晶」を見ることができる.しかし,周辺から流れ込む沢がないため,池が満ちていることはあまりないらしい.さらに下っていくと,樹林帯を抜けて高天原の湿原の中に出る.高天原山荘はその奥に建っている. 山荘で温泉に入る準備をして,高天原温泉とその奥にある龍晶池と夢の平に向かう.高天原山荘からさらに高度を下げた温泉沢沿いに高天原温泉が湧いている.一旦そこは通過して,さらに奥へと歩みを進める.龍晶池は紅葉の名所で,湖畔に黄色や赤に色づいた木々が立ち並んでいる.夢の平は道で行ける最果ての地で,小さな湿原が広がっている.35年ほど前,この先には薬師見平を通って黒部へと至る高天原新道が続いていたが,登山道の崩落が激しく,今は廃道となっている.地図で見ても,夢の平すぐ先で土砂崩れにより登山道が途切れてしまっていることが分かる. 最後に温泉沢の出合まで戻り,高天原温泉に入る.泉質は湯俣温泉と似て乳白色の硫黄泉で,丁度良い温度の掛け流しとなっている.浴槽は3つあり,1つは野ざらしの野湯,残りはそれぞれ男女兼用と女性専用で,簡易的な脱衣所が設置されている.今回はせっかくなので野湯に入った.洗い場はないが桶は置いてある. 9/25 (晴れのち曇り) 高天原山荘〜雲ノ平〜太郎平〜薬師岳〜薬師峠キャンプ場 高天原山荘を日の出前に出発.低く靄が垂れ込めて空には月が浮かび,幻想的な風景が見られた.前日の温泉のおかげなのか,足が非常に軽く,コースタイムからかなり縮めて高天原峠に到着した.ここから雲ノ平に寄らず,大東新道経由で薬師沢出合に下りることもできるが,せっかく晴れているので雲ノ平に向かった.高天原峠から雲ノ平への登りはやせ尾根の急登で,途中には長めの3連ハシゴも設置されている.標高が2400mを越えたあたりから傾斜が緩くなり,庭園と呼ばれる溶岩台地が現れる.この日は放射冷却で冷え込んだため,登山道脇の草原には霜が降りていた. 雲ノ平は荒々しい岩峰の多い北アルプスの中で,雲ノ平は非常に異質な存在である.だだっ広い火山性の平原で,のんびりとした雰囲気が漂っている.山荘のテラスでゆったりコーヒーでも頂きたいところだ.ただ,やはり岩っぽくて険しい北アルプスの風景の方が私の好みには合っている.それでも,3000m近い山々に囲まれたアルプスの楽園に1度は訪れてみても損はないだろう. 雲ノ平の木道を進み,途中祖母岳に寄りながら景色を楽しむ.徐々に高度を下げやがて樹林帯へと入っていく.木道終点を過ぎると一気に急な斜面となる.この辺りは溶岩台地の端にあたり,大きめの岩がゴロゴロと転がっている.岩の表面には苔が生えて湿っており,晴れていても非常に滑りやすい.ここまで快調に飛ばしてきたが,思わぬところで足元を掬われた.このような下りが標高差にして400mほど続く. 薬師沢出合は標高1917mで,雲ノ平からは600m以上下ることとなる.一旦川原に下りた後,ハシゴを登って吊り橋に取り付き,そこをあたると薬師沢小屋に到着する.この先太郎平に向かっては,ここまでの下りとは打って変わって,比較的なだらかな登りとなる.樹林帯や笹原が交互に現れる明るい登山道を歩く.しばらく進むと一旦沢へと下って橋を渡る箇所が3箇所現れる.最後の橋を通過すると尾根に取り付き,一気に太郎平まで300mほど登る.最後に,なだらかな太郎山の山頂部を巻くように進むと太郎平小屋に到着する. 元々の予定では,この先の薬師峠でテントを張って,翌日薬師岳に向かう予定だった.しかし,この時点で翌日の天候が良くないことがわかっていたので,薬師岳に向かうこととする.薬師峠のテント場からは,しばらく沢沿いの急な登りを進む.薬師平を過ぎると沢から尾根に取り付き,さらに高度を上げていく.途中,薬師岳山荘を過ぎると,ガレた登山道は一層傾斜を増し,それが避難小屋跡まで続く.避難小屋跡は丁度薬師岳の肩に当たる場所に建てられており,この先はなだらかな山頂部へと繋がっていく.薬師岳の山頂からは,これまで歩いてきた稜線が一望できる・・・はずだったが,この時にはすでにガスが濃く,薬師見平や夢の平を確認できる程度であった.しかし,翌日の天気を考えれば,この日に登っておいたのは正解だったと思う. 9/26 (雨) 薬師峠キャンプ場〜折立=(タクシー)=満天の湯 曇り一時雨の予報が大外れ.日付が変わる頃から降り始めた雨は午前2時から4時にかけて雷を伴う大雨となり,キャンプ場にはいく筋もの川ができた.テントは浸水し同行者の荷物はびしょ濡れ.一旦は弱まった雨だが,6時ごろになると再び強まり,その後も断続的に雨が降り続いた.登山道は川と化し,登山靴の防水は意味をなさない.ザックを下ろすこともできず,ほぼ休憩なしで折立まで下りきった. 折立からは太郎平から予約しておいた大和交通のタクシーで富山市内の満天の湯まで移動した.料金は定額で18500円 (有料道路の通行料を含む).満天の湯は登山客の利用も多いようで,ザックをエントランスのスペースに置かせてもらえた.また,入浴料も750円とお手頃で,湯船の種類も多い.ここで汗を流して体を温めてから富山駅へと向かい,打ち上げ会をして帰路についた. |
その他周辺情報 | ・湯俣温泉 晴嵐荘 - トイレ:汲み取り式の男女共用トイレ - テント:3000円 (1張2人) - 宿泊:素泊まり7500円 - 水場: 小屋前の沢水を利用 - 温泉:内湯は1000円/人,川原の温泉は自由に入れる ・水晶小屋 - トイレ:バイオ方式の洋式トイレで非常に清潔 - テント:なし - 宿泊:素泊まり9000円/人 - 水場:なし,最寄りは岩苔乗越で往復約1時間 ・高天原山荘 - トイレ:バイオ方式の洋式トイレで非常に清潔 - テント:なし - 宿泊:素泊まり6500円 - 水場: 小屋の中に沢水を引き込んでいる - 温泉:宿泊者以外は300円/人,徒歩20分ほど ・雲ノ平山荘 - トイレ:? - テント:2000円/張,小屋から徒歩20分ほど - 宿泊:素泊まり8000円 - 水場: キャンプ場にあり ・薬師沢小屋 - トイレ:? - テント:なし - 宿泊:素泊まり6500円 - 水場: 小屋前に沢水あり ・太郎平小屋 - トイレ:バイオ方式の洋式トイレで非常に清潔 - テント:1000円/人,薬師峠に約100張(徒歩20分) - 宿泊:素泊まり6500円 - 水場: 小屋にもテン場にもあり ・薬師岳山荘 - トイレ:? - テント:なし - 宿泊:素泊まり7000円 - 水場: なし,天水を利用 ・満天の湯 - 富山市内のスーパー銭湯で,折立下山後に便利 - 料金は750円 ・駐車場について - 折立側には広い駐車スペースあり - 高瀬ダム周辺はマイカー乗り入れ禁止,七倉に駐車した上でタクシー or 徒歩でアクセス |
写真
装備
個人装備 |
ザック
ザックカバー
シュラフ
シュラフカバー
登山靴
ゴアマ
山シャツ
ジャージ
フリース
セーター
靴下
地図
コンパス
マップケース
笛
銀マット
ヘッドランプ
軍手
ライター
替え電池
テーピング
ガムテープ
新聞紙
キジペ
ブキ
コウゲキ
ナイフ
行動食(4 日分)
非常食(1 日分)
米 3 合
タオル
お金
保険証
ポリタン 3
時計
日焼け止め
帽子
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共同装備 |
3人用テント
鍋 2
おたま 1
しゃもじ 1
EPI ヘッド 2
EPI 大 缶 2
ラジオ 1
ファーストエイドキット 1
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感想
就職して以来,久しぶりに9連休と長い休みが取れたので,今回は5泊6日で北アルプスの中央部を周遊する山行に行ってきました.元はと言えば,NHKで見た薬師見平に行くつもりで企画した山行ですが,色々と事情があって温泉と紅葉を楽しむ山行となってしまいました.色々な事情というのは,体力や天候,日程などの問題です.
2日目に雨の竹村新道を登った疲労が抜けず,3日目の天気予報が芳しくなかったこと,そしてまだその後の行程が長かったことが,薬師見平へのアタックを諦めた理由です.しかし,偵察によって十分な情報は得られたと思っています.赤牛岳の北西稜は道こそなけれ,歩きやすく眺望の良い尾根となっていて,薬師見平には9月でも池塘があることが確認できました.今度は薬師見平を単発で狙って挑みたいと思います.
さて,薬師見平に行けなかったのは残念ではありますが,温泉と紅葉を楽しむという目的は達せられたと思います.温泉好きの私にとって,湯俣温泉と高天原温泉という徒歩でしか行けない温泉に行けたというだけでもかなり満足度の高い山行であったと言えます.そこに紅葉も加わり,非常に思い出深い山行となりました.
大学のワンゲル時代には,夏合宿でも2,3日に1回くらいは停滞日か行程の短い休息日を挟んでいたので,5泊6日をしっかり歩き倒したというのは初めてな気がします.そのおかげで,6日間で75kmという長距離を歩くことになりました.充分に楽しめたのは良いのですが,ややお腹いっぱいといった感じです.もうしばらくはこの山域に行かなくてもいいかなあという気もしています.
今後,このような長期休暇がいつ取れるかは分かりませんが,機会を捉えてこのような山行を企画していきたいと思います.
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