天上沢から槍ヶ岳
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- GPS
- 80:00
- 距離
- 49.4km
- 登り
- 3,561m
- 下り
- 3,313m
コースタイム
10/12(土) 北鎌沢出合5:00〜8:10水俣乗越〜10:20ヒュッテ大槍〜11:20肩の小屋(槍ヶ岳往復)12:45〜15:20ババ平△
10/13(日) ババ平5:10〜6:50横尾〜11:35蝶ヶ岳12:10〜14:00大滝山14:15〜15:50槍見ヤグラ〜16:55徳本峠北東2キロ△
10/14(月) 徳本峠北東2キロ5:00〜5:45徳本峠6:00〜7:15明神〜8:30上高地 [下山]
天候 | 10/11 雨のち晴れ、夜雷雨 10/12 晴れのちミゾレ、夜暴風雪 10/13 快晴 10/14 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
[入山] みどり湖駅のJR始発(5:56)に乗り、途中松本で乗り換えて信濃大町着が7:39(950円)、タクシーで高瀬ダムに8:30に到着(8000円)。 [下山] 上高地から新島々までバスと松本電鉄松本まで(2400円)。JRでみどり湖駅まで(320円)。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
水俣沢、天上沢は増水時は遡行は無理です。したがって天候に十分注意を払う必要があります。千天出合には増水時でも安全なよい幕営場所があります。 |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
10/11(金) 雨のち晴れ、夜雷雨
[入山] 高瀬ダム8:45〜10:55湯俣温泉(噴泉塔見学)12:05〜13:50千天出合〜16:15北鎌沢出合△
雨の出発は実に気が滅入るが、明日以降は天気はよいはずなのでそれを励みにカッパを着けて林道を黙々歩く。今日は平日なので東電の方が色々作業をされている。2時間ちょっとで順調に湯俣温泉に到着。ちょうどこのころには空は晴れ渡り、最高の天気になっていた。たまたま晴嵐荘の職員の方が出てらしたので水俣川の状況を聞いてみるが、水量が元々多い川のため渡渉が厳しく、沢慣れしていないと難しいとのこと。先月も国の調査の方が溯行に入ったが、水量が多く千天出合までかなり難儀したそうだ。でも今時期は一年で一番水量が少なく絶好のチャンスではあるとのことだ。単独でもあるため難しそうだったら無理せず湯俣まで戻ってくると約束し、先に進むことにした。
噴泉塔をちょっくら見てから入渓。ここらはどこもかしこも手で触れないくらいの高温の温泉がわき出ている。噴泉塔に行く途中に吊り橋があり、そこから水俣川に入る。吊り橋下の河原で沢支度をして早速川に入る。思ったほど水は冷たくなく、この日は気温も高かったため快適に進む。心配していた渡渉も深いところで太ももくらいでパンツを濡らさないギリギリくらいであった。川床は花崗岩で白いため明るく開放的な沢で、気楽に快適に進んでゆく。
千天出合までは巻きもへつりも全くなく2時間かからずに順調に到着した。ここは槍ヶ岳の北鎌尾根が消失する場所。北鎌尾根は見上げるとクビが痛くなるほどの角度で屹立している。尾根が途中でちょん切られてしまった感じだ。千天出合からは河岸が迫り小滝が連続するうえ、巨岩帯のため川を進むことが出来ない。水量もあまり減らないのでうかつに渡渉も出来ない。このためしばらくの間右岸を巻いてゆくがここの巻き道が頼りなく、この沢で一番難しいところだと思った。1箇所だけもの凄いゴルジュがあり、ここの高巻きはロープを必要とするほどではないが少々手強かった。それに耐えると河原が広くなり、ようやく河原を歩けるようになった。しかし、岩が大きいため下流のようになかなかスムーズに進まず、渡渉も面倒である。さらには体力も限界に来ており、時間ばかりが経過していった。
貧乏沢がなかなか合流せずやきもきする。ようやくその名の通り貧相な涸れ沢が合流すると急激に水量が少なくなり、10分も登ると沢が涸れた。ここで水筒を満タンにし、更に15分ほど登ったところで北鎌沢出合に到着した。すでに到着しているカップルがテントを張っており、自分も離れたところに投宿することにした。時間が無く話はしなかったが、彼らは明日北鎌を登攀するのであろう。時間があれば向学のために北鎌沢を偵察したかったが、日没が迫っておりテントと飯の準備を急がねばならない。北鎌調査はあきらめることにした。
寝る頃からとてつもない雷雨になった。ドカーンという音が北鎌と東鎌の壁に反響してエコーがかかり迫力倍増である。夜9時頃からそばでゴーという水の流れる音が聞こえ始めた。涸れた河原が川になっているようだった。テントまで水が来ると思うと気が気でなかったが音はそれ以上大きくならず、寝ているといつのまにか雨は止んでいた。
10/12(土) 晴れのちミゾレ、夜暴風雪
北鎌沢出合5:00〜8:10水俣乗越〜10:20ヒュッテ大槍〜11:20肩の小屋(槍ヶ岳往復)12:45〜15:20ババ平△
昨夜はまさか雨になるとは思わず、御法度であったが河原にテントを張ってしまった。それでもよっぽどのことが無い限り水が流れない高いところを選んでいたのが幸いした。隣のカップルとのテントとの間は小川で断絶されており、ただただ愕然であった。
今朝は雲も出ているが晴れており、少し登ると槍ヶ岳も見えてきた。朝日に燃える紅葉の壁は素晴らしく、あまりの美しさにしばらく絶句して眺める。しかし見れば見るほど不吉と言いたくなるくらい妖艶な赤色である。槍の穂先に雲が黒い影を落としているのも何か不気味であった。
水俣乗越までの登りは北鎌を狙う人達がよく使うルートなので、所々赤テープもあり判りやすかった。しかし、最後の最後で詰めを間違い、急なルンゼに誘い込まれてしまった。クライムダウンも危険だったため決死のトラバースで復活したが、危ないところであった。ちなみにこのルート、最後の詰めはヤブの中の踏み跡を使って登るのが正解で、決してガレを登ってはならない。これさえ守れればよかったのだが。
なんとか水俣乗越に出て、その先の喜作新道を進む。とてつもなく急でありすぐにバテてしまう。一般道とはいえ、喜作新道の斜度は縦走装備の身には苦痛以外の何者ではない。息も絶え絶えに肩の小屋にたどり着いたが、天気が悪化してきており、ガスに突入してしまい風もめっぽう強い。おまけに雨交じりにもなってきて手がかじかむほど気温も低下してきた。槍の頂上はあきらめようかと思ったが、初登でもあるので頑張って穂先まで行ってきた。
予定ではこの後は南岳まで行き、明日穂高に向かうつもりだったが、小屋にいた登山者から今晩は大荒れで雪も積もるだろうとの情報を得た。それでは明日キレットを通過することはとても出来ないし、この風で槍穂高の稜線でテントで頑張るのもかなりの勇気と根気が要る。速決で山を下りることにした。槍沢へと下っていくが途中標高2500mくらいでは綺麗に紅葉していた。晴れていたら絶景であっただろうが、無情にもその後天気は猛烈なミゾレとなり、ずぶ濡れになってババ平にたどり着いた。天気は大荒れとなり、強烈な寒波が襲ってきた。テントは夜中まで激しいアラレにたたきつけられた。
10/13(日) 快晴
ババ平5:10〜6:50横尾〜11:35蝶ヶ岳12:10〜14:00大滝山14:15〜15:50槍見ヤグラ〜16:55徳本峠北東2キロ△
朝まで天気は荒れるとの情報はデマで、3時半に起きてみると完璧な星空になっていた。しかも無風。放射冷却でガチガチに冷え込んで、昨日濡れたものが何もかも凍ってしまった。この日は最悪上高地に下山しようかと思っていたが、この晴天を放っておく訳にはいかない。槍穂高の展望台である蝶ヶ岳と大滝山を周り、徳本峠まで足を伸ばすことにした。
蝶ヶ岳からの槍穂高の展望は言わずもがな。ここからは槍沢の全景が眺められるのが素晴らしい。手に取るように地形が判る。これほどの展望台は常念とここの他にはない。大滝山は初登の山だが、この山の雰囲気も気に入った。蝶ヶ岳から延びる長塀尾根が槍穂の前に無神経に横たわっており展望はイマイチだが、山頂部の草原や疎林のたたずまいがとてもよい。南アルプスのような趣もある不思議な山だ。
しかしその後の中村新道はほんと長かった。空身であれば快適な森林浴コースなのだが、この重荷の縦走では全くもって蛇足であった。おまけに徳本峠まで時間切れでたどり着けず、途中の鬱蒼とした森の中でビバークするという顛末になった。
10/14(月) 快晴
徳本峠北東2キロ5:00〜5:45徳本峠6:00〜7:15明神〜8:30上高地 [下山]
最終日も快晴だったが思ったより冷え込まず、モヤもあって昨日ほどの澄んだ空気ではなかった。徳本峠でご来光も見れたが、ボヤーッとしてあまり秋らしくない日の出であった。
連休の最終日、上高地は観光客でごった返していた。新島々行きバスまで時間があったので、朝から豪勢に岩魚の定食をたいらげた。慢性的に空腹でいくらでも食えそうだった。バスの中で爆睡し、気がついたら下界まで戻っていた。
天候に恵まれず途中撤退もあったが、天上沢の溯行から槍の山頂を極められた満足感は大きかった。しかしこのコースはやはり北鎌を経由してこそ価値があるだろう。いつの日か挑戦したいものだ。沢にこだわるならば同じように湯俣から千丈沢経由で槍を目指す(宮田新道)のも魅力的だ。願わくば、今回の沢のように平水で快適な溯行を行えればよいのだが、狙うとするとやはり秋がよいだろう。
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