白峰南嶺(山伏ー青笹山ー青薙山ー笊ヶ岳ー笹山ー広河内岳)縦走
- GPS
- --:--
- 距離
- 65.4km
- 登り
- 5,812m
- 下り
- 5,675m
コースタイム
2日目:幕営地(5:00)-三ノ沢山(5:15)-青枯山(6:15)-青笹山(6:45-6:50)-イタドリ山(7:30)-小笹平(7:50-8:05)-P2137(8:35)-青薙山(9:50-9:55)-稲又山(10:55)-所ノ沢越(12:00-12:15)-布引山(14:25)-笊ヶ岳(15:25-15:40)-椹島下降点(16:00)
3日目:幕営地(4:30)-生割木山(6:05)-天上小屋山(6:40)-伝付峠(8:00-8:25)-西別当代山(9:15)-奈良田越(10:05-10:10)-白剥山(10:45)-笹山南峰(12:45-12:55)-笹山北峰(13:00-13:05)-白河内岳(14:25)
4日目:白河内岳(5:20)-大籠岳(5:50)-広河内岳(6:55-7:00)-大門沢下降点(7:25-7:30)-大門沢小屋(9:00-9:05)-休憩小屋(10:55-11:10)-奈良田の里温泉(12:05-13:40)-奈良田バス停(13:45)
天候 | 9/2: 晴れのち曇り 9/3: 曇り時々晴れ 9/4: 曇り時々晴れ 9/5: 雨のち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:奈良田バス停-JR身延駅(早川町乗合バス) |
感想
2年以上前に、山梨百名山を98座まで登ったのに、残りの2座がずっと残ったままになっていた。
もうすぐ40歳になってしまうことだし、30代最後の夏に完登してしまおうと思う。
残っているのは、山梨百名山の中では難しい山とされる、笊ヶ岳、笹山の2座だ。この2座も、最短ルートを使って、下からピストンで往復するのであれば、それほど難しくないらしい。でも、私は縦走が好きなので、既に2年前からルートは決めていた。山伏から青薙山まで縦走し、そこから笊ヶ岳ー伝付峠ー笹山と縦走、その後、広河内岳まで辿って、大門沢分岐まで抜けて奈良田に降りるというルートだ。
ただ、このルートは、なかなか難しい。山伏の先にある白河内山から青薙山までの区間は、登山地図にルートが記載されていないし、それ以外も破線ルートが長い。途中に、営業小屋が全くないので、水場が枯れていたとしても、自分ですべて対応しないといけない。
■計画
今回のルートは、心配なことが多いので、なるべくゆとりを持たせようと、以下の日程で計画した。
1日目:赤水バス停ー山伏ー水無峠山(約13km、登り:1880m、下り:470m)
2日目:水無峠山ー青笹山ー青薙山ー稲又山ー所ノ沢越(約11km、登り:980m、下り:1040m)
3日目:所ノ沢越ー布引山ー笊ヶ岳ー伝付峠(約14km、登り:1300m、下り:1380m)
4日目:伝付峠ー奈良田越ー笹山ー広河内岳(約15km、登り:1510m、下り:590m)
5日目:広河内岳ー奈良田(約12km、登り:70m、下り:2110m)
1日目の登りが少し辛いが、山伏小屋の水場で水を調達するので、そこまでは、無駄に水を運ばずに済む。
初日に水無峠山まで行ければ、確実に2日目に所ノ沢越、3日目に伝付峠まで行くことができそうだ。
所ノ沢越、伝付峠は、どちらも水場があるので、ここで泊まることで、水を担ぐ負担が減らせる。
4日目は、大門沢小屋まで行ければと思ったけれど、辿りつけない場合も考えて、広河内岳で1泊出来るだけの水を、伝付峠から運ぶことにする。
エスケープは、布引山→老平、伝付峠→二軒小屋、笹山→奈良田のいずれかを使うようにし、その他のルートは、危険箇所があるため、使わないことにした。
■1日目(9/2) 赤水バス停ー山伏ー水無峠山
この夏は、天気が悪い日が続いて、どうもいけない。私の夏休みは、9/1から1週間の予定で、9/1に出発の予定だったのだけれど、土砂降りの雨で、翌日に延期することにした。
雨は、朝までに上がって、空は晴れ間が出てきている。今日は、天気が良くなりそうだ。
静岡駅から新静岡駅まで歩き、ビルの1階にある立派なバスターミナルで、梅ヶ島温泉行きのバスを待つ。
9月に入った平日ということもあって、登山姿の人は見当たらない。
1時間50分ほどバスに揺られて、赤水のバス停で下車すると、空は雲一つない晴天だ。ありがたい。
工事用の道路を登って行くと、大型トラックが次々と通過していく。
登山口からは、沢沿いの道が続く。西日陰沢の水量は、昨日の雨のせいで、多くなっているようだ。この後、沢を何箇所かで渡るため、少し心配になる。
1つ目の橋が出てきた。この橋は、2011年7月の台風で流されてしまった後に作られた橋で、水量が増えても流されないように、高い位置に架けられている。今年8月の台風でも、びくともしなかったようだ。この日は水勢が強く、とても渡渉できる状態ではなかったので、この橋がなければ、ここで撤退することになっていただろう。
その後、2つ目、3つ目の橋も、問題なし。大岩を過ぎて、ようやく沢筋を外れた。蓬峠までの登りがとても急で辛い。今回、荷物を出来るだけ減らして、18kgに絞ってきたのだが、それでも重い。
それでも、気温がそれほど高くなくて、助かる。山伏手前の稜線まで上がると、空身で、山伏小屋まで水を調達にいくことにした。
ここで、山伏から下山してきた1人の男性に出合い、山伏小屋まで話をしながら進んだ。ツアーガイドの方で、昨日は、土砂降りの中、南アの某山の登山ツアーをガイドしてきたらしく、今日はプライベートで山伏に登ったとのこと。ツアーは、雨でも簡単には中止にできないのだとのことで、大変な仕事だ。
山伏小屋からすぐの沢で水を調達。とても美味しい水を5Lほど汲んでから戻った。
山伏は、2014mの山だ。2014年の山ということで、登る人が多いのか、この後も3人ほどの登山者と出会った。山頂に着く頃には、雲が多くなって、今回も富士を見ることはできず。
ここから、一度、大笹峠(山伏峠)に降りて、小川内山を目指す。峠からの登り返しは、急な斜面の右側から登る道がある。登山地図では、破線になっている道だが、笹の間に、明瞭な踏跡が続く。
岩のゲートを過ぎると、尾根は緩やかになる。I峰を過ぎ、II峰で三角点を発見した。プレートはないものの、ここが小河内山だろう。日差しがまた出てきた。
少し進むと、気持ちのよい草原地帯に飛び出した。かなり下の方にシカが数頭見えて、癒される。
ただ、この先が、登山地図にはルート記載がなく、「猛烈なヤブで定かなルートはない」と書かれているルートだ。少し、緊張する。
南西に向かうなだらかな尾根が見える。この根本が、小河内山のIII峰で、ここから向きを90度右に変えて下っていかなければならない。尾根を間違えないようにと思うも、赤テープ多数で、間違いようがなかった。
水無峠山(2080m)に向かうルートは、意外なほど明瞭な踏跡がある。そして「猛烈なヤブ」は、どこにも存在しない。あるのは、膝下程度の笹くらいだ。
山梨側の急斜面を意識しながら、踏み跡を進んでいくと、水無峠山の緩やかな登りになる。この辺り、二重山稜になっているようだが、右側を踏み跡が続いている。平らな山頂を過ぎて、鞍部に降りたところが、今日の宿泊地だ。ヌタ場のようなものがあり、そこから、少し下ったところに、笹がなく、テントが1張、張れそうな平地を見つけた。(ここに幕営可能という情報は、Gipfelさんの記録で知りました。ありがとうございます)
テントに潜り込むと、風もなくとても静かだ。今日は、1900m近い登りで参ったが、予定通りここまで来れてよかった。
夜、ラジオで天気予報を聞いていると、あまり良くない。明日、明後日は、曇り時々晴れで、なんとか天気が持つらしいのだが、その翌日以降は、大きく天気が崩れるとのこと。その日は、笹山から広河内岳の区間を通る日で、そこで荒天なのは避けたい。となると、明日、明後日でなるべく進んでしまったほうが良いかもしれないなどと考えてみたが、それよりも、明日の区間が心配だ。今回の山行で一番心配な青薙崩れを通過しないといけない。
色々と考えていたら心配で、あまり眠れず。
■2日目(9/3)水無峠山ー青笹山ー青薙山ー布引山ー笊ヶ岳ー椹島下降点
朝、5:00に出発。目の前にある三ノ沢山に向かう。ここは、踏み跡が薄く、腰高の笹ヤブの中を進む。
山頂には、山名が消えてしまったプレートがある。笹ヤブの展望のない山だ。ここで、向きを90度右に変えて、青枯山に進むも、踏み跡がない。笹をかき分けて降りて行くが、この辺り、二重山稜のためか、地形が分かりづらい。どうやら北に向かって降りてしまったようだ。方向感覚が分からなくなって、しばらく右往左往する。山梨側の急傾斜を見つけるため、なるべく南東に登り返すと、踏み跡とテープを発見した。
そこからは、笹の高さも膝下くらいに収まり、道が分かりやすくなった。踏み跡は、二重山稜の右側に乗って登っていく。
青枯山も展望のない山だ。山頂から、ほんの少しの区間だけ、二重山稜の右側を下り、その後、左側に乗り換えるように、テープが続く。この辺り、非常にテープが多く、道に迷うことは無さそう。
左に乗り換えてからは、とても歩きやすい道だ。途中で、西側に開けたところに出た。茶臼や上河内岳らしき山が雲海に浮かんで見える。
天気は、まずまずで、涼しくて快適。二重山稜の左側を登りつめると、青笹山の大分左側に出てしまうようなので、最後、右側に大きく方向を変えると、山頂に到着。ここも木々に囲まれ展望はない。
ここまでほとんどしっかりした踏跡が続いていて、テープも多数あり、なかなか順調に来れた。
すぐにイタドリ山に向かう。青笹山山頂から、北に10〜20mほどのところに、テント2張分ほどの空き地がある。この先、テープは大幅に減るものの、踏み跡はしっかりしており、ヤブは全くないので、快適な尾根歩きが続く。道は、東側の急傾斜の縁から、2〜3m以内くらいの位置を通っているので、右側の斜面を覗きこむような位置をキープすれば、間違いがない。時折「山伏⇔笊ヶ岳」のプレートも出てくる。
イタドリ山に向かって登り返して、山名プレートを発見したら、北東の尾根に乗らないように西に向かう。後は、尾根沿いに下れば、小笹平だ。
ここは、南に大きく開けた笹原で、なんとも開放的で気持ちのいいところだ。ちょうど、太陽も出てきて、笹が明るく輝いている。休憩も兼ねて、空身で、水場まで降りてみることに。100mほどゆるやかな谷を下ると、水音が聞こえてきた。水場はしっかりと流れていて、冷たい水をいただく。
水場のすぐ上辺りに、テント適地がある。こんなところにテントを張って、2,3日、本を読んだり昼寝をして、静かに過ごせたら気分がいいだろう。
しばらくのんびりとしてみたものの、内心、この先にある青薙崩れが怖くて仕方がない。気を引き締めて、先に進む。P2137までの登りは、急で辛い。尾根上に踏跡がある。
一旦平らになって、70mほど登ると、核心部が近づいてきた。大きく静岡側が崩れているのが見える。
核心部の手前は、山梨側を巻くように踏み跡がある。そこから稜線に戻ったところが、危険箇所だ。
でも、その核心部を一目見て、すぐに安心した。どうも、ここを心配しすぎていたようだ。実際に目の前にしてみると、それほど危険なところではない。確かに、静岡側も山梨側もスパッと切れ落ちているので、どちらに滑っても助からないところだけれど、青薙山に向かって、登りで通過する分には、まず滑る心配は無さそうだ。
稜線に出た所には、右側に太い枯れ木があり、それに掴まれば、体が安定するし、核心部は4mくらいと短く、足場もしっかりしているので、慎重に通過すれば、まず大丈夫だ。1歩目に左足を置く地面が、静岡側に傾いているが、右手で木につかまりながら、そこに慎重に足を乗せさえすれば、後は問題ないだろう。
このようなところが苦手な私も、あまり恐怖を感じることなく通過できた。
しかし、この先も、まだ急斜面が続く。笹が濡れていたりすると、すべって滑落する危険がないとも言えない。踏み跡も薄く、笹に掴まるように登って行き、傾斜が緩んだ所で、ようやく安心した。
青薙山から布引に向かう縦走路に出ると、私が来た方向には、「山伏岳→」のプレートが付いていた。
結局、小河内山からここまで、ほとんどヤブはなかった。手でかき分けて進むような区間は、ほぼ0で、全体的に、膝下程度の高さの笹くらいだったため、計画より大幅に早く到着した。ただ、朝露で濡れた笹を通過してきたせいで、靴の中までびしょ濡れだ。
近いので、青薙山にも寄って行くことにする。山頂で、東海フォレストの設置している太い山名標を見つけて、南アルプスに来たことを実感する。ここも眺めのない山頂だ。山頂は平らで、テントが何張かできそう。
登山地図に記載のある道に出て、稲又山までは、安心な道が続いた。
ただ、稲又山からが分かりづらい。登山地図には、「山頂から東へ2段降りる」とあるが、2段の意味がよくわからない。とりあえず、道標に従って、東に降りていくと、すぐに巨大な倒木で塞がれている。それを右に回避して、更に下ると、かなり下の方に立派な道が見え、ピンクテープも付いていた。
その道に乗ってみると、意外といい道で、先ほどの稲又山までの道と同様くらいしっかりしている。
ここも、山梨側の急傾斜の縁を進むように道が付けられている。倒木などで塞がれた場合も、なるべく右へ行くように下ると、道が見つかった。
ただ、小屋跡付近は、少し道が分かりづらかった。広い尾根の中央寄りを通ることもあり、2度ほど道を失った。踏み跡を外れると、倒木の回避などに余計な体力を使うので、丁寧に道を探す方が良さそうだ。
何度か戻って、道を見つけた。幸い、テープ多数なので、すぐに回帰することができる。
鬱蒼とした暗い森を抜けると、今日の幕営予定地の所ノ沢越に着いた。ここは、趣のある峠だ。
今日はここで泊まる予定だったのだが、まだ12時だ。明後日の天気は崩れるということなので、できるだけ先に進みたい。今日中に、笊ヶ岳を目指すことにして、水を汲みに行く。
畑薙方向に下る登山道沿いをしばらく下ると、左手に沢が出てくる。水量は豊富で、年中枯れることは無さそうだ。山伏で汲んだ水の残り2Lを捨て、新たに水を4Lほど確保した。ここの水もうまい。
布引山への登りは、ものすごい急登だ。先ほどまでは、まだまだ行けると思っていたのに、水で重くなった途端、疲れが出てきた。しばらく登っていくと、布引大崩れをザーザーと水の落ちる音がするが、ガスが濃くて、何も見えない。
更に少し登ったところで、上から熊鈴の音が聞こえる。今日は、誰にも会わないと思っていたのだけど、少し先で、単独の中高年の男性登山者に追いついた。
この方としばらく話をする。話を聞いていると、なかなかすごい方だ。青森から車を飛ばして畑薙ダムに停めて、池ノ平→青薙山と登ってきて、この先、私と同じで、笊ヶ岳、笹山と縦走し、大門沢分岐まで行くらしいのだが、その後、車を取りに、また同じ道を戻ってくるのだという。以前も、南アを10日ほど縦走したことがあるとのことだけど、なんという、苦行だろう。やはり、南アには、特異な人がいる。この方も今日は、笊ヶ岳に泊まるとのこと。
再び一人になって、布引の登りを喘ぎながら登る。ようやく傾斜が緩やかになったと思ったら、そこが頂上だった。この登りは辛かった。
だが、この後の笊ヶ岳までは楽な行程だ。緩やかに下って、あとはひと登りで、笊ヶ岳に着く。ここからは登山地図の実線ルートで、道はすこぶる良い。気持ちのよい樹林帯を満喫して、山梨百名山99座目の笊ヶ岳に到着した。
笊ヶ岳は、ずっと憧れていた山だったが、私にとって遠い山だった。山のエキスパートだけが登れる山という、私が登山を始めた頃のイメージが残っていて、自分が、その山頂にいることが信じられない。
ようやく登頂を果たすことができて、とても満足。今日は雲が多く、眺めはほとんどなかったけれど、しばらく山頂で登頂の喜びに浸る。
笊ヶ岳山頂手前に、幕営適地があり、ここにテントを張る予定だったが、先ほどの男性も笊ヶ岳に泊まると言っていたので、ここに張るのは止めにした。私のテントは大きく、ここに2張は無理そうだ。
それでは、ともう少し先に進むことにする。事前に調べた情報では、ここから下った椹島下降点付近に、良い幕営地があるらしい。それは、椹島下降点から、1分ほど椹島の方に下った辺りに、突然、出てきた。
ぽっかりと平らに開けた空間があり、隠れ家のような雰囲気の場所だ。
テントに潜り込み、びしょ濡れになった靴下を脱ぐ。これを明日も履くのかと思ったら、ぞっとする。すぐにシュラフのなかで乾かすことに。
今日も風もなく、静かな夜だ。行程表を引っ張りだして、明日の行程を組み直す。ここから笹山まで20kmあるが、林道が長いから、なんとか明日中に行けそうだ。笹山にテントを張れば、翌日に天気が荒れていれば、安全に奈良田にエスケープできるだろう。
■3日目(9/4)椹島下降点ー生割木山ー天上小屋山ー伝付峠ー白剥山ー笹山ー白河内山
今日は、行程が長いので、真っ暗な4:30に出発。道は暗くても分かりやすい。しばらく登って行くと、日が登ってきて、東側の展望が開けた。昨日まで見えなかった富士のシルエットが見えて、嬉しくなる。
偃松尾山にも寄ろうと、登り続けるも、ものすごい這松のヤブだ。少しの切り拓き部分を見つけて登ってみたが、山頂直前で、よくわからなくなった。這松漕ぎは、かなり疲れる。こんなところで体力を使っている場合ではないと、引き返した。
生割木に向かう道が少し分かりづらい。少し南に戻るように下って行くと、ガレの上に出た。上端の縁を進み、また樹林帯に戻る。生割木はそのすぐ先だ。
頂上には、アンテナなどあり、テントも何張りも張れそう。この先は、道は分かりやすい。順調に進む。
天上小屋山は、なんの変哲もない小ピーク。その先で、長いトラバース道に入ると、途中、東側の展望が開けた。赤石や荒川岳のどっしりとした姿が見える。
林道終端まで辿り着いた。林道を放置しておくと、こんなになるのかと驚くくらい、自然に戻りつつある。木が生え放題で、その間をかき分けるように進むため、全身びしょ濡れだ。でも、道は分かりやすい。
伝付峠の手前で、しっかりとした林道になり、トイレなどもあって、少し人工的な雰囲気になる。
新倉に下る分岐から、水を汲みに行く。当初の計画では、ここに泊まって、無駄に水を担がない計画だったのだが、仕方がない。笹が覆いかぶさる道を数分下ると、水場に着いた。水を6Lほど調達。
こんなに要らないのは分かっているのだけど、水切れ恐怖症なので、どうしても多めに汲んでしまう。
しかし、ここまで10kmほど進んできたが、時間はまだ8時だ。結構いいペースで来ている。
この先は、奈良田越まで、林道が続く。事前に調べた情報では、この林道が崩落していて、かなり危険とのことだったのだが、実際は、様子が違った。まず、最初の2km位は、完全に新しい林道に置き換わっており、古い林道の入り口が塞がれている。古い林道は尾根の左側に付けられていたのが、新しい林道は、右側に付けられ、最後のところで、左側に乗り越えるようになっている。
その後も西別当代の先、1kmくらいまでは、きれいな林道が続き、全く問題ない。登山地図の「広場」と書かれた地点の手前で、整備された林道は終わりになっている。
その工事中の辺りの最初の数mだけ危険だ。山から崩れ落ちてきた砂礫が林道上に堆積して、歩けるスペースが10cmくらいしかない。そこに不用意に体重をかけると、滑りだして止まることができないだろう。
体重を山側にかけて、ゆっくりと通過。ここは、青薙崩れよりも怖かった。
しかし、その数mを超えれば、後は、奈良田越まで、全く危険はない。幼木がうるさいとも聞いていたが、伝付手前のうるささに比べたら、こちらは随分と楽だ。
今日も、曇りがちで、眺めはあまりない。黙々と歩き、ドラム缶のところで、右に急旋回すると、そこが奈良田越だ。鉄骨などが散乱していて、以前ここに作業所があったことが想像できる。
右手の尾根に乗り、白剥山を目指す。道は、意外と良く、250mほどの登りも、それほど苦にはならなかった。
ここまでは、なかなか順調で、この分なら、12時過ぎに笹山に着いてしまうのではと思ったけれど、この先が大変だった。白剥山の先の急登を過ぎて、しばらくはなだらかな道が続いたが、シャクナゲが出てきて、少しうるさい。その先、窪地の付近は、地形が分かりづらく、しばらく迷ってしまった。大分登ったと思ったところで、一度稜線に出て、そこで、笹山の南峰、北峰が見えた。ただ、まだ遠い。そこからは、尾根の左側の這松帯を進んでいくが、テープの類が全く出てこず、これで合ってるのかと不安になる。さすが、笹山だ。一筋縄ではいかない。
這松の切り込みは、見つけづらく、難渋しながら道をたどる。山頂手前で、尾根の右側に乗り換えて、再び樹林帯の中の道になった。最後は、右から回りこむように山頂に出た。
ようやく山梨百名山100座目の笹山の頂上に立つことができた。山梨百名山の標柱に触れてから、炭酸飲料で、100座達成を一人で祝った。この山も本当に遠かった。山梨百名山を意識し出したのが、2010年の6月で、それから4年以上経って、ようやく全て登ることができた。
天気は、少し回復してきて、晴れ間が覗いている。
すぐ隣の北峰に移動する。南アの東側は、雲に隠れていて塩見岳も見えない。でも、ここから鳳凰三山は確認できた。
今日は、ここで泊まる予定だったけれど、まだ13時だ。もう少し先まで進んでおけば、明日の天気が悪くても、大門沢下降点まで抜けることが出来るだろう。笹山から見る白河内岳は、丸くて面白い山容だ。今日は、あの山頂に泊まることに決めた。
一度、樹林帯に戻り、尾根の西側をトラバース気味に進むと、再び這松帯に戻る。この辺りも、テープの類は、あまり目にせず、分かりづらいので慎重に進んだ。白河内岳の手前で、再び樹林帯に戻った所で、しばらく道に迷った。
ようやく樹林帯を抜けると、すぐ目の前に白河内岳が聳えている。どこでも、登っていけそうに見えるが、這松が所々生えているので、ルートを間違うと、かなり体力を消耗しそうだ。
ケルンに頼りながら登っていくと、這松こぎは全くせずに済む。広い山頂に着くと、風が強くなってきた。
今日はここまでとして、テントを張る場所を探す。強風は、南から吹いている。這松も南からの風に押された向きに曲がっているので、いつも南からの風が吹いているのだろう。
山頂北側に少し下ると、風を避けられる位置に、テントが2張ほど張れそうな場所を見つけた。
テントを張って、潜り込むが、疲れが酷く、一つ一つの動作が、ものすごく遅い。マットを敷いて、シュラフを出して、とりあえず眠ることに。
2時間ほどして、風の音で目を覚ます。やはり天気は下り坂のようで、明日は、期待できない。
ようやく100座登ったのに、明日無事に下山できなければ、すべては台無しだ。明日の計画を練り直す。
■4日目(9/5)白河内岳ー大籠岳ー広河内岳ー大門沢小屋ー奈良田
朝4時頃、目を覚ますと、早速雨が降っている。ものすごく眠いが、出発の準備をする。
5時を過ぎて、テントを出てみると、辺り一面真っ白で何も見えない。昨日、100mほど先に見えた小ピークも確認できず。視界が効くのは、20mほどだろうか。ここから大門沢下降点まで、視界が効かないとルートを見つけづらそうなので、嫌な天気になったと思ったが、距離は4kmほどだから、なんとかなるだろう。
道が本当に分からなくなっても、水も沢山残っているし、どこかにテントを張ればいいだけだ。
コンパスで大籠山の向きを確認して、歩き出す。すると、目の前には、小さなケルンが。その先にも、ケルンが続く。このケルンは、5〜10m間隔くらいで続いているようで、これは今日のように霧が濃い時には、助かる。昨日の笹山周辺とくらべて、なんと目印の多いことか。
ケルンがない場合、読図で進んでも行けるだろうけど、読図では、這松をどう回避するかまでは分からない。所々で、這松に突っ込んで、這松こぎを強いられただろう。その点、ケルンを辿れば、うまく這松を避けてくれる。ケルンのお陰で、苦労なく大籠岳に到着。
風雨が強くなってきた。この先は、黄色ペンキに従うようにと登山地図に書かれているが、ほとんど目にすることがない。この先も、やはり頼りはケルンだ。あと、大籠岳からは、踏み跡も細かい砂利になっている所が多く、分かりやすくなってきた。
この強風の中、ホシガラスがうまく風に乗って飛んでいる。広河内岳の手前で左に直角に曲がる所、視界が効けば、全く問題ないところだけど、広河内岳が全然見えないので、注意して進む。今のペースで歩けば、6:30頃にその地点に着くはずと、時間読みも使って進む。6:33に、その地点に到着。実際は、崖になっていて、直進することができないので、この地点を見落とす可能性はなかった。
広河内岳の登りで、ようやく黄色ペンキが増えてきた。山頂からは、もちろん何の眺めもなく、ただただ寒い。早く下山したいと、先を急ぐ。
ここからは、黄色ペンキが5m間隔くらいで岩に付けられている。これなら、どんなに霧が濃くても迷う心配はない。最後、尾根を右に外れるところは、このペンキがないと、非常に見つけづらいだろう。
もう少しで、大門沢下降点だぞと思いながら、ガスの中を進むと、少し先で鐘の音がするではないか。これは、大門沢下降点に設置された鐘の音だ。登山者が居ることも嬉しくなって、進んでいく。
下降点には、3人の女性登山者がいた。笹山の方に行く予定だったものの、天気が悪いので、広河内岳まで行って戻ろうということのようだ。広河内岳までなら黄色ペンキに従っていけば問題ないことを伝えて、別れた。
ここからは、一般ルートだ。人気の白峰三山の縦走路なので、こんな天気でも人が多い。この道に合流して、20分足らずで、私が山伏からここまでの3日間に出会った人数を越えてしまった。
ここは一度歩いたことがあるけれど、この下りは、気が抜けない。雨で濡れた岩を数千個踏んで降りて行かないとならない。そのどれかで、馬鹿なスリップをしたら、全てが台無しになってしまう。
慎重に大門沢小屋まで降りると、沢沿いの道に入る。何度か、丸太の橋を渡るが、ここも濡れた木の上を歩くので、意外と危ない。
最後、3つの吊り橋が出てくるはずだと思って下っていくと、以前と様子が変わっていた。堰堤工事のため、林道を延伸しているようで、2つ目の吊り橋がなくなっていた。
最後の吊り橋を過ぎて、林道に降り立ったところで、ようやく安心した。今回の山行は、毎日、緊張の連続で、心から寛げた時間は、ほとんど無かったかもしれない。精神的にも体力的にも疲れた4日間だった。
小雨が降る中、奈良田の温泉に向かう。バスまでは、2時間ほどある。ゆっくりと温泉に浸かって疲れをとっていると、天気は、いつの間にか回復していた。
ここは温泉も良かったが、休憩室に縁側があるのが良かった。 20年ぶりくらいで縁側に腰掛けて、秋の風を感じていると、念願だった山旅の成功の実感が、じわじわと湧いてきた。
コメント
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さすがですね、お見事。 バスや電車で行く山行だと、さすがに自分の場合は計画を立てスケジューリングをする時点で疲れてしまいますが、さすが
boneさん、こんばんは。
今回の山行は、少し重たい宿題のような感じで、ずっと頭の片隅にあったもので、それが終わってホッとしているというのが本当のところです。
今回、天気は今ひとつで、展望があまりありませんでしたから、いつか、笹山の直登ルート、笊ヶ岳の老平ルートで登ってみたいものです。
登山地図にルートのない場所やヤブで大変そうな箇所を超えていく感じが、真似できませんが憧れます。
4日間山に入ったことはありませんが、いつか挑戦してみたいです。
chinyamaさん、ご無沙汰しております。
コメント、ありがとうございます。
最近、山にあまり行かなくなってしまって、今年登らないと、このまま達成できないままになってしまうかもしれないという危機感もありまして、行ってきました。
40歳になる前に、完登できてよかったです。山梨百名山を登ったといっても、まだまだ山梨県には登りたい山は沢山ありますから、今後も、山梨県中心の登山になると思います。
chinyamaさんは、今年も精力的に山に通ってますね。私もchinyamaさんくらいの頻度で山に行けるように、復帰できるといいのですが...
以前、安倍峠でお会いした者です。
同じ頃、大井川の対岸の尾根を縦走していました。
計画では今年の5月連休に山伏から笊ヶ岳まで歩く予定でしたが、天気が悪く中止にしました。
山伏から広河内岳間は難しい課題として残っています。
sw1051さん、お久しぶりです。コメント、ありがとうございます。
sw1051さんにお会いしたのは、2012年4月ですから、もう2年半も前のことですね。
最近のsw1051さんの山行、見させてもらいましたが、すごい頻度でアルプス行ってますね。それでも、天気が悪くて中止にした山行も多かったとのこと。
千枚から仙丈ヶ岳までの縦走、お疲れさまでした。私も千枚は雨の記憶があります。塩見も、いつか、蝙蝠岳と一緒に再度登りたいと思っているんですが、このところ山行頻度が落ちてしまって、いつになることやら。
sw1051さんの赤線も大分つながってきましたね(昔の山行ルートが登録されていないようですので、今からでも登録してはいかがでしょうか)。八ヶ岳と南アルプスを繋げたら、次は、やはり太平洋〜南アルプスでしょうか。
山伏〜広河内岳間は、山小屋が全くないですが、テント泊中心のsw1051さんなら、大きな問題はないと思います。ただ、南アルプスの塩見側のコースと比べると、ルートファインディングが必要な区間が沢山ですから、時間に余裕を持たせて計画したほうがよいと思います。
sw1051さんも、エスパース使われているようですね。私もエスパース気に入って使っています。デュオくらいのサイズがあれば、快適に過ごせますね。私のは、エスパースライトの2〜3人用なので、無駄に重いです。
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