南アルプス縦走:赤石岳~北岳
- GPS
- 48:23
- 距離
- 54.4km
- 登り
- 5,756m
- 下り
- 5,373m
コースタイム
- 山行
- 10:16
- 休憩
- 2:13
- 合計
- 12:29
- 山行
- 10:14
- 休憩
- 1:48
- 合計
- 12:02
- 山行
- 10:21
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 11:51
- 山行
- 9:59
- 休憩
- 1:46
- 合計
- 11:45
天候 | 8/19(月) 曇り時々晴れ.登り2000mの天気が良くてラッキーでした. 8/20(火) 終日霧雨.一日中雨具を着ての行動でした. 8/21(水) 朝晴れ,後ガスが来て曇り. 8/22(木) 朝晴れ,後曇り.13時頃から小雨.広河原山荘で帰りのバスを待っていると雷雨. |
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過去天気図(気象庁) | 2024年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
8/18(日)JR静岡駅10:00発の南アルプス登山線バスと椹島ロッジ送迎バスで椹島ロッジへ 8/22(木)雷雨の中,広河原から路線バスで甲府駅へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
今回コースでの難易度・疲労度が高い箇所3選: No.1: 三峰岳への登りの岩場(今回コースで最も神経を使ったかなり怖い箇所.比べて,スリリングと言われる塩見岳への岩場など安全と感じる程です) No.2: 荒川前岳から高山裏避難小屋のコース(前岳からの急坂下りは当然ながら,後半の高山裏避難小屋への長い緩やかな水平トラバース道も結構疲れる路です) No.3: 北沢源頭(赤石小屋から赤石岳への後半路)前後の数百m.こんかいのように登りの場合はまだマシですが,下りは神経を使いそう.8/16と8/17に,砲台型休憩所と呼ばれる箇所近くの登山路から滑落して亡くなっている登山者がそれぞれ発見されました. |
その他周辺情報 | 広河原山荘では,シャンプーやボディーソープが置いてあるシャワーを10分間使えます(800円).清潔感が気になる私としては,4日間の汗を流し,衣服のすべてを着替え,裸足でクロックスに履き替え,ようやくほっとしました. |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
サンダル
ザック
ザックカバー
サブザック
行動食
非常食
飲料
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
携帯トイレ
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感想
【コース計画と感想】
南アルプスは甲斐駒・仙丈と鳳凰三山の北部しか登ったことがなかったので,北岳から南への主稜線も歩いてみたいと思ったことと,小屋間が離れていて一日の行動時間が長い南アルプス縦走を先延ばしにして年齢を重ねると今後難しくなるだろうと考えて,今回計画しました.聖岳と光岳も含めれば完全縦走なのですが,食事提供なしが更に2~3泊増えて背中の重さが増しますし,風呂・シャワーなしの夏の一週間はちょっと耐え難かったので今回の3泊4日計画にしました.実際は,福岡から登山口の椹島まで2日間,甲府からの帰りに1日が必要なので,3日間移動+4日間縦走の一週間が必要でした.一週間も同じ服を着て同じ靴を履くことは清潔感が気になる私には耐えがたいので,着替えや移動時のクロッカスを持ち,その他に万が一の防寒着,非常時用用具,水・食料等合わせて13kg超を背中に担ぐことになりました.小屋泊まり4日間にはちょっと重すぎると思うように,これを背負って累積標高5,756mを登り,54.4km歩くとさすがにいつものペースでは歩けず,標準コースタイムの1.1~1.2倍になってしまいました.快適さと軽量化のバランスについて,もう少し改善の余地があるように思いました.
南アルプスの特徴として,登山口までのアクセスの不便さと小屋間の距離の長さがあります.基本的に避難小屋を避けての小屋泊まりとなると,今回コースの場合,荒川小屋,三伏峠小屋,熊の平小屋は外せないことになります.赤石小屋や北岳山荘か肩ノ小屋を追加しても移動時間が短すぎる1日が追加されるだけで,これら3小屋泊まりが必須になることには変わりありません.すると,毎日12時間前後の行動が必要になり,結構体力が必要です.毎日1時台に起き,3時を目安に小屋を出発して12時間歩きという非日常の行動でした.
2日目の天候は終日霧雨で,荒川三山の主峰とも言うべき悪沢岳への往復をキャンセルして三伏峠小屋に向かいました.小屋への到着時刻から見ると,悪沢岳を諦めて正解でした.1日目と3日目は雨具が不要で,4日目は朝の間3000m級に入るとガスで雨具を必要とした他は,遠景を楽しめない時間が多かったものの,まずまずの天気だったと言えるでしょう.
歩行速度と出発時間が違うので一緒に行動はしませんでしたが,フィリピンからのテント泊単独行30歳男性と,オーストラリア人のテント泊男女ペアパーティーとは宿泊地とルートが同じなので,縦走中の休憩時に一緒になった時や追いつき追い越した時,そして小屋に着いたなど4日間で色々おしゃべりをする知り合いになったことは,今回山行に景色以外の楽しさを与えてくれました.
運動する登山はプロテイン摂取効果が高いチャンスなので,行動食にギガプロテインバー,小屋到着時用にプロテインパウダー,朝食時に小屋の弁当以外にプロテイン増強シリアル+スキンミルクを摂取しました.その結果,8月上旬2週間平均と帰福後2日間平均では,体脂肪率が(21.1%→17.5%)と落ち,基礎代謝量が(1553→1665)に増えました.
総括感想として,縦走が終わった今,南アルプス縦走の大動脈を54km歩いたという満足感に浸っています.
【準備して良かった装備】
●サコッシュ代わりのドライバッグ.いつも使っているモンベルUL MONO ポーチは非常に軽量ですが雨天時に不適です.雨中行動が多分不可避であろう南アルプス縦走では,雨の中でも食べる行動食や位置・時刻を確認する紙地図を入れて雨具の外に掛けるポーチが必要です.直前にモンベルロールアップドライショルダーを購入して正解でした.
●5指靴下.以前靴の中が濡れた時,足の指が汗と水でくっついた状態になりかなり不快でしたので,finetrackの5指ドライレイヤーインナーソックスをまず履き,次に4日間縦走での臭いを軽減するためにメリノウールの5指靴下を重ねて履きました.もちろん,指同士のくっつきはなく,2日目霧雨中行動で靴の中が濡れてしまいましたが,以前のような不快感はありませんでした.今回は使いませんでしたが,靴の中がびっしょりになった時のために替えも兼ねて防水靴下も携帯していました.防水靴下の登場なんて隔世の感があります.
●ミレーのドライレイヤー上下.Tシャツぽいfinetrackのドライレイヤーと違い,ミレーのドライレイヤーは半裸に見えるアミアミのシャツとパンツで,人前でベースレイヤーを脱ぐことが憚られます.しかし保水しないポリプロピレン製であること,メッシュなので皮膚接触面積が少ないこと,メッシュが空気層を作るので寒くなっても保温効果が多少期待できること,等の効果があります.今回はfinetrack製ドライレイヤーを着替え・予備として持ち,4日間はミレー製を着こみました.吸汗速乾のベースレイヤーをその上に着れば汗で濡れている感じがしませんでしたし, 2日目に終日雨具を着て12時間行動をしましたが汗による下着の粘着感はありませんでした.
●浄水フィルタ(SAWYERマイクロスクィーズフィルタ).岩の上を流れる水を集めた高山裏避難小屋への縦走路途中の水場と,飲用不適表示の三伏峠小屋の水を浄水して詰めました.浄水フィルタがなくても,前者はそのまま飲んでも多分大丈夫だったと思いますし,後者も元気だったら往復30分の水場まで下って汲みに行けば問題なかったのですが,浄水フィルタのおかげで前者の安心感と後者の水汲み往復なしでの安心感が得られました.
●抗菌スプレー(無印良品の50mL).実際どこまで効果があったかは分かりませんが,4日間の縦走で汗臭い不快感を他の人に与えないために,靴下,靴の中,ベースレイヤーに毎日スプレーをしておきました.
●尾西の山菜おこわ.火器があればどのアルファ米もおいしくいただけますが,火器なしの今回縦走では,今年食事提供がなくなった熊ノ平小屋での食事対策として,水で戻してもおいしい(水の方がおいしい?)おこわを選択しました.夕食用はお湯を購入して戻しましたが,朝食用は前夜から水で戻した山菜おこわを深夜起床して出発前に食べました.
●行動食.最終前夜の熊ノ平小屋以外では夕食と朝食弁当を食べ,毎日,昼食なしの行動食として,タンパク質27g,カロリー332kcalのギガプロテインバーを2本,バナナバウムかさつまいもバウムを1個,バターレーズンパンを1個食べる計画でした.この量の行動食と小屋2食を合わせても12時間行動の消費カロリー6,000kcal超えには追い付かないのですが,結局計画した行動食を食べることができず,ギガバーが余ってしまいました.少々重いため,最終日に必要な分を取り除いた行動食の余りを私と同じルートと日程で縦走していたフィリピンの若者にもらってもらい,背中を軽くしました.
●スティックタイプの日焼け止め.位置や高度を確認するため頻繁にApple Watchをタッチするし,行動食も食べるので,手で伸ばす日焼け止めクリームはできれば避けたいと思っていたら,手が汚れないこの商品(JMSolution)がありました.行動中の追加塗り直し時にも抵抗がありません.残量が分からない点に,登山での利用にちょっと不安感がありますが.
●(使わなかったけれど)靴の中が濡れた時のために新聞紙2枚,濡れた靴で足がふやけた状態で歩かなければならない場合用のクリーム
●靴.1年半前からローカットのトレッキングシューズを使って軽快登山に切り替えていたのですが,岩場でのグリップ力不足と足に伝わる岩の硬さに不安がありました.今回は4日間縦走で,3000m級の岩稜帯があるので,スポルティバのTX5 LOW GTX(ハイカットのTX5 GTXと同じ靴底のローカット版)を購入して使いました.以前はアプローチシューズとして分類されていましたが,今はマウンテンシューズに分類されているようです.ローカットゆえの雨が入りやすいリスクよりも軽快さによる疲労軽減を選択しました.塩見岳や三峰岳~北岳の岩稜帯で,グリップ力や靴先のクライミングゾーン利用に安心感がありました.トレッキングシューズだったらかなり怖い思いをしたと思います.
【水場情報】
●椹島ロッジ:水が豊富で入浴もできます.ドライヤーはありません.
●赤石小屋:100m下の水場からポンプアップされている水が玄関入口脇の飲料用タンクに溜められて登山者に提供されています(なくなったらおしまいの注意書きはあります).
●北沢源頭の水場:写真の説明を見てください.水量は少ないですが登山路を外れて汲みに行かなくてもよい最初の水場が安全です.
●荒川小屋:水が豊富ですが,小屋から下の方まで1分程下る必要があります.
●高山裏縦走路上の水場:水量は少ないですが,貯めるに時間がかかる程ではありませんし,縦走路から外れることなく水をくむことができます.荒川小屋と三伏峠小屋の間には,高山裏避難小屋の下の方の水場(汲みに行くために体力が必要)とこの高山裏避難小屋から東に630mのところの縦走路水場しかありません.
●三伏峠小屋:往復30分と結構下の方には水場があります.小屋には飲料可能な水が流れておらず,この遠い水場まで汲みに下って行くかペットボトルの水(500mL/300円)を購入する必要があります.私は,小屋の飲料不可の水(洗顔や歯磨き等には可能)を浄水フィルタでろ過して翌日1日分の2.5Lを用意しました.
●塩見小屋:休暇で小河内岳避難小屋に遊びに来ていた塩見小屋スタッフに,塩見小屋の水場は遠いと聞いていましたので,ここでの水補給を諦め,三伏峠小屋で一日分の水を用意した次第です.
●熊ノ平小屋:水は豊富です.トイレも常時下に水が流れている和式水洗です.
【小屋情報】
●椹島ロッジ:一人でも6畳ほどの個室が割り当てられます.01:40起きの3時出発なので,大部屋より出発準備に気を遣うことが少なくて楽でした.A棟~C棟が2階建て宿泊棟,さらに食堂や風呂がある共用棟の計4棟が繋がっています.ここ下界の夕食はカラフルです.朝食弁当は巻きずしに稲荷寿司です.宿泊棟のトイレは和式水洗ですが,共用棟のトイレは洋式水洗でウォシュレット付きです.ぜひ作品を鑑賞したいと思っていた白旗史朗山岳写真館もテント場近くにあります.このテント場と山岳写真館の前を通る登山口への近道がありますが,ちょっと遠回りでも緩やかな車道を歩いた方が体には楽です.
●荒川小屋:夕食はカレーを主に,グラタンなどの小菜が複数つきます.朝食弁当は,味が異なる5個の小おにぎりです.水場もトイレも外です.特殊東海フォーレスト管理の小屋は,特殊な和式便器で小と大を分離し,ヘリで下界に降ろし,バキュームカーを呼んで回収するスタイルを取っています.この回収方式のため,これらの小屋のトイレは皆同じ形態です.
●三伏峠小屋:夕食には小鉢蕎麦,大きいエビフライ,その他が付きます.朝食弁当は稲荷寿司とおにぎりです.洋式水洗トイレが宿泊棟にあり,雨でも建物外に出る必要がなく,清潔感があり普段慣れていない和式よりも体が楽です.
●塩見小屋:ここのトイレは携帯トイレブース専用です.持参していない人は300円で携帯トイレを購入できます.また,100円で使用済み携帯トイレを回収してくれます.携帯トイレブースなので臭いもなく清潔感も高く,ヘリ回収も容易だろうと思います.個人的には,個人負担は増えますが,多くの山小屋のトイレをこの携帯トイレブース+現地回収方式にしてもらえば,トイレの不快感がなくなると思います.
●熊ノ平小屋:宿泊者は2名でした.今年は食事提供がなくなりましたので,その食料分が重くなります.1階の食堂でストーブを焚いていましたので,2階の宿泊場所は暖かでした.トイレと水場へは数m下ります.荒川小屋や三伏峠小屋に比べて水場が一番近場にあります.和式トイレですが,下に常時水が流れている水洗方式なので臭いは気になりません.
【コース情報】
●8/19(月) 椹島~荒川小屋
標準タイムと累積標高は,椹島-(5.24,1395m)-赤石小屋―(3.11, 696m)―赤石岳―(1.42)―荒川小屋です.しかも赤石小屋に向かう東尾根は出だしから急坂です.最初に元気一杯に早足で歩くと赤石岳までの2000mが疲れで大変になりますから,出始めの体慣らしのためにも,意図的にゆっくり登った方がよいと思います.
北沢源頭付近から稜線へは足場が悪くなり,標高差も400m以上あります.登りはまだよいですが,下りは神経を使います.ここはいつものペースでは登れませんでした.
●8/20(火) 荒川小屋~三伏峠小屋
荒川小屋~荒川三山の稜線に出るまでに柵で保護された花畑がありますので,花の撮影にご興味がある方はここがポイントです.
中岳避難小屋に荷物をデポしての悪沢岳往復(2.14)と休憩を入れても,計画では12時間で三伏峠小屋に着くはずでした.しかし一日中霧雨予報で雨具着用でしたので悪沢岳往復を諦め,早く小屋に着くように計画を微調整しました.が,前岳から高山裏避難小屋までの間が難路で,休憩なし標準コースタイム2.04のところを,実際には,休憩込みで3.10と5割増の時間がかかりました.高山裏避難小屋から三伏峠小屋は路が容易になります.
●8/21(水) 三伏峠小屋~熊ノ平小屋
塩見岳西峰への岩場の登りはスリリングですが,安全に登れます.東峰からの下りを含めて,この日のコースに難路はありません.
●8/22(木)熊ノ平小屋~広河原
三峰岳~間ノ岳~北岳は3000m級の岩稜帯なので,それなりの注意が必要です.特に慎重さが求められ神経を使う区間は三峰岳への登りです.若い時にはもっと簡単に登れたのに,と頭では思うものの,バランス能力が大きく低下している今の年齢では,岩場で瞬時に重心を移動固定するのに時間がかかり,段々危険になってきています.
草すべりコースの小太郎山分岐から広河原へは2000mの急坂を下りますので,それなりの足への負担があります.この日午後に下山者が負傷したか発病したようで,最終バスで甲府に向かう途中,救急車が広河原に向かっていきました.
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