《伊那山脈》為栗駅→万古川→金森山ー上町下山
- GPS
- 19:38
- 距離
- 47.2km
- 登り
- 3,930m
- 下り
- 3,641m
コースタイム
- 山行
- 5:10
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 5:30
天候 | 三日間晴れ三日目ガス多少 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
(豊橋6時、為栗8時39分、1850円) 飯田市上町から市営バスで飯田駅(700円)へ、飯田線で豊橋へ帰る(18時16分→21時50分、2590円)。 |
ファイル |
概念図+上半遡行図
(更新時刻:2016/09/14 11:40)
(更新時刻:2018/09/12 18:23)
|
写真
装備
個人装備 |
ハーネス+メット
フェルト地下足袋
シュリンゲ+ビナ+ 確保器
防寒具
カッパ
シュラフカバー
マット
水筒
その他沢個人基本装備(ナイフや灯り地図磁石)
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共同装備 |
タープ
ストーブ(非常用)
焚き付け+ライター
ロープ20m
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感想
●一日目 晴天 河原歩きの一日満喫
天竜川出会いから山頂まで36キロ、沢沿いにはキャンプ場が一か所あるのみで、あとは自動車道路の横断が三つ、つり橋が三つしかないという、あとは静寂の万古川。名古屋ACCの藤原さんの記録を16年前に読んで以来、松っちゃんが温めてきた。余裕持って三日、この夏、どこにも行けなかったから、豊橋から一本列車で入山しよう。
豊橋始発天竜峡行きに乗ると、豊川を超え、新城を超え、緑のトンネルをくぐり、憧れの三遠南信山間地を通り抜ける。中央構造線と天竜川が逆zに交わり、その弱点を縫って飯田線が、その難点をつないで県境が交錯する。何度も通って頭に入れたい秘境地帯だ。
水窪、平岡といった駅には、狭い谷あいに意外なほど住宅があって、驚いたりする。下車してブラブラしてみたい。
為栗で岐阜から車で来た松っちゃんと会い、線路がトンネルに入る横から天竜川に降り、二股から万古川に入る。広い河原、くねる蛇行、静かで、人影もなく、ざばりざばり歩き進む。セミが大歓迎してくれる。この川の左岸と右岸に小さな、自動車道路の通じていない集落が点在していて、その名が万古(まんご)、小中尾、漆平野(しっぺいの)、布袋野(ほての)と。今も人がいるのかいないのか、この川にかかるつり橋を渡って行ってみたい。
二軒屋のキャンプ場には一人人が見えた。そこから岬をまわりこんで裏側のいいところで天場とする。久しぶりでいろんな話。酒もほとんど飲んでしまった。
●二日目 晴天 くねくね帯のゴルジュ
ゆっくり起きて出発。地形図でくねくねしているところは決まって函滝があり、本来は結構テクニカルなへつりがいるのだが、鉄の足場の杭と、鎖の手がかりが設置してあって、どれも楽勝で突破できる。滝も大きくて10m以下だが次々と現れる。20mクラスは不動滝と、三日目の一本だけだった。しかし沢全体を通じて両岸の壁は急で高く、巻きの難しい深い谷という印象だ。馬小屋沢出会いには看板があった。鉄杭があるとはいえ結構な高度感があり、中にはトラ縄がほどけかけのもある。
不動滝のところで、突然10人以上のツアーに会ってしまい驚いた。飯田市の主催で、住んでる土地の魅力を再発見しようと地元の千代地区の人たちを案内しているらしい。この鉄杭と鎖は、市が昭和42年に設置したもので、これがあれば確かに誰でも来られるが、一般にはかなり危険なルートだと思う。ここは大人数でヲーキングするには無理があるのではないだろうか。この場所に作ってしまうセンスも昭和42年らしいと思う。一行は林道から馬屋沢を降りてきて唐沢滝のある右股から林道へ帰るとのこと。数人は沢慣れして見えたが、あとは初心者に見えた。
追われる気がして急いで真っ赤な万古大橋の下を抜け、落ち着いたころ、二泊目を探す。また炭焼き窯がたくさん出てきたので、きっと居心地がよさそうだと思い、近くにする。雨は一滴も降らない。天気予報ははずれた。すぐ上流には、左岸岩壁から落ちる支流が見える。三本すらりと高く伸びたサワグルミを見ながら焚き火する。まっちゃんに林業仕事のあれこれを興味深く聞く。引退したらやってみたいなどと考える。三日の日程だと、朝から晩まで山の中、という1日がある。これが貴重だ。
●三日目 曇り時々晴れ 連瀑、連ナメ、古い峠道
クネクネしたところは曲がり角に滝。直線のところは決まってナメ床だ。これがどこどこ現れて、鬱陶しいゴロゴロ地帯がほとんど無い快適な沢だ。しかも花崗岩のフェルスパーはアルカリ長石だろうか。ピンクが鮮やかで、結晶がすごく大きい。石灰岩もフレッシュに輝いている。これほど美しい沢がほとんど注目されないなんて、なんて嬉しいことだろう。1160二股でまっちゃんが名古屋ACCの2000年の山行記録の複写を持ってきていて、藤原氏の記述を感慨深く朗読する。知られざる名渓を探し当てた喜びを隠さない、素晴らしい山行記録だ。一行はこの二股で一泊した。
源流上り詰め、水が切れるところまで、爽やかなナメが続いて、その後は藪もなく、美しい林を詰め上げた。まっちゃんは、「ピシャリ山頂」にこだわり、正に三角点に躍り出た。僕は少し右に詰め上がってしまった。少し雲が濃くなり、ガスもふわふわしていた。
山頂からの下りは踏み跡がわからず、磁石を切って降ったら案の定違う尾根を数十m下った。怪しいと思って、左右を見ていれば、隣の尾根が見えてわかる。そうして修正しながらでないとなかなか難しい。北のコルまで行くと初めて踏み跡が明瞭になった。昨日会った一行から、金森山には最近行方不明者が一人いると聞いた。この山は下りも未整備だ。
小川路峠は18世紀半ばから茶屋があるとのこと。遠山谷の山間集落から伊那谷への主要路だから。ここからの下り道は300年の歴史あるしっかりした歩きやすい道だった。落ち葉で柔らかく、小石や藪なども一切なく、薄い地下足袋の足裏がとても気持ちよかった。要所には茶屋跡の広場と、イチイやブナの大木があり、33の観音像がある。秋葉信仰の主要道だ。この道は1062までは地形図とは違ったところ(ほぼ稜線上)についている。ここは地形図と大幅に違う。1062コルで自動車道路と出会う。ここも茶屋跡。そこから下はまた地形図とは違う歩行者用道を降るが、途中藪に覆われ極めて不明瞭になった。いにしへの道だが、自動車道が通り人が歩かなければすぐに廃れてしまう。809から再び自動車道に乗って、部落まで。バスの時間まで20分ほどに。上町をぶらつくほどの余裕はなくなってしまったな。でもまあ、コーラを飲んで乾杯。みかん色のバスが来て飯田駅まで1時間あまり、700円で載せてくれた。運転手さんと周りに座ったおばさんたちが楽しそうに話していた。
飯田駅には、高校時代の旧友のエミちゃんが会いに来てくれていた。汽車の時間まで40分ちょっとしかなかったけど、渋いラーメン屋で一緒にカツ丼食べた。ビールも飲んじゃった。せわしなかったけど嬉しかった。お土産に庭でとれたイチジクとナツメと、一二三屋のまんじゅうと、それからお茶ボトルまでくれた。下山するといつもむくみが来て喉がかわく。もらった冷たいお茶がとてもありがたかった。なんたって飯田線は特急じゃない4時間、車内販売ないからね。暗い闇の中を列車が走り、まっちゃんは為栗で下車して車で岐阜へ帰った。行きも帰りも飯田線の、とても満足な山行となった。
一本の川が下から上までほとんど無垢のまましかも美しい渓相で、眠っている。三遠南信ならではの貴重な沢だ。豊橋に引っ越したおかげで、良い山行が一本できた。価値観を同じくする古い仲間あってのことだ。
今年は年来温めてきた計画がふいに実現の運びとなる不思議な巡り合わせの年だ。
このマンゴ川も、地図を睨めば睨む程に「行きたい、いや行かねば」の「ねば沢」の一本だった。名古屋ACC以前に、大阪わらじ時代の鈴木氏や勿論地元の成瀬さんの記録もあって「いい沢だったヨ〜」とのことだった。伊那山地という不遇の山並の一突起に過ぎない金森山に30数キロも一見シューッと、その実くねくねと南西流下するこの万古川は、三度の林道侵入を許すも概ね無垢な流程を保ち、天竜川に流入する。遡行に当たってはさして人工物に気取られることもなく遡行に専心できる。また、飯田線「為栗」駅が天竜川出合即入渓地という境遇も魅力的で、そこからすぐに清潔で快活な遡行空間が展開している。万古渓谷探査路部分には観光鉄杭と緊縛鎖があって気分を損ねるという話もあるが、少なくとも我々にとっては有難い存在でありこそすれ邪魔なモノではなかった。黒部も真っ青な?鉄杭の打ち様もあった。
派手な舞台でもないけれど、沢登りを始めた人たちの目標たり得る筋の通った一本であることは約束できる。林道活用の途中入渓記録を散見するけれど、ここは是非ワンプッシュを勧めます。中流域の雰囲気も実に良いけれど、下流域の清潔な河原の風情が我々の知る日高山脈の渓流と一脈通じるところあって実に好ましい。遠からず子連れで再訪したい。
周到に詰め込めば二日間の山行とすることも可能だが、それはまた別の物語だ。三日持ってのんびりと遡ることができたことが何より貴い。公共交通機関利用の、今風でない我々だけの山行と成せたことに満足している。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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暇なんでヤマレコの地形図見てたらこの川に長いトレースがあるのに気づき
ゆったり沢旅によさそうだなぁと思い
万古川でググったら北大AACの記録出てきました。
で、誰だろうとおもったら、やはりお二人でしたか笑
By黒部の瓢六
あ、やはり参考にしてもらってましたか。スジの通った良い川ですのでまた、是非に。
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