荒川三山から赤石岳


- GPS
- 80:00
- 距離
- 23.8km
- 登り
- 2,947m
- 下り
- 2,941m
コースタイム
3日目 4:00千枚小屋―5:17千枚岳―6:44丸山―7:33悪沢岳―9:26荒川中岳―11:03荒川小屋―12:03大聖寺平―13:38小赤石岳―14:17赤石岳―16:48赤石岳―17:26赤石小屋
4日目 5:30赤石小屋―9:25椹島
天候 | 1日目:晴れ、2日目:晴れ、3日目:雨が降ったり止んだり、4日目:晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
長い道のりですが、とくに危険な場所はありません。 |
写真
感想
椹島を起点に、荒川三山と赤石岳を巡るコース、途中、3000mを越すピークが7つある。丸山3,032m、悪沢岳3,141m、荒川中岳3,083m、荒川前岳3,068m、小赤石の肩3,030m、小赤石岳3,081m、赤石岳3,120m。国土地理院の「日本の高い山 ベスト21」によると、悪沢岳は第6位、赤石岳は第7位、荒川中岳は13位に入っているが、第19位の乗鞍岳より高い丸山、荒川前岳、小赤石の肩、小赤石は載っていない。これらの山々は付録みたいな山と見られているようだ。畑薙第1ダムで東海フォレストのバスに乗り換え、椹島に着く。銭湯のような風呂場で汗を流し、缶ビールを空ける。5時から夕食。夕食後、芝生広場で飲み直し。ここは標高1,100m、気持ち良い夕風の芝生広場でほろ酔い、7時過ぎに床に入る。
翌朝5時から朝食。千枚小屋まで1,500mの登りに備えて、ご飯も味噌汁もお代わり。椹島の朝は人々がザックをかついで集まり、ヘリが荷揚げに飛び始め、早くから賑わっている。6時に椹島を出発。大倉財閥の創始者、大倉喜八郎の記念碑から鳥居の横を過ぎると山道となるが、すぐに林道に出る。しばらく林道を歩き、滝見橋の手前から千枚小屋に向かう登山道に入る。10分程で長い吊り橋に至る。これから巡る周囲の山々からの水は、全てこの奥西河内に流れるので、もう10日以上雨無しではあるが、滔々と流れている。川底の赤色の岩が目につく。南アルプスとは仮の名、正式には赤石山脈と云う。その名の由来が、この川底で輝いている赤い石である。ゆ〜らゆ〜らと揺れる釣り橋、バランスを取って、何とか手摺りにお世話にならず渡り終える。吊り橋からの急登、汗ダクになり、調子はなかなか上がらない。給水システムにポカリスウェット2Lと、ペットボトルのお茶1本、いくら暑くてもこれだけあれば大丈夫だろう。50分ほど急登を登り、送電線の鉄塔でひと休み。見上がれば、雲ひとつ無い青空。鉄塔から少し登りがあり、何故か下り始める。勿体無いが止むを得ん。樹林が途切れた場所からは、朝の光に輝く巨大な岩山が見える。明日はおそらくあの稜線を歩くのだろうが、それにしても高いな。鞍部から登ると再び林道に出る。林道から梯子を登って山道へ。急登であるが、小石下からは勾配も緩やかになり、ひと息つく。右下には林道があり、なんと車が通っているではないか、ガッカリ。清水平で、少々早いが椹島ロッジの弁当を食べる。ここでペットボトルを一本空け、豊富な水の流れ出る水場で給水。たっぷり休んで元気を取り戻し、急登に挑む。東海フォレストの立派な説明板があり、「[蕨段] 急登の途中で、ポンと開けた平らな場所が所々にあり、南アルプスやその周辺、樺段とか、山犬段とか、段のつく地名であらわされています」、と記されている。10分程で見晴らし台に着くと、そこは林道、またまたガッカリ。でも眺めは抜群、明日登る山々が見渡せる。雲が出始め、頂きが覆われている山もあるが、千枚岳から荒川三山、それに続く小赤石岳から赤石岳と目で追い、明日、その長大な稜線を歩くのかと思うと気が遠くなって来る。見晴らし台からさらに一時間以上の急登、イチヤクソウやギンリョウソウが生えるうす暗い道、中には黄色のギンリョウソウも。勾配が緩やかになり、駒鳥池に到着。池から千枚小屋まで緩やかに登る道、ポツポツと花が現れる千枚小屋は不審火で焼失し、先週ペンキを塗ったばかりの出来立てのホヤホヤ。木の香りが漂う、気持ちの良い小屋である。割り当てられたスペースには毛布と寝袋が用意されている。着替えをし、汗で濡れた下着を吊るして、明日のポカリスウェットを2L作成。水は豊富。ひと仕事済ませて外へ出て、ひと缶800円也の缶ビールを空ける。雲に覆われ眺めは無いが、至福の時。正面に富士山の左裾が現れ、次いで右裾も現れるが、てっぺんは雲に隠れている。5時半から夕食。持参の焼酎を飲んですっかり出来あがり、寝床に入る。
夜中に目を覚まし、外のトイレへ行くと、富士山の黒いシルエット。富士登山のランプの行列は見えないが、遠く、街の明かりも見える。見上げれば、お星さんの何とも明るい事。そして再びウツラウツラ。翌朝、目を擦りながら4時に小屋を発つ。真っ暗やみの中、ヘッドランプで足元を照らしながら急登を登る。花も咲いているが、照らさなければ見る事は出来ない。やがて空も白み始め、1時間少々で千枚岳頂上2,880mに登り着く。下は雲海、上は垂れ込めた雲、雲と雲の間の帯状の空に富士山が浮かんでいる。何故か富士山を見ると嬉しくなってくる。2蜂性の山は笊ヶ岳、その右の穏やかな山は布引山、いつか登ってみたい。行く手には、丸山、悪沢岳、中岳、前岳と、これから登る山々にガスが掛り始めている。稜線が左に弧を描いた先には赤石岳が、その左奥に見えるのは恐らく聖岳であろう。いよいよ3000m級、丸山への登りが始まる。形は丸いがなかなかの急登、でも次々とお花が待っている。ウスユキソウは何ウスユキソウ?、ミヤマコゴメグサ、でっかいマツムシソウ、チシマギキョウ、イブキジャコウソウ、シナノオトギリ、シコタンソウ、タカネナデシコなど、おなじみの高山植物に混じって、これは始めてみるシロバナタカネビランジ。途中から雨が降り出し、カッパの上下を着込む。すぐに小雨となるが、そのままの格好で登り続ける。振り返れば毛無山や竜ヶ岳の向こうに富士山が、何度見ても格好いい姿を見せている。丸山の広い頂上3,032m、行く手の悪沢岳はガスを纏って霞んでいる。石に座り、千枚小屋の朝食弁当を取り出して食べる。お花を見ながら軽く下り、悪沢岳への登りは赤い大岩を伝って行く。シロバナノチシマギキョウが1輪、寂しく咲いているのを発見。ガスが流れる中、悪沢岳頂上3、141mに登り着く。立派な木柱には、「荒川東岳」と彫られている。深田久弥は、悪沢岳という名に固執しているが、荒川三山のひとつと云う事で、「荒川東岳」が正式名称のようである。ギザギザ頭の、いかにも悪そうな雰囲気は、東岳という名より悪沢岳の方が似合うかも知れないが、そんな事よりも、荒川三山としてセットになっている東岳、中岳、前岳、いずれも3000mを越す山なのに、東岳と中岳は独立し、前岳だけが中岳の付録としか見られていないのが残念である。頂上はガスで覆われ展望は無い。頂上から急な岩場を下る。振り返り、仰ぎ見れば、ギザギザの岩稜がガスの中に浮いている。コオニユリ、トリカブトも現れる。雨も止み、カッパを脱いでザックに納める。鞍部から稜線を登り、中岳避難小屋に到着。小さな小屋ではあるが、ちゃんと小屋番もいて出迎えて呉れる。雨が大降りとなって来て、軒下で再びザックを着込む。避難小屋から荒川中岳まではほんのひと登り。3,083mの頂上に立つ。ここもガスで覆われ、展望は無い。中岳を下ると三伏峠への分岐に至り、ここにザックをデポして前岳に登る。ここから5分、荒川前岳3,068mに到着。中岳からでも10分程度しかかかっていないので、前岳が中岳の付録と見られてもこれはいた仕方が無いな、と実感。ここも乳白色の世界で、眺望は無し。分岐でデポしたザックを担いで、そこから下る急坂は圧巻。谷一面がお花畑。これを鹿の食害から守るため、谷は柵で囲まれ、ジグザグ登山道は柵の中に入っては出、出ては入るを繰り返す。セリバシオガマ、ヤマハハコ、ハクサンチドリ、クロユリ、チョウノスケソウ、ハクサンイチゲがびっしりと、一級品のお花畑。お花畑を過ぎたところの水場は、このところの日照り続きで涸れている。雨はとっくに止み、カッパを脱いでザックに納める。ガスが流れ、小赤石岳が悠然と姿を現す。急な下りは終わるが、まだまだ下りは続く。トラバース気味に下り、荒川小屋に到着。水場まで下り、給水システムを補給。昼食用の弁当は、朝食と全く同じもの。ぺロリと平らげる。荒川小屋からはすぐに急登となり、心悸亢進、不整脈が出現、息を整えながら登る。急坂が終わると、小赤石岳を左に見、県境尾根を右に見て、緩やかな広い谷を辿る。大聖寺平でひと休みし、ここからの登りに備える。雨が降り出し、再びカッパの上下を着込む。道は左に曲がり、まずは小赤石岳の肩を目指す。だんだん登るのが辛くなってくるが、今さらどうしようもないので登るしかない。30分程登ってケルンの立つ広い場所でひと休み。雨は止み、カッパを脱いでザックに納める。砂礫の急登を折り返しながら登り、いつのまにか小赤石岳の肩は過ぎ、小赤石岳山頂3,081mに到着。振り返ると、今通って来た小赤石岳の肩が見えるが、行く手の赤石岳は雲の中。稜線を辿って赤石小屋への分岐に至り、ここにザックをデポして赤石岳に向かう。身軽になってスイスイと、20分もかからず頂上へ。赤石岳山頂3,120m、相変わらずの乳白色、何にも見えない。分岐に戻ってザックを拾い、赤石小屋へ下り始める。急坂を、一歩一歩足の踏み場を確認しながら降りて行くが、だんだん膝に力が入らなくなって来たのだろう、左足が妙な方向を向き、立て直そうと右足を前に出すとそのまま前向きに転倒。谷に落ちる前に踏みとどまる。顔面、右膝に擦過傷、右肘打撲、こんな程度で済んで良かったが、クワバラクワバラ。以後、さらに慎重に下る。水場でひと休みし、首に掛けた汗臭いタオルを洗う。雨が降り始めカッパを着込む。ここから何故か登りとなり、崖を伝って細い道、慎重に足場を選びながら進む。腰が重い。富士見平に到着するが、勿論、富士山は見えない。何度目か、ここで最後のカッパ脱ぎ。ここから先は下り一方、ヘロヘロになって赤石小屋に到着、千枚小屋からおよそ13時間半の長〜い道のりであった。割り当てられたスペースにザックを置き、片付ける暇も無く夕食。消灯前に寝床にもぐり込む。
いつもの如くウツラウツラと夜を明かし、4時に起床。歯を磨いたり、トイレに入り、4時半から朝食。ご飯もお味噌汁もお代わりし、本日の下りに備える。朝食後、小屋の横の展望台に上がる。赤石岳が高く高く聳え、そこから右手に続く稜線に小赤石岳が、これまた高く高く並んでいる。小屋の前からは、正面に聖岳が大きな山容を横たえ、その右手には形の良い三角頭の兎岳が並んでいる。そして赤石岳が朝の陽に照らされ、僅かにモルゲンロートに染まる。5時半、赤石小屋を発ち、下り始める。本日の標高差は1,500m、下って下って下り捲る。膝の力が抜けて行く。大丈夫かな?と不安がよぎるが、ストックを出すのも面倒なのでそのまま下り続ける。下り続ける事4時間、無事、椹島に帰り着いた。
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