朝日連峰ロングピストン 大鳥から以東岳、化穴山
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 39.6km
- 登り
- 2,517m
- 下り
- 2,504m
コースタイム
5/9(木) 茶畑山5:20〜6:50戸立山〜三角峰〜10:05以東岳11:15〜13:35化穴山13:50〜16:50以東小屋△[行動時間:11時間30分]
5/10(金) 以東小屋4:50〜三角峰〜戸立山〜8:45茶畑山〜10:45皿淵沢出合11:50〜13:25蘇岡発電所[下山][行動時間:8時間35分]
天候 | 5/8 曇り時々晴れ、夕方ガスと強風 5/9 快晴 5/10 曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
飛行機
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コース状況/ 危険箇所等 |
注意箇所 ・東大鳥の林道は川への転落と上からのブロック雪崩に要注意。要アイゼン、ピッケル。 ・標高900mの旧雨量観測所の上部の雪の付き方が非常に悪い。背丈以上のクラックもあり踏み抜きには要注意。 ・茶畑山山頂は地形がとても複雑。特に下りの場合は下り始める方角とポイントを間違えないこと。ガスに巻かれると非常に難しくなると思われる。 ・戸立山稜線はヒドゥンクレヴァスだらけ。地形も複雑で二重山稜になっている。セッピが広くても安心はできない。 ・以東小屋は2階部分の壁が剥がれて大穴が開いています。雪や雨が吹き込んでかなり痛んでいます。そのせいで1階でも雨漏りがします。この夏は使えないのではないでしょうか? ・化穴山へのジャンクションとなる1446峰の南東陵の下部は一部非常に急峻でシュルントも発達。状態が悪いと急な崖の激ヤブ漕ぎになると思われる。ここが全行程で最難関。 ・ジャンクションから化穴山への稜線で細い雪稜を通過する箇所があり、転落要注意。その年によって状態は大きく変わるだろう。 ・化穴山直下もヒドゥンクレヴァスの嵐。大変な緊張を強いられる。 ・化穴山から甚六山へは難所は無いように見えましたがさすがに時間が無かった。1時間半あれば往復できそうだったが… |
写真
感想
GWはすべて出勤となり意気消沈していたが、3日間の代休が取れることになった。幸いにも東北地方は合わせたかのように天気がよい。多少金額は張るが、時間節約のため飛行機で往復することにした。
朝日連峰の北部は登山道の無い山だらけで、残雪期でないとなかなか登れない。その中でも化穴山(ばけあなやま)はマイナー12名山にも選ばれており、このあたりでは比較的知名度はある。この時期のルートとしてはポピュラーな茶畑山からアクセスすることにした。当初は大鳥池を一周する計画だったが、後述するアクシデントにより急遽ピストンに切り替えた。場合によっては途中撤退の可能性も高かったが、天候に恵まれたこともあり登頂成功した。自分としては健闘した山行だと思う。
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5/08(水) 庄内空港ー(レンタカー)ー蘇岡発電所10:40〜12:40皿淵沢出合13:00〜雨量観測所〜旧雨量観測所〜17:20茶畑山△[行動時間:6時間40分]
<入山まで>
羽田始発便で庄内空港に8時に着き、レンタカーで大鳥の蘇岡発電所まで入った。途中鶴岡市内のホーマックでガスボンベを購入。プリムスもEPIも置いている(110gの超小型のものもあり)。
<蘇岡発電所〜皿渕沢出合>
天気は回復傾向で晴れ間も見える。発電所からは砂利道で除雪もされてないので大体雪の上を歩く。すぐに広い河原歩きになり、これがしばらく続く。猫渕沢が出合うと河原は狭くなり、林道も川より高いところを通るようになるため、雪の斜面のトラヴァースになった。どうも今年はかなり雪が多いらしい。左京淵の砂防ダムを超えると斜面トラヴァースとデブリ跡の乗り越しが交互にやってきてかなりハード。滑落したらシャレにならない場所もある。上からのブロック雪崩も気になるが、デブリは古いものばかりでほとんど落ちてしまったようだ。この区間はピッケルと12本爪クランポンは必須だった。
<皿渕沢出合〜雨量観測所〜旧雨量観測所>
出合にはマタギ小屋があり、沢水も引いてあるのでよい休憩場所だ。今日はマタギの人はいないようだった。昼食をとってから尾根に取り付く。いきなり急な崖で道が無いが、少し皿渕沢方向に歩いてから取り付くと踏み跡が現れてうまく尾根に乗れる。雨量観測所の直下までは夏道が出ていた。雨量観測所を過ぎると斜度がさらに増し、旧雨量観測所を過ぎると更に増す。このあたり体力的にきついのは当然として、残雪の踏み抜きも多くて油断ならなかった。
<旧雨量観測所〜茶畑山>
1100mを越すと斜度は緩むが、東側が絶壁のため雪庇が剥がれかけてシュルントになっており、踏み抜きが怖くて西側の樹林帯を使ったためスピードを上げられなかった。やがて茶畑山につづく広い緩斜面に出る。ここは距離も長いためボディーブローのように効いてくる。ガスが出たら道迷い要注意だろう。山頂部は雪庇の上に上がらねばならず、一瞬登攀不可能のように思えるが、東のほうから回りこむと何とかよじ登ることが出来た。山頂台地に出たとたん、あまりの冷たい強風にたじろいだ。何だこれは!!まるで真冬ではないか!!天気も悪化しており、初めて対峙した化穴山が今にもガスに飲み込まれようとしていた。茶畑山の山頂に立つと、戸立山方面もホワイトアウトになりつつあることが分かった。今日の予定は戸立山までだったがそれは不可能どころか、この風では幕営すら危うい状況だ。あっというまにピンチにたたされて内心あせる。迅速に安全な幕営地を見つけなければ命に関わる。茶畑山を越え、戸立山との鞍部の手前にかろうじて水平な場所を見つけた。迷っている暇はなく、ここにテントを張ることを決断した。
<茶畑山直下で幕営>
見る見るうちに気温が低下し、体の震えが止まらなくなった。一刻も早くテントに入りたいが吹きさらしの場所に張るわけには行かない。風の影響を抑えるためにスコップで30センチほど雪を堀って防風壁を作り、そこにテントを張った。ところがフライシートのファスナーが壊れてしまった。修復不能でこのまま一夜を明かさざるを得なかった。テントに入ると寒かった体も少し温まり、食事をすると気持ち的にも落ち着いた。幸いにも風は夜には少し収まり、テントが壊れるようなことは無かったが、フライシートがバタバタうるさい中で寝ざるを得なかった。
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5/9(木) 茶畑山5:20〜6:50戸立山〜8:00三角峰〜10:05以東岳11:15〜13:35化穴山13:50〜16:50以東小屋△[行動時間:11時間30分]
<茶畑山〜戸立山〜三角峰>
今日は化穴山まで行く日であるが、昨日のテント故障の物理的・精神的ダメージが大きく、この日の朝は実はもう下山しようとさえ思っていた。しかし、起きてみると風は強いままだが天気は快晴。とりあえず化穴山は無理にしても以東岳まで行こうと方針変更した。以東岳には避難小屋もあるため、壊れたテントを使わなくてよいというメリットもあった。
戸立山は二重山稜で地形が複雑。ルートファインディング能力が試されるところだが、幸いにも上手くいってヤブ漕ぎはほとんどしないで済んだ。ただし、戸立山山頂近辺は残雪の踏み抜きが非常に怖かった。ここも茶畑山と同様、クレヴァスやシュルントが発達している。特に今回はGW連休中に降った雪がクレヴァスを隠しているため、非常に厄介だった。戸立山南峰をこえるとクレヴァスも減り、雪も安定してくる。
<三角峰〜以東岳>
三角峰の北側から夏道と合流するため心理的に一気に楽になる。斜度も以東岳まで緩いので、のんびり登った。景色も凄くよい。大鳥池はまだ全面結氷でまるで白熊になっている。大朝日岳の尖塔もひときわ目立つ。しかしやはりこの時期の盟主は純白の化穴山だ。この山を美しいといわずしていったい何を美しいというのか。改めて化穴山の名山ぶりを認識したのだった。オツボ峰を越えると風が非常に強くなり、以東岳では立っていられないほど。以東小屋は2階の入り口まで雪で埋もれていたため、スコップで掘り出してなんとか進入した。ところが小屋の2階の壁に大穴が開いていて、雪が吹き込んでいた。おそらく、強風で壁が飛ばされたのだろう。1階で寝ることにしたが、2階に雪が溜まっているので雨漏りがひどかった。
<化穴山往復>
以東岳まで順調に来れて、一時あきらめかけていた化穴山にも行ける見通しが出てきた。時間的に少し厳しいが、2時になったら引き返すと決めて出発した。1446mジャンクションピークの手前の鞍部までは全く難しいところはない。ところが、この鞍部から尾根にとりつくところが非常に悪い。いやな感じのシュルントがあり、うっかり踏み抜いてしまいそうで怖いのだ(常識的に言えばロープが必要)。東側は急峻な崖なので、シュルントに落ちると致命的かもしれず、いやがおうにも緊張する。そこを何とかクリアし、いよいよ化穴山東稜ののぼりになる。ここも両側がスッパリ切れ落ちた雪稜があり油断ならなかった(スイスのメンヒを登ったときのことを思い出した)。頂上直下はクラックだらけで何回も残雪を踏み抜き、冷や汗をかいた。このようにして多大な苦難を経てようやく頂上に到達したときの喜びは何にも代えがたかった。山頂には斜めに傾いた三角点があるとのことだったが、残雪の多い今年はほとんど地面が露出しておらずどこに三角点があるのか分からなかった。とりあえず登頂証拠のためにGPSで経緯を確かめて記録した。
帰りも1446ジャンクションの下りが難所だった。シュルントがパックリ口を開けているすぐ横を通らねばならず、生きた心地がしなかった。ここは雪の状態によっては通行不能になると思う。体力は必要だが、大鳥池経由のほうが安全なのではないか。以東岳の登りでは完全にばててしまい、本当に足が前に出なくなった。なんとか陽がまだ高いうちに小屋にたどり着き、安堵のため息をついた。
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5/10(金) 以東小屋4:50〜三角峰〜戸立山〜8:45茶畑山〜10:45皿淵沢出合11:50〜13:25蘇岡発電所[下山][行動時間:8時間35分]
<下山>
小屋はひどい状態だったが、安眠できた。今日は一度歩いた道を戻るだけ。しかし、この日は気温が高くなったため、往き以上に残雪を踏み抜いた。特に、戸立山、旧雨量観測所の上部は非常に状態が悪かったので怖かった。皿渕沢のマタギ小屋まで無事におりた時には胸をなでおろした。雨量観測所で熊撃ちの方にお会いした。立派な銃を持ってらした。実は今回の歩いたルートはすべてマタギの人たちのいわば銀座ルートである。簡素な装備で残雪期の山を縦横無尽に駆け回るマタギの方々には全く敬意を表するところである。
河原の途中まで除雪が入ったため、往きよりも早く1時間半ほどで蘇岡発電所に戻ってきた。庄内あさひICそばの「ぼんぼの湯」で汗を流し、この日の最終便で羽田に戻った。
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テントの破損は反省。さすがに14年目のテントだとこのような事故もあります。道具のチェックは怠るべきではないです。
化穴山は丸山岳、赤倉山に続いて私のマイナー名山3座目となりました。どれも大冒険でしたが、化穴も予想以上に難しい山でした。しかしこの3座の中では最もお気に入りの山にもなりました。
コメント
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triglav さんへ
初めまして。
この時期の朝日、それも大鳥池方面を歩かれるなんて、すごいです!!
素敵な写真、たくさん見せていただいて本当にありがとうございます。
一度、夏に以東小屋に泊まったことが有ります。
まさしく今回吹っ飛んだ場所に寝袋を敷きました^^;
今年の風雪で壊されてしまったのですね・・・。
貴重な情報です。
化穴山、綺麗な山だなぁと思ってみた記憶があります。
難所の無事通過、良かったです。
一歩一歩慎重に歩を進められたのでしょね。
お疲れ様です。
マイナー12名山・・・初めて聞きました!
また是非、東北へいらしてください。
waqueさん
コメントありがとうございました。
私も夏に朝日連峰の主稜線は縦走したことがあるのですがもう12年前のことです。あの時は化穴山などまだ知らないころでした。本当に形としてきれいな山だと思います。朝日は好きな山域で一度紅葉のころに歩いてみたいと思ってますが、関東からは遠くてなかなかいけません。東北の方がうらやましいです。
以東小屋は残念なことになってました。そういえば12年前も火災で壁が焼けてました。どうも災難の多い小屋ですね。早く修復されることを祈ります。
おつかれさまでした!
この時期いつも魅力的な山行をされていますね☆
化穴山、難しそうだなあ。。
朝日連峰、美しいなあ(*´∀`*)♡
hirappeさん
コメントありがとうございます。
この時期の雪山は本当に独特の魅力がありますよね。一年で一番好きな季節です。
hirappeさんも飯豊もご苦労様でした。私も烏帽子はいつかいってみたいです。
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