東鎌尾根・槍ヶ岳 / 天空の展望縦走路
- GPS
- 30:42
- 距離
- 42.6km
- 登り
- 3,338m
- 下り
- 3,153m
コースタイム
- 山行
- 8:11
- 休憩
- 2:01
- 合計
- 10:12
- 山行
- 7:19
- 休憩
- 0:51
- 合計
- 8:10
- 山行
- 10:20
- 休憩
- 1:49
- 合計
- 12:09
天候 | 8/7:ガス 8/8:快晴→雨 8/9:快晴→曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一ノ沢〜大天井岳は特に難しい個所はなし 喜作新道・東鎌尾根はクサリ、ハシゴ多数 槍の穂先は高度感ある岩場の気の抜けない登下降 |
写真
感想
以前から山小屋に泊まって写真を撮りたいと言っていた義妹を初めて泊まりで山へ連れて行ったのは3年前の白馬岳だった。
初めての山小屋なので燕岳か白馬かで迷った結果、大雪渓から白馬に登り、白馬山荘でディナー満喫、翌日は白馬三山を縦走し、白馬鑓温泉に泊まって湯ったりというプランになった。
今年またオレたち夫婦に合わせて休みが取れそうだというので、あれから岩場などの経験も積んだ義妹に本格的な縦走を体験して貰おうと思い、東鎌尾根から槍ヶ岳へトライする計画を立てたのである。
前夜22時半に堺を出発、嫁の実家に義妹を拾いに行き、名阪から中央道と爆走して明け方に豊科の南安タクシーに到着。ここからタクシーで登山口まで送ってもらい、自分の車は上高地に近い沢渡へ回送してもらって下山後に受け取りに行くというサービスがあるので利用することにしたのだ。日程的な余裕のない中、マイカーで縦走登山を楽しみたいハイカーとってはありがたいサービスである。しかも、下山後は坂巻温泉に宿泊するのでそこに近い駐車場を希望すると、直接坂巻温泉に持っていてくれるという。それは願ってもないありがたい話。それなら運転のことを気にせず上高地でビールが飲めるじゃないか。しかし、翌々日の下山後に上高地でビールを楽しむ余裕など全くないことをこの時は知る由もないのであった。
南安タクシーから30分ほどで一ノ沢登山口へ。東鎌尾根から槍ヶ岳に至るには、燕岳から縦走する表銀座コースが一般的であるが、燕山荘には通過するだけではなく泊まりに行きたいと思っていることと、常念乗越から横通岳の稜線を歩いてみたかったのでこのルートを選択したのである。
8月7日。登山口で朝メシを食って登山届を提出し、6時に出発する。沢に沿って登っていく。登山口の時点で周囲はガスに巻かれていたのだが、王滝ベンチをすぎたあたりから雨が降り始め、レインウェアを装備する。しかし、やがて常念から降りてきた人たちとすれ違いはじめるが、レインウェアどころかザックカバーも着けていない人がいる。後になるにしたがって増えていく。聞いてみると、稜線の上は別に降っていないのだそうな。その言葉どおり、登っていくにつれて雨は小降りになっていき、胸突八丁にさしかかるころにはほぼ止んでいたので上だけレインウェアを脱ぐ。
最終水場の先あたりで、上から降りてきた人が「常念でクマが出たらしいよ」と教えてくれる。いろんな人に聞いた話を総合すると、出たのは子熊で、常念小屋の人が追い払ったのだそうな。子熊がいるということは母熊がいるということで、常念に登った人たちは無事だったのだろうか。
そんな心配をしつつ、10時半に常念乗越に到着。その頃には稜線までガスが上がっていて、残念ながら槍穂の景観はなかった。仕方ない、昼メシ食うべえと常念小屋へ行くと、食堂の営業は11時からなのでそれまで外で待てという。マジかよ。そうと知っていればもっとゆっくり登ってきたのに。
11時半、昼メシを食って常念乗越を出発してからが全くペースが上がらなかった。常念小屋の前の石段の時点ですでに足が重いのなんのって。横通岳へ向かう道はザレザレの九十九折れの急坂。ノロノロと歩みをすすめていく。横通岳を降りて東天井岳への登りがまたキツかった。常念乗越から東天井岳までコースタイム2時間のところ2時間半かかった。
槍穂の景観は、大キレットや槍の主稜線あたりはたまにガスが晴れるのだが、槍ヶ岳は結局この日われわれの前に姿を現すことはなかった。
15時15分、大天荘に到着。まあまあ空いている。トイレに行って全く臭いが気にならなかったのは驚いた。どんな立派な山小屋でもトイレは臭いものだと思っていたのでこれは感動した。翌日に泊まったヒュッテ大槍もトイレの臭いがほとんどなかったが、燕山荘グループはトイレの臭い対策に力を入れているのだろうか。
一休みしてから山頂へ向かう。小屋から15分ほどで大天井岳(2,922m)到着。残念ながら山頂もすでにガスに巻かれていて展望は得られなかった。その代わり、山頂近くのハイマツの茂みの周辺に雷鳥のファミリーと思わしき一団を発見。義妹は山頂へは行かず小屋で休んでいたのだが、雷鳥に遭遇したことを告げるとしきりに悔しがり、嫁と一緒に雷鳥Tシャツなどを購入して自分を慰めていた。
大天荘の夕食は肉と魚のどちらかの選択制となっている。夕食の前に生ビールを飲んでいたので、夕食の時はワインを飲む。ところが飲みすぎてしまったのか、それとも疲れが出たのか、夕食後爆睡してしまって19時から開催される喫茶コーナーに行きそびれてしまった。くそう、ケーキセット楽しみにしていたのに。
8月8日。大天荘周辺は相変わらずの濃いガスに覆われている。しかし安曇野方面からは太陽が力強く登っているのでやがてガスも晴れてくれるだろう。果たして大天井ヒュッテに向かっている途中でみるみるガスが晴れてきて、穂高から大キレット、そしてついに槍ヶ岳がその威容を現すに至った。かっけえ、超カッコいいよ槍ヶ岳!これからあそこへ向かうのだと思うと胸も高鳴らざるを得ない。
大天井ヒュッテの手前あたりではサルの集団ともエンカウント。けっこうな斜面なのに物ともせず我が庭とばかりに走り回っている。すげーなあ。
大天井ヒュッテの前にはけっこうな急登の山があり、アレを登るのかとウンザリしていたが、どうやらそれは牛首展望台という場所で別に登らなくてもいいらしく心底ホッとする。
ヒュッテから40分ほどでビックリ平という場所に出る。けっこう唐突に稜線に出ていきなり展望が開けるので本当にけっこうビックリする。鷲羽岳や水晶岳といった黒部源流の山並みが美しい。そこから少し上がると北鎌尾根を付き従えた槍ヶ岳の天を突き聳え立つ雄姿がドドーンと現れる。しばし見とれる。
右手に槍ヶ岳、左手に常念山脈を眺めながら進むこと2時間、目の前に大迫力の穂高連峰がその全容を現したころ、ヒュッテ西岳に到着する。冷えたトマトがあるらしいので楽しみにしていたが、今日は品切れで明日ヘリで届くのだという。ガッカリ。代わりにハーゲンダッツのアイスを買ってドラ焼きにはさんでみたりホットコーヒーに浮かべてみたりして楽しむ。
10時、ヒュッテ西岳を出発、いよいよ東鎌尾根へと踏み込む。ここから先はハシゴやクサリが連続する区間であり、ストックは出したり片付けたりするのが面倒なのでしまっておくのが吉。
出発してすぐにとんでもない大下り。急な岩場をハシゴやクサリを頼りにガンガン下っていく。目の前にはまたとんでもない登り返しの東鎌尾根の存在感がハンパない。あーあ、ここからあそこまで吊り橋かジップラインでも渡してくれたらいいのに。
45分ほどでコルに到着、そしてコースタイムに30分近く遅れて水俣乗越に到着する。ここには槍沢へと下る道と、反対側にはバリエーションルートの北鎌尾根へと行くため天上沢へ下る道が交差している。もちろんオレらには関係のない話で、はるか上に聳える槍ヶ岳に向かって東鎌尾根を登って行く。
アップダウンを繰り返していくつものピークを踏み越えながら高度を上げていく。ルートには多くのハシゴが設置されていて、数々のハシゴは東鎌尾根の名物になっている。特にハシゴだらけのピークを越えると、今度はえげつない高度感の垂直三連ハシゴを下らされる。元々はピークを巻くように登山道があったらしいのだが、1998年に地震により登山道が崩壊し、新たにハシゴがかけられて稜線を通す道になったのだという。
この三連ハシゴをようやく下り切ると「窓」と呼ばれるザレザレの痩せ尾根。特に槍沢側は足を滑らせたら助かりそうにない切れ落ちた崖で、ハシゴを下り切って緊張感から解放されたところにこの痩せ尾根はかなりデンジャラスであると言わねばならない。
その後もハシゴや岩場を越えながら登って行く。標高が上がるにつれて徐々にガスが濃くなっていき、ついには降雨となった。できれば今日のウチに槍に登っておきたいが、この雨と疲労ではやめておいた方がよさそうだ。後は明日の朝の天候頼みとなるが・・・。
西岳を出発して4時間弱、ズブ濡れになってヒュッテ大槍に到着。昼食の受付の時間が迫っていたのでチェックインと同時に昼食の注文をする。ここには山小屋としては珍しい黒生ビールがあるので早速頼む。プハーっ、美味い!!
今日の槍登頂は諦めたので、濡れた装備を乾燥室へブチ込んだ後は談話室でノンビリ。500円で滞在中飲み放題というセルフサービスのドリンクバーがあるので、レモネードやココアをおかわりしながら備え付けのマンガを読みふける。
部屋には無料の携帯電話充電用のコンセントが備え付けられており、至れり尽くせりである。そして美味しいと評判の夕食。槍の登頂を記念して白ワインのサービスがある。今回はまだ登頂していないがまあよい。ビールはハーフ&ハーフを注文して美味しくいただく。一緒のテーブルになった単独のお兄さんは今日1日で燕山荘から歩いてきたのだそうな。スゲー健脚。
8月9日。朝になり外に出てみるとめっさ晴れてる。ええやんええやん。そして小屋の裏手に回ってビックリ。槍の穂先が超迫力で目の前にドドーンと聳え立っているではないか。こんな近くにあったのか。
槍をバックに記念撮影をして6時前に空身で槍に向け出発。徐々に近づいてくる槍に胸を高鳴らせながら槍の肩へ登って行く。
約1時間で槍ヶ岳山荘に到着。そしていよいよ槍の穂先にアタックだぜ!!
小槍を左手に見ながら垂直に近い岩場を登って行く。義妹には三点確保の維持とクサリに頼りすぎないようにアドバイスしながら、技術的に難しそうな場所では自分が先行して補助しながら登る。ひるねは高山病で参っているはずだが、さすがに剱岳を制覇した経験は伊達ではなく、義妹に比べるとスルスルと登って行く。
ラストの2段ハシゴを登り切り、7時20分ついに槍ヶ岳(3,180m)登頂。2年前に来た時は悪天候で登れなかったので7年ぶりの登頂となる。
山頂からの眺望は素晴らしいの一言。360度の絶景だ。ドッシリした穂高連峰の存在感が物凄い。その向こうには焼岳そして乗鞍岳。雲海に覆われた飛騨沢を挟んで笠ヶ岳、双六岳から西鎌尾根。反対側には昨日必死に登ってきた東鎌尾根。そして大天井から常念への稜線。そういえばクマはどうなったのだろうか。
ひとしきり山頂からの眺望を楽しんでさあ帰ろうかと思った時、山頂の登山者から歓声が。ブロッケン現象が起こったらしい。急いで戻ってみると、太陽を背にした反対側の下方向のガスの中にそれはあった。山頂の影のてっぺんに人型の影があり、その周囲をぐるりと輪っか状に何重かの虹が後光がさすがごとく煌めいているではないか。これは荘厳な光景と言わざるを得ない。そりゃ播隆上人も如来が降臨されたと思うだろう。剱岳では一瞬の出来事ゆえ写真にも納められなかったが、今回はしっかりと画像に残すことができた。
槍の山頂を後にして、行きと同じくらいの時間をかけてヒュッテ大槍へ戻る。北鎌尾根、喜作新道そして大天井が美しい。この場を去ってしまうことがとても惜しい。この光景とお別れすることがとても寂しかった。
9時半にヒュッテ大槍を出発、槍沢に向け下りていく。槍往復で時間を使ってしまい、けっこう時間的にタイトであるが3日間の疲労が蓄積してかペースは一向に上がらない。13時前に槍沢ロッジに到着、昼メシを食って先を急ぐが平坦な道になってもタイムはなかなか縮まらない。もうここでバスの時間は諦め、タクシーで宿に行くことにしてマイペースで下山することに決定する。上高地で地ビール飲みたかったが多分その時間には店が閉まっているので、代わりに徳澤でソフトクリームを食う。
徳澤から明神へ急いでいる時、一人の外国人男性が梓川のほとりでスマホで自撮りをしているところに出くわした。河原は石だらけで、対岸はなんてことのない前穂の麓。上の方にはガスがかかっていて、特にありがたがって記念撮影するような場所ではないように思われたが、外国人の目にはエキゾチックな魅力があるように映るのだろうか。そんなことを考えながら横を通り過ぎようとしたらいきなり声をかけられた。英語で。
言葉は正確にはわからないが、どうやら自撮りが思ったようにいかずシャッターを押してほしいようだ。
ジョージ(仮)からスマホを受け取りレンズを向ける。画面に映る自分の顔。「セルフィー、セルフィー!」「オー、ソーリー」というやり取りを経て写真を撮影。確認してもらって先へ行こうとすると「くぁwせdrftgyタクシー、くぁwせdrftgyタクシー」と何やら言っている。聞き取れる部分をつなぎ合わせて脳内補正すると、どうやら上高地のタクシーの最終時間を聞いているようだ。
「アバウトシックスオクロック」
「サンキュー」
「ウェアドゥユゴー?」
「トクサーワ!ファラウェイ?」
「トゥエンリミニッツ」
「オケー」
と中学レベルの英語でなんとかジョージ(仮)の疑問に答えてやり、徳澤へ向かうジョージ(仮)と別れる。しかし今から徳澤へ行っていたのではとても18時に上高地には間に合わないと思うのだが、大丈夫なのだろうか?
ちなみにタクシーは19時半まで大丈夫だった。
18時すぎ、ヘロヘロになりながら上高地に到着。やはり目当てのビールが飲める店は閉まっていたので河童橋で記念撮影だけしてとっととタクシーを拾いに行く。
下山後は坂巻温泉に宿泊。温泉めっさ気持ちよかった。メシ食った後はヘトヘトですぐ寝てしまった。
東鎌から穂先までの動画UPしてみました。
10分足らずなんで、お時間のある方はどうぞ。
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