槍ヶ岳 畏敬と憧れの北鎌尾根
- GPS
- 56:00
- 距離
- 43.7km
- 登り
- 3,561m
- 下り
- 3,554m
コースタイム
- 山行
- 9:35
- 休憩
- 0:35
- 合計
- 10:10
- 山行
- 8:10
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 9:10
天候 | 9/14(土)快晴 9/15(日)快晴 9/16(月)霧雨のち晴時々曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・上高地〜水俣乗越 一般登山道であり、問題なし。 上高地を朝一番で出発すると水俣乗越への登りが日差しの強い昼頃になり、暑くてつらい。 ・水俣乗越〜北鎌沢出合 乗越すぐからザレた急坂。ロープがあるものの掴まるものもなくズルズル。初っ端からバリエーションルートの厳しい洗礼を受け、先が思いやられた。 ザレの急坂が終わると右の草付をジグザグに下り、灌木帯に入ると再び急な下りを枝に掴まりながら下る。天上沢が見下ろせる所へ出て、更にロープを頼りに天上沢に降り立つ。 その後は岩がゴロゴロの沢をひたすら下る。間ノ沢出合では一時的に沢の水が現れる。 一段と広くなった沢を更に下ると左側に押し出された土石の壁があり、その末端にちょこんと小さなケルンが見える、ここが北鎌沢出合だ。 いい加減下りに疲れているので通過したのではと心配になったが、客が多ければ出合に人やテントがあるので分かる。 ・北鎌沢出合〜北鎌コル 狭くて圧迫感のある北鎌沢に入り10分もすると沢水が現れる。 ルート確認のため、コル方向を見上げるとメットがザックに引っ掛かり見上げられない。なおも見上げようとすると余りの急登で後ろにひっくり返りそうになる。 大きな岩を縫うようにひたすらコルを目指して登る。 途中左俣出合で丸一日分の水3.5ℓを給水。さすがにずっしりとくる。 水は右俣上部でも得られるが、安全面を考えるとここが最終の給水ポイントだ。 岩に行く手を阻まれたら巻道を探し沢を詰める。1、2ヶ所緊張する巻道があった。 真っすぐ詰めたつもりだが、いつの間にか左股に入っていた。 途中で気づいたが踏跡もあるし、右股へトラバースするのも大変なそうのでそのまま詰めた。 ザレた草付を登りきると北鎌コルからの道と合流し、すぐに一張のTSを見つけた。 偶然、北鎌沢を一緒に登っていた若い2人パーティーに出会ったので話をすると、コルは既に2張とのこと。 2時間半予定の登りに3時間かかり体力的にも限界だし、若干狭く傾斜があるが、まあここでいいやとTSと決めた。 普通の登山道ではなく、飛び石のように岩を歩いたので太ももがピクピクと攣りそう。 ・北鎌コル〜独標 5時出発予定だが真っ暗なので出発を躊躇していたら、昨日水俣乗越で出会ったパーティーが通過。聞くと北鎌沢出合で泊したとのこと、あの北鎌沢を真っ暗な時間に登ってきたとは…。 さすが北鎌を登ろうとする人はツワモノだ。と感心。 いつまでも感心していられないので急いでテントを撤収し、さあ〜今日が本番と気合を入れて出発。 独標手前のコルまでは踏跡シッカリで破線コース。 コルから独標北壁のトラバース道を見ると、うわ〜!ここを歩くの(◎_◎;)って感じだけどロープもあるし、足場もしっかりしているので見た目ほどではない。 ただ右側は切れ落ちているので間違いは許されない。いやが上にも緊張する。とにかく慎重に。 逆コの字を通過し回り込むと、稜線が見える地点に差し掛かる。ここから槍ヶ岳頂上までは完全バリエーションルートでルートファインディング力がためされる。 ここで先行者が二手に分かれて進んでいた。 ソロはここから左上に独標直登を、4人組は岩場を50m位トラバースした地点から斜め左にザレ場を上がった地点にいた。 事前情報ではトラバースしすぎず、4人組ルート辺りから直登がよいと案内されていたが、岩場の50m位のトラバースが手掛かりが見当たらず、嫌な感じがしたので直登を選ぶ。 踏跡があるので間違いルートではなさそう。ただ浮石や石のガレ場もありほぼ四つん這い。先行者の後姿を見失わないように我慢の登り。岩のトンネルを潜ると頂上はあと一息。夢中で登ってピークに出ると誰もいない。 あれっと思って振り返ると「こっちが独標と思います」と言われ、ザックを置き独標を踏む。 ・独標〜槍ヶ岳 やった〜!と喜ぶも槍は遥か彼方。途中にはギザギザの岩が切り立っている北鎌尾根。さあここからが核心部分だ。安全登山、無事下山をモットーに慎重かつ確実にと心して出発。 ピークがいくつもあり、今何番目のピーク?という感じ。 大きな岩に突き当たるとどうしようとドキドキし真剣にルート探し。見つけるとホッとします。これが面白いのかな。 基本的には稜線沿い、直登できるところは直登し、トラバースできるからと言って安易にしない方がよいと思った。直登は辛いのでどうしてもトラバースの誘惑に気持ちがぐらつく。 直登できない大岩には巻道がある。巻いても稜線に上がれる踏跡があれば登った方が道間違いがないと思った。巻道はほとんど右側つまり西側。岩道だと踏跡が分かりづらいので要注意。 今日も岩の上り下りで太ももがピクピクし始めた。ここまで来たら足が攣ろうが登りきるしかない。 槍直下から見上げると巨大な岩の堆積物が覆いかぶさってくる感じ。岩ばかりでどこがルートか全くわからん。 この岩のルートを先頭で引っ張っていく自信がなかったので、先行者が出発したのをみて、後を付いていくことにした。 だが岩に踏跡がある。先行者に遅れないように踏跡を確認しながらついていくとチムニーにたどり着いた。 ここまで来ればあと少しだが、このチムニーが難関。 ホールドがあるのでしっかり掴んで登れば北鎌尾根挑戦者なら登れる。 ただ垂直に近いのでルート探しに見上げると後ろに引っ張られる。体重だけでも引っ張られて怖いのにテン泊装備で重いザックだとグッと腕に荷重がかかるので必死だ。 チムニー2つを突破すれば頂上の登山客が見える。 安心したいところだが気を抜かず三点確保で登りきると社の裏に出る。 最後の登りは3組4人で全く知らない者同士なのに何故か一体感が生まれてしまい、やったー!おめでとう!と差し出された手を思わず握って握手してしまった。 ようやく北鎌尾根縦走が終わり時間を確認すると、休憩含み6時間で予定より早かった。これも天候が良かったからと山の神様に感謝。 40年ぶりの頂上は大混雑。いきなり俗世界に出た感じで、写真で並び、下山で並ぶ。一方通行の登りは途切れない行列。縦走達成後でハシゴ、鎖もあり緊張は完全に緩み切っていたところに、登りルートから「ら〜く」の叫び、見上げると30儖未寮个覆匹頭上から落ちて来るではないか。 ヤバイ!と慌てて岩にしがみ付いた。セーフと思いきや再び「ら〜く」の叫び、今度は20儖未寮个。再び岩にしがみつき難を逃れた。 北鎌尾根より一般道の方が余程危険と思い知る。 先行者を急がせて肩の小屋に降り立ち一安心。ここからは一般登山道のありがたさを噛みしめながら空中漫歩。ただ緊張の岩登りに体力は奪われており、疲労と暑さでペースは上がらず。 大混雑の肩の小屋周辺に比べ南岳TSはゆったりのんびりであった。 ・南岳TS〜涸沢ヒュッテ 夜中は満月で明るかったので晴かと思って起きると霧。テントは結露でびっしょり。「朝霧は晴」などと楽観しながら出発。霧で体が多少濡れるが問題なし。だが岩が濡れて滑りやすく、霧で日差しがないため暗い。 そんな条件での大キレットの下り、へっぴり腰で慎重に下る。長谷川ピークはナイフリッジ、3mほどだが平均台を歩いている感じ。北穂高岳への登りは北鎌に負けず劣らずの岩登りだ。だが決定的に違うのはペンキの印と鎖、本当にありがたい。 昨日力を込めて岩をつかみ這い上がったせいで両手の指がすれてヒリヒリ痛む、特に左手小指から血が滲みことのほか痛い。 小指が痛くなると北鎌を思い出すだろうな。これがほんとの伊東ゆかりの「小指の思い出」かなどとおやじギャグを考えながら歩いた。 北穂から涸沢までは昨年歩いている。急ではあるが危険箇所はない。 連休最終日で天気もイマイチからか客は少ない。 ・涸沢ヒュッテ〜上高地 昨年7月は早すぎて通行止めだったパノラマコースを下ろうと予定していた。 整備後なので道は非常に良い。やはりガレ場数か所は急斜面だがロープもあり、危険は感じない。緩やかなトラバース道でもう登りはないと思っていたので意外な登りがきつく感じた。 屏風の耳まではよく整備された道だが、この先は未整備。耳からの下りは這松のトンネル、コルからは這松漕ぎで、帰りが思いやられた。屏風の頭は大きなケルンがある小広場で涸沢カールの絶景スポット。来た甲斐は十分あった。 下りも道は整備されていて快適、危険個所もなし。水場は奥又白分岐のみ。 下山するだけという気楽さから、休憩を長めにとったので思っていたより上高地到着が遅くなった。 終バスは18時?屏風のコルで出会った親娘は終バスに間に合ったろうか。 おしゃべりで木や草の実を取ってゆっくり歩いていたので気になった。 |
写真
感想
新田次郎著「孤高の人」を読んで北鎌尾根を知ったのは40年数年前のこと、以来畏敬と憧れの対象となった。
岩と雪が禁止であった我がWV部では岩の登攀技術は習得不可能で北鎌尾根は登山の対象ではなく、もっぱら槍ヶ岳周辺からその荒々しい尾根を畏敬の念で眺めるだけのものであった。
それが1年位前、ある本にザイルがなくても登れるとの記載があり、にわかに調べはじめたところ、必ずしもザイルが必要ではないと分かった。
とは言え、そのルートの厳しさが変わったわけではない。
体力的、技術的も最高レベルである。体力的には何とかなるとの自信はあったが、技術的には登攀技術はなく、岩登りのレベルはよくわからない、ルートファインディングならどうにかなりそうという現状である。
さらに遭難事故は、60歳代!ソロ!が一番多いとの注意書き。バッチリ当てはまる。ネガティブ情報も多く不安が募る。
ネットなどにもレコがあるが登れるかは別問題で、さらに調べ進めた。
北鎌沢出合に至るルートは2つ、一つは貧乏沢を下るルート、もう一つは天上沢を下るルートだ。天上沢なら上高地から入って水俣乗越経由、貧乏沢なら中房温泉か常念から入って大天井ヒュッテ経由である。
また小屋泊まりの日帰りで一気に登るか、テン泊か。
いずれにしても晴天は絶対条件だ。7月だと雪が残ってる虞があり、8月だと午前中からガスり夕立のの危険もある、9月は日が短くなるが夕立の虞も少なくなるなど様々な組み合わせの中、上高地から入っての予備日も入れて2泊3日がいいのではと決定した。
ではいつ行くか?絶対登れるという自信がないので先延ばししたい気持ちと、早くいかないと体力が衰えていくという焦りがせめぎあいフラフラ。なるべく早い方がいい。三連休は晴予想。決行はいつ?今でしょう!ということで行くことに。しかし近づくにつれ3日目が雨模様、1泊2日で北鎌を突破し、3日目は雨の中を下山することも考え出発。
荷物はなるべく軽くコンパクトにとの情報だが、2泊ともなればそれなりの装備と食料がいる。結局いつも通りの大きさと重さになってしまった。
参考までに北鎌沢給水後は18圓らい(あくまで予想)でした。北鎌縦走時は16圓らいかな?理想はこの半分。
パーティーはザイルを持っていましたが、ソロは懸垂降下用に持って行った方もいたようです。懸垂降下もできない自分はもっていきませんでした。情報通りザイルがどうしても必要な所はありませんでした。
踏跡は独標手前まではあり迷うことはありません。その後は乱れ、濃いところ、薄いところがあります。なるべく濃い踏跡、新しい踏跡を辿ることに心がけました。岩場に差し掛かると岩場に行っているのか、巻いているのか分からなくなります。岩の踏跡をよく見て判断し、直登できればした方が間違いないと感じました。
60歳代になると体力気力の衰えからあと何年歩けるか分かりません。焦る気持ちもありますが、実力を冷静に判断し、事前に調べられることは調べ尽くして、ベストの状態で事故のない山登りを楽しみたいものです。
登り終えた直後はもう二度と登りたくないと思いましたが、今はまたどこかちょっと難しいルートに挑戦してみたいなどと思っています。
いつまでも挑戦する心だけは持ち続けたいと思っています。
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