新穂高起点で北アルプス6日間テント泊縦走
- GPS
- 124:00
- 距離
- 91.5km
- 登り
- 7,101m
- 下り
- 7,114m
コースタイム
- 山行
- 5:48
- 休憩
- 0:52
- 合計
- 6:40
- 山行
- 8:45
- 休憩
- 1:06
- 合計
- 9:51
- 山行
- 7:18
- 休憩
- 1:49
- 合計
- 9:07
- 山行
- 5:17
- 休憩
- 1:42
- 合計
- 6:59
- 山行
- 7:17
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 8:18
- 山行
- 5:03
- 休憩
- 0:37
- 合計
- 5:40
5:43駐車場-7:02わさび平小屋-8:10秩父沢-10:12鏡平山荘-11:13弓折乗越-12:21双六小屋(テント泊)
7月23日(月):歩行距離約20.1km
3:26双六小屋-4:20双六岳-5:22三俣蓮華岳-6:45黒部五郎小舎-8:55黒部五郎岳-11:42北ノ俣岳-13:18薬師峠キャンプ場(テント泊)
7月24日(火):歩行距離約18km
3:05薬師峠キャンプ場-4:27薬師岳-6:03薬師峠キャンプ場
(休憩とテント撤収及びパッキング)
6:39薬師峠キャンプ場-8:41薬師沢小屋-10:38アラスカ庭園-11:25祖母岳-11:46雲ノ平山荘-12:17雲ノ平キャンプ場(テント泊)
7月25日(水):歩行距離約12.2km
4:00雲ノ平キャンプ場-5:09祖父岳-5:51分岐(ザックデポ)-6:53水晶岳-8:13分岐(ザック回収)-9:10鷲羽岳-9:55鷲羽池-10:51三俣山荘-11:00三俣山荘テント場(テント泊)
7月26日(木):歩行距離約15.5km
3:58三俣山荘テント場-5:44双六小屋-6:45小池新道との分岐-9:39抜戸岳-10:40笠ヶ岳山荘テント場
(休憩とテント設営)
11:25笠ヶ岳山荘テント場-11:30笠ヶ岳山荘-11:50笠ヶ岳-12:34笠ヶ岳山荘テント場
7月27日(金):歩行距離約11km
3:43笠ヶ岳山荘テント場-3:52笠ヶ岳山荘-4:15笠ヶ岳-9:08登山口-9:39駐車場
天候 | いずれの日も良く晴れ気温の高い状態だった 7月22日(日):快晴、無風・微風、気温高し 7月23日(月):晴れ時々曇り、微風、気温高し 7月24日(火):快晴、無風・微風、気温高し 7月25日(水):晴れ時々曇り、無風・微風、気温高し 7月26日(木):晴れ時々曇り、無風・微風、気温高し 7月25日(金):晴れ時々曇り、無風・微風、気温高し |
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過去天気図(気象庁) | 2018年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
7月22日(日):新穂高温泉から双六小屋 登山者多くすれ違い頻繁。危険箇所迷いやすい箇所特になし。双六小屋のテント場は大体いつも風が強いので、設営や撤収時に物を飛ばされないように要注意。 7月23日(月):双六小屋から黒部五郎岳経由で薬師峠キャンプ場 双六小屋から黒部五郎岳方面には、いずれも三俣蓮華岳を経由する3つのルートがあるが、この日は稜線ルートを選択。特に問題なし。黒部五郎小舎から黒部五郎岳はカール内のルートを選択したが、これも特に問題なし。以降薬師峠のキャンプ場まで特に問題なし。この日のルートは20kmを越える距離になるので、早めの出発が必須。 7月24日(火):薬師峠キャンプ場から薬師岳往復後に薬師沢小屋から雲ノ平 薬師岳方面は、山頂直下が一部ガレていて落石注意。薬師沢から雲ノ平に上がるコースは直登気味で傾斜が大変きつい。雲ノ平に上がってしまえば後はほぼずっと木道歩き。 7月25日(水):雲ノ平から水晶岳往復後に鷲羽岳と鷲羽池を経由し三俣山荘 水晶岳付近は高度感があり落石や滑落注意。ハシゴなどもあるので、ストックの利用は微妙。見た目ではストック利用者は少数派。鷲羽岳は登りよりも下りで要注意、落石の恐れあり。鷲羽池へのルートはマーキングはないが明瞭な踏み跡があるのでそれに沿えば特に問題ない。 7月26日(木):三俣山荘から笠ヶ岳山荘経由して笠ヶ岳 弓折乗越以降笠ヶ岳山荘まで危険なところはないが、アップダウンは多い。途中の抜戸岳は山頂三角点まで往復可能。 7月27日(金):笠ヶ岳山荘からクリヤ谷経由で下山し新穂高温泉 クリヤ谷ルートは、整備は必要最低限されているが利用者は少ない。始め山頂直下はガレた岩の斜面を下りそれが終わると延々樹林帯の巻き道を歩く。日陰で直射日光が当たらないためか、早朝は夜露で体や装備が濡れるので、気になる人はカッパを着てザックカバーをかけた方が良い。クリヤ谷は何箇所か渡渉があるが今日の時点ではほとんど水がなくて渡渉と呼べるものですらなかった。登山口の中尾高原口から新穂高温泉まではバスの利用も可能だが本数が少ないので、利用に場合は要事前確認。歩いても2kmほどなので、歩いた方が早い場合もある。 <テント場の状況> *携帯の状況はドコモiPhoneで確認 ・ 双六小屋:整地良く広い。トイレと水場は小屋の外、サンダルで往復可。携帯は使用できず。 ・ 薬師峠キャンプ場:整地良く広いが、全般的に斜め。キャンプ場に受付と売店あり。トイレと水場はキャンプ場にあるが、サンダルでの往復は若干厳しい。携帯使用可。 ・ 雲ノ平キャンプ場:敷地は広いが岩場の間の平坦地は少ない。キャンプ場内にトイレと水場あるが、サンダル履きだと場所により厳しい。売店は山荘なので往復30分以上かかる。携帯は使用できず。 ・ 三俣山荘:整地良い。いくつかのエリアに分かれていて、一体何張可能なのかは不明。水場はキャンプ場内(融雪水)か小屋から。トイレは小屋を利用。携帯利用できず。 ・ 笠ヶ岳山荘:山荘手前の岩場がテント場。張数は多くないと思われる。一部に石垣のように岩石が積まれていて風除けになりそう。水場は雪渓を利用、手が痺れるほど冷たい。トイレは山荘なので岩場を登り降りしなければならず、登山靴での往復以外は考えられない。携帯は利用可能。 |
写真
感想
例年夏期休暇はお盆の1週間しか取れないが、今年は諸般の事情で1週間を2回取れることに。山以外の選択肢も浮かんだが、好天が続きそうとなるとやはり山が良いとなり、テント泊用のザックに6日+アルファ分の食料を詰めて新穂高温泉へ向かった。以下にその詳細。
1日目
7月22日(日):快晴、無風・微風、気温高し
新穂高温泉から双六小屋
深夜自宅を出て明るくなった5:15頃に新穂高の無料駐車場に到着。自分のクルマで新穂高に来る度に毎度遠く離れた鍋平駐車場の利用が定番になっていて、今回もどうせ駐車スペースの空きなど皆無だろうと思っていたが、最初から鍋平に行くのはさすがに気が引けたので、取りあえず、念の為、見るだけの積もりで深山荘付近に来ると、あろう事か空きがたくさん。我が目を疑う。今日は好天予報の日曜日、日帰り登山者も多いはずなのに、である。車幅1.8メートルの自車には若干狭いが駐車場所を確保。この先6日間なので、無料なのは有り難い。途中のコンビニで買ってきた朝食を取り、ザックに最後の食料を詰め込む。ザックには6.5日分の食料と行動食、テント泊装備。65+10リットルのザックがほぼパンパン。このザックをここまで膨らませたのはいつ以来だろうか。水分は途中のわさび平小屋で給水予定なので0.5リットルと最小限。背負うとさすがにかなり重い。こんな重くて小池新道を登れるか心配になるくらい。とにかく行くしかないので、ストックを突き前屈みになって歩き始める。新穂高の登山指導センターで登山届けを出していざ出発。左俣林道と小池新道を利用しての双六小屋は昨年の9月末以来。今回で4回目の利用で、うち3回が登り。さすがにこれくらい利用していると途中の風景というか、勘所は分かってくる。最初に登った時は暑さでバテた記憶があるが、今日は同じような天気になっても多分大丈夫だろう。経験があるのは我ながら心強い。林道を意識的にペースを落として歩く。縦走初日で何せ荷物が重く、体がまだ山モードになっていない。始めからばかみたいに飛ばすと足が攣ったりとろくなことが起きないはず。笠新道の入口を見送りほぼコースタイムでわさび平小屋に到着。何やら改築のようなことをしていた。ここで今日の行動中の水を得る。暑さが容易に予想されるが重荷でもあるため必要十分でなければならない。持ってきた0.5リットルの麦茶以外に1.5リットルの水を積み増し。さらにずっしり重くなった。もう坂は登れないかもしれない。ゆっくりだが確実に進むしかなくなった。林道が終わりようやく本格的な登山道が始まる。小池新道は歩きやすい良い道だと思う。特別急な所も少なく、重荷でも何とかなるが、やはり意識してペースは落とす。今日はコースタイムどおりで無問題。秩父沢の出合で休憩。既に大汗をかいていて、日陰を探して休む。暑いとは言え、今のところは想定内。カロリーを摂取し、出掛けに塩飴を1個口に含む。気温は高く暑いが、標高が上がれば若干だが気温は下がっていくのでそれを期待しつつ進むしかない。鏡平山荘には10:10ころ到着、ベンチで座って休む。周りではかき氷を食べる人多数。この暑さではさぞかし美味いだろう。燕岳の合戦小屋のスイカと同じくらいに美味しそうに見えた。更に進み斜面を斜めに登り切ると弓折乗越に到着。ここはベンチがあるのでザックを下ろして大休止。体中から汗が噴き出し、額や顎から汗が滴るので、休憩時に日焼け止めの塗り直しは欠かせない。ここまで上がると背後の槍穂がきれいだし、あとは双六小屋までほぼ水平移動なので今日の一番の難所は乗り切った。足が攣らなくて良かった。ペースを落とし気味に歩いたのが良かったのだろう。ここから先はお楽しみの稜線歩き。花見平で花見をし、若干残った残雪の上を歩いたりする。双六小屋は、お約束どおり見えてからが遠いがそれも分かっていることなのでがっかりしない。12:20頃にテント場到着。広いテント場だがさすがにまだガラガラ。数張り先客があるが、ひとけがないので残置してどこかへピストンだろう。ザックを置いて貴重品のみ持って小屋で受け付け。ついでに水筒を持参したので当面の水を確保。テントを張ろうとするが、ここは強風で有名な双六小屋。時折の風にテントを持って行かれそうになる。飛ばされないようしっかり固定。あとはテント場で沈殿。近くに眺めの良い樅沢岳があり、1時間程度で往復できるはずだが、今日はコースタイムどおりで歩けたのでそれで良しとした。足を明日以降に取っておく。夕方には平日にも関わらず双六のテント場は30張りくらいのテントがあった。広いので混雑した雰囲気はないが、さすがにハイシーズンの北アルプスであることを実感。17時過ぎてもテン場に着くパーティも多数。こういう人達は南アの某小屋に一度行くと良いんじゃないだろうか。夜は、明日の行動が早いので日のあるうちに就寝。
2日目
7月23日(月):晴れ時々曇り、微風、気温高し
双六小屋から黒部五郎岳経由で薬師峠キャンプ場
2時起床。テント内に置いた腕時計の温度計は14℃。テントでは熟睡できないが体は十分休められた。まだ当然真っ暗だが食事と撤収をし、目標の3時30分より数分早く行動開始。フライシートの結露はほぼなく、ずっしり重くなることはなかった。これは行程が長いときはとても助かる。今日は黒部五郎岳を経由して太郎平小屋の先にあるテント場まで歩く。コースタイムは10時間以上。長いだけでなく、まだ2日目で食料がほとんど減っていないので重量的にも厳しい。なので真っ暗な3時30分出発とした。ルートは三俣蓮華まではいくつか選べるが、昨日1つもピークを踏んでおらず、取りあえず早く1つとの思いがあり稜線ルートにした。が、結局これは大ガスのためどうでもよくなってしまった。まずは急登をこなしつつ双六岳へ向かう。残雪が登山道の直ぐ脇まであったようだが、まだ暗闇でよく分からない。きょろきょろ当たりを見渡して道をロストしないように気を付ける。気温は長袖シャツ1枚のみで歩ける程度で、昨日の昼間の暑さとは比較にならないくらい快適。稜線まで上がれば背後に槍が見える筈だが、今日はガスだしまだ夜明け前。常識的な時間に太郎のテン場に着くためには、行程を優先せざるを得ない。双六小屋から1時間かからず4:20に双六岳到着。まだ真っ暗。そして大ガス。ザックは下ろすが座って休むほどではないので、水だけ飲んで先に進む。ここから先はほぼ平坦。天気が良ければ楽しい稜線歩きのはずだが、明るくなってもガスは取れず、白んだ中を歩く。数名早出の登山者とすれ違う。皆早起き。こういう時はザックが余計に重く感じるし、実際にガスに含まれる湿気でザックも体も少し湿る。しかも西風が少し強く冷たく、グローブをしている手の先が冷たくかじかむくらい。昨日の暑さが嘘のようだが、今日もこの後数時間もしたら昨日と同じになるのだろう。夜が完全に明けた後5:22に三俣蓮華岳に到着。ガスはまだ取れない。ここは数パーティ先客がいたが、座って朝食で食べ残したアルファ米を食べているうちに無人になった。ここからは登山道を西に進み黒部五郎小舎を目指す。三俣というだけあって、間違った方向にも進み兼ねないので慎重に方向を見定める。三俣蓮華岳から下降を始めると時折風でガスが飛ばされて先が見えるように。黒部五郎岳もちらりと見えたが、まだ予告編程度しか見せてくれなかった。三俣蓮華岳からは下りが続き、一旦樹林帯に入るまで下ると黒部五郎小舎に到着。コバイケイソウが小屋の周りで満開だった。小屋前のベンチを借りて休憩。水も今日の行動の分を給水。重いがこの先水は得られないので仕方ない。黒部五郎岳は今回とは反対側から一度歩いたことがあるが、カールを登る方向では初めて。小屋を出るとき一瞬稜線のコースを取るべきか、と思ったが、この思いは後に完全に打ち消される。小屋から出てもしばらくは樹林帯。徐々に標高は上がるが五郎のカールはなかなか全貌を見せてくれない。重荷だし、人の歩く速度なので景色の移り変わりが遅いのは致し方ない。ドローンのようには飛べない。ゆっくりだが確実に進む。しかし次第にカールが視界に入り始める。以前山頂からカールを下ったときは、ああカールだな、きれいだな、くらいにしか思わなかったが、今回逆方向から歩いてみて思ったのは、この山はカールを登る方向から行くと印象が全く異なる、ということだった。とにかく素晴らしい。一度歩いたコースであるが、そんな気は全くせず、初めての山を登る気分だった。季節はまだ7月で残雪も多く、空の青、草の緑、残雪の白とコントラストが美しい。写真を撮りながらなので遅々として進まないが、この景色を写真に撮らず何を写真に残せと言うのか、と思うほどだった。来て良かった、生きてて良かった。こういう時はザックの重さを忘れられる。カールの端まで来るとジグザグに登って標高を稼ぎ稜線に達する。稜線は風があるが、気持ちよい程度。更に少し上がって五郎の肩にザックをデポしてほぼカラ身で山頂を目指す。8:55黒部五郎岳山頂に到着。出発から既に5.5時間経過していた。山頂からは色々見えたが、何よりこの先歩く縦走路が気になった。太郎平小屋の先にあるテント場は視認できなかったが、小屋は見えた。そして小屋は現実的ではないくらいに遠くに見えた。ここでようやく半分と思わざるを得なかった。山頂は景色良く快適だったが、先がまだまだ長いので適当なところで切り上げて肩に戻る。ザックを回収し下り開始。五郎からは下り切ってしまえば、あとはアップダウンを繰り返しつつ進む。重荷と共に既に6時間近く歩いているため、ペースは一向に上がらないし、もう上げる気もない。無事テント場に着けば良い、との心境で進む。幸いだったのは、ピーカンのカンカン照りではなく、風があり雲も出ていて暑さを凌げたことだった。この状態で高温とカンカン照りのコンボだったら、さすがにどこかで足を攣らせていただろうと思う。ガスのため景色は時折遮られたが、足下の高山植物は相変わらず満開。まだ2日目なので珍しくきょろきょろしつつ、時折止まって写真を撮りながら進むが、この先日数が進むにつれて、高山植物が当たり前の景色になっていった。今思うと、我ながら贅沢だ。北ノ俣岳で座って大休止。もう大きな登りはないと思うと気が楽になるが、既に出発から8時間経過。重荷なので体の負担は大きいが分かっていたことなので致し方ない。座ってゆっくり休んでいると歩くのが億劫になるので、適当な所で切り上げて歩行再開。木道歩きを交えつつ太郎平小屋に近付く。小屋は写真も特に撮らずほぼ素通りしてテント場を目指す。13:18薬師峠キャンプ場に到着、太郎のテン場、と言ったほうが分かり易い。出発から実に10時間近くかかったし、ガーミンのGPSでは移動距離が20km以上となっていた。テントの受付で双六からと言ったら、10時間コースだね、と言われ、まさにそのとおりだった。このテント場の利用も数回目。広いが全体的に斜めのサイトが多い。でも贅沢は言っていられないので良さそうなところにテントを設営。テントとフライシートを乾燥させ、その他湿っていたものを全部天日干しにする。行程の後半は雲に助けられたが、テント場に着くと再びピーカンになってしまい、物品の乾燥には好都合だったが、それが終わると今度は暑くて仕方なかった。テント場には木陰もあったが、生憎自分のテント付近にはなく、持ってきた折りたたみ傘を被って日陰を作り過ごすしかなかった。それでもこのテント場は水が豊富で、顔を洗ったり何でもできるのでくつろげる。このようなテント場に来てしまうと、リッター200円で水を買うのがばからしく感じるが、稜線の小屋との比較はすべきではないだろう。テント場には今日折立から上がって明日薬師岳をピストンする、という人が多かった。今日は下界も相当暑かったらしく、折立からの登りもきつかったらしい。男性、女性色んな人と話をしたが、今日はやはり暑かったようだ。稜線歩きでまだましだったかもしれない。翌日の行動予定を立て、テントの周りでおしゃべりしてからこの日も明るいうちに就寝。山に入るとこのペースが自分には合っているようだ。
3日目
7月24日(火):快晴、無風・微風、気温高し
薬師峠キャンプ場から薬師岳往復後に薬師沢小屋から雲ノ平
2時起床。今回の山行で一番の早起き。テント内に放置した温度計は19℃。標高が低い分夜も気温が下がらなかったようだ。アルファ米と味噌汁の朝食後、サブザックのみの軽装でテント場を3:05に出発。薬師岳を往復する。昨日は終日重いザックと共に歩いたが、今日の朝一は軽荷。やはり荷物が軽いのは楽。軽いは正義だと思った。薬師岳は立山からの縦走で1回、そして今回同様テント場からの往復で1回山頂に立っているが、いずれも天気は良くなかった。縦走の時は9月の雨で、寒かったことをよく覚えている。果たして二度あることは三度あるのか、それとも三度目の正直か。3時出なので当然あたりは真っ暗。何度か歩いた経験があるとは言え、最後がもう7年も前なので記憶はほぼない。道をロストせぬようあたりをよく見て進む。時折沢の音がゴーゴーして気が気でない。暗いまま標高を上げて薬師岳山荘に到着。コースタイムの半分。この先風が冷たく強そうなのでどうするか迷うがそのまま進み、やはり予想どおりとなったため、一度止まってゴアのジャケットを着る。ゴアのジャケットは3日目にして初登場。山頂直下の少しガレた斜面を登る。斜面を登り切ると避難小屋が目に入る。避難はできるが、それ以外のことは難しそうだ。肝心の天気は快晴。まだ暗いがガスは全くない。三度目の正直となったようだ。あるいは、薬師岳の薬師如来は3度くらいお参りしないと好天を与えてくれないのかもしれない。テンションを上げつつ進み、山頂に到着。4:27、日の出前に着いてしまった。山頂はご来光待ちの先客が数名。皆早起きだ。到着後しばらくして日の出の時間を迎える。山頂でご来光なんて、行程優先の自分にとってはとても珍しく、遠い昔の富士登山を除いては、記憶にないくらい。山が紅く染まり美しい。特にカールが赤く染まるのを見られたのは貴重だった。山頂で時間を取り過ぎると今日もこの後の行程が押すので、適当なところで下り始める。それでも時折振り返って写真を撮りながらの下降となった。三度目の正直で引き当てた薬師岳の好天なので嬉しさもひとしおだった。下り始めると続々と登山者が。太郎からか山荘からかは分からない。落石注意で下るが、山荘へ伸びるスロープは、実に山スキー向けで一度滑ってみたいと思った。富山まで来るのは色んな意味で容易ではないが。山荘到着後ジャケットを脱いでザックに収める。ここから先はシャツで十分だろうし、実際そのとおりだった。登りは真っ暗で分からなかったが、登山道の両側にはやはり高山植物が咲き乱れていた。花多く、天気良く、気分良し。下りの途中では昨日テン場で色々話をした人とも挨拶してすれ違う。明るくなってから行動開始のようだが、慣れれば暗中行動も良いと思う。テン場には6時過ぎに戻る。山頂で日の出を待ったが往復に3時間かからなかった。しばし休憩後テントの撤収にかかる。この日もフライシートの結露はほぼなく助かる。30分ほどで撤収とパッキングを終えて再度GPSの電源を入れて出発。目指すは約2時間先の薬師沢小屋。3日目になって食料も少し減ったため、ザックを担いだ瞬間に軽くなったことを実感。この感覚は嬉しい。太郎平小屋から下り基調の登山道を歩く。既に日が上がっていて、しかも顔を照らす位置に太陽があり、サングラスをしていても眩しいほど。そして標高が低いため暑い。沢を何度か渡るがいずれにも立派な橋が架かっていた。現在位置の把握にも役立つ。一度ベンチのある開けた野原で休憩。暑いし日差しが強いので日焼け止めを塗り直す。一度下ってしまうと後は大きく上げ下げすることなく進み、最後大きく下がったと思ったら薬師沢小屋に到着。どこからの団体だろうか、大勢が休憩していた。出発前だったかもしれない。ここで今日の残りの行動分の水を積む。雲ノ平へ至る直登ルートは、以前一度下ったことがあり、ここは登りも下りも嫌だと思った記憶がある。地図を見ても分かるが、とにかく急。登山道と言うより、岩の斜面を巻かずに直接登降するイメージ。今日のウラのメインイベントと言えるだろう。小屋から吊り橋を渡りハシゴを下り、直登のルートに入る。そして、、、。やはりきつい。冗談のような直登が続く。ゆっくりでしか歩けないが、とにかく進む。Slow but steady wins the raceは、こういう時に使って正しいものか。ウサギとカメのカメに徹する。唯一幸いだったのは、薬師岳往復とその後の行動が比較的素早かったので、急登区間に予定より早い時間に取りかかれたことだった。よって暑いとは言え、比較的過ごし易い時間帯に登りとすることができた。また、これは事前に分かっていたことだが、樹林帯であるのも大いに助けられた。これが樹木のない斜面でカンカン照りだったら時間が早くても暑くて仕方なかっただろう。途中で一回の休憩をして無事雲ノ平末端の木道に10:30到着。登りの樹林帯を抜けるとそこはどが着くほどにピーカンに晴れ渡った雲ノ平だった。風なく日光が強く、そして暑い。ほどなくしてアラスカ庭園に到着。先客が談笑していた。ここで水分と栄養を補給し、当然のように日焼け止めを塗り直す。日焼けは極力しない主義。ここからは楽チン木道あるき。空青く、草碧し。雲ノ平と言えど、空に雲なし。雲ノ平は3度目だが、最初の時は雨、2度目は夕方着いて早朝に出発したので、どちらも印象に残っていない。今回は快晴無風の絶好のコンディション。少し雲が出て欲しいと思うくらい。昼には余裕でテント場で沈殿できそうなので、チンタラ歩きつつ祖母岳に向かう。以前来たときは夜明け前だった記憶がある。ここも先客がいた。ザックを下ろしてしばし休憩。昨日歩いた黒部五郎岳、今朝歩いた薬師岳、そして明日歩くだろう水晶岳が見えた。昼寝したいくらい良い天気。祖母岳をあとにして雲ノ平山荘に向かう。受付を済ませてからテント場に向かう。このテント場も3度目。広いが張る場所が案外限られるが、平日だし時間も早いので場所はいくらでも空いていた。正午過ぎてテント場到着、今日も約9時間行動だった。あまり湿ってはいないがテントを出して乾燥。強烈な日差しと高温のため、あっと言う間に乾く。水くみして昼食をとってしまうと後はテント内でゴロゴロ、と言いたいところだが、この日も暑すぎてテントの中には入れない。太郎のテン場の時はそれでも入れる時間があったが、この日は太陽が絶賛全開営業中で、テントには全く入れなかった。テントに入ると折角乾いた汗がまた噴き出してくる。昨日と同じく折りたたみ傘をさして外で座ってじっとしている。どこかに散歩に出掛けても良かったが、暑いし一度サポートタイツを脱いだ後に再度着たりするのが億劫で、結局テントの周りでボーッとして過ごす。17時を過ぎるとようやく太陽が山影になり日照りと高温が一段落。夕食後、18時には寝てしまう。携帯は電波が入らないのでラジオで天気予報を聞く限り、明日も天気は良いとのことだった。
4日目
7月25日(水):晴れ時々曇り、無風・微風、気温高し
雲ノ平から水晶岳往復後に鷲羽岳と鷲羽池を経由し三俣山荘
この日は実質的には休養日的な位置付け。とは言え停滞はせず移動する方針なので2時30分起床。テント内は13℃。太郎より標高が高いのでやはり気温は下がる。テントはこの日も結露ほぼなし。朝食、テント撤収、パッキングと朝のルーティーンをこなし、トイレで用足しして4時ちょうどに出発。まだ暗い。今日の最終目的地は三俣山荘だがその前に3つのピークを踏む。その前に雲ノ平東端のスイス庭園に寄る。が、まだ夜だった。シルエットの水晶岳が見える程度。特に急ぎの日程ではないので夜明けを待っても良かったが、先に進む。雲ノ平からはなれて祖父岳の登りに取り掛かる。斜面の一部に残雪があり、ベニガラが蒔かれていて、その上を歩いた。出発から1時間強で祖父岳到着。眺めは良い。座って朝食の時食べきれなかったアルファ米を食べる。寝起きでアルファ米を完食できた試しはないが、動き出すとさすがに腹が減るので食べられるようになる。祖父岳を下り岩苔乗越を過ぎ、分岐に5:51到着。ここから北に向かって水晶岳を目指す。ここでザックをデポすると楽なのだが、時間が早いせいかまだ1つも無い。少し心配になるが、身軽さの誘惑には勝てず、サブザックに最低限の荷物と貴重品を詰め込んで一式をデポ。いたずらされませんように、と願いつつ出発。水晶岳は過去2度ピークを踏んでいて、いずれも縦走の途中だった。一度は読売新道を下る際で、その先の赤牛岳やもっと先の長大な尾根を下るので早出したため暗い時間の通過だった。今日は既に日は昇っていて、風はなく絶好のコンディション。ストックとサブザックのみなので軽いしペースも上がる。水晶小屋で小休止し、塩飴を1個口に含み気合いを入れて再出発。眺めの良いきれいな稜線である。人の姿はほぼない。水晶岳は山頂付近は両手両足で登る案外厳しいところもあるが、慎重に行けば特に問題はない。ストックは、使っている人は少数派だったが、自分はザックに入れられないので使ったりストラップを手にかけて登った。6:53水晶岳到着、山頂標は相変わらず無愛想というか、味があるというか。山名と標高のみなのが潔い。到着時は無人で、しばらくくつろぐ。狭い山頂なので団体とかがいたらカオスだろう。10分ほどすると後続が来るようになるが、それでも数名程度で混雑には全く至らなかった。山頂からは北アルプスの主立った山が全て見えた。今日は急ぐ日ではないので山頂に30分くらいいて、他の登山者とおしゃべりなどして時間を過ごす。風はなく、シャツ1枚でも寒さは全く感じず。水晶岳は、今回の山行での最高地点になる。30分ほどゆっくりして下山開始。山頂で会った人の中には、温泉沢の頭から高天原温泉を目指す人や、もっと先の赤牛岳をピストンで目指す人などがいた。赤牛までいくなら読売新道下って奥黒部ヒュッテまで行けば良いのに、と思わなくもなかったが、それぞれ予定や計画があるので致し方ない。下りは登りの3倍慎重に下り、元来た道を戻って分岐に約2時間ぶりに至る。デポしたザックは無事だったし、デポされているザックは増えていた。考えることは皆同じようで安心した。ここからはこの日の後半戦、鷲羽岳を縦走して三俣山荘を目指す。その前にワリモ岳を越える。この登りも楽ではない。ワリモを越えると目指す鷲羽岳が見える。標高差は大したことはないが、2800メートルを超えていて空気は十分薄いのでペースは上げようがない。ゆっくり確実に進む。9:10鷲羽岳到着。ここのピークも3度目。山頂標が以前と変わったように思うが定かではない。ここでも山座同定というか、やはり多くの北アの山々を望むことができた。山は天気に限る。山頂から見ると以前から気になっていた鷲羽池が見えた。まだ9時と時間も早いし、このまま三俣まで行っても時間を余しそうなのでここに寄ることに。が、下りは案外難儀。ガラガラの登山道で落石をしてしまいそう。慎重に下ると池への入口と思しき箇所に到着。マーキングでXなどあれば入るなだと思うし入らないが、特になかったので再びサブザックを取り出して下降開始。池へのルートにはマーキングは見られなかったが踏み跡は明瞭だった。一箇所ハイマツが踏み跡を覆っていて難儀したところもあったが、行動を完全に阻害するほどではなく抜けられた。斜面を下り切るとあとは平坦な道が待っていて、それを池の方に進む。明らかにテン場のような均された土地もあったが、ここは国立公園内なのでテント禁止のはず。9:55案外あっさりと鷲羽池に到着。下降開始から30分もかからなかっただろう。池の水に手を浸すが特に冷たくはない。残雪はあったが、池は雪解け水でできているわけではないのだろう。鷲羽岳山頂を見上げたりしてしばし過ごす。そして来た道を戻る。斜面は案外急だが問題なし。無事ザックデポ地まで戻りパッキングして三俣山荘への下降再開。落石注意。ジグザグに下ってあとはほぼ平坦地に至り、10:51三俣山荘到着。明日の天気を尋ねると、明日は持つだろうとのことだった。受付をして11時ちょうどにテント場に到着。このテン場は2度目。早速テントを張って乾燥。水場が近くて助かる。テン場は到着してテント設営している人と、これからテントを撤収してどこかへ出かける人の両方が見られた。既に正午に近いが、雷雨の予報ではないので移動なのだろう。自分だったら、この昼に近い時間からの移動は億劫なので、停滞で沈殿し、翌朝早出するだろう。この日の移動距離は12km超、休養日とは言えけっこう歩いた。時間も到着まで7時間を要したが、水晶岳と鷲羽岳で各30分ほどボーッとしていたし、予定になかった鷲羽池も行ったので、実質的には5.5時間程度だったと思う。これくらいなら十分休養日と言えるだろう。このテント場でもやはり日差しが強くて暑く、テントにはなかなか入れなかった。雲で太陽が陰ってテントに入ってぬくぬくしていると、かっと太陽が照りだしてテントから放り出される。これを何度か繰り返す。外は日差しも強力なので日傘代わりの折りたたみ傘が手放せない。午後になってテント場にテントが増えてくると、今日笠ヶ岳から来たという登山者がお隣に。色々状況を聞くが、特にルートに問題はなさそう。但し、下りのクリヤ谷のルートは分からないとのことだった。このルート事前に特に調べてこなかったが、山中で会って話した人でも経験者はいなかった。状況は小屋で聞くしかなさそう。この日も明るいうちに就寝、と思ったら、19時頃テント脇が騒がしく。この時間にテン場に着いたらしい。南アの某小屋だったら、、、などと思い外を見るとけっこういい歳の、というか年配の単独男性。19時テン場着って一体どんな計画なのか、それとも途中の不測の事態のせいなのか聞いてみたい気もしたが、多分話は合わないので諦めて寝る。
5日目
7月26日(木):晴れ時々曇り、無風・微風、気温高し
三俣山荘から笠ヶ岳山荘経由して笠ヶ岳
山行5日目も元気に2:30起床、と言いたいところだが、iPhoneのアラームに叩き起こされる。昨日は寝入りばなを遅着キャンパーに起こされてその後寝付けなかった。テント内の気温15℃。寒くて夜何度も起きた。今使っているシュラフは3シーズン用で、買った当初は9-10月の3000メートルクラスでも暖かに眠れたのだが、購入後既に10年以上経過し、ダウンがロフトしないようになったのか、3000メートルよりはるか下の真夏でも寒さを感じるようになった。そろそろ更新時期か。当面は面倒だが着込んで寝るしかあるまい。4時少し前にテント場を出発。テントは有り難いことにここでも結露はほとんどなかった。周りのテントはまだほとんど寝ているか出発準備中で、撤収が終わっていたり撤収済みの人はいないようだった。自分が早過ぎるのかもしれないが、日の出の時間帯にテント場でグズグズしているのは勿体ない気がする。今日は笠ヶ岳まで歩く。コースタイムは7.5時間くらい。強行軍の日でも休養日でもないが、一部行きで通ったルートを別方向から歩く。例によって歩き始めは真っ暗なのでヘッドライトが頼り。昨年より泊まり山行の時にソーラーで充電するLEDランタンを導入してからヘッドライトの電池のもちが良くなった。ヘッドライトの使用機会が減ったのである。テント内ではランタンで事足りるし、ランタンは行動中とテン場滞在中に充電させておけば直ぐ使えるのでとても便利だ。ヘッドライトは当然予備電池も持参しているが、今日の時点でもまだ容量は十分で、この6日間の山行中で実際に電池交換は不要だった。ライトを点灯させて歩くうちに前の団体の列とくっついてしまい道を譲ってもらう。5日目ともなると食料が劇的に減り身軽になった気がするので道を譲ってもらうのも楽だ。これが初日や2日目だとそうはいかない。譲って貰っても、、、となることが多い。三俣山荘から双六小屋へ至るルート3本あり、行きは暗闇とガスの中稜線を選んだ。何も見えなかったので稜線に上がるか、とも思ったが、同じルートを2度歩くことに興味がなかったので巻き道を行くことに。ちょうど巻き道に入った辺りで夜が明け、素晴らしいモルゲンロートとなった。標高を上げた方がもっときれいだったかな、とも思わなくもなかったが、これはこれで良いと思い直す。この山行で最もきれいな朝焼けだったし写真もいくつも撮ったのだが、残念ながら、コンデジでしかも手持ちなのでロクに撮れてはいなかった。写真山行ではないので致し方ない。巻き道とは言え適宜アップダウンを繰り返しつつ、最後小屋に向けて大きく標高を下げて5:44に双六小屋到着。小屋に近付くと人が増えるので嫌でも小屋が近いことが分かる。三俣のテン場から無休憩で来てしまった。小屋前のベンチを借りて朝食の続きと給水。この先今日は給水は笠ヶ岳山荘までできないので、2リットル積んでいく。それより小屋前は風が当たって寒く、動き出した時には体はだいぶ冷えてしまっていた。双六小屋から約1時間で小池新道との分岐を見送る。ここまでは登山者多数だったが、稜線をこのまま笠まで歩く人は少数のようで、一気に静かになった。ここから先も一度歩いているが、記憶はほぼない。7時頃に弓折岳を過ぎると一度大ノマ乗越に向けて大きく下る。というかこの先は笠ヶ岳まで大小のアップダウンを何度も繰り返す。天気は相変わらず抜群に良い。アルプスに入って以来、雨の心配をしたことがない。大ノマ岳を気付かぬうちに通り過ぎて秩父平に至る。ここも2度目の筈だが全然記憶にない。先日の五郎のカールのような景観に圧倒され、写真を撮りつつなのでなかなか先に進めない。秩父平を上がりきったところで小休止。初日から使っていたカメラのバッテリがそろそろ限界だったのでここで交換。ここまで約250枚の撮影に使えたし、あと10枚程度ならなんとかなっただろう。案外長持ち。この先も笠までは長いが、かなり近付いた印象。すっきりした稜線がきれいだ。途中抜戸岳へのルートがあり、ここも2回目になるがザックをデポして行くことに。山頂が分からず若干ウロウロするが、そこは必殺GPSで現在位置と山頂を確認し無事山頂に到着。写真数枚でザックデポ地に戻る。後残すピークは笠ヶ岳のみ。ラスボスの風格漂う、品格ある山が最後に残った。抜戸岳から1時間ほど更に歩いて10:40に笠ヶ岳山荘テント場に到着。どうやら一番乗りらしい。大休止とテント設営をする。テントは石垣のような岩が積まれたところを選んで張る。以前もこんな所を利用したような記憶がある。45分後にサブザックを持って行動再開。山荘で受付を済ませる。ここのテント場の利用料金は他より若干安価で良心的に感じた。そして面倒にならないうちにこの山行の最後のピークを目指す。カラ身なので楽だが、明日はここをフル歩荷で登らなくてはならない。11:50笠ヶ岳山頂到着。無事に到着できたことに安堵。笠ヶ岳の山頂は2度目だが、案外地味。そして前回も今回も無人の山頂、貸し切り。しばらく山頂からの景色を堪能、と言いたいところだったが、生憎ガスが湧き始めてしまい、しばらく待てば取れるかと思ったが全然その様子はなかったので諦めて下山することに。下りこそ慎重に、そしてテント場付近にある雪渓の水場で水くみすることに。全ての水筒を駆使して約6リットル採取。モンベルのサブザックが裂けるかと思うくらい重くなったが、なんとか無事にテント場に運ぶことができた。そして後は例によってテント場で沈殿。例によって暑くて仕方ないのでテント内にはなかなかいられなかったが、それでも出たり入ったりしてボーッと時間を過ごす。ここのテント場はお隣との距離が微妙に離れているので、情報交換等しづらいが、その代わりに歯ぎしりやイビキが聞こえないのでトレードオフか。最終日に向けて準備をしていると、食料が最初に比べて圧倒的に減ったことを改めて実感。その代わりにゴミ袋が日々巨大になっていき無視できない存在に。この比較は面白かった。夕方ガスが晴れて槍方面が少し見える時間もあったが、基本的にはガスが晴れることはなかった。例の如く明るいうちに就寝。
6日目最終日
7月27日(金):
笠ヶ岳山荘からクリヤ谷経由で下山し新穂高温泉
2:15にアラームをセットし起床。微妙な時間なのは、山荘までの登り返しを考慮したため。テント内の気温は11℃、今山行で最も高い標高約2800メートルでのキャンプだったため、気温も最も低かった。夜はやはり寒くて何度も起きた。シュラフカバーを持ってきた良かった。3:43テント場を出発。テントの湿気は軽微で気にならない程度。今回5回キャンプしたが、フライシートがべっとり水気を持ったことは一度もなく、これは大変に有り難かった。10分かけて山荘に到着、用足しして出発だがまだ真っ暗。風も吹いている。4:15に笠ヶ岳山頂到着。一番乗りかと思ったが先客がいた。まだ暗いのでこちらもしばらく座って明るくなるのを待つ。槍穂方面に雲はなく、少し明るくなった空に稜線のシルエットが浮かんでいた。これを最後に見られて良かった、もう心残りもない。ヘッドライトが要るか要らないか程度に明るくなってから出発。これから下るクリヤ谷のルートについては、前日小屋で情報を仕入れていた。曰く、大雨の後などは後半にある渡渉ができない可能性があるので避けたほうが良いらしい。昨夜は大雨どころか雨一滴なかったので、この日の下降に問題はないだろう。そして実際渡渉は問題なかったのだが、別の問題が発生したがそれは後の話。始めはガラガラの岩場の下り。マーキングがあるのでそれを見落とさないよう注意深く下る。下るうちに夜が明け明るくなる。槍穂の稜線が影ではなく実物として浮かび上がってくる。振り返ると笠が見える。更に下り岩場が終わる頃になると、先に山体を巻くようなルートが着いているのが目に入る。あれを行くのだろうか、思っていたらそのとおりだった。山影に入り日は差さず、朝露で湿った登山道を下る。暗く湿った道なので、本当にこれで正しいのか不安になるくらいで、何度かGPSで確かめたりあたりをきょろきょろ見渡すが、登山道は整備された跡があるし、踏み跡もあるので間違えようがなかった。嫌でもここを行くしかないのである。トラバース気味なので一気に標高は落とさない。登山道は狭くてアップダウンも若干あってゆっくりでしか進めない。それよりも朝露が多くて進むにつれて体とザックの左側はべっとり濡れてしまった。右側が切れ落ちた斜面で、左側に草が着いているためである。それでも天気も良いのでじきに乾くだろうと安易に思っていたが、それ以降もしばらく朝露地帯を行くハメになり、結局体もザックも両側びっしょり濡れた。そして、ゴアテックスのスパッツを巻いていたにもかかわらず、靴にも水が大量に浸水した。この6日間雨は一滴も降らなかったのに最後靴の中をずぶ濡れにしてくれるなんて、アルプスの山行はやはり最後まで楽にさせてはくれない。山行初日に例によって足裏にマメができそうで、テーピングでなんとか乗り切ってきたが、下山まで足裏の皮がもつだろうか。1時間ほどだろうと思うが、朝露のたっぷり着いた草地を歩いた後ようやく明るい岩場に出る。ここで小休止。靴下は絞れば水が落ちそうなくらいずぶ濡れだった。換えはもちろんザックにあるが、替えたところで靴が乾かない限り状況は変わらないのでそのままで行くしかない。浸水の原因はどこにあったのだろうか。以前、やはり早朝にスパッツを巻かずに草地を突っ切ったときは靴下から浸水して靴の中を濡らしたが、今日はスパッツは巻いていた。原因はよく分からないがとにかく晴天の中じゃぶじゃぶの靴で進むしかなくなったのは我ながら可笑しかった。いとおかし。露付きトラバース斜面が終わると後は普通の登山道が待っていた。これなら何とかいける、後は渡渉だなと思っていると登りの登山者とすれ違う。挨拶がてら渡渉についてきくと、問題ないという。ここ数日こんな天気であればそうだろうと思うが、実際に登ってきた人の言なのでより信頼できる。あとは、靴が乾いていればだが、もうこれは諦めるほかない。樹林帯に入り展望はなくなるが、その代わり日差しは遮られるように。帽子は要るが、サングラスは要らない。更に下り沢音がし出すとその後数カ所渡渉が待っていた。橋を渡していないので、自分で適当な箇所を探さなければならないが、マーキングがこれでもかと、ばかりについているので、特に探さなくても適切な場所は発見できた。渡渉も終わると山行もいよいよ終わりに近付く。地表の熱気が上がってくるようで、下りでも暑く感じるようになる。クリヤ谷のルート踏破には、山頂から約5時間かかったが、この間すれ違った登山者は3パーティ6名のみだった。このルートを使う人は少ないのかも知れない。別のルートで笠新道があり一度下ったことはあるが、あれも決して楽な道ではなかったのを覚えている。無事9時過ぎに登山口に着いたが、この後の時間ここを登るパーティもいるまい。6日間の山行が間もなく終わるが、駐車場までの戻りがある。バス停からバスに乗って戻るのもありだが、適当な時間がなく歩いた方が速いのでフル装備のまま道路脇を歩く。30分ほど炎天下を歩いて9:39駐車場に到着したが、最後トンネルの中は後ろから来るクルマがきちんと視認しているか分からず怖かった。蛍光塗料で光るような物は身に付けていないし。
総括
最終日、靴の中が晴天にも関わらずずぶ濡れになった以外大きなトラブルもなく山行は終了。足裏のマメも初日以降悪化せず、右膝の痛みもそれほど出ず、そして何より心配していた足攣りも期間中一度も発生しなかった。荷が重いと自然とペースが落ちるので、足の痙攣に関しては、案外起きにくいのかも知れない。もちろん足攣りに関しては、水分塩分を大量に摂取して気を付けていたのも良かったのだろう。毎日暑くて熱中症にもなる危険性はあったが、早めの行動を心掛けたので、暑さにはだいぶやられたが、症状は出ることはなかった。食料と行動食は1日分弱残ったが、これを非常食とすればほぼ食べきったことになる。行動食で持参した重いゼリー飲料は、ここ一番で力を出したい登りなどで利用したが、2つ残り、これだけで400g程度あったはず。もう少し軽くて即効性があり且つカロリーの高い食料が欲しいところ。日々の食事はアルファ米、粉末・フリーズドライスープ、インスタント麺で乗り切ったが、さすがに食事に楽しみを持てなかった。しかし重量の加減から、今後も食糧計画を大きく変えることはないと思う。
全日天気が良くてよかったですね。
それにしても幕営で日の出前から歩きだして午後はゆっくり幕営地。
足も速いし、素晴らしいです。
詳細をお待ちしています。
borav64mさん、おはようございます。
テント泊に限らず早出早着は山登りの基本と思っていますし、このスタイルが朝型人間の自分には合っていますが、最近は老若男女問わず、山でも下界の時間で行動している人が多いように思われます。
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