剱岳・立山
- GPS
- 56:00
- 距離
- 22.4km
- 登り
- 2,364m
- 下り
- 2,358m
コースタイム
- 山行
- 3:42
- 休憩
- 0:55
- 合計
- 4:37
- 山行
- 8:51
- 休憩
- 2:20
- 合計
- 11:11
- 山行
- 4:48
- 休憩
- 3:07
- 合計
- 7:55
天候 | 第1日:雨/第2日:曇り時々晴れ、のち雨/第3日:快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト) 飛行機
【帰り】室堂(立山黒部アルペンルート)→扇沢(路線バス)→大町温泉郷<泊>(路線バス)→信濃大町(JR)→松本→新宿/羽田(JAL)→新千歳 |
その他周辺情報 | 【宿泊施設】 ・剣山荘:10畳個室に4人/シャワー、水洗トイレ<快適> ・雷鳥荘:8人相部屋(二段ベッド)に4人/温泉<快適> ・大町温泉旅館叶家:10畳個室/温泉(露天風呂あり)<快適> |
予約できる山小屋 |
|
写真
感想
【第0日】
新宿発23:15の扇沢行き夜行バス。乗り場でバスを待つのは、私たち三人のほかに一人だけ。乗客整理の女性の話では、天気が悪そうだからと何人かのキャンセルがあったという。
台風12号から変わった温帯低気圧が日本海上に前線を停滞させているらしい。扇沢で合流するために信濃大町に先乗りした横浜の友人は、LINEで現地では雨が降り始めたと伝えてきた。
【第1日】
バスは5時10分過ぎに、まだ薄暗い扇沢駅に到着。案の定雨だった。
立山黒部アルペンルートの始発は、コロナの影響かハイシーズンだというのに7:30と遅い。始発の電気バスには20人ほどが乗車しただろうか。黒部ダム・黒部湖の乗り継ぎでは傘をさして堰堤上を歩く。
標高2450mの室堂ターミナルは濃い霧に包まれ、風も強く、時折雨も混じった。相談の結果、立山連峰縦走はやめて別山乗越経由で剣山荘をめざすことにした。途中、前進が難しくなったときは一番近い小屋に逃げ込もうと決め、ミルク色の霧の世界に踏み出した。
ミクリガ池も色とりどりのテントが張られているはずの雷鳥沢キャンプ場もみんな霧の中。途中すれ違った若者3人のパーティは、剣山荘から剱に登るつもりだったが、台風のような天気であきらめて下りてきたという。
時折雨が強くなる中を3時間弱かけて2760mの別山乗越の剱御前小舎に着いた。取り付きの浄土沢からの標高差は約500m。ジグの切られた雷鳥坂の登りはきつかった。
小屋の中へ入り、ホットココアを買い、携行のパンで昼食をとった。ここに泊まる選択肢もあったが、剣山荘まではあと1時間余り、天気も小康を保っていたため前進することにした。
剱御前の山腹をトラバースする道には雪渓が2か所あり、室堂平では果穂になっていたチングルマもまだ花が見られた。
くろゆりのコルの分岐から右に下っていくと、やがて前方の霧の中に目的の剣山荘と思われる建物の影が見えてきた。
【第2日】
夜半には雨と風の音が強く聞こえたらしい。4時半に目が覚めたときには治まっていたが、窓を開けると濃い霧がかかっていた。予報は午前中晴れ、午後から雨。霧が晴れるのを待って行動を開始することにした。
6:34出発。霧は消え、日が差しつつあった。「朝霧は晴れ」か。
剱岳は登り9、下り4、計13か所の鎖場がある。登り始めて10分ほどで最初の鎖が現れた。一服剱までの二つの鎖はどうということはない。一服剱からは前衛峰の前剱が正面に迫る。
3番鎖は大岩と呼ばれる行く手をふさぐような岩塊の左脇を通過する。4番鎖を越え、前剱をめざして登っている途中行く手の雲が切れ、2999mの本峰が姿を見せた。しかし、前剱の頂上に出て少しすると、また雲に隠れた。それはあたかも「さあ、ここまできてみろ」と挑発しているかのようであった。
その先、鉄のブリッジを渡り、前剱の門では5番、6番と鎖場が連続。平蔵の頭に架けられた7番鎖は鉄杭の足場の打たれた登りを越えた後一枚岩の斜面を下る。
平蔵のコルから8番鎖で岩壁をトラバースすると、先行パーティの交わす声が聞こえてきた。9番鎖、カニのたてばいが近いようだ。垂直に近い岩壁の下ではハーネスを装着した女性4人がそれを登ろうとしているところだった。彼女たちが登りきるまで10分ほど待って、私たちも鎖に取り付いた。
確かに高さのある険しい岩壁ではあるが、眼下の谷にはガスが立ち込め、高度感が減殺されていたため(下を見ないようにもした)、思ったほどの恐怖感もなく登りきれた。
登り最大の難所とされる場所をクリアしてほっとしたが、その先も鎖こそないものの慎重さを求められる岩場が続き、頂上に到達するまで約30分を要した。
頂上は風はなかったが、うっすらと霧がかかり、展望は得られなかった。
祠の前で代わる代わる写真を撮った後、少し離れた場所に三等三角点を見つけた。この三角点は明治末期に柴崎測量官らが登頂してから100年が経ってから設置されたものだ。苦難の末に山頂を踏みながら標石を埋設できず、さらに初登頂ではなかったという「剱岳 点の記」の話を思い出し、感慨深かった。
下りで最初に通過しなければならない10番鎖・カニのよこばいは、たてばいよりも怖いといわれる。岩壁を左に横移動する際の足がかりが探りにくいというのがその理由のようだ。しかし、ここはガイドの資格を持つ友人の指示どおりにまず右足を赤ペンキの塗られたステップに下して少し上体を起こすと、左足を置く場所が容易に見つかった。むしろ、そこをクリアしたあとの垂直ハシゴに乗り移るときが高さを感じて怖かった。
その先も緊張感を切らさないよう意識しながら剣山荘まで下り、6時間半の冒険を終えた。
この日の最終目的地は雷鳥荘。昼食をとり、荷物をパッキングし直して午後2時にリスタートしたが、その間に西のほうから雲が広がっており、歩きだして少しすると雨粒が落ちてきた。
雨は剱澤小屋の付近でいったんやんだものの、別山乗越へのだらだらした登りの途中で再び降りだし、剱御前小舎の手前で土砂降りに近くなった。
この先もこの降り方が続けば前進するのは厳しいほどの雨。小屋で雨宿りしながら雷鳥荘に電話をし、下の状況を聞いた。すると今しがた降りだしたが、弱い雨だという。そうするうちに西の空が少し明るくなり、雨脚が弱まってきた。再び歩きだすことにした。
前日、息を切らして登った雷鳥坂も下りは順調。やがて雨も気にならない程度になった。道すがらライチョウの親子が現れ、気分をなごませてくれた。
黄昏が迫るなか雷鳥荘に到着。温泉に入り、飲んだ生ビールは言い表せないくらいうまかった。
【第3日】
朝から青空が広がったこの日は、初日パスした立山をめざした。
立山室堂山荘にザックを預け、軽装備で雄山に向かう。途中、この時季になっても雪渓が石畳の登山路を覆っている箇所があった。一の越からの標高差300mのガレの急登は想像以上にきつかった。古の登拝者たちは神に近づくため、頂上を仰ぎ見ながらこのつづら折りを一歩一歩登ったのだろう。
頂上の神殿で御祈祷を受けた後、大汝山を経て富士ノ折立まで足を延ばした。最高峰3015mの大汝山では360度の大展望が広がり、後立山連峰はもちろん槍ヶ岳、穂高、鷲羽岳、笠ヶ岳、薬師岳など北アルプスの山々や御岳、白山、遠くに富士山の頂も望むことができた。
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