薬師岳縦走(室堂〜折立):46年かけて百名山これにて完登しました。【富山県】
- GPS
- 22:12
- 距離
- 36.0km
- 登り
- 2,734m
- 下り
- 3,811m
コースタイム
- 山行
- 3:07
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 3:19
- 山行
- 8:20
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 9:31
- 山行
- 6:47
- 休憩
- 2:27
- 合計
- 9:14
○9/16
|賄甘甜
電鉄富山 915 = 立山 1019
▲院璽屮襯ー
立山 1040 = 美女平 1047
9盡競丱
美女平 1100 = 室堂 1138 着後立山ホテルで昼食
ぅ魯ぅング(浄土山周り周回)
室堂 1205 ― 室堂山荘前分岐 1212 ― 展望台分岐 1240 ― 室堂山展望台 1244/1245 ― 展望台分岐 1250 ― 軍人霊碑分岐 1315/碑往復/1323 ― 浄土山 1327/1332 ― 富山大学立山研究所前 1339/1340 ― 龍王岳分岐 1342 ― 龍王岳 1349/1356 ― 龍王岳分岐 1400/1407 ― 富山大学立山研究所前 1409 ― 一の越 1432/1435 ― 祓堂 1442 ― 室堂山荘前分岐 1459 ― みくりが池温泉 1511 ― 雷鳥荘 1524
泊)雷鳥荘
○9/17
ソ珍(室堂〜スゴ乗越小屋)雷鳥荘 641 ― みくりが池分岐 653 ― 室堂山荘 704 ― 祓堂 729 ― 一の越 741/742 ― 富山大学立山研究所前 807 ― 龍王岳分岐 811 ― 鬼岳東面 838/840 ― 鞍部 856 ― 獅子岳 915/924 ― ザラ峠 1007 ― 黒部湖方面分岐 1030 ― 五色ヶ原山荘 1042/昼食/1122 ― 鳶山 1154/1159 ― 越中沢乗越 1230 ― 越中沢岳 1323/1333 ― 越中沢岳・スゴの頭のコル 1416 ― スゴの頭の横、最高点 1435/1449 ― スゴ乗越 1519/1528 ― 小休止 1545/1552 ― 砂地のへつり 1558 ― スゴ乗越小屋 1612
泊)スゴ乗越小屋
○9/18
縦走(スゴ乗越小屋〜薬師岳〜折立)
スゴ乗越小屋 605 ― 池 643 ― 間山 655/659 ― 二重山稜 728 ― 山頂部岩稜帯 744 ― 北薬師岳 815/848 ― 最後の鞍部 923 ― 薬師岳 931/祝宴/1036 ― 避難小屋 1047 ― 薬師岳山荘 1107 ― 薬師平 1131 ― 薬師峠、キャンプ場 1153/1202 ― 太郎平 1217/1254 ― 五光岩ベンチ 1321/1322 ― 次のベンチ 1339 ― 三角点ベンチ 1401/1415 ― 旧アラレちゃん展望台 1432/1434 ― 十三重塔 1505 ― 太郎坂入口 1506/1512 ― 折立駐車場 1518
●行動時間
ぁ椨ァ椨Α3:19+9:31+9:13=22:03
天候 | 9/16:曇り、小雨、9/17:快晴、晴れ、9/18:曇り、晴れ、曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2023年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
9/16 : (富山実家=立山、立山=美女平、美女平=室堂) 室堂―室堂山展望台、浄土山、龍王岳―一の越―雷鳥荘(泊) 9/17 : 雷鳥荘―一ノ越―獅子岳―五色ヶ原―越中沢岳―スゴ乗越小屋(泊) 9/18 : スゴ乗越小屋―薬師岳―太郎平―折立 (折立=富山、富山=金沢、金沢=福井、福井=神戸家) ●登山口へのアクセス ○室堂 ・そもそもマイカーで室堂に行くことはできない。富山地方鉄道「立山駅」から、立山黒部貫光のケーブルカーと高原バス乗り継ぎ、または富山駅、東京、大阪等から運行されている室堂直通バスを利用する ・ケーブルカーの起点である立山駅の周辺は、駐車場が大規模に確保されているが、時には駐車場所が不足するほどに混雑することもある。しかも駐車場の予約ができるわけではない ・そういったリスク回避のためには、以下の別ルートも考えられる [山より数キロ手前にあるドライブイン「アルペン村」始発のバス便 富山駅始発のバス便 ・いずれも便数が豊富にあるわけではないが、確実性がある。特に富山駅発であれば、帰りは立山駅から富山地鉄電車で富山に戻るという手も生じる また、立山に戻ってこないようなルートを選ぶ場合にも、富山から先は公共交通機関を利用する方が手堅い ○折立 ・富山からあるいは立山インターから立山を目指し、富山県県道6号を千垣の「芳見橋」(点滅信号機)で右折し県道182号に入る。しばらく道なりに進んだ「小見」でさらに右折し亀谷温泉、有峰湖方面を目指す。延々案内に沿って進むと、一般車が入れる最奥に折立登山口がある。 ・有峰林道は夜間閉鎖なので、ゲートを朝6時から夜20時までの間に通過する必要がある。 ※今年度は、有峰林道のうち大多和線の岐阜県側が通行止めとなっており、折立にマイカーで入るには、富山県側からのアプローチに限られている (いずれの記述も2023.09現在) |
コース状況/ 危険箇所等 |
○室堂近辺〜龍王岳〜ザラ峠〜五色ヶ原山荘 ・室堂から展望台へは、途中まではセメントで固められた遊歩道。その後は岩混じりだが緩く登る。分岐点から浄土山へは岩屑の急斜面。氷河地形というのか隙間だらけの岩組の斜面も現れる。山頂部から富山大学研究所前にかけては緩やかな稜線歩き ・龍王岳はコースを外れて登る。コースは龍王岳の周囲を巻くような岩礫帯を下り、鬼岳東面の岩礫帯を巻き、獅子岳へと向かう。獅子岳からはザラ峠への急斜面を一気に下降する。砂礫の歩きにくい道かハイマツ帯を進む。ザラ峠からは五色ヶ原に向けて緩やかに上り、あとは草原を行くと小屋に至る ・五色ヶ原の分岐までは一本道なので、迷う心配はない。龍王岳へはルートがあるが、鬼岳は夏場に行くところではないようだ ○五色ヶ原山荘〜越中沢岳〜スゴ乗越小屋 ・鳶山までは五色ヶ原の草原を進み、その後緩く登って到達する。鳶山からは標高差約300mの砂礫帯を一気に下降する。なお、鷲岳方面へは踏み跡があるようだが、植生保護の観点から進入は推奨されていない ・越中沢乗越からは緩やかな道を登って越中沢岳へ。.越中沢岳からは区間中もっとも急激な斜面を下ってコルへ。岩礫が多く運動量を要する。コルからは急斜面登りを進んでスゴの頭の山頂脇へ。山頂への道は植生保護のために閉鎖されている。スゴの頭からも急激な岩礫の斜面を下りスゴ乗越へ ・スゴ乗越から小屋へは土斜面の登り降りとなるが、アップダウンが続くので見た目以上に手間がかかる ・分岐のない道なので全般に迷うことはないと思うが、岩礫帯の斜面がガレた沢と見分けの付きにくいところもあるので、マーキングを見落とさないようにすることが肝要と思われる ・終始、コースのマーキングはしっかりと付けられている ○スゴ乗越小屋〜北薬師岳〜薬師岳 ・スゴ乗越から間山を経て北薬師岳までは、標高の低い部分は樹林帯の中だが、それを抜けると見渡しの利く北アルプスらしい山稜の道。急斜面は少ないが、一定の斜度での登りが長く続く。岩稜ばかりではなく、土斜面の登り道もある。遠くからは赤い山に見えるだけのことはある ・北薬師岳から薬師岳にかけては岩稜。細かなアップダウンが続く。また岩尾根を進むことになるので、視界不良時にはマークの見落としのないように気をつけたい。現にこの日も視界10mという時もある中、対向者が全くコース外れへと向かうところに遭遇した ○薬師岳〜太郎平小屋 ・薬師岳山頂から薬師山荘までは見渡しの利く幅広い尾根を緩やかに下る。さらに樹林帯の中の土道を下降し薬師平。その後は、沢筋の下降となりキャンプ場のある鞍部へ。少々登り返すと太郎平へ ・太郎平には木道が整備されている ○太郎平小屋〜折立 ・太郎平から折立への下降路の上部は木枠や丸いし投げ込みにより整備されているが、丸石ゆえに歩きにくい。下部は樹林帯の中を行く土道 ・道筋は明瞭。道標整備もされている (いずれの記述も2023.09現在) |
その他周辺情報 | ●買う、食べる ○室堂 ・立山駅、美女平駅、室堂駅のいずれにおいても飲食可能。飲料等も購入可能 ・ただし、価格のこともあるので、努めてそれ以前に購入した方がよい ○折立 ・特に付近に店舗はない ・仮に有峰林道から折立に行く場合には、そもそもコンビニ自体が相当前まで遡らないとない。富山県県道6号線の岩峅寺の先、横江の手前に「アルペン村」がある。そこが実質上最後 ●日帰り温泉 ・室堂近辺の山荘は、そもそも温泉設備を持っており、日帰り入浴も受け付けている。全てを調べていないが、今回利用した雷鳥荘、そのほかにもみくりが池温泉は対応している ・立山駅に下りてからあとにも日帰り入浴施設はある。立山駅から比較的近いところにもある ・立山駅からほど近い「グリーンビュー立山」では日帰り入浴が出来る。入場14時30分まで。大人1,000円 ・その他には、「ホテル森の風立山」(旧厚生年金、旧グランドサンピア)では日帰り入浴可能。入場17時まで。大人900円。ほかにも条件があるのでホームページで確認を ・折立への道中には亀谷温泉「白樺の湯」がある。主に週末営業、入場18時45分まで。大人470円。ただし、今年は短縮営業中とのこと ●周辺観光 ○室堂小屋 ・室堂は、立山信仰登山の時代からの拠点。現在の室堂山荘の脇には、“現存する最古の山小屋”室堂小屋が残されている。南室は1771年、北室は1726年、当時の加賀藩によって改修されたもので、部材の多くに当時のものが残されていたことが、解体修理によって判明している。また、礎石などから、それ以前からこの地には小屋があったことがわかっている。国の重要文化財に指定されている ●山小屋 ○雷鳥荘 ・そもそも山小屋の分類ではないかもしれない。温泉宿の風情 ・温泉入浴可、部屋は寄せ集めも二段ベッドながら個別 ・朝食6時、昼弁もその頃に貰える。早出の場合には朝食弁当は前日にいただけるが、その場合昼弁は貰うことができない ○スゴ乗越小屋 ・小さな年季の入った小屋ながら、清潔感のある小屋。奥地だが食事も火の通ったものがいろいろ出る ・乾燥室がありストーブも設置されているため、衣類はすぐに乾いた ・部屋は二段床で部屋の両側にそれがある。各床8人、計32名分はある ・今回は12名/泊だったので、ゆったりと過ごすことができた ・水は1km以上引いてきているとのこと。おかげなのか販売水も安価で1リットル100円 (いずれの記述も2023.09現在) |
写真
装備
個人装備 |
GPS(1)
予備バッテリー(2)
虫除けジェル(1)
日焼け止め(1)
着替え(下着一式)(1)
小屋用服一式
タオル(2)
記録帳(1)
カメラ(1)
レンズ(1)
予備バッテリー(1)
予備カメラ(1)
チェストベルト(1)
ポーチ(1)
雨具(1)
リュック雨具(1)
薬(1)
紐(1)
磁石(1)
携帯一式(1)
保険証(1)
予備眼鏡(1)
食料(1)
予備食
飴(1)
下山後の服一式(1)
|
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感想
○はじまり
薬師岳で百名山踏破になる。先月、後立山を歩き、いよいよ9月に計画しようと思い立った。あくまでも個人の満足ごとなので、山頂で一人達成をかみしめるのもいいものだが、なんとなく寂しくもある。
会社内の登山愛好家Nさんに打診をしたところ、行きましょう、となった。Nさんとは山へ同行したことはないものの、会えば山行きのことを話題にしてきた。仕事の面でも大いにお世話になってきたNさんだが、今回は個人的な持ちかけにも拘わらず、段取り面で大いにお力をいただいた。
それ以外にもこれまで山に同行した数人に声をかけたが、やはり三連休というスケジュールや直前の声かけが災いして、結果的に賛同いただける方がわずかだったことは残念だった。
とはいえ、Nさんからの声かけもあって、計4人が折立から登って迎えてくれることとなった。当方は室堂出発で山頂からその4人に同行することとなる。
久しぶりに賑やかな山行きになりそうで、ワクワクしながらその日を待った。
○9月15日、プレ移動日
出張先の仕事を終え、岡山駅から山へと向かう。東海道新幹線の雨影響のために新幹線が止まっており、一瞬嫌な予感が走った。しかし予定外の列車が、切符を取っていた列車とほぼ同時刻に発車することとなったので、何はともあれそれに乗った。新大阪駅には増遅延したため、金沢行きサンダーバードへの乗り換えは3分しかなくなった。走って乗り換え、どうにか滑り込みセーフ。
この先を不安に感じさせる出発となった。
○9月16日、室堂近辺での足慣らし
今日の山行きは、足慣らしでもあり、明日からの縦走にあたり、その際に浄土や龍王の山頂に立ち寄る時間も惜しむために、今日のうちに周遊しようというものだ。
室堂から山頂部がガスに覆われている浄土山へと向かう。まず現れる室堂山展望台は当然ながら展望など全くない。
さっさと引き上げ浄土山へ。手前の軍人霊碑なるモニュメントに立ち寄る。人だかりがあるなと思い近づくと、なんと雷鳥が6羽も群れている。こんな集団はあまり見かけない。天候不良の中、登ってきた甲斐があった。
浄土からさらに縦走路へと進み、さらに龍王岳山頂を目指す。縦走路をやや外れ岩組みを登って山頂へ。あまり遠くの見晴らしはないものの、東方に延びる稜線にも登路らしきものがあるのが見える。
戻って一ノ越へ。その途中から雄山の山頂が見え始める。その一方で、本気の雨雲を思わせる黒い塊が迫っている。一ノ越でも休憩せず、今晩の宿となる雷鳥荘めがけて一気に下降する。
みくりが池温泉側を経由し宿へとたどり着く頃、雨が本格的になってきた。殆ど濡れることなく雷鳥荘の屋根の下へと飛び込むことができた。本格的なスタート前とはいえ、温泉のある宿でゆっくりできるのはありがたいことだ。
○9月17日、いざ出発。五色を経てスゴ乗越へ
スゴ乗越小屋の予約時点では昨晩の雷鳥荘の予約がなく、室堂着始発バスからのスタートを考えていた。そのためもあって、スゴの小屋番さんからは、途中で電話を入れてほしいと言われていた。そんな声かけを貰うと、今日のコースは難物なのかもしれないと、頭にすり込まれてしまった。
それもあって昨日の“ピーク先取り”にも繋がったのだが、実際に龍王岳から先へと踏み込むと、スゴまでの道のりは昇降の多い激しいものだった。
小学生の頃、夏休み明けに“立山に行った派”と“五色ヶ原に行った派”で口論になることがあった。どちらがたいへんかというたわいもない話なのだが、先生から「立山は高い、五色ヶ原への道は険しい」というような総括をされて、落としどころなく話が終わったことを思い出す。
実際に、龍王岳から五色ヶ原の間だけでも、鬼岳東面、獅子岳とピークがあり、獅子からザラ峠にかけての急崖下降もある。こちらのルートは立山登頂よりも負担のあることは間違いないであろう。
佐々成政の歴史話にも登場するザラ峠を越え、緩く登り返すと五色ヶ原に到着する。山にとっての晩秋となりお花畑とはいかないものの、山中には不似合いな草原が広がっており、山荘はその一角に収まりよく建っている。
山荘で聞けば、水がなくなりそうで困っているとのこと。10月の営業は水なしを前提としたことになりそうだと聞いた。今年は山上ではどこも水確保に悩んでいるようだ。まさに温暖化の影響であろうか。
小屋前で昼食を摂っていると、ちょうど対向してきた登山者と相席になった。その方は、今日薬師岳で百名山を達成してきたとのこと。めでたい話だ。祝福の意をお伝えしつつ、こちらも明日には達成する見込みであることを伝えた。なんとも奇遇なことをお互いに驚き、お互いに祝福した。
小屋からは緩く鳶山へと登るのだが、その先は厳しさが増す。鳶山山頂からは隣の越中沢岳山頂までのルートがほぼ見渡すことができる。急崖下降の先に見える登り返しの稜線は長く、途方もないものに見える。
越中沢岳からの下りはいっそう急崖となっている。スゴの頭を挟んで約300mの急下降を繰り返しスゴ乗越の先で登り返すとスゴ乗越小屋に到着した。
後半では体力維持を考えて休憩を多めにとったこともあり、昼までのハイペースとは裏腹に、当初見込んだ16時頃の到着となった。
○スゴ乗越小屋にて
もとより小さな小屋だが、この日は12人の泊まり。二人分の畳でゆっくりと休むことができた。ランプの小屋だが、丁寧に扱われている室内外、素朴ながらも美味しい夕食のお陰で、心地良く過ごし、鋭気を養うことができた。
当方を含めた単独行の4人で夕餉の卓を囲んだが、それぞれに趣のある山行きをする方々で、お話も興味が尽きない。折立バスに乗れなかったのにヒッチハイクで折立まで来た強者がいらっしゃるかと思えば、このコースを5日間かけて楽しむじっくり派もいらっしゃり、山の楽しみ方、山への臨み方はそれぞれなのだと思わされた。されど、スゴ乗越に来るだけのことはあって、どの方も一方ならない山へのこだわりがあるのだと感じた。
その際の面々からも、明日百名山踏破する見込みについて祝意を頂戴した。ありがたいことだ。
○9月18日、薬師岳登頂
早朝出てみると、晴れではあるものの、上空には厚い雲。小屋前に聳える巨体赤牛岳の山頂部も雲に隠れようとしている。どうにか雨だけは降らないで欲しいものだと思いつつ、出発した。
間山から先はガスの中の歩行となる。濃いガスの中で、やがて礫斜面を迎える。赤丸や矢印ペイントがルートを示しており、ガスの中でもこれさえたどれば道外れはない。しかし、一旦それを見失うと遭難することにもなりかねない。GPSがあるとはいうものの、慎重に歩を進める。
北アルプスらしい礫斜面や岩稜を進んで北薬師岳へ。しばらくすると、ほんのひとときながら、目指す薬師岳が顔を出した。ここまでの淡々とした登りとは異なり、岩稜のアップダウンが目的地まで続いているようだ。
ここで本日折立から登ってくる4人と連絡を取る。彼らが薬師岳山荘に到着したことを確認して出発。最後の険路へと向かった。
岩礫の昇降を繰り返すうち、まずは薬師岳の誇る美しいカール底が見渡せるようになってきた。さらに、振り返ると北薬師岳までの稜線もきれいに見えている。そしてやがてついに目指す薬師岳までもが姿を現した。頂上どころか、その先の薬師平小屋も見えている。そちらの稜線には、同胞と思しき集団も見える。ぴったり頂上での合流となりそうだ。
山頂の祠が近づく。いよいよ“そのとき”が来る。見ると、折立からの4人衆も近づいてきた。彼らの到着を待って、鳥居をくぐる。ついに百名山完登を達成した。
記念写真を撮り、皆で祝杯を挙げる。当方の祝ごとに集まってくれたことに心から感謝。何度も写真を撮り、杯を重ねていると、通りがかりの見ず知らずの方からまで祝福される。誰もがにこやかな視線をこちらに向けていただけるのを見ていると、こちらも嬉しさが増幅されてくる。
喜びの共有はそこそこに、折立に向けて5人で下降を開始する。達成感の残る中、どちらかといえば緩やかな折立への道は、長さとは関係なく心地よい。達成してから室堂に向かうプランにしなくてよかったように思う。
下りでもガスは濃淡を繰り返す。ルート自体は影響を受けない高度に下がってきたものの、山々は頭を隠している。ちょうど三角点ベンチ付近で、ほんの暫く薬師岳が姿を見せてくれた。しかしそれもつかの間、瞬く間に濃いガスの中へと消えてしまい、そして二度とその姿を現すことはなかった。
ちょうど17年前の9月、雨の中に消えた夢の世界は、今回も厚い雲の中へと隠れていった。
○番外編、帰り道にて
亀谷温泉にて疲れを癒やし、富山から金沢、新大阪、そして広島へと長い帰路に着いた。今回参加してくださったメンバーのうち、金沢へと帰るYさんを除いた4人で行動を共にした。金沢駅では、サンダーバード車内での振り返り会に向けて買い出し。
ところが、ホームで事態は暗転。福井県内の豪雨のためサンダーバードは運休が決まった。
なんとしても広島での明日の仕事に間に合いたいので別の手段を思案してもらう。
結果、先ほど亀谷温泉で別れたばかりのYさんを呼び出し福井へと送って貰い、福井でクルマを借りる伝のあるAさんに関西へと向かってもらうこととなった。さらにNさん宅からKさんはNさんが送っていくなど、全員手分けをして帰ることになった。さすがは異常時対処に長けた仕事をしているだけのことはあり、皆さんこういった場面での知恵の働かせ方が違う。
各人が運転する関係上アルコールに手を出すわけにもいかず、すでに時間も時間だけにゆっくりもしていられない。それぞれ疲労もあるだろう中、どうにか午前2時には神戸の家に転がり込むことができた。これで、早朝の新幹線に乗れば、朝の広島には間に合うことができる。
山で順調だったツケが全てやって来たような帰り道となった。まだAさんには福井までクルマを返送する仕事が残っている。
お祝いをして貰っただけでも感謝感激なのだが、最後に至るまで、メンバー各位のお知恵と体力をお使いいただいたことに、心から御礼を申し上げたい。
コメントありがとうございます。
ご一緒に、とはならず残念でした。
また紀伊の山へとお声掛けくださいませ。
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