北岳 〜何もないようで 何でもあるところ〜
- GPS
- 13:04
- 距離
- 13.1km
- 登り
- 1,878m
- 下り
- 1,882m
コースタイム
- 山行
- 7:03
- 休憩
- 1:33
- 合計
- 8:36
- 山行
- 3:45
- 休憩
- 0:22
- 合計
- 4:07
天候 | 7月5日:晴れ 7月6日:朝はガス、昼にかけて曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
7月5日0時ごろ到着で半分弱の空き有 |
コース状況/ 危険箇所等 |
≪登山道の状況≫ ・概ねよく整備されています。 ・大樺沢コース下部は大樺沢に橋がかけられていないため通行止め。大樺沢二俣から上は通れる。 ・大樺沢コースと白根御池コースの分岐〜白根御池、草すべり、大樺沢左俣コースの終点から八本歯のコルまでが急登、草すべり以外は木製の階段・梯子が連続する。 ・大樺沢左俣には雪渓が残る。5日昼過ぎには雪は緩んでいて10本詰めアイゼンがあってもグリップしない。夏道も半分ほどしか出ていない。バットレスから流れ下る大き目の沢を横断する箇所で夏道が雪渓に覆われているので高巻き必要。 ・白根御池小屋手前に崩壊地を高巻きする箇所あり。転落に注意。 ・小太郎山分岐〜北岳肩の小屋に3点確保で通過した方が良い箇所あり。落ち着いて歩けばさほど難しくない。 ≪危険動物情報≫ ・ヤマビル、ヘビ、マダニ:遭遇せず ・クマ:遭遇しなかったが、北岳はクマの棲息する山域。ばったり出会わないように単独行はクマ鈴があると良いと思う。 ≪トイレ≫ ・白根御池に公衆トイレ有。大樺沢二俣には公衆トイレは設置されていない。 |
写真
感想
何もないようで なんでもあるところ
7年ぶりに登った北岳はそんなところでした。
2015〜2017まで3年連続で登っていましたが、あれから7年…
あの頃は毎月一山登っていたものですが、結婚すると独身の時ほど自由が利かなくなるもので、ワンシーズンに一回登山できれば御の字。
普段鍛えていないので筋力低下が心配ですが、キタダケソウが見たくて来てしまいました。
夏山トップシーズンにはまだ早いようで、ハイカーの車であふれかえる芦安も前夜
0時到着でまだ余裕がある感じ。
その代わり、芦安〜広河原までのバス・乗り合いタクシーの本数は少なめなので運行スケジュールを確認しないと思わぬところでタイムロスが出ます。
始発バスに乗って夜叉神トンネルを抜けると飛び込んでくる間ノ岳と北岳。
またここに来たなと思う広河原も今は程よい静けさ。
野呂川越しには青空をバックにそびえる北岳。
日頃のトレーニング不足であのてっぺんまでたどりつけるだろうか…
緩やかな登りの大樺沢コース下部は通行止めなので白根御池へのルートへ。
白根御池手前までは急な尾根を登るスパルタンなルート。
木の階段・梯子が15本連なる、これからたどるべき道が壁のようにそそり立つ厳しいコース。
序盤から険しいコースだけど、キタダケソウに遭うためなら文句は言わない。
傾斜が緩くなると白根御池に到達。
険しい山中にこんな穏やかな場所があるのが不思議な空間。
第二の難関、急登の草すべり前に一息つけるポイントです。
豊かな水に恵まれる場所で、南アルプスの天然水飲み放題。
ハイドレーションを満水にして先に進む。
大樺沢二俣で左俣と右俣コースの分岐。
まだ雪渓がしっかり残って、雪解けした場所も花が咲きそろうのはこれからといった感じ。
キタダケソウに最短でアクセスしたかったので今回は左俣の雪渓を歩いてみました。
昨日までは雪が締まっていてアイゼンがしっかり聞いたようですが
今日は雪は緩んで10本詰めアイゼンでもグリップせず、一歩進んで半歩下がる感じ。
しばらく頑張ってみたものの雪渓上部は傾斜がさらにきつくなるのであきらめて夏道へ。
まだ夏道はしっかり出ていませんが、先行者のトレースをたどって八本歯コル下へ。
振り返ると鳳凰三山の頂上と肩を並べる高さになって、八ヶ岳も頭を見せている。
北岳バットレスを眺めながら、木の梯子でさらに高度を稼ぐと稜線へ飛び出しました。
これまで北岳に来た時は稜線到達の頃にはガスが上がってきて展望が無いことばかりだったのに
今日の稜線は青空の下!
富士山や間ノ岳・農鳥岳が美しい姿を見せてくれました。
ここまでのコースで体力をかなり消耗したので少し歩いて小休止の繰り返し。
それでもキタダケソウを見るために一歩ずつ前へ。
すれちがった登山者からキタダケソウの咲く場所を聞いて
絶対に見落とすまいと目を凝らして進みます。
白い花はたくさん咲いているものの、それはハクサンイチゲ。
美しい花なのだけど、今日会いたいのはあなたではないんだわ…
会いたかったキタダケソウ、トラバース道の片隅にひっそり一株だけ咲いていてくれました。
雪解けと同時に咲き始め、ハクサンイチゲが咲くころには消えていく儚い花。
氷河期の生き残りのこの花、昨今の温暖化で6月に来ないとみずみずしい花は見られなくなりつつあります。
ただ一株、それももう終わりかけの株でしたが、自生しているものを見ることができてうれしかった…。
キタダケソウはほぼ終わっているものの
雪解け後の斜面はハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ミヤマオダマキのお花畑。
天空のお花畑を眺めているとここまでの疲れが吹き飛ぶ感じでした。
北岳山荘からの道と合流する箇所で小休止をとって北岳山頂へ。
午後になって多少雲が増えてきたものの、まだまだ素晴らしいパノラマは継続。
西側から姿を現す中央アルプス、仙丈ケ岳も見ながら一歩ずつ前へ…
14時半、広河原から8時間半かけて北岳山頂へ到達。
仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山、富士山、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳…
ああ、北岳山頂からはこんな景色が見られたんだ…。
人もまばらになった山頂でしばし休憩と写真撮影をして
本日の宿、北岳肩の小屋へ入りました。
肩の小屋は水の確保が大変なようで、宿泊者も自由に使える水は無し。
稜線に立つ山小屋はどこも水の確保は大変なようですね。
何とか無事に山小屋へ入れたものの、今日中に広河原まで下山するとなるともう無理かも…。
筋力低下と年齢ゆえの体力低下で、もう北岳日帰り登山は無理かな。
美味しい夕飯を頂いて、中央アルプスに沈む夕日・夕映えの鳳凰三山と富士山を見ながら体を休めました。
翌朝、日の出を見ようと外に出てみると一面の霧。
山で見る朝日はアルプス登山の醍醐味ですが、今回はお預けになりました。
下山に備えて、朝ご飯をたっぷり頂いてから出発。
霧の稜線を歩きながら、雷鳥に遭えないかなと思いましたが、今日は姿を現してくれませんでした。
昨日までの疲れがたまる足を引きずりながら右俣経由で下山。
白根御池からの下りが足の疲れに追い打ちをかけ、下山後には歩くのもつらい筋肉痛になりました。
普段から鍛えていないと、登りよりも下りが辛くなるんだなと実感…。
肩の小屋から4時間かけて無事に広河原へ。
10時発のバスには間に合いませんでしたが、乗り合いタクシーに乗せて頂くことができ、さほど待たずに芦安へ戻れました。
北岳山頂ではダウンを来ても寒かったのに、下界は厳しい暑さ。
明日からまたいつもの生活だな…と現実に引き戻されます。
温泉に入って、土産物を購入してから妻が待つ名古屋へ。
家に近づくと、夜でも行きかう車・お客で込み合うラーメン屋・明るい繁華街…
町は便利なものであふれていました。
一方で山には、便利な乗り物も、蛇口をひねれば出てくる水も、いつでも何でも買えるコンビニもありません。
でも、素晴らしい風景・美しい花・さわやかな空気・野鳥の鳴き声…
山を愛する人が求めるものはなんでもある世界だなとしみじみ思います。
何もなさそうで、なんでもあるところ。
いつかまたそこへ行きたいな、と思いながら家で待つ妻のもとに帰りました。
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