オコジョとお花盛りの白馬大雪渓−栂池
- GPS
- 13:55
- 距離
- 23.5km
- 登り
- 2,434m
- 下り
- 1,845m
コースタイム
- 山行
- 6:48
- 休憩
- 1:27
- 合計
- 8:15
- 山行
- 4:32
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 5:26
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2023年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・大雪渓は初めてですが既にかなり溶けて縮小している様子。上部で再度アイゼンを付けるような場所はありませんでした。 ・白馬大池から白馬乗鞍岳を経て天狗原までのルートは小岩の堆積の連続で、思いのほかハードでした。幅50mほどの残雪の急斜面もあります。ロープがありますがアイゼンを着けて通る人もいました。 ・栂池自然園からのロープウェイは所要5分ほど、乗り継ぐゴンドラは20分ほどかかるのでバス利用時はご注意。乗り換えも3〜4分歩きますが、ゴンドラ(6人乗り)は頻発しているので待ち時間は気にしなくても大丈夫です。下の駅からバス停までは徒歩1〜2分です。 |
写真
装備
個人装備 |
1/25000地形図
水筒
食料
レインウェア
傘
着替え
防寒着
ヘッドランプ
ストック
保険証
ティッシュ
タオル
計画書
時計
携帯電話
カメラ
筆記具
緊急保温シート
ガイド地図
ツェルト
応急医薬品
GPS
予備電池
非常食
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感想
高山植物のお花畑が盛りを迎える時期の北アルプスを初めて訪れた。白馬を目的地にしたのは、雪のあるうちに大雪渓を歩いてみたいという狙いだったが、数多い花々とオコジョにも迎えられて、非常におまけの充実した山行となった。
【20日】
今回、初めて毎日あるぺん号の夜行バスを利用した。平日午後10時過ぎ、新聞社ロビーの床に大勢の登山者が座り込んでバスを待つという光景は、なかなか新鮮だった。上の編集局では社員が朝刊編集の追い込みに忙しいことだろうと思うと、多少の後ろめたさも感じる。
利用する猿倉行きのバスは、ショートボディの観光バスタイプ。途中2か所のトイレ休憩に加えて扇沢、八方でも客を下ろすから、昔の夜行急行列車と同じで安眠は望み得ない。断続的に3時間ほど眠った程度で定刻の5時半に猿倉山荘前に着いた。
【21日】
朝食とトイレを済ませて登山道へ分け入る。冷え込みはなく、登山シャツ1枚でちょうどいい。ほどもなく道端に可憐な花を咲かせる高山植物が目に飛び込んできた。雲は多いが遠く稜線も見えて雨の心配はなさそうだ。やがて大雪渓の一部らしい長大な残雪も見え始めて、45分で「ようこそ大雪渓」の大岩に着いた。
白馬尻山荘は今年は営業しないとのことでトイレだけが建っていた。大雪渓へのアプローチはすぐ先で、先行者がアイゼンを装着している。気温が高めなので雪が緩んでいないか心配だったが、固く締まっていてホッとした。過去のレコで見たより雪は少なめで、雪面もだいぶ汚れてきている。少雪と大雨、バカ陽気のせいだろうか。
6本爪アイゼンを装着し、雪面に赤っぽい色を付けたと思われる踏み跡伝いに雪渓歩きをスタートした。まだ傾斜の緩い区間だし、程よくアイゼンの歯が入る固さの雪なので歩きやすい。ただ、さすが雪の上とあって最初は涼しいと喜んでいたのが、10分もすると寒くなってきて、レインの上を羽織って歩いた。
1.5劼曚品發と右前方に夏道(秋道?)らしい地面が見え、涼しい雪渓歩きは終了。楽な行程のつもりだったが、アイゼンを外すと思ったより脚の筋肉に疲労を感じた。やはり、軽くでも雪面に歯を叩きこみながら歩いたので筋力を消耗したようだ。
道は徐々に傾斜を増し、左に見える大雪渓上部からはたびたび小さな落石の音が聞こえる。やがて雪渓は大きな口を開けてあたりに雪解け水の音を轟かせた。汗のにじむ登高のつらさを咲き競う花々を見て紛らわせながら進むと、別の右上の残雪から落ちる融水を横切る岩場に出た。木橋2本が渡してあるが、まともに歩くと飛沫でびしょ濡れになるので飛び石の要領で素早く通過した。
さらに登ると左上に再び残雪の急斜面が現れ、なんとスキーを担いで登る人たちが見えた。目測で斜度30度はあり、下部も傾斜はきついから勢い余るとガレ場に突っ込んでしまう。相当の技術の持ち主なのだろう。
残念ながらその滑りを拝見できないうちに緊急避難小屋前に到着。汗をぬぐって一休みしようとしたら、目の前から何かが動いたのが見えた。小鳥か?と注視していると、4mほど向こうにひょこっとオコジョが現れた。じっとこちらを見ている。カメラを構えて1枚撮り、もう少し望遠でと操作していたらヒラリと身をひるがえして逃げられてしまった。これまでも2度ほど見たことはあるが、素早いので写真に納められたのは初めてだ。
標高が2500mを超え、圏谷が北へと方角を変えると何となく稜線が近づいた気がしてきた。いよいよ脚がきつくなってきたが、頂上宿舎まであと標高差200m余り。何とかほぼ予定のコースタイムで到着することができた。
ここで弁当を食べ、アイゼンなど不要な荷物をデポして杓子岳を訪ねるつもりだ。あわよくばチェックインをと思ってスタッフに声をかけたが、受付は12時半からとのこと。「売店の荷物置き場はお使い下さい」とのことなので、少しリュックを軽くした。その売店前のベンチでお握りとカップ麺、コンビーフの当方定番の昼食とする。
三々五々とハイカーが到着し始めたが、上に見える巨大な白馬山荘を目指すらしい人も多い。たっぷり一時間休憩し、リュックを背負い直して裏の稜線へ。雲が多いのが気になるが、雨の降る気づかいはない。
旭岳を右に見ながら、まず丸山へ登る。ガスの切れ間に覗く杓子岳は思ったより遠く感じる。このところ隔月でしか山を歩いておらず、なまった筋肉は昼休憩程度では回復せず、お尻の筋肉まで痛む。
ついついうつむきがちに歩いていたら、パタパタとウズラみたいな鳥2羽が足元から走り出た。雷鳥の雛だ! 見回すと、すぐ先で母鳥がお尻を向けて別方向へソロリソロリと去っていく。その姿に思わず頬が緩んだ。 相変わらすガスで山々は見えないが、とりあえず来たかいはあったというものだ。
前方から杓子に登ってきたという女性が来たので道の様子を問うと、急なガレ場の坂で白馬鑓ケ岳側へ迂回した方が良かった、とボヤいた。巻き道分岐に至ると、なるほど凍結破砕作用でこぶし大に割れた流紋岩が堆積し、なんとも歩きにくい。ただ、迂回路の先の登り口はと見ると、かなり先になる様子。疲れた脚に鞭打って直登コースを選ぶことにし、ガレに足を取られること20分近くを経てようやく杓子岳山頂に着いた。
北側には、前穂北尾根のミニ版みたいなゴジラの背中稜線がぼんやり見えるが、360度すっかりガスの中だ。一休みしていると、白馬鑓方向に向かう若い男性が2人上がってきた。うち一人はほとんど止まらず先へ向かい、今一人は迂回する当方のすぐ後を追ってくる。非対称山稜の東側の崖に落っこちないように気を付けながら、”ややマシ”なガレの坂を下って巻き道に合流した。
さて、小屋の方に戻りかけると件の男性が後を付いてくる。写真を撮りがてら立ち止まり、イヤホンを付けて終始スマホ画面を見ている男性に「どこ行くの?」と問うと、やはり白馬鑓との答え。「じゃあ、逆方向だよ」と教えると、あわててスマホを操作して確認し、礼を言って引き返して行った。スマホで見ていたのは地図ですらなかったらしい。もし、視覚・聴覚とも山と関係ない情報に神経を向けていたのだとすると、どんな事故に遭うとも限らない。ちょっと心配だ。
半分ほど戻ったあたりで、道のすぐ近くにコマクサを見つけた。一面の花畑とまではいかないが、今回はさまざまな高山植物の花が目を楽しませてくれる。丸山へ最後の登り返しで顎を出しながらも、花々のパワーをもらってなんとかテント場経由で頂上宿舎へ戻る道に辿り着いた。ちなみに、ここにはハクサンイチゲが群生している。
午後2時半前に投宿。2階の浅間という部屋をあてがわれた。喉が渇いて自販機のビールを買って部屋に向かったが、ショート缶で900円もすることに驚いた。何年か前は500円が相場だった気がするが、ヘリの燃料費高騰のせいだろうか。
定員16人に相部屋は当方を入れて4人。しばらく話した後、夕食までひと眠りした。5時半からのその夕食はバイキング方式で、想像以上におかずが豊富。ビーフシチューまで付いてお代わり自由とあって、ついつい食べ過ぎてしまった。
【22日】
1時過ぎにトイレに起き、次に目が覚めたのは4時過ぎ。窓の外を見るとガスがかかっている。また寝を決め込んで5時過ぎに起きると、視界が回復していた。あわててダウンを着込み、カメラを持って部屋を出た。西の空は晴れている。宿のサンダルを借りたままテント場から裏の稜線まで上がってみると、ピラミダルな山が朝日に照らされていた。剱岳だ。もう少し早ければモルゲンロートが見られたかもしれないが、これでも十分見ごたえがある。
戻っておかずの豊富な朝食を堪能する。ご飯は地元の黒米を使ったお握りを選んだ。山の上という制限はあるが、夕食、朝食とも手のかかる料理ばかりで、山小屋の食事としては評判通り出色だと感心した。
6時20分に出発し、雪田を横に見ながら白馬山荘への急登に挑む。まだ脚が重く、息が切れる。息継ぎがてら振り向いてみて、逆に息をのんだ。劔立山連峰から水晶、鷲羽を経て槍穂高連峰の一部までの稜線が一望のもとに見渡せる。なるほど、前方の山腹を横切るように広がる白馬山荘の眺望が人気を集める訳だ。
その山荘の売りであるスカイプラザの前を通過してケルン近くまで登ると、ついに槍穂高連峰も前穂までの全容を現した。さらに一投足で白馬岳山頂到着。はるか下になった杓子岳東面の壁が大迫力だ。その向こう、白馬鑓ヶ岳の肩越しに見える双耳峰は鹿島槍だろうか。間にある唐松岳と五竜岳が白馬鑓の影に隠れているとすればだが。
景色を十分に楽しんで北へ続く稜線を下る。傾斜は厳しくなく歩きやすい。東の遠くに見えるシルエットの山影は、戸隠と黒姫だろうか。前を歩く山慣れた感じの女性に尋ねたら「御岳でしょ、噴火した」と自信満々で答えられてしまった。反応に困ったが、やんわりと方角と距離感が随分違う疑問を指摘して、早々に先行した。
東は切り立った崖、西は岩屑斜面の広がる非対称山稜を下って行くと、はっきりした二重山稜地形が見えて三国境。ハイマツだけの不毛な荒れ地に見えるが、目を凝らすと高山植物の花々の絶えることがない。それもそのはず、一帯は白馬連山高山植物帯という国の特別天然記念物に指定されている。
緩やかな登りを詰めて小蓮華山頂が近づくと、はっきりと足元の石の色が濃い色に変わった。地質学は詳しくないが、なかなか興味深い。石と植物に気を取られたまま到着した山頂は、北へ南へと行き交うハイカーでごった返していた。山小屋からの時間的にちょうど双方向のハイカーがすれ違うポイントになったようだ。
早々に辞して気持ちのいい道を辿って行くと、船越ノ頭で山影から白馬大池が姿を見せた。標高が2500m台になるとハイマツにシャクナゲの花が混じり、植生も変わってきたようだ。チングルマの群生を見て大池山荘前へ。一休みしてプロテインバーのおやつを食べて最後の下りに備える。
あとは白馬乗鞍岳へ軽く登り返して下るだけーーそう気楽に構えて大池のほとりを進み始めると、岩の堆積する岩塊流の地形に直面して面食らった。岩から岩へ飛び移りながら進むが、いつまでたっても土の道に変わらない。乗鞍岳山頂はいわば平らな岩の原。下りにかかっても岩塊流が延々と続く。岩を跨ぎ越すより頂点から頂点へ飛び石歩きをした方が早くて楽なのだが、踏み外したら大変なことになる。
さらに途中、斜度25度ほどの残雪の斜面まで現れた。アイゼンを出すか悩んだが、先行者のステップが刻まれているのでヒールを叩き込みながら強行突破。再び岩飛びを繰り返し、大池からたっぷり1時間かけて天狗原の木道に辿り着いた時は、正直ほっとした。ただし、自然園まではまだ標高差350mほど山道を下らなくてはならない。ようやく栂池ヒュッテの建物が見えた時には、大池山荘を出てから2時間がたっていた。コース状況を予習せず、大池の先は下り中心だからと甘く見ていたのが反省点だった。
まあ、花はたくさん見られたし、稜線の絶景も堪能できたし、最後の岩飛びも変化に富むコースを楽しめたと前向きにとらえておこう。
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