【徒歩+自転車】人力九州縦断+九州本土全1700m峰制覇 13日間


- GPS
- 288:28
- 距離
- 839km
- 登り
- 24,454m
- 下り
- 24,361m
コースタイム
- 山行
- 4:58
- 休憩
- 0:35
- 合計
- 5:33
- 山行
- 10:28
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 11:00
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 10:24
- 山行
- 8:56
- 休憩
- 2:22
- 合計
- 11:18
- 山行
- 6:51
- 休憩
- 1:34
- 合計
- 8:25
- 山行
- 9:55
- 休憩
- 1:05
- 合計
- 11:00
- 山行
- 8:35
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 9:35
- 山行
- 13:21
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 13:41
- 山行
- 12:23
- 休憩
- 1:04
- 合計
- 13:27
- 山行
- 12:58
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 13:32
- 山行
- 4:23
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:23
- 山行
- 5:45
- 休憩
- 0:11
- 合計
- 5:56
- 山行
- 3:01
- 休憩
- 0:38
- 合計
- 3:39
過去天気図(気象庁) | 2023年03月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
3月の半ばに2週間休みをもらった。地形図を眺める。まだこの時期なので寒いところへは行きたくない。休みのボリューム的には九州が良いかと思い、九州の行きたい山をピックアップしていると、1つのラインが浮かび上がった。九州最北端から、英彦山、九重、阿蘇、祖母山系、九州脊梁山地、霧島、桜島をつないで最南端佐多岬。ちょうど九州本土の1700m峰を全制覇できそうなので、それもコンセプトに入れ込んだ(1700m未満は登山道や下道の不通、地理的な遠さから時間がかかってしまう)。
ただ、これを全部徒歩で2週間は厳しい。どの道具まで登山に使うことを許すかは、山屋それぞれに独自の哲学があると思うが、私は今回自転車は機能性の高い登山靴と同じ扱いであると考え、「自分の食べたものを直接のエネルギー源にして、地形的な高まりのなるべく高い点に、自分の体本体を移動させる」ことを登山と定義することにした。つまり自転車はOK。一応「『人力』九州縦断」と銘打ってツッコミを回避しつつ、自分の中でこれは登山だと思っておくことにした。
そういう訳で、3月10日夕方に仕事を終え、自転車と荷物を車に積んで九州へ向かった。
3月11日 下関〜門司港太刀浦埠頭〜平尾台〜香春
いやあ、分かってはいたけど九州は遠いな。高速を使っても半日以上かかった。大体この辺まで行けるかと、志井の森公園に車を置かせてもらう。
下関駅まで輪行し、改札を出て自転車を組み立てて出発。午前中に高速道路で、先ほど電車で通過した関門海峡を、今度は自転車を押して地下のトンネルを渡る。途中、県境のところに、本州と九州の境を示す絵が書いてあった。いよいよ九州縦断が始まる。関門トンネルを抜け、まずは門司港の太刀浦埠頭に向かう。
九州本土の最北端はコンテナターミナルになっており、一般人は立ち入ることができない。立ち入れる最北端は、その先端付近のゲートの前までだ。あたりは釣り人がいるくらいで、最北端だのなんだのといった表示はない。コンパスを出して一番北の点を探し、そこで写真を撮ってスタートとした。
この時はまだなるべく分水嶺に沿って、などと元気なことを考えていたので、最初は山道を通る。そのうち市街地に入り、だんだんと風景が田舎になっていくのを眺めながらペダルを踏む。志井駅にたどり着いたのは16時過ぎ、これなら明るいうちに平尾台を超えられると思い、平尾台へのヒルクライムに向かった。休み休みだったが、標高差300m、距離6kmを30分ちょっとで登った。
広いカルスト台地を訪れたのは初めてだったが、教科書で見た通りのドリーネ、ウバーレやカレンフェルトが見られて、本当にカルスト地形だあと思った。最近野焼きをしたようで、黒々として一般的な景色ではなかったが、珍しいものを見られたと思っておく。こんなところでも小学校があるほど人が住んでおり、畑作もしていることに人間の逞しさを感じた。
平尾台の反対側に下り、最後に100mくらいの峠を越えて道の駅香春に着いた。今日の縦断はここで終了とする。香春駅まで自転車を転がし、電車で志井駅に戻り、車で自転車を回収。買い出しと夕食を済ませ、道の駅で車中泊した。この縦断はこのように、公共交通機関と車でしゃくとりむしのように進むことで、一か所に車を2週間放置せず、いざというとき車に戻りやすいようにしている。1つの登山というよりは、一連の登山で1つのルートをつないでいるイメージが近いかもしれない。
3月12日 香春〜英彦山〜玖珠
3時起床。荷造りをしたり朝ごはんを食べたりして、4時過ぎに自転車で出発しようとしたが、ライトの充電が切れかけていたので15分ほど充電してから出発した。赤村に入るとニワトリの鳴く声が聞こえた。福岡とはいえ村だなあ。村の中心部を抜け、英彦山に向けて坂を登る。これがキツいのなんの……。昨日の平尾台はまだ短かったから良いものの、600m登りっぱなしはなかなかつらい。何度か休憩をはさみながらなんとか英彦山の駐車場にたどり着いた時には、これから歩いて山頂まで登る前にもう疲労困憊だった。
さて、ここからは得意分野だ。現在山頂のお宮の工事中らしく、周回するルートは通れなかったため、最高点の南岳のみをピストンするコースをとった。登山口の神社に参拝して登山道に入る。よく整備されていて歩きやすい。途中梵字岩にも立ち寄りながら山頂までスルスル登った。
山頂はあまり開けていないものの、その少し下は展望があり、北側の山々や工事中の中岳を望めた。下りも大楠神社に寄って観光気分を楽しみつつ、コースタイムを巻いて戻った。
野峠まではアップダウンがあったが、そこからのダウンヒルは大変気持ちよかった。猿飛の甌穴群にも立ち寄りながら、道の駅やまくにまでは調子が良かったのだが、そこから先のアップダウンがだいぶ堪えた。耶馬溪の一部ということで、たまに道端に奇岩が織り成す景色が現れるが、こういうのは平地にあるから価値があるのであって、山に登れる人間からするとそこまで目を引くものではない。ひーこら言いながらなんとか道の駅童話の里くすに着いた。
電車の時間までまだ少し時間があったので、大鶴温泉夢想乃湯に寄った。100円を入れると回転扉が回転するという仕組みの無人温泉で、洗い場と天然温泉かけ流しの大きい岩風呂が1つあった。濡れタオルだった昨日とは雲泥の差だ。これが近所にある人が羨ましい。電車に間に合うよう、名残惜しいながらも20分ほどで出て、豊後森駅から香春駅まで戻り、道の駅童話の里くすで車中泊とした。
3月13日 玖珠〜九重連山
5時半過ぎに道の駅童話の里くすを出発。今夜はいよいよ野営になる。ザックにテントが入るとペダルが重い。はじめ1時間は玖珠川沿いの平坦な道だが、その後は牧ノ戸峠まで標高差900mのヒルクライムが始まる。実は昨日、英彦山の登りがあまりに辛くて、「ヒルクライム 初心者 コツ」と検索してコツを調べておいたのだった。ダンシングのやり方、座る位置、体勢、ペース配分などを実践してみる。すると、昨日550m登った1割増くらいの時間で900m登ることができた。先人の知恵は素晴らしいなあ。これくらい調べてから来いという話ではあるが……。
駐車場の端に自転車停めて出発。道端には昨晩降ったらしい雪が1cmくらい積もっている。登山道傍の温度計を見ると-5°Cを指していた。9時過ぎで-5°C?!天気予報によれば、明日の朝は今日より5°Cくらい低いらしい。テント場はここより少し標高が低いが、朝の1番寒い時間帯は-8°Cくらいを覚悟しないといけないかもしれない……。
沓掛山を越え、まずは星生山に登る。今回初めての1700m峰だ。風が強くて寒い。眼下には自転車で登ってきた長者原ののどかな風景が広がっている。次に久住岳、中岳、稲星山と、100m内外の標高差でポンポンと登っていく。池があったり避難小屋があったりとテーマパークみたいで楽しい。地理院地図には載っていないが、他にも天狗ヶ城と白口岳が1700mを超えているので立ち寄っておいた。
この後の白口岳からの下りが大変だった。昨晩降った雪か霜柱かが溶けてきたのか、やたらとぬかるんでいてとても歩きづらい。トレッキングポールと立ち木を利用してなんとか下った。法華院温泉まで下りると一安心、どころか重機もあるし太い砂利敷の道に轍もあるし、ここは外界なのかと拍子抜けしてしまう。坊ガツルも最近野焼きをして黒くなっていた。テントは炊事棟とトイレの付近のそばに張った。1500張張れると聞いていたが、この日は他に5張ほどだった。なんとも贅沢な話である。翌朝寒くなることを見越して、持っている服を全部着込み、中身を全部出したザックに足を突っ込み、輪行袋を被って眠った。18時頃横になったが、結局21時頃に寒さで起きてしまい、その後はなんとかだましだまし眠った。
3月14日 九重連山〜阿蘇
翌朝3時、テント内の腕時計の温度計は-3°C。寒さに震えながら棒ラーメンを啜る。炊事場の温度計は-6°Cだった。まだ暗い中を大船山に向けて出発する。黒々した大きなシルエットに今からこれを登るのかとうんざりする。はじめのうちは踏み跡があまり濃くなく、ゆっくり道を確かめながら進んだ。この時間だとまだ地面が凍っているため、ぬかるんでおらず助かる。
時間がありそうだったので先に北峰に立ち寄って山頂へ。日の出直前の美しいグラデーションに目を奪われる。数分で朝日が顔を出した。しばらく目に焼き付けて山頂を後にした。下りながらも久住山方面の美しいモルゲンロートが目に入り眼福である。登りは気づかなかったが、白っぽい岩だと思っていた地面が、全て一面の霜柱だったことに気づいてびっくりした。これが溶けたら歩き辛そうだ。テントに戻ると少しうとうとしてしまったが、どうにか荷物を片付けて三俣山に出発。取り付きまでまずは300m登る。坊ガツルから眺めても思ったが、こいつも大きい山だ。
一旦登りきると、久住分れまで続く荒涼とした平原が広がっている。地球でないところに来たみたいだ。さらに少し登って諏蛾守越、ここから三俣山に取り付く。急斜面をつづらを切りながら登っていく。
西峰を越えてもまだ本峰が大きい。一旦下ってまた100メm登る。本峰から北峰方面へは、植生保護のため立ち入らないように書いてあった。北峰はギリギリ1700mないので、行かないで良いことにしよう。己、南峰も越えて元に戻る。いちいちアップダウンがあるのがうざったくなってきた。次第に気温が上がり、泥で滑ることが多くなってきた。傍に生えている潅木につかまりながらやっと諏蛾守越まで下りた。そこからは泥に苦しめられることなく、噴気孔や落石を横に見ながら牧ノ戸峠まで戻った。
ここからの自転車はとても楽しかった。ダウンヒルを終えてから阿蘇まで、牧場の開けた風景の中、アップダウンのほとんどない爽快なライドを楽しんだ。
阿蘇駅からは特急で大分まで、各停で豊後森まで。途中湯布院で乗り換え待ちがあったため、構内の足湯に入ろうかと思ったが、営業時間外だった。阿蘇の道の駅で車中泊。ここは水が取り放題だし、木が植えてあって周りがやや気にならないし、車中泊にはとても良いところだった。メインの通りにお店もまとまっているし、九州に住むならここに住みたいと思った。
3月15日 阿蘇
今日は阿蘇山の往復だけの、休養日に近い設定だ。朝7時半過ぎに出発。牛に見守られながら2時間弱で600mを登り、そこから"登山"を開始した。1月末に火山活動が活発化し、一時は山上駐車場から山頂までの登山ができなかったが、最近迂回ルートで登山ができるようになった。間に合ってよかった。
登山道は富士山の砂走りみたいなザレた感じかと思っていたが、意外と足場が締まってしっかりしている。迫力満点の崖を見ながら急傾斜を登っていく。登り詰めた先の南岳からの縦走路が、景色も良くとても爽快で気持ちよかった。中岳、高岳と調子よく登れた。風が強かったため、高岳山頂では岩陰に身を潜め、下りはちゃっちゃかと下ってしまった。下りきってもまだ15時だ。買い出しをし、温泉に入り、贅沢なご飯を食べと、休養日を十分に満喫した。
3月16日 阿蘇〜祖母
5時過ぎに出発。泊り装備の詰まったザックが肩に食い込む。箱石峠を越えてもダウンヒルの合間に細かい登りがあって思ったように進まない。登山口に向けて坂を上っていると、側溝清掃をしていた付近の集落の方々とすれ違い、挨拶をした。自転車にまたがりヘルメットを被り、登山の服装に身を包み大きなザックを背負った姿を見て、「何しに来たたい?登山?」「自転車とよ!」と話す声が背中越しに聞こえた。どちらもです。
登山口に自転車を停め、登山道に入る。マイナールートということもありあまり踏まれていないが、マーキングは豊富で迷うことはない。標高を上げるにつれ、杉林から次第にアセビやヒメシャラ?に植生が変わる。尾根に出て北谷からの登山口と合流すると、n合目の立派な標柱が現れる。登山道もよく踏まれるようになり、ガリー状に掘れてしまっているところも多い。例によって滑りながらまずは九合目小屋へ。扉を開けて驚いた。今すぐにでも営業再開できそうな綺麗な小屋に、手入れに来る人の努力と愛を感じた。今夜は大切に泊まらせてもらいます。
小屋に不要な荷物をデポし、祖母山に向かう。山頂からは360°の展望があったが、特に古祖母、傾、大崩方面の重厚で長大な稜線のうねりが目を引いた。向こうまで縦走するのが本来のこの山の楽しみ方なんだろうな……。障子岳往復の最中にも、「古祖母、傾方面」と書かれた看板が多くあった。次の機会には是非そちらまで縦走したい。
小屋に戻った後は、夕飯を食べ、本を読み、Bluetoothスピーカーで音楽を楽しみと九合目小屋を満喫して、標高1650mとは思えない楽しい夜を過ごした。
3月17日 祖母〜美里
この日は雨が降る前にコテージにつけばよい移動日だ。予報では雨は12時頃からなので、2時間で下山、5時間自転車かな、などと算段をつけ、5時過ぎに名残惜しいながら小屋を発った。
しかし下りの途中で道を間違え、結局下山には3時間かかった。結局その後の自転車も6時間かかったが、予報に反して雨はなかなか降りださず、濡れることはなかった。
予約していた美里の森ガーデンプレイスにチェックイン。受付の方によると、このあたりは泊まる場所が少ないので、登山者も結構来るそうだ。コテージについているのは照明と毛布とコンセントだけだったが、炊事棟やトイレが近くにあり、少し離れてコインシャワーもある。今の私にとっては完璧な宿泊地だ。
3月18日 美里〜国見岳〜五木村
朝4時起床。まだ雨が降っている。止むのを待って6時にコテージ発。 今日も標高差900mのヒルクライムが始まる。途中の水源地などで休憩を取りながらなんとか3時間弱で登り切った。二本杉峠から少し下って脇道に入り、平家山登山口に向かう。この道が今回自転車で通った道の中では最も荒れており、スピードが出せず大変だった。
何とか登山口に到着。国見岳にアクセスできる数少ない登山口だが、土曜日なのに車は3台しかない。自転車を停めて歩き始める。初めは沢沿いの道で、二箇所渡渉点がある。注意すれば石伝いに靴をぬらさずに渡れる。この辺りの山域はさすがに台風の影響が色濃く残っており、倒木が登山道をふさいでいたり、崩れた個所を迂回するように足の幅1つの細い道がついていたりしていた。しばらく登るとを伐採跡になる。泥で滑るが、掴まれる木が少なくとても歩きづらい。
平家山山頂からはガラッと雰囲気が変わる。国見岳の直前までずっと、ピンクテープはそこそこあるものの、なだらかで広くて踏み跡がはっきりしない。白峰南嶺のような雰囲気だ。国見岳の山頂部だけ岩場になっており、展望が良さそうだったが、あいにくのガスである。小国見岳まで足を伸ばしたが結局ガスが晴れることはなく、山頂部を後にした。国見岳周辺はどこか1点はっきりとした山頂があるわけではなく、ダラダラと同じような山が続いているような雰囲気を感じた。ここもどこかのピークを目当てに行くのではなく、縦走してこそ楽しい山なのだろうと思った。
平家山に戻る。本当はここで泊まる予定だったが、まだ日があったので下ってしまった。国道を下っていると日が暮れた。麓まで下りる途中、しんどくなったところで
、道端の邪魔にならないところでテントを張った。
3月19日 五木村〜市房山〜えびの
国道沿いなので、大型の車が通るたびに揺れるし、眩しいし、うるさかったが、思ったより寝られた。テントをたたむ時に車が来ないかどうか少し緊張した。昨日しんどくなった、アップダウンのある道を人吉盆地まで下る。あさぎり町と言う地名のとおり、川沿いは霧が出ていた。途中コンビニで買い物をしつつえっちらおっちら登っていく。途中のループ橋に植えてあった桜がちょうど咲いていて綺麗だった。キャンプ場の登山口を過ぎて市房山の登山口にたどり着いた。
登山口にかかる橋の所には、でかでかと関係者以外立入禁止と言う看板が掲げてある。よく見ると、日に褪せて薄くなった看板に「登山関係で歩いて通行される場合、事故等の発生については一切の責任を負いません」と書いてある。つまり自己責任でOKと解釈し、先に進んだ。市房神社の参道脇には大きな杉がたくさんあり、解説の看板を見ながら登っていく。森林管理用なのか、登山道から外れたところにピンクテープがついているので注意が必要だ。しばらく登ると市房神社の建物が現れる。立派な建物だ。手を合わせ先に進む。ここ市房山は登山口からの標高差が1100mと九州一らしい。長い長い急傾斜を休憩を交えながら登る。7合目付近で植生が変わり、振り返ると人吉盆地の展望が望めるようになる。ちょくちょく振り返りながら標高を上げていく。
山頂直前からずっとからんからんと音が聞こえているので、そういう鐘が設置してあるのかと思っていた。山頂に着いてみると、逆側の登山口から登るトレイルランの大会をやっていた。そのゴールを称える鐘だったのだ。一般登山者としては少し居づらいところである。しれっと写真を撮って少しだけ休憩して山頂を後にした。
また1100mの急傾斜を下り、自転車を回収してえびの市に向かう。最初はダウンヒルで調子良かったが、人吉盆地に入ってからは平坦になって少しペースが落ちる。さらに標高差400メートルの峠を越える頃には日が暮れかけていた。峠を貫くトンネルの中で、ついに熊本県を出て宮崎県に入った。熊本県には6日いたことになる。阿蘇、祖母、国見、市房と登る山が多かったから当たり前か。この峠も両側にループ橋がついていたので、今日は1日で4回自転車でループ橋を渡ったことになる。なかなか珍しいと思う。ループ橋を駆け下り市街地に入るとほどなく道の駅えびのに着いた。今日はここまで。長い一日だった。
隣接するえびのインターチェンジから高速バスで熊本駅まで行き、そこからさらに電車に乗り継いで阿蘇駅まで戻った。同じ高速を使ってえびのに戻ったのは3時くらいだったと思う。移動中は気持ちよく寝ていたので、まぁ大丈夫かな、明日も長いけど……。
3月20日 えびの〜霧島山〜国分
朝6時過ぎ起床。2時間は寝られたかな……。今日は霧島山だが、韓国岳と高千穂峰の両方に登るとかなり時間がかかる。高千穂峰のコースタイムを考慮し、14時半高千穂峰登山開始をデッドラインに設定、それを超えたら高千穂峰はカットすることにした。7時前に出発。
朝からえびの市街の標高約200mからえびの高原の約1200mまで、標高差1000m弱のヒルクライムをこなす。顔を上げると霧島山の頭が雲の中に隠れているのが見え、振り返ると加久藤カルデラの展望が眼下に広がる。3時間で済めばいいなと思っていたが、休憩込で3時間20分でえびの高原に着いた。自転車置き場が見つからなかったので、人の多いレストハウス付近を避け、つつじヶ丘の登山口付近に自転車を停め、歩き始めた。
地図上ではゆるい登りのようだが、特に大浪池に近づくにつれ、小さな沢を越すアップダウンが増えてくる。ぬかるんでいるところも多く、やや歩きにくい。1つでも多くの火口を見てみようと、大浪池の分岐に荷物を置いて、大浪池のリッジまで往復してみた。綺麗な円形をした池を一目見て、分岐に戻って休憩。大浪池分岐までより、そこから韓国岳までの方が道が使われている感じがした。レストハウスや大浪池登山口からのピストンが多いのだろうか?登山道は森林の中の木道からゴーロ帯になる。振り返るとぽっかりと口を開けた大浪池や、左右には白鳥山や噴煙を上げる新燃岳方面が見える。山頂からの景色を楽しみにしていたが、直下で遂にガスに巻かれてしまった。
山頂は北側の火口も見えないくらいの濃いガスで風も強かったため、写真を撮って数分で退散してしまった。こんなにあっさり立ち去った日本百名山の山頂は初めてかもしれない。幸い下山途中にガスを抜けると、火口方面も見ることが出来た。シューシューと音を立てて噴煙を上げる硫黄山を眼下に見ながら、早足で下った。
登山口に戻ったのは13時半。急いで高千穂峰の登山口まで移動する。途中、新湯温泉や湯之野温泉付近にも噴気を上げているところがあり、硫黄の香りがした。野良のやつ?もあるんだなあ。高千穂河原のビジターセンターには14時16分着。支度をしてすぐ出発した。
周りは下ってくる人ばかりだ。雨もポツポツ落ちてきた。風も強くて寒い。気持ちは焦るが、御鉢まで見られればそこで引き返してもいいかと思いながら、スコリアで滑りやすい急坂を登っていく。御鉢の縁に出る。風が強い。ガスは流れていて、御鉢は見えたり見えなかったりしている。山頂方面の道はロープが張ってあって分かりやすそうだったので、山頂まで行くことにした。山頂は完全にガスの中であたりには誰もいない。写真だけ撮って少し散策し、すぐ帰りに向かった。登りは厄介だった滑りやすいスコリアのおかげで、帰りは場所によっては砂走りのように下れた。1時間足らずで下山。しっとり濡れた体を冷やすまいと、着られるものは全て着て、霧島市街まで下った。
ここまで来れば、大きな山も人里離れた山の中も、これより南にはもうない。緊張が緩んだところで、スーパーで買い出し、ジョイフルで夕飯を済ませ、自遊空間にログイン。山行の途中のネカフェはとても快適で、ソフトクリームとソフトドリンクをガバガバ飲んで、人は人里で生きるようにできていることを確認した。心地よい疲れと共に快適な眠りに就いた。
3月21日 国分〜桜島
自遊空間が快適すぎて、出発したのはなんと朝11時。予報通りの雨に打たれながら、海添いの国道220号線をひたすら南下し、道の駅たるみずでたまらず休憩。雨ざらしの足湯には一般客は誰も寄り付かなかったが、こちらはもともとずぶ濡れなので、気にせず温まらせてもらった。
桜島に入ってしばらくはアップダウンがある。埋没鳥居や登山道があった時代の登山口を眺めながら、15時過ぎに桜島港着。行動時間の短い一日だったが、ずっと濡れていたので、疲労感は並の日くらいあった。ここ3日の行程が過酷だったので、前半の日々の辛さを忘れてしまっているだけかもしれないが……。
桜島の展望台から桜島を望みたかったので、 今日の行程はここまでだ。ということにしよう。決して朝遅かったからとか、雨が辛いからとかではなく、天候上仕方なかったということで……。
その後フェリーで鹿児島に渡り、電車を乗り継いでえびの駅へ。道の駅桜島で車中泊した。
3月22日 桜島〜根占
朝4時半起床、5時半発で展望台で日の出と思っていたが、いつの間にかスヌーズが消されていたことに気づいたのは朝6時。出発は7時半になった。まずは湯ノ平展望台に向かう。かなりの急坂だったが、どうにか1時間程度で到着。山頂は白い雲に覆われて見えなかったものの、それとは明らかに違う灰色をした噴煙がもくもくしているのが分かった。一般に立ち入れる最高点の、春田山のコルにも行っておいた。標高390〜395m、湯ノ平展望台より約20m高い場所にある。これより高い場所は道路が門で閉ざされており、立ち入れなかった。
ここからが鬼門だった。昨日の雨と火山灰の混ざった泥がタイヤにくっつき、滑るしびちゃびちゃと跳ねる。なんとか下り切っても、今度は乾いてきた路面の隣を大型車が走る度に灰が舞い上がる。痰が絡むし目は痛い。たまらず有村溶岩展望所で休憩。天気はだんだん回復し、晴れ間も見えてきた。青々としたマツと荒涼とした山肌が青空によく映える。桜島を脱出すると灰に苦しめられなくなった。青い海越しの桜島も綺麗だ。代わりに高くなってきた気温に苦しめられ、道の駅たるみずはまびらで服を脱ぎがてら休憩した。
昨日に引き続き、比較的平坦で走りやすかった。右手に見える鹿児島湾の景色を楽しみながら、根占港に13時半前に到着。佐多岬までは約40km、今日このまま行ける距離ではあるが、佐多岬最寄りの大泊からのバスは1日2本、最終便が午前10時8分ということで、今から行っても帰ってこられない。今日のところはここで行動終了とする。
根占から鹿屋経由で鹿児島までバスで戻った。途中で垂水-鴨池間のフェリーに乗るという珍しい路線バスで、船内を回ることも出来て楽しかった。鹿児島市街で買い出しをしてまたフェリーで桜島へ。桜島マグマ温泉に入って万全の体制を整えて大泊に向かった。最近出来たばかりで綺麗な佐多岬野営所で、雨の音を聞きながら車中泊した。
3月23日 根占〜佐多岬
6時起床。とはいえ雨音がうるさくてあまり寝られなかった。大泊からの始発バスに乗車して根占で下り、置いておいた自転車を漕ぎだした。
所々アップダウンがあるが、それよりも向かい風が強いのが厳しく、なかなかスピードが上がらないのが辛かった。佐多集落には本土最南端のAコープがあった。もうそういう地域まで来たのだ。気温も湿度も高く、カッパを着ていると蒸し風呂のようだが、路面が濡れていて泥がびちゃびちゃはねるので、カッパとザックカバーは外すことができない。大泊に到着し、天気予報を見ると、この後のほうが良くなりそうだ。車の中で昼ごはんを食べながらしばし休憩した。最南端に着いた時に何かあった方が良いと思い、「人力九州縦断+九州本土1700m峰制覇」と書いた紙を用意した。なんだか大層なことをやったかのようでこそばゆい。
次の集落までのアップダウンも手強かった。英彦山や桜島を思い出す。最後の集落を過ぎて坂を上ると、北緯31度のモニュメントがある。道路の最南端はここのようだ。少し先の佐多崎の駐車場には、思ったより車が止まっていた。自転車を止めて歩き出す。地図を見るとどうやら灯台の所の広場が1番南のようだ。
意外とアップダウンが激しい石の階段を進む。最南端の広場はさぞかし何かあるのだろうと思っていたが、そんなことはなかった。ベンチ2脚と、その広場の説明の看板、関係者以外立入禁止という看板が立っているだけである。九州は最北端も最南端も地味だなあと思った。というか、どちらも関係者以外立入禁止だ。用意した紙の写真を撮った。
より最南端っぽいモニュメントがいくつかある展望台のほうに行き、GPSの座標を比べてみたが、確かに先程の広場の方が南だった。それより南には、灯台と少しの陸地があるだけで、あとはすぐそこまで海に飲まれている。もうこれ以上南に行きようがない。この旅はここでおしまいだ。だんだん晴れてきた景色を眺めながらしばらく感慨にふけり、駐車場に戻った。
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